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ある日、ある午後50

时间: 2020-03-31    进入日语论坛
核心提示:星の買える島ある時、人は、道を歩いていてふと思う。曲がり角に咲いているすみれの花を見た瞬間とか、迷いこんだ路地に落ちる樹
(单词翻译:双击或拖选)
星の買える島

ある時、人は、道を歩いていてふと思う。曲がり角に咲いているすみれの花を見た瞬間とか、迷いこんだ路地に落ちる樹《き》の影に気づいた時などに、
「あっ、この場所を私は識《し》っている」
と感じることがある。
初めて通りかかったのに、以前来たことがあるような、あるいはもっと強い郷愁にかられて、思わず自分で自分を抱きしめるように立ちすくんでしまうことが、時としてある。
鼻の奥がつんと温くなり、軽いめまいのような状態。幸福であるような、それでいてふつふつと哀《かな》しい感じ。
この場所を確かに識っているという感覚で、軽い金縛りになる。そういう場所を、ひとは誰《だれ》でも、ひとつ持っているはずなのだ。まだその感情を体験していない人は、これからそういう場所と出逢《であ》うのだと、私は思う。
七年ほど前のことだった。旅の取材で初めてヨロン島を訪ねることになった。その時まで私はその島が正確にはどこにあるかも知らなかった。ただ南の方にある美しい島だという程度の知識があるだけだった。
いよいよヨロンに着いて飛行機のタラップに足を踏みだした瞬間に、その感情が爆風のように私を襲ったのだった。季節は十月の終わりで、島には潮の香りのする柔らかい風が吹いていた。薄い絹地のような感じだった。
風の他に、南国の花の甘い匂《にお》いや、肌にまとわりつく別の何かがあった。懐かしさのあまり、そこに坐《すわ》りこんでしまいそうになった。
——私はこの島を識《し》っている——というめくるめく思いが私を包みこんだ。ずっと前、いつだかわからないが、この島で生きたことがある、という思いであった。
私の記憶の奥の方で、しきりとざわめくものがあった。もしも前生というものがあるのなら、私は前の生を、この島で過ごしたのかもしれない、と強く思った。
風の感触に記憶があった。空気の甘やかな香りや、透明な海の色や、奇妙にも根っ子を露出させたがじゅまるという樹《き》にも記憶があった。泣きたくなるような郷愁で、私の胸は泡立ち続けた。
その不思議な思いは、滞在中ずっと私につきまとった。うれしいような不安なような、幸福でいて哀《かな》しい奇妙な気持ちだった。
出逢《であ》いがあれば、必ず別れの時が訪れる。そしてそれはまるで恋人と別れるようなせつない思い出となった。
島が飛行機の窓の中で、美しいエンジェルフィッシュの型にまで遠ざかった。私はいつか自分があそこへ、必ず帰っていくだろうと、強い予感を覚えたのだった。
それから年月が飛ぶように過ぎた。ある縁から、私は再びヨロン島を訪れることになった。つい最近のことである。
今度は家族全員で島を訪れた。私は、私の島を、なにがなんでも愛する家族みんなに見せたかった。
そして、一家中一人残らず、ヨロン島に恋をしてしまったのだ。夫が一番重症だった。末娘が二番目に重症。私たちは島中歩き回って、溜息《ためいき》ばかりついていた。
私の夫という人はイギリス人なのだが、不思議にも幸運な男《ひと》で、自分が死ぬほど恋いこがれたものを、ことごとく手に入れて来たひとである。
もちろん、彼が一生懸命働いて手に入れたものもあるが、そうでもないものも多々ある。死ぬほど恋いこがれたものが、たとえばタナボタ式に手に入ってしまうこともあったり、信じられないようなキトクな人からもらったり、妻である作家の女——つまり私——の本がすごく売れたおかげで手にしたものもある。
要は彼がそのものに恋をし、死ぬほど思いこがれ、いつかきっと……と心に誓いさえすれば、どうやらいつか月満ちて実現するらしい。実に実に幸運な男であると思う。
そのようにして、彼はずっと大昔の夢——日本人の妻を持つこと——を実現させた。ちなみに西洋の男たちの夢というのは、アメリカの家に住み、中国料理を食べ、日本人の妻を持つこと、なのだそうだ。
それはさておき、夫は、海が大好きで、海の側《そば》に家を建て、それでも足りなくてヨットも手に入れた。まだ足りなくて、海に四方八方取り囲まれた小さな島を、最近カナダにひとつ買ってしまった。他にも、昔から夢みた綿菓子のようにふわふわした女の子三人の父親にもなれたし、コリーズも飼えたし、ロレックスの金時計も、英国のスポーツカーも、彼のものとなった。そして、今、彼が何を欲しがっているか、私にはピンときたのだ。彼はヨロンに恋をし、そこに住みたがっているのだ。
今度ばかりは反対する者はいなかった。三人の娘たちも、ハワイより、パリより、タヒチよりきれいと言って大賛成。私はもとより、ひそかにこの地を特別の場所、私の島と感じていたわけだから、異論はない。
すると私たちの耳に、夢のような話が入ってきた。星つきの別荘が買えるというのだ。
星。つまり夜空に輝いている天《てん》の星。あのひとつが、正式に登録されて自分のものになるというのだ。
マイケル・ジャクソン星や、ポール・マッカートニー星に混って、『ブラッキン星』という我が家の専用の星が持てるのだ。なんてステキな思いつきだろう。星つきの別荘なんて、世界中広しといえども、ヨロン島だけにしかないと思う。
人は、出逢《であ》うべき時に、出逢うべき人に、出逢うべくして出逢っていく。私はそう固く信じているし、そういう人との出逢いを何よりも大切にしている。
土地や場所との出逢いも、また同じだと思う。七年前、私は一人の男に恋するようにヨロンという島と恋に落ちた。そしてようやく今、その恋が実を結ぼうとしているのを、私は感じるのだ。
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