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大都会06

时间: 2020-04-13    进入日语论坛
核心提示:破片《かけら》の人間「あなたって、本当にいいお友達をお持ちになっていらっしゃるのね」はるみはまだ披露宴の興奮さめやらぬ、
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破片《かけら》の人間

「あなたって、本当にいいお友達をお持ちになっていらっしゃるのね」
はるみはまだ披露宴の興奮さめやらぬ、やや上気した顔で言った。
「そりゃあ」
渋谷は得意そうに言いかけて黙った。
あのアルプスでつちかわれた連帯は、とうてい、口で説明できるものではないと思ったからである。
急行「たかやま」は暗黒の濃尾平野をたった今、誕生したばかりのカップルを乗せて、今宵の宿、高山へ向かってまっしぐらに走っていた。
渋谷夏雄と星川はるみの二人は、星電研のほとんど全社員が出席した名古屋国際ホテルの披露宴の会場から、新婚旅行へと送り出されたばかりなのである。
新婦の北陸路を巡りたいという希望を容れて、まず初夜の宿、高山へ向かう車中で、盛大であった披露宴、捧げられた無数の人々の祝福を思い出して感激をあらたにしていた。
今日の披露宴のために、東京からは岩村、大阪からは花岡が、それぞれ多忙な時間を割いて駆けつけてくれた。
岩村、花岡の音頭の下に参席者全員が合唱してくれた雪山讃歌、そして、二人が心をこめて寄せてくれた祝辞、最初は面映ゆさから心重く臨んだ披露宴であったが、友情と人々の善意を確認していくにつれて、幸福感が高まってきた。
祝辞も結婚披露宴につきもののきまり文句の讃辞ではない。みな心のこもった、善意にあふれたものばかりであった。結ばれるべくして結ばれた二人を、皆|言祝《ことほ》いでくれたのである。快い列車の震動に身を任せて彼らはまだ夢見心地だった。
「花岡さんと岩村さんが私達のために朗読してくれた詩はすてきだったわ」
はるみは瞳を夢見るようにうるませた。花岡と岩村が二人のためにつくり、席上で即興詩的に朗読してくれた詩のことを言っているのである。
「ここにメモがあります」
「まあ、あなたがとりましたの?」
「岩村がメモしたのをそっとくれたんですよ、何よりの贈り物です」
二人にはまだ夫婦になったという実感がわかないために、時々他人行儀の口調が出る。
「ちょっと見せて下さらない?」
「どうぞ」
渋谷は神宮前駅まで見送りに来てくれた岩村が、車窓からそっと手渡してくれた詩片のメモをはるみに渡した。
鉛筆のはしり書きであったが、友の情がそこから光を放っているように一字一字が浮き立ってみえた。
はるみは詩文を小さく口ずさんだ。
  渋谷、結婚おめでとう。
白雲の一刷毛が桃色にそまる夏の夕方
君が何処へ旅発ったか
俺達は知っている。
アルプスの夕焼がどんなか
夕焼の中に神々《こうごう》しい巨神達が
どのようなサームで
自然の美と安らぎを唄ったか
俺達は知っている。
暗い谷間ばかりを
うろつき廻っていた俺達を
「なあ、岩村。なあ、花岡」
……と君はその荘厳な式次第に
「すばらしいんだぜ」
と誘ってくれた。
無二の友よ。
そのお礼に俺達はこの花を君に捧げよう。
深山《みやま》にかぐわしく
ふくよかに咲いた白い花だ。
未知の山を
食糧の重荷と
憧憬の不安におののきながら
ただ一人訪ね来る若者を待ちわびて
しじまの中に散り残った花。
  この花はささやく
岩角に立ち
この花は微笑む
立ちすくんだ若者の
見開かれた瞳の中で
あのおもかげのように。
おずおずと彼は呼びかける
「永遠《とわ》のいのちよ」
その花を折ろう、その花を贈ろう。
得がたい友のために
友の新妻の
みどりの黒髪をかざるために。——
「すばらしいわあ」
はるみは読み終ってから目を閉じた。その長いまつげ、その下に隠された黒い大きな瞳、ふくよかなおとがい、ぐみのような唇、それらすべてが今宵自分のものになろうとしている。
友の贈ってくれた詩片は、白くすがすがしい花となって俺達の新褥を飾ってくれるだろう。
「有難う」
遠い灯を点滅させて走り去る暗い窓外に、渋谷はそっとつぶやいた。
  岩村元信の日記
四月十×日、晴
今日は渋谷の結婚式だ。久しぶりに竹内悦代とのデートの日の、しかも夕方に挙《あ》げなくてもよさそうなものを。花岡も出席するとなればサボるわけにはいくまい。まあ、全日空で往復すれば三時間で帰ってこられるであろう。名古屋まで行かねばならないと思うと朝から憂うつである。
 羽田まで悦代が送ってくる。社長出張旅行のお伴でしばらく逢わずにいた間に、腰や胸の肉づきがよくなったようだ。欲望でズボンの前ボタンが外れそうになって困る。
うるんだ目で早く帰って来てと言う。可愛い奴だ。今夜たっぷり可愛がってやるからおとなしく待っていろ。名古屋まで飛行機で四十分、披露宴約一時間半とみて、十時頃までには帰ってくる。
いつものホテルで待っていてくれ。
 退屈な披露宴なり。だが、花嫁はなかなか美しい。社長の娘とか、渋谷もなかなかすみにおけない。時間ばかりが気になる。47便を逃がすと汽車で帰らねばならなくなる。おそらく悦代は怒って先に帰ってしまうだろう。早く終れ! 早く終ってくれ!! フルコースの何と遅いこと。
少しでもスピーチの時間を少なくするために往路の飛行機内で作った詩を、花岡と一緒に朗読してやった。新郎新婦、感激のおももち。
我ながら、デキのいい詩である。
 ようやく披露宴終る。やれやれ。だが、まだ解放されない。皆が駅まで送るというのだ。俺だけ先に帰るわけにはいくまい。列車が出るまでの長かったこと。悦代の待つ東京へ一直線。帰心矢のごとし、花岡とはろくに口もきかなかった。
 久しぶりの逢う瀬に悦代は燃えた。アクメの時の声が凄いので室外に気を使うことおびただしい。シーツに盛大なシミをつけてしまったので|出  発《チエツクアウト》しにくい。渋谷達、今頃、どうしているか? 処女と童貞でさぞや�難航�しているこ
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