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大都会08

时间: 2020-04-13    进入日语论坛
核心提示:生存条件「秘書も遠ざけた。今、この部屋にいるのは儂とお前の二人だけだ」社長専用のソファにゆったりと身を任せた花岡俊一郎は
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生存条件

「秘書も遠ざけた。今、この部屋にいるのは儂とお前の二人だけだ」
社長専用のソファにゆったりと身を任せた花岡俊一郎は、恐る恐る社長室に人って来た花岡進の方に向かうと重々しく言った。
進は炯《けい》々たる彼の眼光に射すくめられたように頭を下げる。いつものことながら義父の前に立つと身体を圧縮されるような威圧感を覚える。——だらしない! 自分の妻の父ではないか、もっと毅然としろ! 毅然と。——我と我が心を叱りつけるのであるが、もって生まれた貫禄のちがいというのか、器の大きさのちがいというか、とにかく、彼の前に立つと自分でもどうすることもできない萎縮感に、心身がとらわれてしまう。
進はそんな自分が情けなく、くやしかった。
今も、——花岡俊一郎の前で進は気むずかしい主人の前にひれ伏して、顔色をうかがっている飼い犬のような自分を認めないわけにはいかなかった。
場所は大阪北浜のビル街でもひときわ偉容を誇る協和電機株式会社本社屋の九階にある社長室。協電社長花岡俊一郎は何事を語るつもりか、人払いした上で一人娘の婿である進を呼んだのである。
「お前も知っての通り、我が協電は現在資本金八百億、系列会社十数社、重電では業界のトップクラスにランクする」
何を今さらこと改めて新入社員|教本《テキスト》にあるようなことをと言いたげに面を上げた進に、押しかぶせるように俊一郎は、
「その重電系の協電で軽電系のこの儂がどうして社長の椅子に坐れたか? お前は知っているか?」
「はっ」
説明調の言葉尻がいきなり疑問文に切りかえられて進はちょっと返答に窮した。しかし、俊一郎は別に進の答えを期待していたわけではなかった。
「それはな、重電部門のドル箱ともいえる電源開発が昭和三十六年をさかいに次第に先細りになってきたところへ、儂がテレビを中心とした家庭電器をもって一挙になぐりこみをかけたからだ。常顧客たる鉄鋼会社が金融引締めや不況で重電部門の不振に輪をかけたところを狙って、従来は副業的に細々と営まれていた家電部門が、世間の電化ブームに乗って花々しく台頭した。業績面も重電部門の不振を家電部門がカバーしたので大して問題にならなかった。いわば、家電はお家の大事を救った形になったわけだ」
分るか——と言うように、俊一郎は進の目をのぞきこんだ。
「ところが、家電の我が世の春も長くは続かなかった。この頃はテレビや洗濯機の普及率も高まり、伸長率も頭打ちとなった。それに各社とも製品が酷似してきて競争が一段と激しくなった。家電界は作れば売れた殿様商売から、喰い潰し合いの戦国時代に入ったのだ。しかも、東京の菱井と比べた場合、業績の低下率はお話しにならない」
確かに俊一郎の言う通り、東京の家電専門メーカーであると同時に、家電業界では協和にとって最大の強敵と自他共に目されている菱井電業と比較した場合、収益率において、大きく水を開けられてしまったのである。
もちろん、業績が上がらないのは協電ばかりではない。ライバルたる菱井電業をはじめ、軒なみ不振である。東京M電機などは数年前進出したばかりの家電部門を、さっさと店じまいしてしまったくらいである。それほどまでにはいかなくとも、家電の名門を誇るF電機やY電産なども赤字無配に転落している。
彼らに比べれば協電の不振などはまだまだ軽い方といえた。
「しかし、それでも困るのだ。M電やF電ほどのやけどを負っていないにしても、家電の不振は軽電系の儂には大いに困る。もともと重電系の協和で軽電の儂が社長の椅子に坐っていられたのも、家電の日の出の勢いがあったからだ。ところがそれに少しでも斜陽のかげがさしたとなれば、たちまち、重電系のまき返しにあう。それでなくとも重電系は結束が強い。森口、森内、森のいわゆる重電|三森《みつもり》常務は儂の失脚を虎視たんたんとして狙っているのだ」
同じ一社の中で奇妙な話ではあるが、協電には創立期より重電、軽電の両部門があり、イニシャティブは重電が握っていた。
それだけに、重電部門の優越感、軽電の劣等感が底深い対立意識となって、協電の社風の中に暗い底流を作っていたのである。
それが花岡俊一郎によって、協和創立以来の伝統ともいえる重電優先主義がはじめて破られた。
彼は軽電出身の初めての社長になったのだ。大体、協和の社員は軽電にまわされるのを嫌う。電気ガマや足温機の係になるよりも、原子力発電やプラント輸出の一翼を担った方が男らしく格好いいという理由ばかりではなく、軽電ではほとんど陽の当たる場所に出られなかったからだ。
その原則というよりも鉄則を、花岡俊一郎が重電部門の一時的不振と家電ブームに乗じたとはいえ、とにかく、初めて破った。軽電出身の初代社長、——今まで、重電に対するコンプレックスに悩まされ続けて来た軽電が奮い立ったことはいうまでもない。
それだけに重電の花岡俊一郎に対する反発は強く、重電系の頂点に立つ森口英彦常務を中心とする森内啓悦、森道行のいわゆる三森常務と呼ばれる重電三首脳の反動は脅威ですらあった。
「だがな、やっと手に入れたこの王座だ。そう易々と明け渡すわけにはいかない。しかも、儂がこの椅子に坐っていることは儂個人の利益ばかりではなく、軽電全体の幸福にもつながるのだ」
彼は目を宙に据えたまま話し続けた。進に向かって話しかけているはずなのに、進などはまるで眼中にないかのような話しぶりであった。顔が滲み出た脂でてらてらと光った。
「だから、我々は重電に対して毛ほどの弱味も見せてはならない。しかし、今年下半期の業績はどう粉飾のしようもないほどに悪い。もちろん、我が社だけじゃあない。家電は軒なみダウンだ。このまま行けば枕を並べて討死しなけりゃあならん。原因は色々ある。作れば売れた時代から、宣伝すれば売れた時代に移行し、それからさらに今の宣伝しても売れない時代に入った。この下半期は上半期より二割強も広告費を増やしながら、売り上げはかえって落ちた。これは重電にとってまき返しのための絶好の足がかりとなるだろう。原因はさらに考えられる。金融引き締め、世間全般の不況、電化製品の高普及、……しかし、それだけではない、決してそれだけではないのだ。進、お前にはそれが分るか?」
俊一郎は今まで宙に据えていた眸をひたと進のそれに重ねた。
「分るか?」俊一郎はふたたび言った。
「は」
「どんなに宣伝しても、売りあしが伸びないその理由が」
今度は先刻と異なり、俊一郎は進の答えを待っていた。何とか答えなければならない。かといって見当外れの答えをしようものなら、たちまち雷が落ちる。進は脇の下にじっとりと汗が湧き上がるのを覚えながらふと心に浮かんだ一つの思いつきを口に出した。
「名古屋の星電研……」
「そうだ、その通りだ!」
おっかなびっくりに出した答えだったが、意外にそれが�正解�であったと見えて、俊一郎は深くうなずいた。
星電研とは昭和三十×年八月名古屋のホテルナゴヤの一室に戦時中の兵器技術者の生き残りが集まり、店開きをした星電研、すなわち星川電機研究所のことである。三十×年のポケットサイズのトランジスターラジオの発明を皮切りに、完全自動式洗濯機、組立式電気冷蔵庫、ポータブルルームクーラー、などの日本で初めてどころか、世界でも初めての一連の家庭電化製品を矢継早に市場に送り出し、ここ五年ほどの間に家電業界で驚異的な躍進を遂げた新興会社である。
現在では第二部ながら東京、大阪に株も上場され、弱電関係が軒なみに相場を下げているのを、せせら笑うように堅調、一割五分の高率配当を続けている。しかも売り上げ高は伸びる一方である。理由は簡単である。製品が優秀なのだ。
それも生半可な優秀さではない。大企業の金にものをいわせた研究開発が足許にも及ばぬような、ずば抜けた優秀さなのである。
「あのように次から次に画期的な製品を作り出されたのでは競争も何もあったものではない。ウチをはじめとして、家電が軒並み業績不振の津波を浴びたのは星電研の製品に、市場をめちゃめちゃに荒されたからだ」
「…………」
「優秀な経営者の下に腕のいい技術者が集まったことは事実だ。しかし、腕のいい技術屋ならウチの中堅にもゴマンといる。儂の頭も、まだそれほどなまってはいない。星電研が短期間にあれほどに伸びたのは、一人の男のおかげなんだ、そしてお前はその男を知っているな」
進にひたと当てられた俊一郎の眼光はますます強められた。
「渋谷夏雄……ですか」
進が気おされたように言うと、
「そうだ、星電研の伸長は渋谷が入社してから始まった。渋谷夏雄……日本のエジソンともいえる男、こいつが次々に家電の化け物を作り出さなかったら、日本の家電界はこうも惨めに打ちのめされなかったろう」
「しかし」
「そうだ、決して奴一人の力ではなかった。だが、奴がいなかったら絶対に今日の星電はなかった。そして、儂の地位がこうも速やかにぐらつくようなことはなかったのだ」
俊一郎は語尾をほとんど怒鳴るように言った。こういう時は下手に言葉を差しはさまない方がいいことを長年の婿養子の経験で知っていた進は、黙然と立ちつくしていた。
「ここまで言えば儂が人払いしてまでお前を呼んだ理由は分っただろう。渋谷を抜け! 幸い、彼はお前の同窓だ。青春の友情というやつにものをいわせて彼をこの協和へ引き抜いてこい!」
俊一郎の怒号が突然、自分に対する命令、それも途方もない命令という形で結論とされたので進は愕然とした。
「そ、それは無理です。同窓とはいえ、すでに卒業してから何年もたっている。まして、彼は現在、星川社長の一人娘と結婚し、星電研の中堅主任技師です。引き抜くなんてとうてい……」
「むずかしいのはよく分っている。お前に頼む前に専門の商務工作員を使い、金、女、贈り物、利権、ありとあらゆる餌で釣ってみたが、びくともしなかった。
ごっそりと現金を詰めた菓子折りは突き返される。出入りの八百屋や魚屋を使っての女房を攻める搦手戦術も通じない。粒よりのホステスの色仕掛にも落ちない。あんなかたぶつはおらん。しかし、何としてでも渋谷を引き抜かなければならん。おそらく、奴はここ数ヵ月の間にマイクロカラーテレビを完成するだろう。そうなったらどうなるか?
厖大な研究費を投じてやっと試作に成功したばかりの我が社の6型カラーテレビなどたちまちポンコツとなってしまう。そうなったら儂ばかりではない、弱電部門は永久に沈むぞ。下手をすれば、M電のように弱電の店じまいということにもなりかねない。わしの後継者をもって自他共に目されているお前自身、渋谷なくしては生きていけないのだぞ。いいか、金に糸目はつけない、何としても渋谷を引き抜け。それも奴がマイクロカラーテレビを完成する前にだ。渋谷だけが儂達が生き残るための唯一の条件だということを忘れるな!」
俊一郎は口をへの字に結んだ。進はその精悍な脂切った顔に、かつての山仲間渋谷夏雄の面影をオーバーラップさせた。それは遠い日の山の熾烈な日の光に灼かれた、俊一郎以上に精悍で、共に攀じた氷壁よりも近寄り難い、技術者としての頑固さで鎧った表情であった。
しかし、彼を協電に引き抜いてくることが生き残るための唯一の条件と分ってみれば、それがどんな酷しさに鎧われていようと、挑まなければならなかった。頼むは遠い日の友情のみ、渋谷の場合、金がどれほどの誘因にもならないことを進はよく知っていた。
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