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大都会10

时间: 2020-04-13    进入日语论坛
核心提示:ビジネスの笑い「どうだ、その後、山は?」「さっぱりご無沙汰だ。行きたくも暇がない」「おたがい様だな、現役の頃は下界より山
(单词翻译:双击或拖选)
ビジネスの笑い

「どうだ、その後、山は?」
「さっぱりご無沙汰だ。行きたくも暇がない」
「おたがい様だな、現役の頃は下界より山にいる時間の方が多かったのにな」
「それだけ実社会の風は酷しいというわけだ」
「全く」
「ところで、花岡とは会うことあるか?」
「結婚式以来一度も会っていない、その点お前と同じだったよ」
「あいつも忙しいんだろうなあ、何せ、奴は大協電社長の養子だから忙しさも俺のような一介のサラリーマンとは桁ちがいだろう」
「そう言うお前も盛川社長の娘とよろしくやっているというもっぱらの噂だぞ、けっこういいセン行ってるんじゃないのか」
「しかし、こっちはまだ何といっても満期が大分先の手形みたいなもんだ。第一、落ちるか、どうかも分らないし、不渡りになったところでどこにも文句を持って行く所もない」
「ははは、ぼやくな、二十代で菱井電業家電事業部、テレビ課長代理、いいセン行ってることに変わりはない」
「そういうお前も星電研技師長、矢継早の新発明で日本家電業界に一大旋風を巻き起こし、日本のエジソンと言われている」
「おい、よせ! 星電研なんて株も第二市場へやっと上場されたばかりの吹けば飛ぶような会社だよ、町工場にちょっと毛が生えたようなもんだ」
「いや、お前がいるかぎり、星電研は近い将来、必ず日本の家電界を支配するぞ」
「さあ、どうだか?」
「いや必ず握る」
「おい、岩村、俺達久し振りに会ったというのに仕事の話ばかりじゃないか。数年前の俺達だったら、山以外は話題にのぼらなかったはずだ。今夜は久しぶりなんだ。これからもそうしょっちゅう会えるというもんでもない。世智辛い話は止めにして、山の話でもしようじゃないか。まあ、飲め」
渋谷は岩村の半分空になったグラスにビールを注いだ。ここはホテルナゴヤの屋上バー、タヒチ。南太平洋の美しい島の名前にちなんだこのバーは、展望と雰囲気がよいので、渋谷はよく利用する。
今日は岩村が出張の途中にひょっこり訪ねて来てくれたのである。
「とにかく、よく寄ってくれた。友アリ、遠方ヨリ来ルアリ、又、楽シカラズヤだ、今夜は飲み明かそうぜ」
渋谷は心から嬉しそうに言った。たとえ、それが自分の選んだ道であっても、研究に明け研究に暮れる日々の中にふとめぐり会った遠い日の旧《ふる》い友は、やはりオアシスのようなうるおいを与えるのであろう。
しかし、そのオアシスもここ数年、大都会の酷しい生存競争に晒されている間に大分変わってしまった。大都会の風化作用といってもよい。今の会話で二人はそれを認めざるを得なかった。それだけ二人の歩んで来た道は嶮しく困難であったわけだ。それぞれに、嶮しさと困難が異質のものであったとしても、平坦な道ではなかったという点で一致していた。
しかし、今の渋谷は旧い友にその風化を認めたくなかった。彼らの結びつきは分かちあった青春の一時期の余韻である。それがどんなに懐しく、純粋な友情による連帯であろうと、要するに過去のものであり、現在を生きるために、たがいの存在は切実なものではない。
何の利害関係も持たぬ、たがいに空気のような存在なのだ。それ故にこそ、若き日の友は永続きし、実社会の生存競争の中にあっても、何の武装もせずに虚心に交わりあえるのである。
ビジネスの世界に友情は育たない、友情とはそれぞれ、異次元の世界に住む者同士の間にはじめて開く、人間のロマンティシズムの花なのだ。——それが渋谷の友情の倫理であった。
だから彼はその夜めぐり逢った旧き友の変貌を認めざるを得なかったが、強いてそれに目をつむろうとした。岩村元信は旧き山仲間である、それだけでよく、それ以外であってはならなかった。
「渋谷」
岩村が渋谷の充たしてくれたグラスを脇によけながら言った。何となく改まった口調である。窓に背を向けて坐った形の岩村は、窓外の名古屋市街のイルミネーションを背負ってシルエットになっていた。それほどに室内の照度は低い。逆光の中に岩村の目だけがキラキラと光ったように見えた。
「何だ?」
渋谷が訊いた。
「俺がお前とただ、�旧きよき山�の想い出話をするためにだけ名古屋にやって来たと思っているのか?」
「何だ、また改まって」
渋谷は目を伏せた。ひたと彼の目に重ねた岩村の視線が眩しく感じられたのである。
「想い出話だけじゃないのか?」
「はっきり言おう。実は俺は社命でお前に会いに来たのだ」
「社命で?」
「お前を星電研からスカウトしてこいという社長命令を受けてな」
「おいおい冗談言うなよ」
「冗談ではない。本気なんだ。ビジネスに冗談はない」
「おい、よせよ。せっかくの酒がまずくなるよ」
「まあ、聞いてくれ。お前の新発明のおかげでうちの家電市場はめちゃめちゃだ。花岡の協電にしたって、いや、日本中の家電業者がコテンパンにやられている。それほどに星電研の、いやお前の製品はすばらしいのだ。そこでだ」
「待て!」
渋谷は手を上げて制した。伏せた瞳を上げて、まともに岩村の顔を見た。二つの視線はがっちりとからみ合った。
「お前の意図は分った。しかし、俺もはっきりと言っておく。俺は星電研を移る意志は毛頭ないとな」
「お前はそう言うだろうと思ったよ。しかし、ここのところをよく聞いてくれ。星電研がいくら優秀な技術陣をかかえていようと、要するに弱小資本だ。さっきお前が言ったように町工場に毛が生えたようなもんだ。そんな所でどれほどの研究ができる? そこへいくと菱井は業界でトップクラスだ、設備も万全だし、研究費も惜しみなくおりる。星電研のような貧弱な設備と資本の下でもあれだけのことをやってのけたお前のことだ。大企業のバックアップの下にやったらもっとどえらいことができると思うがな。お前の才能は星電研のおかげで大分|抑圧《チエツク》されているのだ、お前がやりたいことは�創る�ということであって、お前の製品にどこの商標《ブランド》がついても、それはお前の知ったことじゃあないんだろう。どうだ、ここは一つよく考えてくれないか? お前にとっても才能をもっともっと伸ばせるチャンスなんだぜ。それにそういっちゃあなんだが、今の星電研じゃ、待遇も大したことはないだろう。菱電に移れば」
「止めろ!」
突然、渋谷はテーブルを叩いて怒鳴った。
静かなBGMの流れの中で周囲の人の視線を集めるほどに彼の怒声は響いた。
「いや、大きな声を出して悪かった。だがな、岩村、星電研はな、世間が俺にはなもひっかけなかった頃に俺の才能を買ってくれた所なんだ。確かに、お前の言う通り、最初はブランドなどどこでもよかった。俺はただ、製品を発表したかった。どんなに作りたがってもスポンサーがいなければ研究は進まない。そんな時、海のものとも山のものとも分らない俺の才能を認め、投資してくれたのが星電研だ。男が男の才能を認めて買う。お前はなにわ節だと笑うかもしれないが、俺にとっては大したことなんだ。才能なんて最初に拾ってくれる人がいなければ屑みたいなもんさ。どんな異才も最初にプロデューサーが推進力を与えてくれたからこそ無限の成長をするのだ。確かに、星電研の設備は貧弱さ。研究費も乏しい。しかし、俺の製品には星電研のブランドがつけられなければならないのだ」
「渋谷、感情に走るなよ。今のお前は星電研の渋谷ではない。日本の、いや、世界の渋谷なのだ。それだったら、それにふさわしい所で働いたらどうだ。ビジネスに感情は禁物だよ」
「お前、おかしなことを言うな。それなら何故、俺が菱井に行かなければならんのだ。大手は菱井だけじゃない。協和でも、古川でも、松下、日立、東芝、どこだっていいはずだ」
「渋谷、お前、俺達が命の危険《リスク》を分かち合ったザイルパートナーだということを忘れてはいまいな? 俺達が四年間、岩と雪と風の中で分かち合った青春は、俺達の間に全く何の意味も残さなかったと言うのか?」
「岩村、友情とビジネスを混同するなよ。今の俺達の話はビジネスなんだ。俺達が山でザイルを結び合ったことと今の話とは何の関係もない」
「しかし」
「いいか、ビジネスに感情は禁物だと言ったのはお前だぞ。そのお前が甘い青春の友情に訴えて俺を星電研から引き抜こうとしている。おかしいじゃないか」
「…………」
「もう一度言う。俺は星電研を移る意志はない。今も、そして将来もだ。そして今日のことは、俺達の友情とは全く何の関係もない。俺とお前とは依然として�旧き山仲間�なのだ。ビールの気がすっかり抜けてしまったじゃないか、河岸を変えて飲み直すか」
渋谷は努めて明るく笑った。岩村も同調した。しかし、二人の笑いからは友の間に見られる健康な屈託のなさは失なわれていた。それはすでに�ビジネスの笑い�であった。
ホテル専属の黒人女の歌手が唄い始めた。豊かな声量で胸に沁み通るような声だったが、何故か二人にはそれが偽わりの声のように虚しく聞こえた。それもビジネスの歌声であったからか、ミラーボールがめまぐるしく回転していた。
渋谷夏雄がもう一人の山仲間、花岡進の五年ぶりの訪問をうけたのはその翌日である。
旧きよき日のアルトハイデルベルク時代の想い出に花を咲かせた渋谷は、結局、花岡の目的も青春の懐古談にはなかったことを知って、今日と同様の落胆を重ねなければならなかった。
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