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食味歳時記32

时间: 2020-04-20    进入日语论坛
核心提示:実  る02 柿というものは、ほんとに、立派だと思う。あんなに形よく、色よく、品位があり、そして、日本的な美しさに富んでる
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実  る02

 柿というものは、ほんとに、立派だと思う。
あんなに形よく、色よく、品位があり、そして、日本的な美しさに富んでる果物は、滅多にあるものではない。私は柿が、もっと画材にされてもいいと、思うのだが、そのわりに、多くない。牧野虎雄画伯が、油絵でなく、日本画風に描いたものを、私は持ってるが、柿の美しさが、充分に、捉えられている。
といって、美しいのは、やはり、御所柿、富有柿のような、良種のものに多いが、そういう柿が一個、デンとして、置かれてあるのを見ると、威風をさえ、感じるのである。
味だって、立派である。あの甘さには、品位があり、日本に砂糖の輸入されなかった昔には、菓子として、あれを食べたのかも知れない。菓子と思えば、実によくできた、立派な菓子である。そして、あの程度の甘さで、糖分摂取に満足してた、昔の日本人の食生活と、現在と、どちらが幸福といえるのか。砂糖の濫用が、菓子のみならず、料理にまで及んだ今日を、味覚の進歩といえるのか、どうか。
大垣の柿羊羹というものがあるが、天然の柿の味を、あまり損わない程度に、菓子化してあるのは、好もしい。もっとも、以前の話で、近頃は、どうか知らない。
良種の柿は、美しいが、俗にいうキザ柿だって、捨てたものではない。東京の近郊は、ずいぶん柿の木が多いが、全部が、円い、小さな実のキザ柿である。実の肉は堅く、種が大きく、渋味があったりして、決して、美味とはいえない。
しかし、樹に成っている姿は、美しい。沢山の実をつけるから、秋の花のような趣きさえ、感じさせる。秋晴れの静かな日に、熟しかけた実の色と、モズの声とで、武蔵野の季節感は、充分である。
十月十二日だったか、池上本門寺のお会式であるが、造花をつけた万燈の行列について、お寺まで行ったことがある。無論、若い時の話である。そして、帰りは早朝になり、小雨が降り出し、大森駅まで歩く道の両側に、枝つきのキザ柿を列べた露店が、沢山、出てた。恐らく、あの附近の農家の庭に、成ってた柿だろう。京浜工場地帯というものも、まだ出現しない前で、あの附近も、田や畑が多かった。
お会式がくると、夜寒が始まるのも、あの頃の東京の気象だった。近年は、確かに、秋のくるのがおそくなり、コオロギばかり、勝手に鳴いている
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