返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

食味歳時記33

时间: 2020-04-20    进入日语论坛
核心提示:実  る03 京都から送ってくる松茸の籠は、第一便が、最も貴重である。外出先きから、夕方、帰ってきて、細君から�吉報�を聞
(单词翻译:双击或拖选)
実  る03

 京都から送ってくる松茸の籠は、第一便が、最も貴重である。
外出先きから、夕方、帰ってきて、細君から�吉報�を聞かされる。
「××さんの松茸、届きましたよ。今年は、早いようですね」
「ありがたいな、もう、出たのか」
そして、夕餐の膳に、何にして食おうかと、迷ったことは一度もない。焼き松茸にきまってる。籠のシダの葉の中から、笠の閉った、形のいいのを、選り出す。大きくなった柚子も、添えてある。
焼いた松茸を、まるごと、食卓へ持ってきてもらって、裂くのは、わが手でやる。時として、指先きを火傷するが、そうしないと、香りが逃げてしまう。
「ウマい!」
しかし、そのウマさは、第一便の最初の一本に、及ばないのではないか。
松茸とは、そういうものだと、思ってる。
翌日は、土瓶蒸しにしたり、松茸飯にしたり、いろいろやって見る。マズくはない。しかし、最初の日の焼き松茸に、匹敵することはない。ことに、スキヤキの鍋に入れたりすると、これが松茸かと思うような、つまらぬ味になる。
香りと歯触りと、そして、廻りきた季節の喜びを味わわさせれば、松茸の役目は、済んでしまうのではないか。
「また、松茸が着きましたよ」
始末の悪いことに、その日、東京に出廻ったのを、細君が買ったところへ、大きな籠が、届いたりする。
「また、松茸か」
罰あたりなことを、いわざるを得ない。
松茸なんて、少量であるほど、価値を感じるのだろう。
だから、私は、松茸狩りというものに、行ったことがない。沢山穫れた松茸を、山で、鳥鍋か何かにして、食べるらしいが、想像しても、食欲をそそらない。ただ、京都の山の秋気は、爽かで、青空と赤松の樹間で、飲食することは、愉しいにきまっている。
秋に、東北地方を旅行すると、
「春なら、山菜がございましたのに……」
と、宿の者が、残念そうにいう。
しかし、キノコ類は、沢山あるのである。土地の人は、山菜の方を、賞味するのだろうか。それとも、近時の山菜流行で、都会の人に対して、そんなことをいうのだろうか。
キノコだって、無論、ウマい。
シメジやナメコのウマさは、都会の人も、よく知ってる。私はシメジが好きで、形も松茸のようにハデでなく、床しい味で、土瓶蒸しにしても、松茸より好きなくらいである。
しかし、東北へ行くと、そんな名の知れたキノコでなく、初耳のものが、ずいぶんある。ナラタケ、エノキダケ、マイタケといった名は、覚えやすいが、変な名のキノコで、ずいぶんウマいのがあった。蔦《つた》温泉で食わされた、何とかいうのは、味もよかったが、あまり穫れないので、一貫目の値段が、松茸より高価だったのを、記憶してる。
那須温泉も、キノコの多いところだが、秋に行った時に、町を散歩したら、店頭に、まるで、一塊の肉のような、鮮橙色をした、大きなキノコを、売ってた。あまり、珍しいので、買って帰り、旅館の者に聞くと、
「これァ、シシ・ダケといって、あまりウマくありません」
と、いった。試みに、煮てもらったら、果たして、大味で、食用になるというだけのものだった。
フランスあたりで、珍重するキノコは、トリュフ(西洋松露)だろうが、これは、秋のものと、限らないらしい。フォア・グラの缶詰を開けると、パテになった肉の間に、黒い斑点が見えるのが、それである。ナマのトリュフを、見たことはないが、香りと味の両方を、兼ねたものだろう。フォア・グラとか、野鳥獣料理の臭気を、和げるために、使用するのだろう。
一体、フランスの食いしん坊は、キノコ入りの料理が好きだが、それはキノコが好きだというよりも、キノコを用いる料理に、ご馳走が多いからだろう。サヴァランの『味覚の生理学』にも、キノコの出てくる料理が多く、トリュフの記述も多い。
しかし、一般のフランス人にとって、馴染みの深いのは、マシュルームだろう。あれは栽培品で、年中あるし、癖のないキノコで、誰からも好かれる。私なぞ、パリでスキヤキをやる時に、必ず、鍋に入れた。
キノコのフランス語は、シャンピニオンで、これは総称であるのに、普通、シャンピニオンといえば、マシュルームのことになってる。それほど、代表的なのだろう。しかし、歯触りはいいにしても、香りは乏しいし、それ一種というのも、寂しいし、私は秋になると、故国のキノコの豊富さを、思った。
ところが、ある日、スペイン人の八百屋へ寄ったら、五、六種類のキノコを列べてるのに、驚いた。シイタケのような形のものや、シメジのようなものや、そして、どれも、裏側がオレンジ色で、美しかった。それぞれ、名があるのだろうが、聞き損ねた。また、どのキノコはどの料理と、キマリがあるのだろうが、台所を持たない私は、聞いても仕方がなかった。ただ、マシュルーム以外にも、フランスにキノコがあるのを、この時初めて知った。その店では、キノコの外に、ナスも売ってた。巨大な、長いナスで、色だけは、日本産と同じく、紫紺色だった。パリには、外国人も多いので、その店は、そういう人たちを目当てに、珍しいものを売ってるのかも、知れなかった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%