ふまんじゅう(麩饅頭)は菓子にはちがいないが、菓子屋ではつくらず、麩屋の製品で、本来は精進料理のデザートなのかも知れない。
しかし菓子として非常にうまいのである。ことに産地の京都で食うとうまい。鮮度を尚《とうと》ぶものであるが、京都の雰囲気の中で、薄茶と共に食べると真価を発揮する。京都の菓子も近頃は砂糖が効き過ぎるのだが、ふまんじゅうの甘さは、まことに頃合いである。
ふまんじゅうは、暖めて食べるのが常法だが、蒸し器で蒸しても、笹の皮が麩の皮にくっついて、なかなかうまくいかない。京都の人から、熱湯の中へ暫時浸すのがいいといわれ、そのようにしてるが、それでもやり損う時がある。
私の考えでは、麩屋へ出かけて、店頭で、できたのを食ったら、一番うまいのではないかと思う。
そんなことは、殺風景と思うかも知れないが、ふまんじゅうを一番上手につくる麩嘉《ふうか》の店頭だったら、その惧れもあるまい。あの店の古風な町家建築は、京都でも珍しく文化財として残したい値打ちがある。