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食生活を探検する03

时间: 2020-04-21    进入日语论坛
核心提示:カスバの味 本場のトルコ風呂をごぞんじかな。いや、もうすばらしいものだ。一度その味を知ったら、やめられない。そこで、新し
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カスバの味

 本場のトルコ風呂をごぞんじかな。いや、もうすばらしいものだ。一度その味を知ったら、やめられない。そこで、新しい町へ行くと、また風呂屋をさがしにカスバをうろうろすることになる。
カスバといっても、アルジェの街の専売特許ではない。地中海にそった北アフリカの都市は、たいていカスバから発展したものだ。カスバとは、もともと城壁にかこまれた町のことだ。都市が大きくなると、たいてい、カスバは旧市街として残り、土着商人のマーケットとなる。カスバに鉄筋コンクリートの建物はない。昔ながらの日乾レンガにシックイをぬった家、石積みの家が軒を接してひしめいている。道は例外なく細い。自動車の通れるところはまずない。昔はラクダが二頭すれちがうことができたら道の機能が充分はたせたのだから。両側の家が二階でつながって、路地はまるでトンネルのようになっていたりする。カスバは、とてつもなく人口密度の高いところだ。
戸口をとざしているような家はない。うず高く積んだ反物にうもれて、主人の姿がみえないような呉服屋、いつもタガネの音が聞える金細工屋、宝石商、金物屋、仕立屋、パン屋、商品をならべてない家でも入口をあけて、ゴザやジュウタンのうえで、職人らしき人が何か仕事をしている。カスバは、中世のイスラム都市の繁栄ぶりが、そのまま化石になって残っているようなところだ。
さて、カスバのなかで風呂屋をさがすのはなかなかめんどうである。肉屋だったら、店先に血のしたたる羊がぶらさがっているし、八百屋だったら、トマトやキャベツがならんでいる。風呂屋だけは、商品をならべているわけじゃないし、温泉マークといった重宝な目印も、男湯、女湯と染めぬいたノレンもぶらさがっちゃいない。戸口のうえに「サルタン浴場」とか「アレクサンドリア浴場」とか書いてはあるのだが、カンナクズがダンスをしているようなアラビア文字をおぼつかなげに一軒一軒読みながらあるいたら、一日たってもカスバから出られやしない。
そこでどうしても、人にたずねなくてはならない破目になる。迷路のような、カスバの路地のことだ。一回聞いただけで風呂屋にたどりつくことは、まずむずかしい。角を曲るごとに、誰かつかまえて「風呂屋はどこだ?」とたずねることとあいなる。風呂屋は、アラビア語でハマームというが、発音が悪いと、ハトという意味のことばに聞える。聞いた相手に、ハトが豆鉄砲をくったような顔をされないように、正確に発音しなくてはならない。
さて、風呂場へたどりつくと、入口で大きな布を一枚渡される。これを腰のまわりにまきつけて浴室へ入るのがエチケットだ。重いトビラを押すと、またドアがある。二重のドアをくぐると、熱い空気につつまれる。乾式の蒸風呂だ。北欧のサウナほど熱くはない。十メートル四方くらいの部屋がタイル張りになっていて、タイルのしたからおだやかな熱が伝わってくる。部屋の中央か片側に大理石でつくった大きな台があって、この台のしたを熱気が通っている。
大理石のうえに十分間くらいすわったり、横になっていると、おだやかな熱気が身体の芯までしみ通って、じわじわと汗が流れはじめる。部屋の壁ぎわには、彫刻のほどこされた石製の鉢が、つくりつけの洗面器として並んでいる。このうえの蛇口から、湯と水が流れる。ここで身体を洗う。
三助をたのむと、たいてい相撲取りのような大男が出てきて、まずマッサージをしてくれる。レスリングの寝技みたいなことをして身体のあらゆるところを引っぱり、ねじ曲げ、ふみつける。関節は、ポキポキと音を立て、身体じゅうがばらばらになりそうだ。それでいて、苦痛ではない。大男が|渾身《こんしん》の力をこめたマッサージをうけると、その後一週間ほど身体の調子はきわめてよい。あるくときも、足が軽々とあがる。
マッサージのあと、身体を流してくれる。湯で汗を洗い流したあと、ヘチマでつくった袋を手にはめて、シャボンをぬりつけ、ゴシゴシとアカすりをしてくれる。
浴室を出るときには、三助氏が乾いた布を二枚持ってきてくれる。一枚をぬれた腰布ととりかえ、もう一枚を頭からかぶって、上半身にまきつける。湯あがりの場所は、これはまた広々としたものだ。大きな部屋の両側に十メートルもの長いマットがしきつめてある。壁ぎわには、長さ十メートルの枕。風呂から出た人々がずらりと横になって、おしゃべりをしている。寝ころぶと、番人のじいさんがすかさずシーツをかけてくれる。ぬれた身体を乾かしながら、横になって冷たい飲物を口にする。浴場によっては、湯あがり場は、ベッドを二つ三つ置いた小さな部屋に仕切ってある。こんな浴場へは得意先をつれてきて、一風呂あびてから、個室のベッドに横になりながら商談をしたりするようだ。
風呂代が大体三百円前後、三助代が二百円くらい。念のためことわっておくが、風呂屋に女性は一切いない。一週間に一日くらいの割りで、女性入浴日がきまっているが、このときは、番台から三助にいたるまで、女に交代する。
風呂で身体中から汗をしぼりだし、はげしいマッサージをうけたあとでは、腹がぺこぺこだ。食物屋をさがそう。カスバの食物は、例外なしにやすい。一九六八年、北アフリカの遊牧民の調査に出かけたとき、相棒の|谷《たに》 |泰《ゆたか》さん(同志社大学講師)といっしょにアルジェのカスバでたべたときの値段を書いてみよう。
まず、最初に立ち止ったのは鉄板焼きの店だ。道端に七輪を出して、油をひいた鉄板のうえで肉や野菜を焼いている。うまそうなにおいにつられて立ち止ってながめる。ヒキ肉、タマネギ、ニンニクのミジン切り、香りのよい草をいっしょにいためたうえに、卵を一個ポンと落してかきまわす。卵がかたまらないうちにオムレツ状になった具を鉄板のかたわらにおしやる。油をひきなおして、すき通るほど薄いチャパティを鉄板のうえに広げる。紙のようにうすく小麦粉をのばして、あぶってつくった直径三十センチくらいの円形のチャパティ。このチャパティのうえに、どろどろしたオムレツをのせて、長細い封筒のように折りたたんで揚げる。こうして、オムレツの包み焼きが出来あがる。一個三十円くらい。焼きたてを新聞紙にくるんでもらって、たべながらあるく。
食物屋をさがすのは簡単だ。鼻をヒクヒクさせながら、においのする方へあるいてゆく。路地を曲るとあった、あった。立食い専門の食堂が二軒向き合っている。片方は、オカズ専門、もう一方は、スープやアラブ風に料理したスパゲッティを売っている。
オカズ屋の前に立つと、トルコ帽をかぶったオッさんが、野球のバットほど長いフランスパンを切ってカウンターに置いてくれる。まず、イワシのテンプラ。頭をとって五センチくらいのイワシが一皿に十匹は並んでいる。カウンターのはしに、塩ツボと四つ割りにしたレモンを山盛りにしたボールがおいてある。揚げたてのテンプラに、レモンをしぼりこんでたべる。つぎは、レバーいため。ニンニクとトウガラシの味がきいていて、関西でいうホルモン焼きと変わらない。それに、トウガラシをいためたもの。欲をいえば、酒がちょっとほしいところだ。日本の一杯飲み屋のおつまみと変わらないじゃないか。ただ分量だけは、おつまみにくらべてはるかに多い。
向かいの店から、スープを取る。中華ソバのドンブリよりも一まわり大きなホーローびきのボールに、たっぷりとスープを入れて持ってきてくれる。ウズラ豆をトマトスープで、長時間煮こんだもの。ヒツジの肉も入っている。これだけたべて、お代は、二人分でなんと百四十円。
北アフリカの都市だったら、カスバのなかか、市場の近くに、かならずこんな食物屋がある。カツオのブツ切りを煮た料理とか、細いスパゲッティでつくったヤキソバなど、わたしたちの|嗜好《しこう》にあう食物を発見できるのも、こんな庶民的な店である。
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