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食生活を探検する13

时间: 2020-04-21    进入日语论坛
核心提示:ウギンバの一日 山犬の遠吠えのようなヨーデルが谷にこだまする。それに答えて、むこうの谷からヨーデルの返事がかえってくる。
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ウギンバの一日

 山犬の遠吠えのようなヨーデルが谷にこだまする。それに答えて、むこうの谷からヨーデルの返事がかえってくる。モニ族たちの朝のあいさつだ。朝六時、ウギンバの谷の空は白みはじめた。家の炉の火ももえさしになり、ときとして気温は十度近くまで低下する夜明け、人びとは寒さにこごえながら起きあがり、炉に太い薪をくべる。谷間に散在する家々の屋根から、煙がたちのぼりはじめる。
モニ族の家庭では、夜間厳重に割板で仕切っていた男の部屋と女の部屋の境の戸口がはずされて、女、子供たちが男の部屋の炉ばたに集まる。主婦は、夜間女の部屋に寝かせていたブタを戸外に追いだす仕事にとりかかる。新たにくべた炉の丸木から出た煙に目をしょぼつかせながら、一家じゅうが炉ばたにすわりこむ。煙出しの設備がない家屋形式なので、煙は家じゅうに充満し、壁や屋根の隙間から逃げてゆく。前夜の雨でぬれた屋根全体が白い水蒸気でつつまれる。
炉の熱い灰のなかに、前日掘ってきたサツマイモをくべる。イモの焼けるのを待ちきれない子供たちに、主人は壁板の隙間にたくわえていた秘蔵のカエルの干物をとりだして火にあぶって渡してやる。思いがけないごちそうにありついて、子供たちは歓声をあげる。主人は、乾燥したタバコの葉をもみほぐして、パンダナスの枯葉に巻きこみ、朝の一服をする。ただし、かれらのタバコのくわえかたは独特だ。ハーモニカをくわえるようなやりかたで、タバコを横にしてすうのだ。
木を折り曲げてつくった大きなピンセット状の火ばしで熱いヤキイモを灰のなかからとりだし、主人が家族の全員に分配する。このとき、いちばんたべざかりの少年少女に最も多い量が渡される。その場で全部たべてしまう者、口をつけずに自分の編袋のなかにしまいこむ者など、同じ家族でも、てんでんばらばらだ。定期的な食事の時間というものは、モニ族、ダニ族ともに、午後に一度あるきりだ。その他の食事は個人的なものである。自分の編袋のなかにしまいこんだヤキイモを、腹の空いたときに勝手にたべる。または、腹がへったら家へもどって、自分のたべたいだけサツマイモを炉にくべるか、畑で石むし料理をするのだ。
七、八歳以上の部落のすべての男性が、一つの家屋に合宿している西部ダニ族の「男の家」では、朝六時頃になると寝室である二階の炉の火を一階の炉へうつす。するとヨシズばりの床のしたから二階へ煙がもうもうとのぼってくる。これでは人間の燻製になってしまう。いやおうなしに、朝寝をきめこんでいた男たちも、階下へおりてきて、すべての男たちが、ひとつの炉をかこむ。
もちろん、朝起きたのち洗面をすることはない。わたしたちの会った山地パプアの諸部族は身体を洗う習慣を持たないばかりか、水で身体を洗うことをもいやがるように思える。
七時すぎ、深い谷のうえにようやく太陽が顔を出す。「男の家」のまわりの広場に、部落のダニ族の全員が集まる。子供たちも母親に手をひかれたり、幼児は母親の髪をしっかりとつかんで肩車をしてもらって、人びとを見下ろしながら広場へやってくる。広場に石灰岩の露頭したところが三カ所ある。これが、ダニ族のベンチだ。早く家を出たものがこれを占領して日なたぼっこを楽しんでいる。母親のシラミとりをする子供、編物をする男女、矢づくりをする男、パンダナスの葉をぬいあわせて、雨合羽をつくる者。
モニ族も、ダニ族も、モニ語でゴサガと呼ばれるペニスケースをつけている。オチンチンにかぶせたヒョウタン一本が紳士服。女性は短い腰ミノひとつのトップレス姿だ。
高地といえども、熱帯の太陽ははげしい。ぬれた草や泥たまりから水蒸気がのぼってゆく。谷間に太陽がのぼってから一時間もすると、人びとは日なたぼっこをよして、木蔭に集まるようになる。
八時頃、モニ族はてんでんばらばらに自分たちの家族の畑へ出かける。「男の家」を中核とした団体生活をおくるダニ族は部落の広場でのだんらんの時が長く、畑へおみこしをあげるのは九時頃となる。女たちは、今日収穫する作物を入れるための大きな編袋を頭から背にぶらさげる。そのほかに、骨でつくった針、ナイフ、パンダナス製の雨合羽、クシ、首飾りや鼻飾りなど、こまごました全財産をいっさいつめこんだ編袋をもうひとつぶらさげる。赤ん坊も、編袋のなかに入れて運ばれる。編袋のなかにブナに似た木の葉をいっぱいに敷きつめ、そのうえに赤ん坊をのせる。よごれたら、オシメを洗うかわりに編袋のなかの葉を新しいものと交換するのだ。
畑へ行くときの女のいでたちのもうひとつは、長さ一メートル前後の女の掘り棒だ。除草、イモ掘り、植えつけなどの農作業が掘り棒一本でなされる。両端のとがった女の掘り棒は、いざという場合には、女の護身用の武器としても使用されるという。
一端のみがとがった二メートルにおよぶ開墾用掘り棒やオール状をした盛土用の掘り棒は、男の唯一の農具であるが、これは畑に放置されている。そのかわりに、男は畑へ行く時でも、斧と弓矢を手放さない。
南側の谷にあるダニ族の畑から歌声が風にのって部落まで聞えてくる。新しく、ウギンバ部落へ移住してきた男の家族のために、数人の男が協力して休閑地となっていた草地を畑にもどしているのだ。作業をしながら歌う耕作の歌は、みごとな男声三部合唱となっている。
南側の谷のダニ族の畑は、一つの柵でかこまれた農場的な景観の整然としたものである。この一つの柵のなかの畑の一枚一枚が所有者別になっている。しかし、畑の柵の修理、開墾、灌漑用の溝つくりなど、男の作業は、すべて部落の男性たちの共同作業によっておこなわれる。植えつけ、除草、収穫などは女の仕事である。畑をつくるまでが、男の仕事であり、作物に関する仕事は女にすべてまかせられている。女たちは、共同作業をせずに、夫から割り当てられた畑で黙々と働く。
北側の谷の斜面にあるダニ族の畑は、各戸別に柵をめぐらした家族単位の性格のこい畑である。ここでは、各戸単位の労働力による仕事がなされる。北側の谷の畑では、男たちが共同作業をすることがない。この畑ですごす時間が、ダニ族の家族に水入らずの時間を提供する。ダニ族、モニ族ともに、性行為は昼間、畑のうらの森林のなかでおこなわれる。夫婦ともに、畑から樹間に消えてゆくのだ。
午後一時頃、気温は二十五度近い。日なたの斜面の草木は乾ききっている。モニ族の男が、山を焼いている。青い煙が谷にのぼり、山頂へ這いあがってゆく焔の舌を追って、大きな木の枝をふりまわして、飛び火をふせぐ男の姿が見えかくれする。
南側の斜面から、原始林の大木を切り倒しているダニ族の男たちのふるう斧のかわいた音がこだまする。ウギンバ部落は、現在膨張しつつある。ダニ族の人口がふえつつあるのが、その原因だ。大木を切り倒したあと、ここも焼畑とされるだろう。
すべての人びとが、昼間じゅう畑で働いているわけではない。途中で家に引きかえして、ヤキイモをつくる者、畑のすみにしつらえた穴で、石むし料理をつくる者、畑へも出ずに、一日じゅう部落のなかをぶらぶらしたり、編物をする男。また、ここ一週間標高四千メートルのプラトーへ木登りカンガルーの狩に出かけている者や、ホメヨへ塩の交易に出かけている男など。
十歳くらいから子供たちも、畑仕事の手助けをはじめる。部落で遊んでいる男の子たちの一番の遊戯は、なんといっても小さな丸木弓をひくことだ。未来の戦士たちの遊びに女の子も加わって、弓矢あそびをする。また、ラン科植物の茎で文様をつくる遊びもある。
三時頃になると、ダニ族の部落でぶらぶらしていた男や子供の姿が消える。ケマブー川南岸の川原から立ちのぼる煙をめざして、ウギンバ部落のダニ族のすべての成員が集まってゆく。畑からやってくる女たちは、背にサツマイモ、タロイモ、サツマイモの葉、ササゲなどがはち切れんばかりにつめこまれた重い編袋を負って道をいそぐ。川原のダニ族の共同炊事場には、直径一メートル前後、深さ五十センチの穴が数個掘られている。ここに、野草、イモ類を入れ、かたわらの焚火のなかで熱した焼石を何個ものせたうえで、穴のうえにザルと呼ぶユリ科植物の大きな葉をかぶせて、うえに土をかける。すると穴のなかで、野草がむし焼きになる。この石むし料理の材料には、女たちがその日の収穫物を提供しあう。
モニ族は、畑から自分の家に帰り、各戸ごとに石むし料理をする。この場合には、屋外に穴をほることをせずに、屋内で樹皮製の石むし料理用のワクを使用する場合が多い。
幅二十センチくらいの樹皮を二重に巻いて、直径三十〜四十センチのワクをつくる。このワクのなかに「ザル」の葉をしきつめて、野菜、焼石を入れたうえを、さらにザルの葉で包んで石むし料理をする。
モニ族、ダニ族を通じて、調味料は塩だけである。ウギンバの塩は、西のホメヨから交易によってもたらされる。ホメヨには塩水の湧く泉がある。この泉にツル草の束を一昼夜つけておく。塩水のしみこんだツル草を薪といっしょに焼くと、灰のなかに塩の結晶がのこる。これを指でつまんで集め、水をそそいで、小石でもってつきかためる。すると灰と消炭まじりで、黒っぽい色をした石のような塩の固まりができる。これがニューギニア高地人のあいだでもっとも珍重される交易物資のひとつ、ホメヨの塩だ。
塩は貴重品であり、ふだんの食事にはつかわない。ときどき、できあがった石むし料理の野菜の葉のうえに、もったいなさそうにひとつまみふりかけるだけである。
四時頃になると、そろそろ空が雨雲でおおわれはじめる。これから日暮までが、モニ族にとっては訪問の時間である。モニ族の近所づきあいは、ふつう夕方に行なわれる。共同生活をいとなむダニ族の男たちにとっては、夕方は自分の妻子のいる女の家を訪ねて、家族と語りあうときである。
日没前の、女の重要な仕事は、日中放し飼いにしていたブタを、女の部屋あるいは女の家に入れることである。むずかるブタを追いたてたり、あるいはかなり大きなブタでも肩にかつぎあげて、女は自分の部屋にしつらえたブタの寝床に入れる。
日没後は、ダニ族、モニ族ともに遠出をすることを極度にいやがる。斜面の細道は夜間危険だし、それにもまして、モニ語でトネとよばれる妖怪、死霊のたぐいに暗闇のなかで遭遇するおそれがある。
日没後、モニ族の家では家族が男の部屋の炉ばたでひっそりとしただんらんの時をすごす。夕方やってきた近所の男が、そのまま泊っていくときもある。
ダニ族では、日没後のひとときは男たちが男の家の一階の炉ばたに集まって談笑している。そのうち、七時頃になると、女の家から女たちが子供をひきつれて、男の家へ集まってくる。これから、帰って寝るまでは、部落じゅうの女の家は、からっぽになる。交易の旅の思い出話や、男たちの自慢話がでるのもこのときであるし、男女が一緒になって合唱に興じたりする。
家族だけで夜をすごすモニ族は、ダニ族にくらべて寝る時間が早い。八時頃になると、女の部屋の炉に火が入れられ、男の部屋との境界がとざされる。寝るといっても、夜具は全くない。パンダナス、あるいは樹皮製の堅いマットのうえに裸同然のかっこうで横になるだけだ。
九時頃になると、|松明《たいまつ》を手にして、ダニ族の女たちが男の家から出てゆく。男たちは二階の寝室の炉に火をうつして眠りにつく。これから、屋外はコウモリと妖怪のうろつきまわる世界となる。たいてい、この頃になると冷たい雨が降りだして夜半までつづく。
西ニューギニアの高地人の主食は、サツマイモだ。サツマイモの葉も石むし料理の重要な材料となる。ほかに、ウギンバの畑で栽培している植物には、タロイモ、サトウキビ、バナナ(高地なので出来は悪い)、ヒョウタン、ショウガ、ササゲ、ラッカセイがある。ほかに、野生植物で食用にされるものが約二十種ある。そのなかで、われわれになじみ深いものをあげると、まず、ホオズキがある。ホオズキの実は生のままたべる。ホオズキの葉は石むし料理の材料とされる。キノコは生でたべたり、石むし料理にされる。ジュズダマは乾燥したものを生でたべる。わたしは観察していないが、ジュズダマを炉にくべて焼いてもたべるのではないかと思われる。セリ、ナズナは、石むし料理にすると、特有のにおいでわたしたち日本人にはなつかしい味だ。野イチゴもある。
家畜はブタだけ。ニューギニア島が動物分布上ウェーバー線の東側、オーストラリア区に属するため、狩猟動物の種類はきわめて少ない。キノボリカンガルー、ヒクイドリ、あらゆる鳥類、野ネズミなどが狩の対象になる。大動物のすくないこと、弓矢の有効射程範囲が十メートルくらいであり、毒矢の使用の知られていないことなどが原因して、狩はあまりさかんではない。狩猟は、肉を得るというよりは、身体装飾品に使う毛皮や羽根をとるためという意味あいが強いようである。狩は、生業ではなく、男のスポーツである。
ほかに動物性蛋白質としては、カエル、ハチの巣とハチの幼虫がある。ハチの巣は、煙でいぶしてハチを追いはらってとる。カミキリ虫の幼虫や、ゴキブリを火で焼いてたべることもある。
魚はいない。
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