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ユーモアの鎖国39

时间: 2020-04-24    进入日语论坛
核心提示:海辺ふるさとは海を蒲団《ふとん》のように着ていた。 波打ち際《ぎわ》から顔を出して女と男が寝ていた。 ふとんは静かに村の
(单词翻译:双击或拖选)
海辺

ふるさとは
海を蒲団《ふとん》のように着ていた。
 波打ち際《ぎわ》から顔を出して
女と男が寝ていた。
 ふとんは静かに村の姿をつつみ
村をいこわせ
あるときは激しく波立ち乱れた。
 村は海から起きてきた。
 小高い山に登ると
海の裾は入江の外にひろがり
またその向こうにつづき
巨大な一枚のふとんが
人の暮しをおし包んでいるのが見えた。
 村があり
町があり
都がある
と地図に書かれていたが、
 ふとんの衿から
顔を出しているのは
みんな男と女のふたつだけだった。
 祖父の姉弟たちは辞世遊びが好きでした。オムカエがくるまでに私の歌をひとつ。そんな気風の古い村が、海のほとりにありました。
こんど、九年前に出した詩集のあと、やっと二冊目を出したわけですが、私のブッキラボウな詩を読んで、
「ムカシの人の歌のほうが、ええようだなあ」
と磊落《らいらく》に笑う、老人たちの声がききたいと思います。
先日、ある会合の席で、前に坐った男性から「石垣さんですか? あなたは石垣さんですね」と声をかけられました。
「古い話ですが、戦地でこんな(と両手の人差指と親指で四角をつくり)ちいさい『くれなゐ』という本に載っている、あなたの詩を読みました」
私は指でつくった四角が解かれると、びっくりしてその人の、こんどは丸い顔の中を目でさぐりました。「僕は小沢です」
すると一枚の写真の中から、豆粒ほどの面影が近づいてきて、目の前の人と重なりました。
「今でも持っています。あの本」
それは、私が投稿していた雑誌の版元が出した、戦地の兵士に送る慰問袋用の小冊子のことでした。
戦地と、銃後と呼ばれた日本内地を結んだ慰問袋の縁で、私はその人と写真のやりとりまでしたのでしょうか? それとも詩の縁から慰問袋を送ったのでしょうか? すっかり忘れてしまったそのこと。その短い詩を思い出すことにします。
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