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酒を愛する男の酒43

时间: 2020-05-25    进入日语论坛
核心提示:ざんざらまこも高見順さんは「婦人画報」に六年つづけて連載ものを書いてくださった。長篇小説『花自ら教へあり』がはじまりで、
(单词翻译:双击或拖选)
ざんざらまこも

高見順さんは「婦人画報」に六年つづけて連載ものを書いてくださった。長篇小説『花自ら教へあり』がはじまりで、その次の年から『世界恋愛名詩選』『私の好きな愛の詩十二篇』『世界の詩人十二選』『世界の女流詩人十二人集』と四年連続で、翻訳詩をいただくことができた。しかもその詩には飾り絵として印象派から現存のピカソまで、泰西画家のデッサンを添えることにした。だから四十八枚のデッサンを選んだことになる。そのデッサンも自分で全部、詩に合わせて選んで、克明な解説も書いて下さった。
次に『暮らしの中の美しさ』というタイトルで、私たちの身近にある、ともすれば見すごしてしまうような美についてのエッセイを十二回。これはカメラの秋山庄太郎さんも参加して、三人で関西、東北、北陸路など、美を求めて出かけていったものである。
こんな具合だから、月の何日間かは高見さんと一緒に過すことが多くなった。うちあわせといっては飲み、原稿ができたといっては飲んだ。どうも原稿が書けない、といって飲むこともあった。
そんなある夜、銀座から始まって、その頃は新宿にあった「和」へ行った。高見さんといちばん奥のところで飲んでいると、誰かが三曲百円を頼んで、歌が※[#歌記号、unicode303d]うれしがらせて、泣かせて、消えた……というのになり、私たちは話しながら、実は片方の耳で歌をきいていたのである。
歌が「ざんざらまこも」の件《くだ》りになった。
「ざんざらまこも?」
「|まこも《ヽヽヽ》が|ざんざら《ヽヽヽヽ》なんでしょう。|まこも《ヽヽヽ》って、水辺の草で葦《あし》に似ている……」
「アシ、難波の葦は、伊勢の浜荻《はまおぎ》? ああ、あのたぐいネ。じゃあ、|ざんざら《ヽヽヽヽ》はなんだろう?」
「波かな? それも舟がつくった波で、|まこも《ヽヽヽ》が動くという……」
「ホッ、けだし名解説という……」
「その、|ざんざら《ヽヽヽヽ》波に揺れている、|まこも《ヽヽヽ》、その|まこも《ヽヽヽ》のようなこの私、この気持……」
「ホントかね、ざんざらまこもネ」
それからというものは、
「締切りですよ、どうでしょう?」
と電話すると、
「ゴメンゴメン。それが、ざんざらまこもでね」
という具合になった。ことこころざしに反すること、まことに遺憾であること、ないしはこうした風情が、すべて「ざんざらまこも」になった。略して「ざんざら」ということもあった。
「暮らしの中の美しさ」をたずねて、三島に行ったことがある。「水」というテーマだった。富士の雪が地下水となって、とうとうと三島を走り、沼津にぬけるときいたからである。訪ねてみると、三島の水は美しかった。富士から流れでた美しい水はいくつかの近代企業の工業用水となり、日本庭園の水になっていた。仕事が終って高見さんが提案した。
「ここまで来たんだから、一高時代の友人の中川君のところによってみたいナ。龍沢寺《りゆうたくじ》という禅寺の住職をしているんだけど、いい人ですよ」
私たちは龍沢寺をたずねた。山門から本堂まで、杉木立のある大きな寺だった。あいにく住職は不在であった。その住職にお眼にかかったのは、高見さんの臨終の時であった。私が病室にかけつけた時、主治医が高見さんの胸に聴診器をあて、二名の医者がその後にひかえていた。そしてベッドの右側の枕辺には、法衣を着た高僧と思われる人が、左手で高見さんの右の掌《たなごころ》に軽く触れ、合掌して経文を低い声で唱えていた。その人が三島龍沢寺の住職中川宗淵さんであった。
そこにはガンと対決して一歩もひかなかった高見さんが横たわっていた。呼吸は七回大きく、そして三回弱くくり返されていた。
「ガンのヤツ、ぼくのからだをむちゃくちゃに喰い荒したけど、さすがのガンもぼくの魂だけには喰いつけないサ」といった高見さんがいた。壮烈であった。高見さんは立派だ。
私は三島の取材旅行を思い出していた。さっそうとしていたあの頃の高見さんを。
龍沢寺を出て、とにかくひなびて、どうにもならないような旅館《はたご》にとまろうではないか、ということになった。県道でタクシーをひろい、
「田舎の旅館に案内してほしい」
といったら、運転手は変な顔をして車をヤケにとばした。なるほど田舎道になった。ちょっと心細くなってきた。しかし三人は言い出した手前、黙っていると、少しばかり家並みが現われて畑毛《はたけ》温泉だという。
運転手が案内した旅館は注文通りの田舎の旅館で、それも田んぼの真中にあった。通された部屋のガラス戸を開けると、もうそこには青田がそよぎ、夜になるとカエルがないた。カエルは縁の下でもないた。
先日、秋山庄太郎さんにあったら、彼はポツンといった。
「畑毛温泉でね、『丹羽(文雄)君は出発点からおふくろのことを書いた。書けたんだよナ。ぼくは書けなかった。庄ちゃん、君にはわかるだろう?』って高見ちゃんが言った言葉、思い出すな」
その晩はむろん電話はかからず、銀座の夜のようにハシゴはできず、いろんな人にあったり、わかれたり、ホステスのことを気にしたりしないから、自然、話に熱が入った。そういえば給仕にきた女中さんも、酒を運ぶだけで、早々にひきあげていった。
きょう見てきた水の美しさ、樹木の美しさ……この樹木については、高見さんは�樹木派�の詩人だけに熱心だった。私もうるさい方である。秋山さんは木の話になると憮然《ぶぜん》として、実のなる木、つまり果物の話にもっていこうと努力した。
そこで果物の話になる。話題は何でも構わないのである。ちかごろ果物は、デカければいいという堕落ぶりを三人でなげいた。
「酸味のない、やたらにデカイ甘いばっかりのリンゴなんて、リンゴじゃない。イチゴもバカでかくて、相撲取りの手みたいじゃねェか」
「イチゴといえば、子供の頃、野原にヘビイチゴというのがあったな。いまどきの子供はあれをみてイチゴに似ているとは思わないだろう」
「ちょっと待ってくれたまえ。ヘビイチゴは正しくはヤブヘビイチゴというんだそうだ」
といった具合で、あまりヤブをつついてヘビを出さないように、お互いに自戒しよう、などと殊勝になったりした。
一時頃、秋山さんと私は風呂に入った。高見さんは、
「ヤダよ、はずかしいよ、一緒に入らないよ」
というのである。
秋山さんと私は、やや肥満型であるから、アメリカンファーマシーのパンツをもっぱら買って愛用していた。秋山さんのはピンク、私のは派手なストライプ、そんなのをはいているやつとは、はずかしいという。
仕方がないので二人して夜半の湯ぶねにつかっていると、誰かが着替え室に入ってきた。私たちの他に客がいないから、テッキリ高見さんだと思っていたら、宿の女将《おかみ》であった。女将は悠然と入ってきて、私たちと並んで湯ぶねにつかり、
「男の友達っていいもんですね。も一人おつれさんは、お休みになったんですか?」
というところへ、
※[#歌記号、unicode303d]ざんざらまこも——
という歌声がして、風呂場のガラス戸があいた。先生は私たちと並んで女の人が入っているので、
「ヒエッ」
と悲鳴をあげてガラス戸をピシャリと閉めた。そしてガラス戸の向うから、
「ざんざらまこもだよ、ほんとに。お先に寝ますよ」
高見さんのパンツはラクダ色のメリヤス製で、紐《ひも》をいちいちしめたりほどいたりする、昔風のあれであった。
その高見順さんも、もうおられない。ざんざらまこもである。
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