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千里眼154

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示: 一尺玉ノウレッジ出版の油谷尊之社長は、でっぷりと太った身体をパイプ椅子にあずけて天井を仰いだ。本社の応接室のソファが恋
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 一尺玉

ノウレッジ出版の油谷尊之社長は、でっぷりと太った身体をパイプ椅子にあずけて天井を仰いだ。
本社の応接室のソファが恋しい。ただ、この社運を託した仕事を無事見届けるまでは、居心地の悪い環境でも我慢せねばなるまい。
隅田川沿いの木造家屋、築四十年以上は経過しているとおぼしき老朽化の激しい古民家だった。下町には、こういう家がよくある。誰も買い手のいない物件を購入したのは、きょうという日の恰好《かつこう》の隠れ家として用いるためだった。
がらんとした板張りの部屋に、社員たちがあわただしく出入りしている。カメラマンたちはすでに出払い、居残っているのは計画の核となるスタッフばかりだ。
週刊インシデント編集部の野寺敏文が、緊張の面持ちで直径三十センチほどのカーキいろの球体を運んできた。重量はそれほどでもないようだが、慎重にテーブルに置く。
「それか?」と油谷はきいた。
「ええ」野寺は額の汗をぬぐいながらうなずいた。「一尺玉、つまり十号玉ってやつでして。打ち上げ後、上空でひらく花火の直径は二百八十メートルにも及ぶんです」
「高くついたのか?」
「とんでもない。花火ってのは、世間が思っているほど高くないんです。この一尺玉で六万円ぐらいですよ。費用がかかるのは打ち上げのほうです」
「そっちは大会のほうがお膳立てしてくれてるわけだ。で、細工のほうは済んでるのか?」
「当然です。星に使われる石膏《せつこう》の代わりに本物の小石を無数に入れてあります。黒色火薬の発射薬を取り除いて、割薬のみとし、導火線も短くなってます。これで火をつけたとたん、上空に飛ぶことなく爆発して、一帯に小石を飛び散らせるわけです。クラスター爆弾並みの殺傷力ですよ」
「爆風も吹き荒れるのか?」
「半径三百メートル圏内は人であれ家屋であれ、跡形もなく木端|微塵《みじん》でしょうね。史上最悪の花火事故ですよ」
「事故か……。飛び散った小石が疑われなきゃいいがな」
「だいじょうぶです」野寺はにやりとした。「隅田川の河川敷で拾った石を使ってますから。一尺玉に細工が施されていたなんて、誰も想像がつきませんよ」
ふっ。思わず笑いが漏れる。油谷はいった。「悪知恵の働くやつだ」
「明日の創刊号で、代々木公園のフリーマーケットで爆発物の取り引きがあったことや、その男の上着が東京湾に浮いていたことが記事になり、話題を集めます。実際に目撃した人々の証言もあいまって部数が伸びたところで、たぶん警察がうちに事情を聞きに来るでしょう」
「事情聴取を受けたところで、それも記事にし、さんざん引っ張った挙句、当局が事故と片付けて幕になる。六週で一千万部は堅いな」
「それ以上ですよ」野寺は一尺玉に手を伸ばした。「じゃ、運びます」
「頼む。くれぐれも慎重にな」
油谷は扇子で首すじを扇《あお》いだ。この暑さはどうにもならん。かといって、こんな古家に冷房の室外機を置いたのでは目立つ。計画は慎重を期さねばならない。
ふと、自分の覚悟がどれほどのものか気になり、みずからに問いかけてみる。罪悪感はあるか。
ない。皆無に等しい、そういいきれる。ここまで私を追い詰めたのは、せこくて世知辛い日本の出版界の実情だ。私に非があるわけではない。
『夢があるなら』は一年以上にわたり多くの金を稼がせてくれたが、そろそろ収益性にも陰りが出始めた。硫化アリル混合インクの効力の持続には限度があるし、あのいまいましい新古書店チェーンなるものに本が出回るころには、終盤のページを開いたからといって涙腺《るいせん》が刺激されることもなくなる。よって、さっぱり泣けない本という悪評が広まってしまう。
大手出版社の部長職を辞してまで新しい版元を設立した立場上、ビジネス面で敗北を喫するわけにはいかない。それで売り上げに期待できる写真週刊誌の創刊をきめた。そこには目玉となるスクープが必要だ。それも、インターネット時代の情報の早さに負けないニュース性を含んでいなければならない。
隅田川花火大会の大惨事、その背後に潜むテロ疑惑。まさしく創刊号を飾るにうってつけの記事だ。すでに二百万部の印刷を終え、全国の雑誌流通センターに運送されている。
明朝、全国民は衝撃を受けるだろう。
だが一方で、きょうの工作がうまくいかなかったとき、悲惨な状況が待っている。花火大会が無事に閉幕したとあっては、雑誌記事は紙くず同然だ。『夢があるなら』の収益をすべてつぎこんでいる以上、雑誌が失敗すればノウレッジ出版に未来はない。
「野寺」油谷はきいた。「だいじょうぶだろうな? 不発に終わるなんてことはないだろうな?」
「ご心配なく」野寺は一尺玉を黒革のスポーツバッグにおさめながらいった。「未来は雑誌にある通りですよ。よし、運べ」
屈強そうな身体つきの男たちがスポーツバッグを手に、勝手口に向かう。知人の暴力団員から適当な人材を見繕ってもらい、雇い入れていた。万が一、いざこざがあったとしても、あの連中なら頼りになる。
「社長」野寺が時計を見た。「七時をまわりました。もう外は暗いですよ。行きましょう」
「そうだな」油谷は肥満しきった身体を椅子から起きあがらせた。「早く行かんと。この辺りは焼け野原だからな」
笑いながら玄関に向かう、そのときだった。
勝手口のほうで騒々しい音がした。次いで、男の悲鳴があがる。古家がきしみ、砂埃《すなぼこり》が舞った。
板張りの床に、スポーツバッグを運んでいた男が背中から叩《たた》きつけられた。宙に放りだされたバッグを、片手で受け取った女がいる。
油谷はその女を見つめて、ぎょっとした。
菖蒲町の製本所の防犯カメラに映っていた女。デニムの上下を身につけた、すらりとしたボディラインの美人が、冷ややかな目でこちらを見つめていた。
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