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千里眼215

时间: 2020-05-28    进入日语论坛
核心提示:悪しき平等 夜空に星はなかった。暑い雲に覆われ、雨がぱらつきだしていた。美由紀は�待機所�を飛びだして、外にでた。くぐも
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悪しき平等

 夜空に星はなかった。暑い雲に覆われ、雨がぱらつきだしていた。
美由紀は�待機所�を飛びだして、外にでた。くぐもったスピーカー音声がきこえる。校舎からだ。菊池が外の世界に向けてメッセージを発しているに相違ない。
報道関係もあわただしく動きだした。中継車から降り立ったスタッフがマイクで声を拾おうとしている。リポーターがカメラの前で実況を開始した。ただいま、校内からなんらかのアナウンスがなされています。
美由紀は聞き耳を立てた。判然としない声が、しだいに明瞭《めいりよう》に感じられてくる。
「……を要求する」菊池の声が響きわたる。「繰り返し、日本国に依頼申しあげる。わが氏神高校国の国民一名が重傷を負った。具体的には、階段から転落する重大な事故によるものであるが、わが国はこれを治癒する医療機関を持たない。よって人道的立場から、この怪我人を貴国に引き渡し、適切なる処置をお願いしたい。いまから三十七分後の午後七時ちょうどに、校舎裏の北門にて、貴国の使節団と面会する準備に入る。怪我人を受理する最低限の人員のみを派遣していただきたい。それ以外の強制力は、わが国への威嚇行為とみなし……」
近くで中志津が私服警官らに怒鳴っていた。接触を求めてきたぞ。ただちに人員を集めろ。白衣を着て、医者にみえるように工夫して、校内に……。
「まってください」美由紀は中志津にいった。「向こうの弱みにつけこんで侵入するつもりですか。それはどうかと思います」
中志津は面食らった顔でこちらを見た。「あのう……岬先生。どういうことですか。なにかまずいことでも?」
「生徒たちが覚悟をきめて籠城《ろうじよう》し、こちらは静観しつつも対話を求めてきました。相手がようやくこちらを頼ってきたというのですから、こちらは誠意のみをしめすべきじゃないでしょうか」
「なにを馬鹿な……。これは籠城事件ですよ。われわれ警察としては、隙を突いて人質を救う機会を逃すわけにはいきません」
「誰が人質で誰が主犯グループか、まだ生徒全員の立場がすべてあきらかになったわけじゃないでしょう。現段階では救出活動は無理と思いますけど」
「それでも、内情を調べるには好都合です」
「調べるだけなら誰にでもできます。わたしなら、相手の本心も見抜けるし……」
「捜査協力していただけるのはありがたいんですが、岬先生。ここはわれわれの仕事で……」
そのとき、口論を聞きつけたらしく舎利弗が駆け寄ってきた。
「美由紀。どうかしたのかい?」
「わたし、これを救出の突破口にすべきではないと思うの。生徒たちはあんなに頑《かたく》なに独立にこだわって、大人たちの支援をいっさい受けずに自活できるところを見せつけようとしてきた。その生徒たちがこちらを頼ってきた。よほど口惜《くや》しい思いをしているに違いないわ。いまは向こうの立場を尊重すべきよ。そうでなきゃ対話は生まれない」
中志津は顔をしかめていった。「冷静になってくださいよ。籠城の主犯格は酸素欠乏症に端を発する心神喪失状態にあるんです。さんざんわれわれを愚弄《ぐろう》し、翻弄《ほんろう》してきた。内部では暴力行為もおこなわれている。異常事態はまず打開し、生徒ら全員を安全な状況へと移し替えてから、じっくりと真相の解明に取り組むべきです。違いますか?」
「生徒たちは思いもよらない手段をとり、わたしたちの目を惹《ひ》きつけた。彼らにとっては、行動することがわたしたちへの対話だったのかも」
「言論の自由がある国で、人質をとって籠城することが対話のための手段だなどと、そんな話が通ると思いますか。それこそ生徒たちのわがままというものだ」
「いいえ!」美由紀はあくまで反論した。「実力行使こそが子供たちにとって唯一の対話法だったのよ。いつものらりくらりと問題から目をそむけてばかりの大人たちに対し、子供たちは発言の自由など感じてはいなかった。それで、どうあってもわたしたちが逃れられない状況をつくりだしてきた。子供たちはわたしたちに主張をしたがっているのよ。対話を重んじればこそ、彼らの作りあげてきたものをただちに壊すべきじゃないわ」
「体育用品倉庫に監禁されてる生徒がいるんですよ! バットでめった打ちにされた者もいる。こんな横暴を対話などとは、ナンセンスの極みだ。だいいち生徒たちは正常じゃないんだぞ」
「いや」と舎利弗がつぶやいた。「生徒たちは異常ではないよ」
「……それはあなたの意見ですか、舎利弗先生? 臨床心理士会は、籠城の主犯格が理性の働きに問題があるという見方をしめしているし、精神医学会も似たような見解を発表している。生徒たちはまさしく異端児です。平和を乱すものであることに変わりはない」
異端。このところ、美由紀の胸にたびたびひっかかる言葉だった。
いつの間にかこの世の中は、個性を尊重せず、平等主義に徹することが美徳とされるようになった、そんなふうに思う。
そのおかげで貧富の差は縮小し、国民総中流意識も復活した。だが、それが本当にいいことなのだろうか。
これが生徒たちの、社会に対する反乱だとしたら……。
美由紀はいった。「中志津さん。体制側に民意が伝わっていないと感じればこそ、大衆は武装蜂起《ぶそうほうき》するものです。つまり生徒たちは、本能ではなく理性に従ってこの状況を選んだ可能性もあるんです」
「やめてください。あなたは元国家公務員だが、規則や規律を無視しがちだという噂は聞き及んでます。社会にはルールがある。そこからはみだしてはならない」
「いいえ。社会の規範から外れているかどうかは、まだわからない。真実はまだ見えていないんです。だから警察関係者が介入すべきではありません。臨床心理士が生徒たちと接触するんです、この肩書きに誓って、わかったことを包み隠さず報告申し上げます。いまのところは、それで充分でしょう?」
「しかし……」中志津は口ごもった。「それは……」
と、ふいに別の男の声が割りこんできた。「私も同行させていただきます」
美由紀は振りかえった。後ろに、背の低いスーツ姿の男が立っていた。年齢は四十代半ばぐらい、見るからに役人気質を漂わせている。
「あなたは?」と美由紀はきいた。
「岐阜県教育委員会、教育総務課の沢渡《さわたり》幸雄《ゆきお》と申します。教職員やPTAを代表し、生徒たちへの説得にあたりたいと思います」
「説得? なにをどう説得するんですか」
「むろん、今回の事態を引き起こしたことへの反省、および謝罪をさせることが急務です」
舎利弗が眉《まゆ》をひそめた。「本気ですか。生徒たちの代表に謝らせることが何よりも先決ですって?」
「ええ、そうです。私たちのみたところ、籠城の主犯格グループは社会への責任感が欠如していて、今回の犯行も甘えが露呈したものと推察されます。なにをやっても大人たちは許してくれる、不満があれば閉じこもり、だだをこねていれば大人たちは要求を聞きいれてくれる。過保護な家庭で育った少年少女らの身勝手な犯行以外のなにものでもないのです。まずは責任の重さを痛感させることです」
「責任感がないですって? そのう、警察の監視によると、菊池君を筆頭に行政庁を名乗る生徒たちは、リーダーシップを発揮してうまく生徒たちの共同生活を取りまとめているようですが。たしかに肯定しきれない権力の強制執行もたびたび目につくが、生徒たちは総じて権力側に反感を抱いていないようすだと聞いてます」
「失礼ですが、あなたのほうこそ事実を認識しておられないようです。この岐阜県立氏神工業高校は、過疎化しつつある周辺地域のなかで、唯一残された公立高校でしてね。近隣の高校が次々と閉鎖されたのは地方財政の悪化によるところが大きいのですが、とにかく半径十キロ圏内の住民にとって、地元の公立高校といえばここしかない。よって、進学校でもないこの高校に、ただ地元だからという理由だけで十数人の飛びぬけて秀でた学力を持つ生徒が存在しています。中学時代に高い偏差値を誇りながら、私立に通うことを選ばなかったり、実家からここ以上に遠く離れた高校に通う気になれなかった生徒たちです。生徒会の役員となり、いま行政庁とやらに名を連ねている生徒たちは、全員がそのごく少数の優等生たちなのです。この意味がわかりますか?」
「いや」と舎利弗はいった。
「彼らを除けば、あとの生徒たちの平均偏差値など三十以下です。進学どころか就職すらも危うい、ニートやフリーター予備軍も大量に抱えています。一部のエリートたちにとって、あとの生徒たちを扇動し従わせることはさほど難しいことではありません」
「どうしてそう言い切れるんです?」
「学力の差を考えれば、当然……」
美由紀はいった。「教育委員会の人のご意見とは思えませんね。この高校の生徒たちの大半は、流されるままに生きるしかないていどの知能の持ち主ってことですか」
沢渡はむっとした。「私が役職にふさわしくない差別的発言を口にした、そのことを大仰に指摘して立場を悪くしようというおつもりなら、考え直されたほうがいいですよ。行政庁とやらでサブリーダー的な存在とされる幡野雪絵の父親は県議会議員であられますが、今回のことでは娘さんに対する同情の余地はないと憤っておられます。主犯格グループの親でさえ、子供たちの突然の行為には戸惑いと不信を禁じえずにいるのです」
「そんな親だから、子供たちは実力行使にでざるをえなかった。違いますか?」
沢渡が、さらなる反論を繰りだす素振りをみせた。
だが、美由紀は片手をあげてそれを制した。「言い争いはあとで。それより、重傷を負ってる生徒がいるのよ。時間どおりに北門に行かないと」
沢渡は心外だという顔をしたが、美由紀はさっさと背を向けて立ち去った。
舎利弗が横に並んで、歩調をあわせてきた。「きみのいうとおりだよ」
「なにが?」
「常々思ってたことだけどね。どうもこの世の中はおかしい。悪しき平等主義がはびこっているみたいだ」
美由紀は黙って歩を進めた。
やはり。わたしの感覚だけではない。社会はいつしか、誤った方向に舵《かじ》をとっている。修正できるのは、それに気づきえた人間だけでしかない。
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