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花の百名山28

时间: 2020-06-26    进入日语论坛
核心提示:田代山  キンコウカ(ユリ科) けわしく苦しい山道をよじのぼってゆくとき、しばしば私は、自分の身を敗残の兵になぞらえる。
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田代山  キンコウカ(ユリ科)  
 
 けわしく苦しい山道をよじのぼってゆくとき、しばしば私は、自分の身を敗残の兵になぞらえる。どうでもゆき通さなければ。少しも早くこの急崖を越えなければ。鋭い眼つきで自分を探し求める敵に追われる思いだけが、磐石のように重いからだをわずかに前進させるのである。
山頂にむかって、急峻な登りがつづく田代山もまた、そのような思いで木の根、岩の根に手をかけ、足をかけして登っていった山であった。
会津の田島に用が出来たとき、近くに登る山はありませんかと聞いて、田代山を教えられた。平家の落人が住みついたという土呂部や栗山の北西に、帝釈山と連なって|聳《そび》え、檜枝岐川と鬼怒川の源流の分水嶺になっている。
田島は会津藩の首都若松を防衛する南の|砦《とりで》とも言うべき位置にあって、江戸と若松をつなぐ街道に沿っている町である。途中で塩原を経る会津東街道と、今市を通る会津西街道にわかれるけれど、そのどちらを車で通っても、浪人塚とか、会津の|戦《いく》さの時の太刀あとなどというようなものが、往時の悲劇を物語るあとをとどめている。彰義隊の敗兵たちも、疲れたからだに鞭打って、田島へ若松へと、この街道を北進したのであろう。
徳川三百年の歴史が、大政奉還という名で新らしく書きかえられるための犠牲として、俊英|松平《まつだいら》|容保《かたもり》を藩主に仰ぐ会津藩に与えられた役割は、婦人や子供たちも巻きぞえにしての悲惨な戦いであった。田島から田代山の麓の湯の花温泉に至る道は、まだ|草葺《くさぶき》屋根の家々が多く、その重い屋根の下に、百年前の、同胞相争った日々の暗い映像が、いろ濃くやきつけられているように見えた。
このあたりは、かつては冬期二メートルを越す大雪のため、陸の孤島と言われたが、いまは道路もよくなり、除雪車も動いて、酪農や植林の経営が進んでいるという。
大正四年七月には民俗学者の柳田国男氏が、田島から私たちと同じく中山峠越えをして、英国の人類学者R・スコット夫妻を伴い、山村の民俗を調査したということが、石川純一郎氏著の『会津館岩村の民俗誌』に書かれている。
三田幸夫氏の「越後銀山平より会津の山旅」という文章の中にも、大正九年七月、|木賊《とくさ》から唐沢峠を越えて湯の花温泉に着き、一泊して田代山に登ったということがしるされている。東北地方の最南地域にあって栃木県に接し、関東経済圏に属しながら、なお多くの古俗を伝えていることが、ひとびとの関心をそそったのであろうか。
宿の前を流れる湯岐川の瀬音に身も心も洗われるような一夜が明けて七時、星力氏の案内で渓流沿いの道を車で登山口まで。
田代という呼び名は湿原のこと、田代山は頂きに高層湿原があるそうだけれど、日光の戦場ヶ原や尾瀬にくらべてどんな眺めであることか。
高層湿原には、森林の下のミズゴケ類がふえて、木々を駆逐してできるものが多いと聞いたが、私はまだこの眼で見たことがない。それを見ぬうちはと、自分で自分に、かけ声をかけてひた登りに登る山腹の傾斜は、三田氏もかなりきついと言っている。
落人ならば、どうでも越えなければならぬと歯をくいしばり、溜息をつく道のかたわらには、ウグイスカグラやタニウツギの薄紅の花、キバナウツギやホサキツツジの薄黄の花、スノキやシラタマノキの白い花が咲いて、一息入れ、二息入れて休みなさいと言わんばかりになぐさめてくれた。三時間近くかかってようやくゆるやかな登りの栂林に|辿《たど》りつき、倒木がやたらに横たわる小さな湿原に出ると、サワランの真紅の花が咲いていた。
いつかの夏、加賀の白山の室堂の裏の草地の中で見つけたことを思い出す。室堂にはハクサンコザクラがいっぱいあって、サワランの赤は目立たなかったが、ここでは一面のミズゴケの中なので、きわだって美しい。しかしそれ以上に美しかったのは、樹林帯を抜けると、いきなり眼の前にひろがった頂上の黄金いろの一面の原であった。南にむかってゆるく傾き、低まったあたりはニッコウキスゲの大群落である。
原の果ては空につづき、七月の真夏の陽光に映えて、空の青さが、群がり咲くキンコウカの花の黄に染まって、緑めいて見える。
この日が私にははじめてのキンコウカとのであいであった。ニワゼキショウに似た細い葉の形も端正に、七、八センチほどの花柄の頭部に、びっしりと|総状《ふさじよう》の花をつけている。
見わたす限りの黄の花房が空にひしめく姿には生命の躍動感が溢れ、何かほっとした思いに、右に会津駒、左に日光連山の紫の山影を見ながら、まん中の木道を歩いていった。
敗れた会津びとの中に、平家の落人の中に、きっとこの山に登りついて、この黄金いろの花の群れに、生きる望みをかきたてられたものがいたにちがいないと思う。戦いのむごさも忘れ、戦いの傷あとのうずきもいやされ、この黄の花の群れの中に身を埋めて、ひろいひろい空を眺めやる。自然がこんなにも美しいなら、もうちょっと、もうちょっと、生きていてみよう。そんなつぶやきを心にくりかえしながら。
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