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花の百名山114

时间: 2020-06-28    进入日语论坛
核心提示:八幡平《はちまんたい》   タテヤマリンドウ・イソツツジ 八幡平と名づけられた広大な火山地形の中には、茶臼岳、|畚《もつ
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八幡平《はちまんたい》
   タテヤマリンドウ・イソツツジ
 
 八幡平と名づけられた広大な火山地形の中には、茶臼岳、|畚《もつこ》岳のような熔岩円頂丘もあり、後生掛温泉は泥火山の不気味さを見せ、玉川、藤七温泉の谷にはまだ硫気をさかんに噴き出している。岩手山、十和田湖等を加えて十和田八幡平国立公園とよばれるが、岩手山本峰の西に、台状火山の姥倉山があり、十年前の夏に、岩手山に登った私は、折からの雨で霧にまかれて標識がよく見えず、姥倉山の一五一七メートルから右折して本峰にゆくのを左折して湯ノ森の一〇四九メートルから松川温泉に下った。おかげで北上川に注ぐ松川の、八幡平と岩手山との間の谷の源流に近く、石沼や青沼、五葉沼などの沼が、アオモリトドマツの樹林のかげを落として川の両側に点在するのを見ることができ、これらの小沼は、かつての噴火口のあとであろうかと思ったりした。
はじめて八幡平にいったのは、大分前の秋の十月に、秋田県の大館市から、宮城県の気仙沼市にゆこうとして、八幡平の北のトロコ温泉に一泊、朝五時に南下して、鹿角市の東から後生掛温泉の下を通り、八幡平アスピーテラインは通らずに、崩壊地形の玉川温泉、新湯のかたわらを過ぎて、稲刈りの真っ最中の生保内を通って、田沢湖で朝食をとった。晴天のこの日は、アオモリトドマツの緑にブナの黄葉が映えて、空の青まで、黄金色にかがやくかと思うばかり。カエデ類の紅葉が美しく渓流の水は澄んで、電車で気仙沼に着いた夜の九時まで、私はこの世ならぬゆたかな色彩と形が、胸いっぱいに溢れているようで陶然とした。十一月には雪が降るとのことで、雪の白に映える眺めはさぞ美しかろうと想像した。
二、三年して乳頭温泉郷の黒湯に泊まり、秋田駒往復、八幡平の畚岳の一五七八メートルに登る計画をたてた。前回と同じ十月の半ば。東京から夜行バスで田沢湖畔で昼食をとり、秋田駒の|女《め》岳・|男《おとこ》岳と駒ケ岳一六三七・四メートルの鞍部にある阿弥陀池まで歩いて、女岳の頂きの東側に、まだ白煙の昇るのを見て満足した。花の多い秋田駒も|流石《さすが》に十月の半ばは、ガンコウランとコケモモの実ばっかりとなっていたが、俄かな突風と共に雨滴がとんで来たとみる間に雪になった。私たちは、黒湯の露天風呂で雪に降られる味も格別とよろこんでいたのだが、翌朝七時出発の空を見上げて暗澹とした。止めどなく止めどなく細かい雪が舞い落ちて来て、一五〇〇メートルの等高線を切ってゆく八幡平はどうしようということになった。乳頭温泉郷は七、八〇〇メートルである。私は「ゆきましょう。雪の八幡平へ」と叫んだ。そして、バスはまた田沢湖畔にもどって、田沢湖に注ぐ玉川の谷を北上。いつかの秋の錦繍の美とちがって、眼に映る限りが八幡平の緑と雪の白という美しさ。秋田県側はあたたかいのか、雪は道路の両側に一〇センチほど。鮮緑のアオモリトドマツと鮮紅のヤマモミジは、雪に洗われてさらに生き生きしている。玉川温泉が雪の中に|濛々《もうもう》たるガスを噴き上げ、後生掛の泥火山は雪で灰褐色にいろどられ、ただただ溜息が出るばかり。畚岳に向かうとまた吹雪になったが、標高差一五〇メートル。全員の中で唯一人途中で引き返したのは、残念ながら私。露天風呂で風邪をひいたらしく、歩きだしたら悪寒戦慄が止まらなかった。
そして四回目の八幡平は、初夏の六月。盛岡のスイス外国宣教会の神父さんたちと、盛岡を朝の六時に出発。源太森の一六〇〇メートルを目ざした。晴天。ときどき曇り。一五〇〇メートル前後をゆくアスピーテラインの道路の両側は、雪掻車に掻きあげられた雪が二メートルくらい積もっていて、標高差一〇〇メートルの源太森は頂きまでズブズブと靴が沈む。雪の少ない秋田県側へと車を走らして大沼のほとりで外に出る。雪は樹間以外はまったく消えていて、小鳥の|囀《さえず》りもにぎやかに、沼のまわりはまずミズバショウ、リュウキンカが山上の早春を告げて色も鮮やかに咲き、イソツツジの群落も、水面のミツガシワも花盛り。道ばたのタテヤマリンドウも大きな|蕾《つぼみ》になっている。八幡平の魅力は、針葉樹、濶葉樹の森と、沼と花と温泉にあると思った。
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