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花の百名山119

时间: 2020-06-28    进入日语论坛
核心提示:栗駒山《くりこまやま》   ムシトリスミレ・クルマユリ どうして一年に二十も三十も山を歩けるかといえば、講演などをたのま
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栗駒山《くりこまやま》
   ムシトリスミレ・クルマユリ
 
 どうして一年に二十も三十も山を歩けるかといえば、講演などをたのまれるたびに、その近くに山はないかと尋ねて、あれば引き受け(なければ場合によってはことわって)、講演の前後に山に登ってくる。近江の三上山など、五〇〇メートル以内なので、登り下りに三時間。午後一時からの講演に午前中の八時から何度も登った。
北海道の帰りに一関のカトリック教会へゆくことになって、故小野忠亮神父にうかがうと、栗駒山へぜひと誘われた。
盛岡の四家カトリック教会のスイス外国宣教会の神父さんたちは、日本で一番好きなのは岩手県、スイスの山々によく似ている風景だからと言われ、東北で一番好きなのは花の多い焼石連峰とも言われた。
しかしその時、焼石の縦走にかける時間がなかったので、日帰りの山歩きとして、栗駒山をえらんだ。それも北の須川温泉から入り、頂上から東栗駒コースを通って、南の樹海ラインに出る一番短いコースで五時間もあれば十分とのこと、イワカガミの多い山ですとうかがったが、イワカガミはよく山で出あうことができるので、何か変わった花に出あいたいと思った。
時は七月。私は前日に北海道での講演をすませて、いつもの山姿、大きなカボチャや夕張メロンを紙袋に下げて、青函連絡船に乗り、グリーンの特別室の札を求めようとすると、改札の切符切りが、指さしてあそこに入れと言う。いってみたら、青森、函館間をいったり来たりする女の行商人の集団部屋であった。とても賑やかで眠れそうもないので、やっぱり一枚の特別室の札をと願うと、駅の窓口氏曰く「おばさん、今度は大分稼いだんだね」。
さて、一ノ関着八時で米川教会の高橋昌神父も一緒に、すぐに山に向かう。車は磐井川の谷についた須川ヘルスラインを通って須川温泉に。左手の山路を少し登ると、小さな板小屋があり、硫黄の匂いがして、板小屋の開いた扉から中をちょっと見ると、床の下に温泉の源があって、そこから熱い湯気がたちのぼるらしく、板の間に|蓙《ござ》を布いて二、三人の老女が浴衣姿でうつ伏せに寝そべりながら、話をしあっていて、ちょっと自分もやってみたくなった。昨夜、連絡船の特別室で、他の客が二人、いつまでも話しあっていて眠りを妨げられ、不足した眠りをここで補いたいと思った。
道は左手に湿原を見ながら登る。ハクサンコザクラのうす紅でなく、花の姿はよく似ているけれど、花の色の白いヒナザクラにはじめて出あう。
ヒナの名にふさわしく小振りである。ヒナザクラの咲く湿原は、絶えず上から水がしたたっている。上に大きな沼でもあるのかしらと思ったのは、北海道の空沼岳に登った時、登る途中の山腹が、湿原のように湿っていたからである。
ムシトリスミレがあります、と先を登ってゆかれた小野神父が言われて近づいてみると、ヤマイやヒメハリイの生えた草原の中に厚手の葉をロゼット状につけて紫のかわいい花が一輪。まさに、「あの声で蛙食うかやホトトギス」の感じで咲いていた。モウセンゴケもそのそばで赤紫の腺毛をひろげていた。ムシトリスミレは、北アルプスの弓折岳で見てから二度目。
湿地の山腹を登りきると忽然と眼の前に、濃い碧色の水をたたえた沼があらわれた。昭和十九年の噴火のさいにできた火口湖だというが、千年も昔からそこにあるような深い神秘的な水の色をしている。頂上の一六二八メートルは、そこから一時間あまり。ブナやカエデ類、新緑の山腹にクルマユリがずっとのび、葉が大きくなっている。クルマユリは東北の山々でよく見かけるが、私はオニユリも葉の形、花の形ともに清楚で好きである。頂上からは早池峰山、鳥海山がはるかに、焼石連峰がすぐ眼の前にゆるやかな稜線を描いていた。
この山は花も多いけれど、私は濶葉樹林が黄紅葉したらどんなに見事であろうか、秋にもまたと思った。
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