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花の百名山195

时间: 2020-06-28    进入日语论坛
核心提示:石鎚山《いしづちさん》   キレンゲショウマ・フガクスズムシソウ そんなにたくさんの山に登っていて、さぞ霊能力がついたで
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石鎚山《いしづちさん》
   キレンゲショウマ・フガクスズムシソウ
 
 そんなにたくさんの山に登っていて、さぞ霊能力がついたでしょうと、日蓮宗の一人の坊さんから、真顔で言われたことがある。秋田書店の『歴史の山100選』は、ほとんど、修験道の山を集めているが、登らないのが十三山だけ。
何の霊力もつかないけれど、明日登る山を、前夜に夢を見て、夢と実際とそっくりという例が幾つかある。新潟の|五頭《ごず》山、四国の石鎚山、鹿児島の高千穂など。石鎚山は、三回登り、一度は雨でスカイラインが崩れて、|面河《おもご》渓谷の国民宿舎の八〇〇メートル地点から、面河川に沿って歩き、途中から昔ながらの石段を二十幾つか登って、雨と霧の中を尾根道に出た。
愛媛大学の小屋のところにチシマザクラの咲いているのを見て私は戻ったが、健脚組は頂上まで。その道は右も左も急勾配の山腹で、雨と霧で、視界は三、四〇メートルぐらい。深い谷の底も、晴れていれば見えるはずの石鎚山の山頂も何も見えず、右手の急崖からは何本も小さな流れが滝となって激しい勢いで流れ落ちて来て、ちょっとおそろしい。その下をくぐり抜けたり、まともに滝を浴びたりで、闘志衰え、頂上はまた今度とあきらめてしまった。谷から吹きあげる風も強く、一人の仲間は傘をさしたまま、ふわっと五メートルほど下の山腹に飛ばされ、太い木の枝に引っかかって這い登ってくるという危うさ。この時の同行は、植物学者の山本四郎氏と神野一郎氏で、紅葉河原ではオモゴウテンナンショウ、ミズタビラコ、ヒカゲツツジ、アケボノツツジなどを教えてもらったが、尾根道では歩くのが精一ぱいであった。足弱組だけで宿舎に戻る途中の川に面した崖に、白いヤマシャクヤクの大群落を見て、こんなのははじめてと思った。頂上についたひとたちが息をはずませて四国第一の高峰石鎚山に登れたよろこびを語るのを聞き、今度こそと二回目は神野夫婦と新居浜から北の登山口の成就社までケーブルを利用したが、三十分ほど歩いて、これもダウン。数日前からの風邪で、抗生物質を飲みすぎて全身がだるい。
そして三回目の夏、スカイラインがなおって、一四九〇メートル地点の土小屋に泊まった。隣の石小屋泊まりの山本氏と神野氏が朝五時に入って来て登りますかという。またもや夜半から台風の前ぶれの通過とかで、激しい吹き降りである。きれぎれの夢に、石鎚神社の真下に太い鎖が出ていてそこへつかまって登る自分の姿を見ていた。ゆきますと答えた。土小屋を出るととたんに強風で吹きとばされそうになり、この智、仁、勇の、三つの神を祭るという山は、長い間修験者だけが登り、今なお、毎年の祭りにはじめの三日間は女人禁制だというから、花が見たいというだけで、敬神の念などない私などは、山の神が近づけてくれないのかもしれないなどと思いつつ、一方でどうしても四つん這いになっても、今日は登ると覚悟をきめた。あと二年で七十歳になる年である。
だんだん明るくなって雨は小止みになり、風だけ強くて、山小屋で買ったビニールの雨衣がずたずたになった。それでも二人の植物学者と同行の山はすばらしく、シラベの南限のシコクシラベの大樹を見上げ、コガクウツギやガクウツギの枝もたわわに咲くのを眺め、はじめて見るキレンゲショウマやミソガワソウの花に歓声をあげた。神野氏がシラベの幹に咲くフガクスズムシソウを見つけたという。望遠鏡をかりて見たが、雨にくもって何やらぽつんと見えるだけ。
コースタイム二時間を三時間半かけてやっと神社の石垣の下の小屋に到着してアメ湯一ぱい。元気が出て神社の石段の前に出てびっくりした。この鎖の太さは夢に見た太さ。いろも夢に見たぬれた鉄いろ。
晴れていれば神社の左肩に、天狗岳一九八二メートルの先峰が見えるはずなのに霧が幕を張っている。山小屋に戻る途中で空が晴れ、いつか通った面河登山道の尾根や堂ケ森、二ノ森の稜線が緑の波を重ねたように連なっていた。
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