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燃えよ剣66

时间: 2020-05-26    进入日语论坛
核心提示:再  会歳三は癇症《かんしよう》な男で、一日のうちで何度か乗馬用の長靴をぬぐう。馬丁の沢忠助が、「あっしに磨かせとくンな
(单词翻译:双击或拖选)
再  会

歳三は癇症《かんしよう》な男で、一日のうちで何度か乗馬用の長靴をぬぐう。
馬丁の沢忠助が、
「あっしに磨かせとくンなさい」
とたのんでも、歳三はきかない。
武具は自分でみがくものだ、といっている。
靴を「武具だ」と心得ているようであった。
その日の午後も、羅紗切《ラシヤぎ》れをもってたんねんにぬぐっていた。
小姓の市村が入ってきて、「大和屋友次郎どのがご面会です」といった。
「通してくれ」
歳三は、脂《あぶら》をすりこんでいる。革に血が滲みこんでいるのが、どうみがいてもとれないのである。
大和屋友次郎というのは、大坂の富商鴻池善右衛門の手代で、函館築島にある鴻池支店の支配人をつとめている。
鴻池屋と新選組との関係は濃い。
結党早々の文久三年の初夏、鴻池の京都店に浪人数人から成る「御用盗」が入ったのを、市中巡察中の近藤、山南、沖田らがみつけ、路上で斬り伏せたのが、縁である。
その後、歳三は近藤らとともに大坂に出張したとき、鴻池から招かれて豪勢な接待をうけた。
このとき、鴻池では隊の制服を寄贈したり、近藤に「虎徹」を贈ったりしている。
さらに鴻池側から、
——支配人を推薦してほしい。
という希望があったほどである。鴻池は治安事情のわるいあの当時、新選組と密接になっておくことで自家の安全を期したのであろう。
歳三が北海道にきてからも、鴻池の厚意はかわらず、大坂から函館店に、「できるだけの御便宜をはからうように」との|さし《ヽヽ》ず《ヽ》がきていたほどである。
友次郎が入ってきた。
紋服、仙台平、まげをつややかに結いあげている。
まだ年は二十七、八で、英語が多少できる。
「しばらく見えなかったようだが」
と、歳三は長靴をはき、友次郎に椅子をあたえた。
「へい、英国汽船の便があったのを幸い、横浜へ行っておりましたので」
「ほう、江戸へも?」
「東京の様子も見てきました。大名屋敷が役所になったり、旗本屋敷に新政府の官員が入ったりして、旧幕時代てのが、だんだん遠い昔のようになってきましたな。世の中が途方もない勢いで動いているようでございます」
「鴻池の商いもいそがしいことだろう」
「なんの、住友などとちがい、大名貸しが多うござんしたからね。薩長土三藩が藩籍を奉還したことはお聞き及びでございましょう。体《てい》よくいえば奉還でございますが、借金もろとも新政府に押しつけてしまったかたちでございましてな、その新政府が、旧幕時代のことは知らんぞ、とおっしゃる。大坂の富商など、五、六軒つぶれるところが出て参りましょう」
友次郎は、官軍の消息も伝えた。かれが帰途、品川から英国船に乗ったとき、品川沖で官軍の軍艦「朝陽」がもうもうと黒煙をはいていた。横浜でのうわさでは、「朝陽」は陸兵の最後の部隊を輸送するという。
「行くさきは青森だな」
歳三は、にがい顔をした。青森に官軍の陸軍がぞくぞくと集結しているのである。
「ところで」
友次郎は、無表情にいった。
「東京から珍客をつれてきております。手前どもの店の奥座敷に逗留していただくことにしました。お名前でございますか、へえ、お雪さまで」
「お雪。——」
歳三は、がたっと立ちあがった。
「うそだろう。たれからその名をきいたのか知らないが、私はその種の冗談がきらいだ」
狼狽している証拠に、靴拭いの羅紗を、チョッキの胸ポケットに入れた。
「おきらいでもどうでも、お雪さまに相違ございませぬ」

五稜郭本営から函館の市街まで、一里あまりある。
歳三は仏式帽の目庇《まびさし》を深くかぶり、鐙《あぶみ》を一字に踏んで鞍の内《うち》を立ち透《すか》しつつ、単騎馬を歩ませた。
(信じられぬことだ)
とおもった。
友次郎のいうところでは、かれが沖田総司の病床を見舞ったとき、総司の口からお雪のことをきいたという。
——ときどき、様子を見てやってほしい。
と、沖田はそういうぐあいに、お雪のことをこの友次郎に頼んだ、というのである。
(総司め、妙なお節介をして死にやがった)
と、歳三は手綱を下げつつ、雲を見上げた。
白銀のように輝いている。
沖田総司の笑顔が浮かんだ。が、すぐ消えた。
この土地の自然は大まかすぎて、故人をおもいだすのには、ふさわしくなかった。
市街地に入り、築島の鴻池屋敷の前で馬からおり、屋敷の小者に手綱をあずけた。
「|かい《ヽヽ》ば《ヽ》をやってくれ」
小者はアイヌとの混血らしい。何を考えているのか、澄んだ大きな眼をもっていた。
友次郎は、歳三を玄関で迎えた。
「やはり、お出でになりましたな」
……歳三は、充血した眼で、友次郎を見た。
昨夜はねむれなかったらしい様子が、顔に出ている。
「このことについては、口数をすくなくしてくれ」
女中が、歳三を別館に案内した。外人を泊めるために建てたのか、ここだけは洋館二階だてになっている。
女中が去った。
歳三は、窓ぎわに寄った。窓の外には、函館港がみえた。内外の汽船が錨をおろしている。
港口には敵艦の侵入をふせぐために縄がはりめぐらされており、回天、蟠竜、千代田形の三艦が入れかわり立ちかわり運転しては、港内をぐるぐるまわっていた。
歳三は、背後に人の気配を感じた。窓の外を見つづけていた。
どういうわけか、素直にふりむけないのである。
「お雪さん?」
といおうとしたが、その声が、口をついて出たときは、まるで別の言葉になっていた。
「あれが弁天崎砲台さ。昼夜、砲兵が詰めている。あれが陥ちるとき、私の一生はおわるのだろう」
背後が、|しん《ヽヽ》とした。
お雪の小さな心臓の音まできこえるようであった。
「来ては、いけなかったでしょうか」
「………」
歳三は、ふりむいた。
まぎれもなくお雪がそこにいる。右眉の上に、糸くずほどの大きさで、火傷の古い|ひき《ヽヽ》つり《ヽヽ》があった。
歳三が、何度かその唇をあてた場所である。
それを見確かめたとき、不覚にも歳三は、ぽろぽろ涙がこぼれた。
「お雪、来たのか」
抱き締めた。火傷のあとに、唇をあてた。
お雪は、|いや《ヽヽ》いや《ヽヽ》をした。以前もこれとそっくりな|しぐ《ヽヽ》さ《ヽ》をお雪がしたのを、歳三はおもいだした。
「つい、来てしまったのです。お約束をやぶって」
とお雪がいった。
「黙っているんだ、しばらく。——」
と、歳三はお雪の唇に自分の唇を押しあてた。
お雪は、夢中で受けた。
いままで、ふたりがしたこともない愛撫である。
が、この外国の建造物と異人の多い町では、そういう|しぐ《ヽヽ》さ《ヽ》になんの不自然も覚えなかった。
やがて、歳三はお雪を離した。
いつのまにか、ドアがあいている。茶を運んできた子供っぽい顔の女中が、お盆を持ったまま、この場をどうしていいかわからない様子で、茫然とつっ立っている。
「迷惑だったな」
と、歳三は真面目な顔で、女中に詫びた。
「い、いいえ」
と、女中ははじめてわれにかえったらしくひどく狼狽した。
「ここへ置いておきます」
「ありがとう。しかし頼みがある。矢立《やたて》と巻紙を借りてきてくれないか」
女中はすぐ、それらを持ってきた。歳三は、小姓の市村鉄之助あてに自分の所在を報らせるための手紙を筆早に書いた。
「築島の鴻池に居る。あすの午後に帰営するだろう」
と。
文字にこの男らしい風韻がある。
「亀田の五稜郭まで、たれかに届けさせてくれ。そうだ、さっき馬の世話をしてくれた小者がいい。あれはエゾ人の血がまじっているのか」
「まじっているそうです」
女中は、おびえたような表情で、つまずくようなうなずき方をした。
女中が去ったあと、歳三は、すぐ息ぐるしくなった。
お雪をつれて、街へ出た。桟橋《さんばし》のあたりまで歩いた。
「あの船できたのか」
と、歳三は、沖あいを指さした。三本マストの外輪船が、英国旗を垂れて、碧《あお》い水面にうずくまっている。
「ええ、鴻池の友次郎さんが、やかましくすすめるのです。横浜から五百三十里もあるというものですから、気が遠くなりそうだったけれど、わずか四日できました」
「いつ、帰る」
「あの船が出る日に」
と、お雪はつとめて明るくいった。
そこへ、奇妙な形をしたアイヌの舟がきた。
女ばかりの十人ほどで、櫂《かい》を漕《こ》いでいる。
掛け声が、内地の人の船頭とはちがう。ソラエンヤ、ソラエンヤといっているようであった。
「なにをいっているのでしょう」
「さあ」
と歳三は小首をかしげて耳を澄ましていたが、やがて、この男にしてはめずらしく冗談をいった。
「お雪の未練、といっているようだ」
「まあ、そんな。……」
「ちがうかね」
「わたくしには、歳のばか、歳のばか、といっているようにきこえます」
「どちらも本当らしい」
と、歳三は声をたてて笑った。
お雪は裾をおさえた。風が出てきている。
「もどるか」
と、歳三はお雪をうながした。お雪は歩きはじめた。
「いつ、そのお髪《ぐし》に?」
と、お雪は見あげた。
歳三は北海道に来てから|まげ《ヽヽ》を切り、オール・バックにした。髪が多いために、よく似合う。
「|まげ《ヽヽ》があっては帽子がかぶりにくいから、この髪にした。いつごろからこうなったのか、覚えていない。ここへ来てから、一日すぎると、その一日を忘れるようにしている。過去はもう私にとって何の意味もない」
「わたくしとの過去も?」
「その過去はちがう。その過去の国には、お雪さんも近藤も沖田も住んでいる。私にとってかけがえのない過去だ。それ以降の過去は、単に毎日の連続だけのことさ」
「わからない。何をおっしゃっているのか」
「北海道《えぞち》の毎日は、無意味だったように思える。私の一生には、余分のことだったかもしれない。北海道では、今日、今日、今日、という連続だけで生きてきた。ただ、未来だけは、いやにはっきりとした姿で、私の眼の前にあるな」
「どんな未来です」
「戦さだよ」
歳三は、ちょっとだまった。
「官軍が、私の未来を作ってくれるのさ。官軍が来れば、各国の領事《ミニストル》に連絡して異人たちは港内の自国の軍艦にそれぞれ退避させることになっている。それからが、戦さだ。弾と血と硝煙。私の未来には、音も色も匂いもちゃんとついて、眼の前にある」
「あの英国船で」
とお雪が突如いった。いや、突如ではなく何度か反芻《はんすう》してきた言葉だろう。——が、
「逃げましょう」
という言葉は、いえなかった。
友次郎が待っていて、洋館のほうに夕食の支度が出来ている、といった。
二人は、膳の置かれている卓子《テーブル》をかこんだ。
「わたくし、お給仕します」
とお雪がいうと、歳三が笑った。
「こういう西洋風の場所では、男女同時に食事をしているようだ。船で、洋食を食わされたろう」
「ええ。でも」
「こまったろう、牛の肉」
「食べなかったのです。歳三さんは?」
と、お雪は、名前で呼んだ。
「食べないさ。牛肉というと、沖田が、医者のすすめる肉汁をいやがった。あの顔はいまでもおぼえている」
「だからお食べにならない……?」
「でもないがね。私は食いものの好ききらいの多い人間だから、新しいものはだめだ。近藤は、物食いはよかった。豚肉まで食っていた。あの料簡《りようけん》だけはわからない」
歳三は、とめどもなく喋りそうだった。自分でも、自分の饒舌《じようぜつ》におどろいている。
考えてみれば、榎本、大鳥などと北海道《えぞち》へきていらい、毎日、数えるほどの回数しか、他人と会話を交して来なかったような気がする。
「おれはよくしゃべるな」
と、肩をすぼめた。
「あ、船が」
と、お雪が窓の外を見た。
港内はすっかり暮れている。その闇の海に舷燈をつけた黒い船体が動いていた。
「警戒中なのさ。官軍の軍艦がにわかになぐりこんでくるとこまるのでね。もっとも、われわれも出かけたが」
「宮古湾?」
「よく知っている」
「横浜では、外国人のほうがよく知っているという話ですけれど。新聞に出ていた、といいます」
「しかし、しくじった。幕府ってものが、三百年の運を使いきってしまった、という感じだ。何をやってもうまくゆかない」
細い月が昇りはじめたころ、歳三はお雪の体を締めつけている|ひも《ヽヽ》と帯を解いた。
「いや。たれか、来るわ」
「扉に|かぎ《ヽヽ》がかかっている」
寝室は、二階である。
寝台もランプも、どうやら船の調度品らしかった。
「自分で、する」
と、お雪がもがいた。歳三は、だまって|作業《ヽヽ》をつづけた。
やがてお雪の付けていたすべてが床の上に散り、そのなかから、お雪の裸形《らぎよう》がうまれた。
歳三は横倒しにして抱きあげた。
「今夜は、眠らせぬ」
と、歳三は破顔《わら》った。
が、涙がお雪の首筋に落ちた。その冷たさにお雪の肌がおびえた。眼をみはって、歳三を見あげた。
(………?)
お雪は不審だった。歳三は、泣いてはいない。
と思うまにお雪の体が宙《ちゆう》で旋回し、やがて歳三の腕をはなれて、寝床の上にうずもれた。
 その日、官軍艦隊は上陸部隊を満載して青森を出航し、北海道にむかいつつあった。
旗艦は甲鉄艦で、二番艦は春日。以下、陽春、第一|丁卯《ていぼう》、飛竜、豊安、晨風《しんぷう》。陸軍は長州兵を主力とし、弘前、福山、松前、大野、徳山の各藩の藩兵である。
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