日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

インペリアル04

时间: 2018-06-26    进入日语论坛
核心提示: 4 交渉「タクシー拾う?」 と、外へ出て、そのみが言った。「私は歩いて来たけど」「じゃ、歩きながら、空車が来たら、拾う
(单词翻译:双击或拖选)
  4 交渉
 
「タクシー拾う?」
 
 と、外へ出て、そのみが言った。
 
「私は歩いて来たけど」
 
「じゃ、歩きながら、空車が来たら、拾うか」
 
「うん」
 
 二人は夜の道を歩き出した。
 
 何年ぶりだろう、姉妹、こうして歩くのは——。
 
「雨が降るね」
 
 と、そのみが言ったので、由利は、ちょっとドキッとした。
 
「お母さん、何弾いてたの、倒れたとき」
 
 と、そのみが訊《き》いた。
 
「〈展覧会の絵〉だって。どの辺だったか知らない」
 
 そう言ってから、由利はふと気付いた。母がステージで倒れた、とは姉には言っていない。
 
「知ってたの?」
 
「え? 誰が?」
 
「お姉さん。母さんが——」
 
「今日、弾くのは知ってたよ。お節介に教えてくれる奴もいたしね」
 
「行ってたわけじゃないのね」
 
「まさか」
 
 と、そのみは笑った。「あんただって、行かなかったんでしょ」
 
「忙しいの。——会社のお付合いでね、カラオケ」
 
「へえ、あんたが? 何歌うの?」
 
 と、そのみが愉快そうに訊く。
 
「歌わないわよ。私は座ってるだけ」
 
「何だ。相変らずね」
 
「あ、タクシー……」
 
 由利がパッと車道へ出て手を上げる。タクシーがスッと寄せて来て停《とま》った。
 
「近くてごめんなさい、T病院へ。母が倒れて」
 
「どうぞどうぞ。急ぎましょう」
 
 気のいい運転手だった。
 
「やるね」
 
 と、そのみが小声で言った。
 
 タクシーが走り出す。
 
 近くへ気持良く行ってもらうには、それなりのやり方がある。姉なら、文句を言われたら、すぐ怒って降りてしまうだろう。
 
 少なくとも、その辺は、由利のOL生活も役に立っているようだ。
 
「——今井さんとは、どうなってるの? 近所の人から苦情聞かされた」
 
「みんな暇なのよ。放っときなさい」
 
「凄《すご》いケンカしてたって」
 
「レクリエーション」
 
 と、そのみは涼しい顔をしている。「人のことは放っといてほしい」
 
「せっかく防音室があるんでしょ。ケンカはそこでやることにしたら?」
 
「そういう手があったか」
 
 と、そのみが苦笑した。
 
 タクシーは間もなく病院へ着いた。
 
「ありがとう。おつり、結構です」
 
「こりゃどうも。——お大事に」
 
「どうも」
 
 由利が会釈する。タクシーを見送って、
 
「あんた愛想いいのね、あんなのに」
 
「気持ちいいでしょ、その方が」
 
「私は怒鳴りつけた後の方がスッとするけどね」
 
「こっちよ。夜間出入口があるから」
 
 と、由利は姉を手招きして言った……。
 
 
 
「ごぶさたして」
 
 と、太田が、そのみへ頭を下げる。
 
「また太った?」
 
「お姉さん!」
 
「ご苦労さま」
 
 と、そのみは妹を無視して、「どう、母の具合?」
 
「心臓が——。何しろ持病で、ろくに医者にも診《み》せてない。これで、持ち直せば、却《かえ》っていい休養なんですがね」
 
 太田は、ちょっと息をついて、「待って下さい、当直の医者を呼んで来ましょう」
 
 廊下は暗く、陰気だった。
 
「いやね、こういうのって」
 
 と、そのみは顔をしかめた。
 
「心臓……。かなり悪かったのね」
 
 と、由利が少しうつむいて、「私のせいかも……」
 
「よしなさい。誰だって、親のマリオネットじゃないのよ。好きに生きていいはずじゃない」
 
 そのみの強い口調。——由利は聞き慣れている。
 
 以前なら、その姉の「強さ」が羨《うらやま》しかったろう。しかし、今はそれも一面では「強がり」にすぎないと分っている。
 
 自分自身、どこかに後ろめたさを持っているから、こうして強く出るのである。
 
 中年の医師が眠そうにやって来た。
 
「どうも」
 
 と、二人に向って、「ピアニストの影崎さんですね。いや、びっくりした。何度か聞いてるんですよ」
 
「そうですか」
 
「心臓が前から?」
 
「ええ。——何度か入院を勧められたんですけど、当人がいやがって」
 
「分りますが、今度ばかりはね。——しばらく絶対安静です。当面、危いところは何とか脱しましたが」
 
「そうですか……」
 
 ともかく、由利はホッと胸をなでおろした。
 
「検査をします。少し落ちついてからですが。その結果で、考えましょう」
 
「はい」
 
「もし、本人が退院したいとおっしゃっても、何とか説得して下さい。もちろん、私が話しますが、そちらも力を貸していただきたい」
 
「もちろんです」
 
 と、由利は言った。「よろしくお願いします」
 
「入院の手続を。明日、九時から事務室が開きますから、そちらでお願いします」
 
「分りました……」
 
 入院のために必要な物の一覧を書いた紙をもらって、由利は、何度も医師に礼を言った……。
 
「——ともかく良かった」
 
 と、太田が言った。「しばらくは静養するしかないな」
 
「そんなお金、あるの?」
 
 と、そのみが言った。
 
 由利にも、その点は気になっていた。ともかく三年近く、リサイタルも開いていないのである。
 
「現実的に言うと、むずかしい状況です」
 
 と、太田が言った。「もちろん、ある程度はうちが面倒をみます。しかし、無期限というわけにはいかない」
 
「私、何か働きますから」
 
 と、由利が言った。
 
「しかし、今でも——」
 
「OLの仕事は大して辛《つら》くないんです。日曜日とか、パートで出られれば」
 
「あんたまで病気になるよ」
 
 と、そのみが言った。
 
「そう。無理しても、長くは続きませんよ」
 
 と、太田は肯《うなず》いて、それから少し間を置いて、
 
「——もっといい方法があります」
 
「え?」
 
「そのみさんに弾いていただくこと。こっちでお膳《ぜん》立《だ》てはします」
 
「いやよ」
 
 と、そのみは顔を紅潮させた。「絶対にいや!」
 
「しかし——」
 
「待って下さい」
 
 と、由利が太田を抑えて、「話し合ってみます。任せて下さい」
 
 姉のことは、よく分っている。こんな風に強制されるのを、一番嫌う人である。
 
「何と言われても——」
 
 と、そのみが言いかけたとき、
 
「まあ、そのみさん?」
 
 と、足音がして、「由利さんも。——佐竹弓子です」
 
「どうも」
 
 と、由利は頭を下げて、「Kホールだったんでしょ、母が倒れたの」
 
「ええ、びっくりしました」
 
 と、弓子は言って、「容態は?」
 
 太田の説明を聞いて、弓子も一安心したようだ。
 
「——うまく行けば、すばらしいリサイタルでしたわ」
 
 と、弓子は言ってから、「あ……。そうだわ。あの方——松原さん、ここへみえませんでした?」
 
 由利は、戸惑って、
 
「父が、ですか」
 
「会場へみえたので、ここを教えたんですけど」
 
「いえ……。見ていません」
 
「そうですか。でも——心配なさってる様子でした」
 
 由利とそのみは、チラッと目を見交わした……。
 
 
 
 太田と弓子が、中止になったリサイタルの後始末のことで話している間、由利とそのみは、自動販売機で、ジュースを買った。
 
「——お姉さん」
 
「私はいやよ」
 
 と、そのみは言った。「あんた、やればいいじゃない」
 
「私じゃお金はとれないわ。お姉さんなら、お客が呼べる」
 
「もう昔の話よ、腕も落ちたし」
 
 そんなことはない。由利は、そのみの腕や肩の肉のつき方で、充分に修練を重ねているのを見抜いていた。
 
「お願い。太田さんに任せて、引き受けてよ」
 
 と、由利は言った。「お母さんはぜいたくだわ。きっと入院費用もかさむだろうし」
 
「自分でそうすると決めた結果でしょ」
 
「でも……見殺しにできないわ」
 
「私だって、そうは言ってない。でもね、今さら、そんな……」
 
「お父さんが来たって……。どういうつもりだったんだろ」
 
「さあね」
 
 二人は、遠くを見つめるような目で、空を見ていた。
 
 思い出していたのだ。父と母のいたころ、母だけと暮していたころ。
 
 どっちも、姉妹にとっては、正に刑務所だった……。
 
「——そうそう」
 
 と、太田がやって来て、「多《た》美《み》子《こ》さんがね、倒れたとき、一言言ったんだ。その意味が分るか、訊こうと思ってた」
 
「何と言ったんですか」
 
「うん……。一言。『インペリアル』と言ってね」
 
「インペリアル?」
 
 由利とそのみが低い声で言った。
 
 忘れたくて、やっと忘れかけていたものを思い出させられたような、そんな気がしていたのである……。
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%