日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

キャンパスは深夜営業05

时间: 2018-06-26    进入日语论坛
核心提示:5 美術館にて「良二君」 と、呼ばれて、ハッと我に返る。「あ、ああ、君か。どうも。お久しぶり」「毎日会ってるじゃない」 
(单词翻译:双击或拖选)
5 美術館にて
 
「良二君」
 と、呼ばれて、ハッと我に返る。
「あ、ああ、君か。——どうも。お久しぶり」
「毎日会ってるじゃない」
 と、知香は不思議そうな顔で、「それとも、私と会ったことなんか、忘れちゃうの?」
「と、とんでもないよ! 誰が忘れるもんか!」
「そう?」
「そうさ。——ね、何か食べようか」
「そうね。今、並んでるわ」
 と、知香は肯《うなず》いて言った。
 二人とも、学生食堂の、セルフサービスの列に並んでいるのだ。当然、何か食べるためである。
「ああ。——そうか。そうだったね」
 久保山良二は、わざとらしい笑い声をだした。若林知香は首をかしげて、
「ねえ、勉強か何かしたんじゃない、もしかして?」
 と、言った……。
「いや、別に。勉強なんて、そんな悪いことするわけないじゃないか」
「そう……」
 会話も、かなり支《し》離《り》滅《めつ》裂《れつ》ではあった。
 二人は、カレーをもらって、サラダとコーヒーをつけ、盆を手に、空いた席を探した。
「奥の方へ行きましょうよ」
 と、知香が、どんどん先に立って、奥の方のテーブルへと歩いて行く。
 良二は、あわてて知香の後を追って行った。何しろ、郊外にあるこのS大学では学外に出ても、レストランとかそば屋はほとんどないので、この学生食堂を、大部分の学生は利用する。その広さも相当なものだった。
 それでもこの昼休みには、空席を待つ列ができる。もっとも、回転も早いので、長く待つ必要はない。
「ここがいいわ」
 知香がついたテーブルは、かなり奥まっているせいか、半分ほどしか埋っていなかった。
「うん」
 良二は知香と並んで席につくと、黙々とカレーを食べ始めた。
 もちろん——知香と一緒に昼食をとれるのは嬉《うれ》しい。でも、今、その喜びに、暗い影が落ちているのも確かだった。
 それというのも、あのデブで禿《は》げた米田という警部のせいだ!
 もちろん、太っているとか、髪が少ないとかいうことで人を差別するほど、良二は人間ができていないわけじゃない。しかし、その話の中身は、およそお話にならないものだった(変な言い方だけど)。
 知香が、泥棒の親分だって? 何を寝言、言ってるんだ!
 知香は女子大生、一八歳だぞ! 一八歳の女の子が、泥棒の親分だなんて。一体誰がそんな話、信じるもんか。
 そうとも。あの警部、少しおかしいんだ。いや、相当におかしい、と言うべきだろう。
「——良二君」
 と、知香が言った。「何をブツブツ言ってるの?」
「え? ——何も言ってないよ」
「今、何だか、『おかしい、おかしい』とか言ってたわよ」
 つい、本当に口に出してしまったようだ。良二は笑顔を作って、
「何でもないよ、その……レポートの点がね、つけ方がおかしい、って……」
 誰が聞いても言いわけでしかない言い方だった。我ながら、何て嘘《うそ》をついたり、ごまかしたりすることが下手なんだろう、と感心した(!)。
「やあ、君たち、人目を避けて、こんな席に座っとるのかね?」
 顔を上げると、テーブルを挟んで向いの席に、西洋史の助教授、安《あ》部《べ》が座るところだった。
「いいえ」
 と、知香が微《ほほ》笑《え》んで、「私たち、二人とも『隅における』人間ですから」
「なるほど」
 と、安部は笑った。「いや、君はなかなかユニークな女の子だ」
 安部は、額が少し禿げ上っているので、老けて見られるが、実際はまだ四〇代の前半だった。スマートな体型、服のセンスも、なかなか渋くていい、と女の子には結構人気がある。
 まあ、二枚目とは言い難いにしても、大学の先生、というイメージの中では、かなりいい部分を集めたようなタイプだ。
 良二も知香も、安部の講義は取っていた。話術も巧みで、あまり眠くならない、数少ない講義の一つだったのである。
「時に——」
 と安部はトンカツ定食を食べながら、「君たちは、S美術館の中世肖像画展には行ったかね」
 と、訊《き》いた。
「いいえ、まだです」
 と、知香が答えた。「行きたいな、とは思ってるんですけど」
「なかなか充実しているよ。もちろん、ホルバインも悪くないが、名もない画家の手になる肖像画は、時代の雰囲気を伝えてくれる」
「ぜひ行ってみますわ」
 と、知香は言った。「久保山君と一緒に。——ねえ?」
「う、うん。もちろん僕も行こうと思ってたんだよ」
 良二は、S美術館の場所も知らない。
「そりゃいい」
 と、安部は肯いて、「もし、久保山君の都合が悪くなったら、僕が案内してあげよう」
「先生が?」
 知香は、目を見開いて、ちょっといたずらっぽく笑うと、「危険だな。先生、独身のプレイボーイって評判ですよ」
「そんなことでひるむ若林君とは思わなかったがね」
 と、安部も笑って言った。
 そこへ事務室の女性がやって来た。
「安部先生」
「何だね?」
「お電話が入ってますけど」
「分った、すぐ行く」
 と、安部は急いで席を立って行った。
「——良二君」
「え?」
「いつ、行く?」
「行く、って……。どこへ?」
「S美術館じゃないの」
「あ、ああ……。そうだね。いつでもいいよ。君の都合のいい時で」
「じゃ、明日、お昼から行かない? どうせ午後は休講よ」
「うん……。構わないよ」
 と、良二は言った。「でも——説明してくれよね。僕はさっぱり分らない」
「 あら」
 と、知香は澄まして、「私だって。大体、どこにあるの、S美術館って?」
 二人は、顔を見合わせて、笑い出した。
 
 平日の午後の美術館は、あまり人の姿もなかった。
 その意味では、絵を見に来たのか、人を見に来たのか分らないような、有名な絵を売りものにした展覧会よりは、ずっと「美術」というムードではある。
「いいわね」
 と、知香が言った。
「うん」
 何だかよく分らないが、でも一応、人並みの感受性を持っている良二は、その肖像画の列に、どこか「歴史の重味」といったようなものを覚えはしたのだった。
「座ろうか」
 と、知香が言った。
「うん」
 良二は、知香に促されて、会場の一角、少し広くなったスペースに並べられた椅子に腰をおろした。
 二人の他には、せいぜい、一人か二人、ポツリ、ポツリ、と絵を見て回る人が目に入るだけ。
 二人が口をきかずにいると、ほとんど人の話し声もない。これが都心のビルの中かと思うほどの静かさだった。
「——静かね」
 と、知香は、そっと息を吐き出して、「こんな場所って、他にないわね。どこでも、都会は何か音楽が鳴ってたりするし……。私、音楽も好きだけど、でも一日中聞こえてるのって堪えられない」
「そうだね」
「あなた、何が好き? 私、ベートーヴェンの弦楽四重奏が好きなの」
「あ、そう」
 良二はいささか焦って、「いや——何でも音楽なら好きだよ」
 と、いい加減な返事をした。
 知香はちょっと目を伏せて、
「迷惑した? ごめんなさいね」
 と、言った。
「迷惑? 君とデートするのが、どうして迷惑なんだい?」
「そのことじゃないのよ」
 と、知香は言った。「米田警部に会ったんでしょ」
 良二は、不意に訊かれて、どう答えたものか、迷う暇もなかった。
「うん……」
「父のこと、聞いたのね」
「聞いたよ」
 良二は肯いて、「でも、お父さんはお父さん、君は君だ。それにあの米田って奴、君のことまで、ひどいでたらめを言いやがって! ふざけてるよ」
「でたらめじゃないわよ」
「そうとも。大体君が——」
 良二は、言葉を切って、「何だって?」
 と、訊いた。
「本当よ。私、泥棒なの」
 ——美術館の中は、二人が口を閉じると、相変らずの静寂だった。
 しかし、それはついさっきまでの静けさとは違って、重苦しく、同時に、弾《ひ》けば音がするほど緊張した静寂だったのである。
 良二は、何といっていいのか分らなくて、黙っていた。
 知香が泥棒? そんなことが——そんなことが、もしあり得るとしたら、夜と昼が逆さになっちまう!
 知香が立ち上った。
「行きましょ。今日は大丈夫だわ」
「大丈夫、って?」
「時々、尾行されてるの、あの米田警部の部下にね。——でも、大丈夫。今日はいないわ。私のマンションに来て」
 知香が歩いて行く。良二はあわてて、後を追った。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%