日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

キャンパスは深夜営業15

时间: 2018-06-26    进入日语论坛
核心提示:15 消えた車「はあ、あの」 と、良二は言った。「お食事ぐらいでしたら、お付合いさせていただいても」「まあ、嬉《うれ》しい
(单词翻译:双击或拖选)
15 消えた車
 
「はあ、あの……」
 と、良二は言った。「お食事ぐらいでしたら、お付合いさせていただいても……」
「まあ、嬉《うれ》しいわ」
 と、平田千代子は言って、ちょっとドアの方へ目をやると、「いいこと? このことは主人に内緒。分ってるわね?」
「はあ……」
 もちろん、良二がどんなに鈍《にぶ》いとしても(たとえば、の話である)、千代子の言い方を聞けば、夕食を一緒にするだけで終らないことははっきりしている。
 しかし、良二は、当の千代子の夫、平田教授から、
「妻と浮気してくれ」
 と、持ちかけられたばかりだ。
 この奥さんは、旦《だん》那《な》の考えを知っていて、こっちを誘ってるんだろうか、と良二は首をかしげた。
 たまたま、そんなことになった、なんて、少しできすぎてるような気もする。
「じゃ、今夜、私の家へ来てくれる? 憶《おぼ》えてるでしょ、場所は?」
「たぶん分ります」
「ただね、この間も言ったと思うけど、うちには、昔からのお手伝いさんがいるの。その人に見られると、主人に言いつけられると思うから、七時に、門の前で待っていてくれる?」
「門の前ですか」
「私、必ず七時ちょうどに家を出るようにするから。——どう?」
「分りました」
 良二は気が進まなかった。しかし、何しろ「愛妻」の知香が、「行って来い」と言うのだから、どうしようもない。
 それが、たとえ殺人を防ぐためだとしても、気が進まないことに変りはないのである。そこへ、ドアが開くと、当の平田が入って来た。
「あなた」
 と、千代子が言った。
「何だ、来てたのか。——久保山君は知ってたな」
「もちろんよ。ねえ、車がエンコしちゃったの。何とかして」
「またか」
 平田はため息をついて、「乗り方と手入れが悪いんだ。あれじゃ、いくらいい車を買っても同じだぞ」
 文句を言ってはいるが、顔の方はちっとも怒っていない。
「そんなこと言ったって……」
 と、千代子が口を尖《とが》らすと、
「分った、分った」
 と、平田は苦笑して、「どこに置いてあるんだ?」
「すぐそこに放ってあるわ」
「後で私が動かしておくよ。キーを貸せ」
「はい。お願いね。私、タクシーを拾って帰るから」
 千代子は、机の上にポンとキーを投げ出して、「久保山君。じゃ、失礼するわ」
「さようなら」
 と、良二は頭を下げた。
 千代子が出て行くと、平田は席に落ちついて、
「あれが何か言ったかね?」
 と、訊《き》いた。
「あの——今夜会いたい、と」
「なるほど。で、君は?」
「その——つまり——」
 と、良二はかなりためらってから、「やっぱり、その——お金は大切ですから」
 平田は、それを聞くと、ニヤリと笑った。良二は、どうもこの笑いが好きになれない。
「気が変ったわけだね。大いに結構」
「でも——」
「何だね?」
「先生がご承知だってことを、奥さんはご承知なんですか?」
 何だかややこしい話である。
「知っている必要はないさ」
 と、平田は言った。「そうだろう? 夫が知らないからこそ、浮気なんだよ」
 それも理屈だ。平田は内ポケットから札入れを取り出すと、一万円札を五枚出して、良二に手渡した。
「これは準備金だ。うまくいったら、充分に君が満足するだけのもの出すよ」
「どうも」
 良二はその金をポケットへねじ込んだ。「でも、先生」
「まだ何か訊くことがあるのかね?」
「——一体、何をやるんですか?」
「心配することはない」
 と、平田は言った。「君はただ、妻と浮気してくれれば、それでいいんだよ」
 平田は、千代子の置いて行った車のキーを手にして立ち上ると、
「さて、ちょっと手伝ってくれるかね」
「はあ」
「何しろ、家内は車をエンストさせる名人でね」
 と、平田は笑って、ドアを開けた。
 だが——平田と良二が建物を出てみると、少し前に出たはずの千代子がぼんやりと突っ立っていたのだ。
「おい、どうした?」
 と、平田が声をかける。
「あなた、車が——」
「どこだ? ないじゃないか」
「なくなっちゃったのよ」
「何だって?」
「そこに置いといたのに……。下りて来てみたら、影も形もないの」
「そんな馬鹿なことが……」
「だって本当にないのよ! 盗まれたんだわ!」
 と、千代子は、ヒステリックに声を上げた。
「あら、久保山君」
 と、声がすると、何と知香が何食わぬ顔でやって来た。「どうかしたの?」
「や、やあ」
 良二は、ちょっと焦った。いきなり出て来んなよ!
「平田先生の——奥さんの車が、なくなっちゃったんだ」
「車が?」
「そうよ。ここに置いといたのに」
 と、千代子が手で場所を示した。
「あの……もしかして、赤い、カッコいい車ですか?」
「そうよ! あなた、見た?」
「誰だかが乗って行きましたよ、今」
「何ですって?」
「そりゃおかしいな」
 と、平田が言った。「車はエンコしてて、キーもここにあるんだ」
「先生ったら」
 と、知香は笑って、「車のエンジンかけて盗むなんて、ちょっとした泥棒なら、いくらでもやりますよ」
「泥棒か! 畜生!」
「でも、走ってったの、つい今しがたですから。すぐ届けを出せば、見つかるかも」
「いや、むだだろう」
「じゃ、あなた、放っとくの?」
「いや、そうじゃない。しかし、今から一一〇番したって、非常線を張ってくれるわけじゃなし。届けは私が出しておくから、君はタクシーで帰っていたまえ」
「分ったわ」
 と、千代子は肩をすくめて、「じゃ、久保山君。さよなら」
「さようなら」
 良二は馬鹿ていねいに頭を下げた。
「君は、安部先生を手伝ってる子じゃないのかね?」
 と、平田が知香を見て、言った。
「そうです。ただの雑用ですけど」
「そうか。ま、しっかりやってくれ」
 平田は、良二の肩をポンと叩《たた》くと、建物へ戻って行った。
「しっかりやれ、って、何の意味かな」
 と、良二は言った。
「しっ! ともかく、このまま何気なく別れて、それから、うちの裏へ来て」
「うちの?」
「そう。——じゃ、後で」
 知香は、さっさと歩いて行ってしまう。
 良二は、ちょっと首をかしげて、それから別の方向へと歩いて行った。
 ——あまり人の通らない、建物の間の通路を歩いて行くと、良二は、足を止めた。
 傍《そば》の石の上に座り込んで、何事か考え込んでいるのは、何と小泉和也である。
「おい、和也」
 と、良二が呼びかけると、和也は、ボケッとした様子で、
「良二! お前どうしたんだ?」
「どうした、って……。それはこっちが訊くセリフだぜ。てっきり休んでると思ってた」
「いや……休んでない」
「じゃ、どうして講義にも出なかったんだよ?」
「うん……。ちょっと、考えごとをしてたんだ」
「ふーん」
 そりゃ、和也だってたまには(?)考えごともするだろうが……。「だけど、何だか、元気ないな」
「そうか?」
「ああ。——何かあったのか?」
「いや別に」
「もしかして——小西紀子と何かあったのか?」
 良二がそう言うと、和也はパッと立ち上って、
「何もない! 彼女は関係ないんだ!」
 と、怒鳴るように言って、駆けて行ってしまった。
 良二は、唖《あ》然《ぜん》として、和也を見送っているばかりだった……。
 ——知香はもう先に来て、待っていた。
「何してたの? 迷子にでもなったのかと思ったわ」
「いや、今、和也の奴と会ってさ」
「小泉君?」
「何だか変なんだ、様子が」
 良二の話に、知香はフーンと肯《うなず》いたが、
「そりゃ小泉君だって年ごろだもの。色々悩むことだってあるでしょ」
「年ごろ、ねえ」
「それよりさ、こっちに来て」
 と、知香は、良二の手を取って、大学の隅に少し残っている、雑木林の方へと連れて行く。
「何だよ?」
「いいから!」
 木々の間を抜けて行くと、何だか、枯れた枝がこんもりと盛り上った所がある。
「何だい?」
「ちょっと枝をどけて見て」
「これを?」
 良二は、枝を何本か持ち上げて、目を丸くした。
「おい、これ——」
「そう。平田夫人の車よ」
「だけど……。どうやって?」
「私が、もと何だったか忘れたの?」
 そりゃそうだ。
「しかし……。こんなことしたら、泥棒だぜ」
 何だか妙な言い方だった。
「でも、必要になりそうな気がしたのよ」
「車が?」
「平田先生との話、どうなったの?」
「うん……。あの奥さんの方から、誘われたんだ」
 良二が詳しく話すと、知香は肯いて、
「やっぱりね。で、あなたは奥さんと二人で出かける。それを私がこの車で追っかける。——どう?」
「それなら安心だよ」
 と、良二はホッとして、「でも——赤い車じゃ目立つな」
「ご心配なく」
 知香は、車にかぶせた枝をパッパッと払い落とすと、「じゃ、出かけて来るわ」
 と、さっさと車に乗り込んだ。
「どこに行くんだ?」
「車を塗りかえて来るの」
「夕方までに?」
「盗んだ車の色をすぐに変えてくれる所があるの。大丈夫よ、間に合うから。あなたは約束通り、平田夫人と会ってね。私のことは心配しないで」
「分った……」
 と、言い終らない内に、知香は車で早々に木の間を抜けて、たちまち走り去ってしまった……。
「知香の奴——」
 と、良二は思い付いて、呟《つぶや》いた。「免許も持ってないのに……」
 泥棒には、何でもできるのかもしれない。
 ——少々、良二は落ち込んでしまったのである。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%