日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

クリスマス・イヴ07

时间: 2018-06-28    进入日语论坛
核心提示:7 嫉《しつ》 妬《と》 冬になって、ほとんど初めての穏やかな一日だった。 風もなく、よく晴れ上って、日なたにいると、暖
(单词翻译:双击或拖选)
7 嫉《しつ》 妬《と》
 
 冬になって、ほとんど初めての穏やかな一日だった。
 風もなく、よく晴れ上って、日なたにいると、暖かいと感じるほどだ。ベンチに座っている久仁子も、快い日射しに身を任せている。
 ここは団地の中のスーパーマーケット前。
 最近のこういうスーパーは、たいてい前が広場のようにしてあって、子供を遊ばせておけるようになっている。今、牧子も幼稚園の帰りに、ここへ来て遊び回っていた。
 久仁子は、じっと牧子を眺めている。——何を考えてるんだろう、自分は?
 この生活に満足していないのか。夫と娘との三人の暮し。それが何よりも大切だと思っていないのか。
 大切だとは思っている、確かに。しかし、それでいて、川北の誘いに逆らうことができないのだ。
 夫も感づいている。久仁子には分っていた。
 いつもと同じようにふるまってはいるが、時折、ふっと久仁子から目をそらしたり、考え込んだりする様子で……。久仁子にも、分るのである。
 もう、やめなくては。どうせ川北にとっては遊びなのだ。——そう、牧子が近所の子と遊んでいるのと大して違わないのだ。
 現に、川北は今、あの庄子ユリアとかいうアイドルと噂《うわさ》されているし、当人も否定していない。それでいて、五月麻美とも切れたわけではない。
 そういう男なのだ。分ってはいるのだが……。
 誰かがやって来る。目の端で捉《とら》えたその歩き方で、久仁子はそれが知っている人間だと分った。
「——ここにいたの」
 永田エリが立っていた。
「エリさん……」
「久しぶりね。——かけてもいい?」
「ええ……」
「牧子ちゃんは?」
「あそこで遊んでる」
「ああ、あの赤いスカートの子? 大きくなったんだ!」
 と、永田エリは目をみはった。
「いつも主人が——」
「何言ってんの。そんな堅苦しいこと、抜きにしよう」
 エリの言い方は相変わらずだった。
 久仁子も、つい笑ってしまう。
「そうそう。久仁子には、笑顔が似合うの。いつも演出家に言われてたでしょ。久仁子は笑ってるときだけは名優だって」
「そうだった」
「あんたの家へ行ったら、お隣さんがね、教えてくれたの。たぶん、ここだって。それでさ、私のこと知ってて。こっちがびっくり。『永田エリさんですか』って」
「そう?」
「嬉《うれ》しいもんね。TVの端役でも沢山こなしてると、それなりに顔が売れて来る。——悪いことはできないけどね」
 エリはそう言って笑った。そして——少し間があった。
「お話があるんでしょ」
 と、久仁子は言った。「私と川北のことで?」
「まあね」
 エリは、軽く息をついた。「水島さん、気が付いてるよ」
「知ってます」
 久仁子は、両手を握り合せた。「悪いと思うんだけど……」
「川北もしょうがない奴《やつ》だね」
 エリは首を振って、「子供と同じ。他の子が持ってると、取り上げたくなる。以前自分のものだったとなれば、なおさらね」
 久仁子は、牧子がこっちを見てるのに気付いて、手を振った。
「——このところ、会ってないの。このまま、終ってくれれば、と思ってる」
「でも、また誘われたら? あなたが拒む決心をつけなきゃだめよ」
 と、エリが言った。
「ええ……」
「クリスマス・イヴには一緒に仕事をすることになってる。——まあ、そんなに長いこと顔を合せるわけじゃないけど、やっぱりご主人だって、辛いでしょ」
「エリさんも出るんでしょ?」
「出るっていっても、私は死体の役」
「まあ」
 と、久仁子は笑った。
「楽してギャラが出りゃいいけどね」
 と、エリは苦笑した。「でも——考えた方がいいよ、良く」
「ええ……」
 久仁子は肯《うなず》いた。
「川北は今、本当にあの何とかいうアイドルと?」
 と、エリが訊《き》いた。
「庄子ユリア。ちょくちょく会ってるみたい」
「そう。——こりないのね」
 と、エリは言った。「遊んでるつもりで、利用されてるだけなのに。人気が出て来たら、もう川北のことなんか見向きもしないわよ、その子」
「そうでしょうね」
 と、久仁子は言った。「あの——うちへ寄る?」
「ううん。もう行くわ」
 エリは立ち上った。「これからロケがあるの。サスペンスものの殺され役でね。死体づいてて、やんなっちゃう」
 と、笑って、
「じゃ、またね、久仁子」
「ありがとう。また遊びに来て」
「その内ね」
 牧子がトコトコやって来た。エリは、
「こんにちは」
 と、かがみ込んで、「憶えてるかな、おばちゃんのこと」
「TVで見たよ」
 と、牧子が言った。「ね、ママ」
「そうか。ファンになってね」
 と、エリは笑って牧子の頭を軽くなでた。
「じゃ、さよなら」
「さようなら」
 牧子も手を振って、「——ママ、もう帰る?」
 久仁子は、エリの後ろ姿を、ぼんやりと見送っていたが、
「——え? ああ、これから買物よ。冷凍食品買わなきゃいけないから」
 と、立ち上った。「中でお手々を洗ってなさい」
「はあい」
 牧子がスーパーへと駆けて行く。
 久仁子は、ショッピングカーを引いて、その後から歩いて行った。
 永田エリも、忘れられずにいるのだ、川北のことが。
 劇団仲間から、話は聞いていた。しかも、もうずっと昔のことだと思っていたのだが……。
 庄子ユリアのことを話しているエリの口調には、はっきり、嫉《しつ》妬《と》の響きが混っていた。
 女同士。そういう点は敏感である。
 エリさんまで……。妙なことだが、久仁子は永田エリがまだ執着していると知って、初めて川北と会ってはいけない、という気持になった。なぜ、と問われたら、どう答えていいか分らなかったかもしれないが。
「さて、買物だわ」
 久仁子は、スーパーへ入ると、店内用のカゴを手にとった。
 
 チャイムが鳴っていた。
 ユリアはベッドの中で寝返りを打った。毛布が足に絡みついて来る。
 またチャイムが鳴る。——誰か出てよ。こっちはね、裸なんだから!
 頭を上げる。バスルームからシャワーの音が聞こえて来た。
 そうか。ここはホテルの部屋で、一緒にいたのは川北竜一……。シャワーの音で、チャイムなんか聞こえないだろう。
 聞こえたとしても、
「お前が出ろ」
 と、言われるに決っている。
 またチャイムが鳴った。ユリアは、渋々起き上った。ガウンを取って、素肌にはおる。
 誰だろう?
 スイートルームなので、リビングルームを通って行く。
「どなた?」
 と、声をかけると、少し間があって、
「川北さんは?」
 と、男の声がした。
「今、ちょっと——。いることはいるけど」
 チェーンをかけたまま、細くドアを開けると、とてもその隙《すき》間《ま》からは全身の見えない、太った男が立っていた。
「原といいますがね」
「原さん?——ちょっと待ってね」
 ユリアは、バスルームまで行って、ドアを叩《たた》いた。もうシャワーは止まっていたので、
「何だ?」
 と、川北が返事をした。
「原さんって人が来たわよ」
「そうか、待たしといてくれ」
「どこで?」
「中へ入れていい。昔なじみだ」
「ふーん」
 ユリアは肩をすくめ、ドアまで戻って行った。チェーンを外してドアを開けると、
「入って。——今、シャワーなんです」
「分りました」
 原という男は、チラッとユリアの胸もとへ目をやった。ガウンの胸もとが少し開いている。ユリアはギュッとかき合せて、
「かけて待ってて下さい」
 と、言った。
「そうしましょう。——お邪魔して」
 原は、ソファにドカッと身を沈めた。キュッとソファが悲鳴を上げる。
 ユリアは、この男、何者かしら、と思っていた。何といっても、売り出し中のアイドルだ。もし、顔つなぎをしておいた方がいい相手なら……。
「何か飲みます?」
 と、ユリアは訊いた。
 原は、ちょっと面食らっていたが、
「じゃあ……コーラでも」
 冷蔵庫からコーラを出し、ユリアはグラスに注いだ。
「や、どうも」
 原は、意外と人なつこい笑顔になって、「庄子ユリアさんにこんなことをしていただくとはね」
「あら、ご存知?」
「当り前です。私は大した力もありませんが、ファンですよ」
「どうもありがとう。あの——もう来ると思います」
「昔、川北さんのいた劇団のマネージャーをしていましてね」
「劇団の?」
「知りませんか。そうかもしれない。もうずいぶん前ですよ」
 と、原は笑って、「今じゃ、川北さんは大スターだ」
「スター……。そうね」
 ユリアはチラッと奥のベッドルームの方へ目をやった。「昔から、川北さんってあんな風ですか」
 原は、ゆっくりコーラを飲んで、
「『あんな風』という意味は?」
「あんな風に——女の子に手が早い、とか」
 原はちょっと笑って、
「三つ子の魂百まで、ってね。病気ですね、あれは」
 と、言った。
「そう……」
「噂《うわさ》になってますね。ま、私は大丈夫。口は固い方です」
「私は駆け出しですもの。川北さんのおかげで、ずいぶん助けられましたわ」
 ユリアの言い方は、過去形で、原もちゃんとその点を分っている様子だった。
「ある時点までは助けも必要。しかし、そこを過ぎると、却《かえ》って重荷ってこともある」
 原の言葉に、ユリアは肯《うなず》いた。
「ええ、そう。そうなんです。でも——」
「彼の方は、相変わらずあんたを自分の持物ぐらいに思っている」
 ユリアは、この一見パッとしない男に、興味を覚え始めていた。
「よくお分りね」
「長いことこういう世界にいれば、同じようなケースをいくつも見ますよ」
「何か……いい方法をご存知?」
 ユリアは、綱わたりをしているような気分だった。今会ったばかりのこの男に、こんな話をしている。自分自身でも信じられなかった。
「いい方法……。つまり、適当な時点で切るための?」
「——そう」
 と、ユリアは肯いた。
 原は、少し違った目でユリアを見ていた。
「それはむずかしいですよ。タイミングをよほどよく見ないとね。怒らせたら大変だ。自信家は、恨みも忘れないもんです」
「そうでしょうね」
「戸板返しですね」
「え?」
「知りませんか。『四谷怪談』で、パッと戸を裏返す……。まあいい。あんたが浮かび上ると同時に相手が沈む。これが一番です」
 原の言い方は淡々として、却ってユリアを引き込んだ。
「そんなことが……」
「可能か、と?——まあ、やってやれないことはないでしょう」
 ユリアはバスルームのドアの開く音を聞いた。
「あの——電話下さい、夜中に。いい?」
 原は肯いて、手帳を出した。
 ユリアは引ったくるように手帳をとって、自分の電話番号をかきつけて返した。
「必ずかけてね」
 と、低い声で。
「——やあ、久しぶりだな」
 川北が、ガウンをはおって出て来た。「おい、シャワー浴びて来いよ」
「ええ」
 ユリアは、ベッドルームへ入って行った。川北がそのドアをバタン、と閉める。
 ——正直なところ、ユリアは川北にうんざりし始めていた。
 まだ、利用価値はあると思う。しかし、こうも川北の気まぐれに振り回されては……。
 それに、いくら今のアイドルが男っ気なしでいる必要がないと言っても、限度がある。これでは単に「川北の恋人」で終ってしまう。
 もう大丈夫。仕事も順調に入っているし、事務所でも川北との関係にいい顔をしていない。
 ユリアはシャワーを浴びながら、大きく息をついた。
 私はもう一人で歩けるんだわ。川北の助けなんかいらない……。もちろん、川北はユリアの方が夢中だと思っているし、そう思わせて来たのも事実だ。
 でも……。あの原という男。直感だが、頼りになりそうだ、と思った。きっと電話して来るだろう。今夜にも。
 ユリアは、今日は早く帰ろう、と思っていた。何かいいことが待っているかもしれない……。
 
「知ってる?」
 と、五月麻美は言った。
「何です?」
 机に向って、領収証の整理をしていた村松は、領収証の仕分けをする手を休めずに訊《き》いた。
「何してんの?」
 と、麻美はベッドから訊いた。
「明日、一番で精算しとかないと、叱《しか》られるんですよ」
「ロマンのない人ね」
 と、麻美は笑った。「それでなきゃ、困るけど」
「そうですよ。何しろ金にルーズなのは、いやなんです」
 しかし、妙なものだ。村松とて、バスローブ姿で領収証を分けているのである。
「川北、ホテルSのイベントに出るのよ」
「ええ、聞きました。何であんなものにね。よっぽど払いがいいんでしょうか」
「あの子も引張り出すのよ。庄子ユリア」
「へえ」
 村松は、麻美を見た。「本当ですか」
「イヴの夜を、あの子と二人で過そうってわけでしょ」
「じゃ、ホテルSにそのまま? やれやれ」
 と、村松は苦笑した。
「ねえ、完ちゃん」
「何です?」
「私たちもどう?」
「どう、って?」
「イヴの夜にさ、二人で泊らない?」
 村松は目をパチクリさせていたが、
「無理ですよ。パーティがあるし……」
「顔だけ出しゃいいんでしょ。少し遅い方が入りやすいし。——そこでバッタリ川北たちと会うってのも楽しいじゃない」
「今からじゃ、部屋なんかとれませんよ」
「とれるわ。私、あそこの支配人、よく知ってるの。私が頼めば大丈夫。いいわね」
「でも——もし本当に川北と会ったら、何て言うんです?」
「決ってるじゃない。『メリー・クリスマス』よ」
 麻美がそう言って笑うと、手をのばして来る。
 村松は、領収証を置いて、ベッドの方へと引き寄せられて行った。拒むことなどできない。
 村松は、火に焼き尽くされる蛾《が》のような気分だった……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%