日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

クリスマス・イヴ09

时间: 2018-06-28    进入日语论坛
核心提示:9 屈 折 夜中の一時に電話が鳴った。 こんな時間の電話は、佐々木からに決っている。啓子も、そろそろ寝ようかと思っていた
(单词翻译:双击或拖选)
 9 屈 折
 
 夜中の一時に電話が鳴った。
 こんな時間の電話は、佐々木からに決っている。——啓子も、そろそろ寝ようかと思っていたところで、すぐに電話に出た。
「はい。——もしもし。——佐々木さん?」
 向うが黙っているので、啓子はちょっと心配になった。
「君か……」
 低い声だったが、すぐに分った。
「塚田君……。あなた——」
「佐々木って誰だい? いや、別に誰だっていいけどさ」
 と、塚田は笑った。
「あなた、酔ってるのね」
「少しね。ただ……君がどうしてるか、気になってさ」
「私は元気よ」
「そう。——そりゃ良かった」
 塚田は、くたびれたような声を出した。「いや、君に悪いことしたと思ってたんだ。僕のことを恨んでるんじゃないかと——」
「やめて。終ったことでしょ」
 と、啓子は言った。「もうお互いに忘れるべきでしょ」
「うん……。そうだ。君はいつも正しいことを言う子だよ。君はいつも正しかった。いつもね……」
「塚田君。——夜中よ。もう切るわ」
「分ってる。ごめんよ」
 と、塚田は早口で言った。「君にはね、ぜひ幸せになってほしいんだ。本当だ。それだけは言いたかったんだ」
 啓子は、塚田の声に、低い呻《うめ》きを聞きとったような気がした。
「塚田君。いつかの人と、うまく行ってるの?」
「え?——ああ、彼女かい? 元気だよ。うん、うまく行ってるとも。来年の春、結婚なんだ」
「そう。おめでとう」
「ありがとう。本当にね……。おめでたい奴《やつ》さ、僕は」
 塚田が笑い出した。
「もしもし。大丈夫なの?」
「うん……。いいんだ。僕がどうなっても、自業自得さ」
「塚田君——」
「じゃ、悪かったね。こんな時間に。おやすみ」
「おやすみ……なさい」
 もう、電話は切れていた。
 塚田は泣いていたのだろうか? 笑いながら、その声は自分を笑っていた。
 何かあったのだろう。——あの「彼女」とのことで。
 でも、もう私には何の関係もないことだ。
 そうよ。あっちが私から離れて行ったんだもの。
 それでも、もちろん塚田に同情する気持はなかったものの、啓子は彼のことを全く気にしないわけにも、いかなかった……。
 何があったんだろう?——塚田は今、糸の切れた凧《たこ》のように、風のままに漂っている。
 それが啓子には、よく分った。
 
「やっと会えましたね」
 と、原は言って、大きな体を、可《か》愛《わい》いピンクのカバーをかけたソファに沈めた。
「ともかく一人になる時間がないんですもの」
 と、庄子ユリアは言った。「何かお飲みになります?」
「いや、表で散々飲んで来たのでね」
 と、原は首を振った。「大丈夫ですか、川北竜一の方は」
「彼は明日、仙台で舞台挨《あい》拶《さつ》」
 と、ユリアは言った。「私にも一緒に来い、って言ってたんですけど、仕事が入ってる、って断っちゃった。嘘《うそ》じゃないから、大丈夫」
 ユリアの、小さなマンションである。
 華やかなアイドルといっても、大した給料をとっているわけではない。
「長居はしません」
 と、原は言った。「お話を伺いましょう」
「いつか、おっしゃったでしょ。その——川北と切れる方法がある、って」
 ユリアは、神経質そうに、手にしたブラシをいじっていた。
「危険は伴いますよ」
 と、原は言った。「それに、問題はあなた自身の気持です」
「どういう意味?」
「川北に、少しでも未練があるのなら、やめた方がいい。もう完全に縁を切って、彼がどうなろうと構わない、という決心がついていない限り、同情する気持のひとかけらがあっても、失敗しますよ」
 アイドルは、この世界の裏を知り尽くしたようなこの男を、じっと見つめていた。
 川北のいた劇団のマネージャーだった男。ユリアが言ったことを、川北へ告げ口しないと、どうして分るだろう?
 しかし、直感的に、ユリアはこの男を信じたいと思っていた。
「平気です」
 と、ユリアは言った。「川北がどうなろうと。もううんざりしてるんです」
「なるほど」
 と、原は肯《うなず》いた。「では、やりようもあるでしょう」
 ユリアは、表情の全く読みとれない、この太った男をじっと見つめて、
「力になって下さる?」
 と、訊《き》いた。「もちろん、お礼はします。あなたのご希望は?」
 原は黙っていた。
 ユリアは、ちょっとためらってから、
「お金でも……。私のこと——私の体でもいいわ」
 原はニヤリと笑った。
「自分のことはよく分ってますよ。お言葉だけで結構」
「でも……」
「あなたのような若い娘を満足させられる自信もありませんしね」
 と、原は言った。「こういう話のときは、相手が切り出すまで待つんです。そうでないと、自分が弱い立場になる」
 ユリアは、この不思議な男を眺めていた。
「来週はイヴだ」
 と、原は言った。「川北は、ホテルSのイベントに出る。あなたもね」
「ええ……。そのまま泊ろうって。頭痛がするって、逃げて来ようかと思ってるんです」
 と、ユリアは口を尖《とが》らした。
「いや、言われる通りにしておきなさい」
 と、原は言った。「イヴの夜がチャンスです。——色んなことが起こる夜だ。何があってもおかしくない。そうでしょう? 終りのない夜、とでも言いますかね」
「何が起こるんです?」
「まあ、私に任せて下さい」
 原は、大きく息をついた。「うちの劇団の人間が二人出ます。スケジュールは全部つかんでいる。——ただ、あなたといつ連絡できるか、ですね」
「ここに来て下さって構いません。川北は決してここに泊らないわ。夜中なら、たいていここにいます」
「この一週間のスケジュールを、見せて下さい」
 ユリアがノートを取って来て、原に差し出す。原はしばらくそれを眺めていたが、パタッと閉じて、ユリアへ返し、
「殺人的だな、正に」
 と、笑った。「いいですか、この一週間、川北に逆らったりしないように。甘えてみせるんです。そうすりゃ、ああいう男は、すぐつけ上る」
「分りました」
「では——」
 と、原は重そうに体を持ち上げると、「またお会いしましょう」
「待ってますわ、連絡を」
 原は首を振って、
「あなたは、あまり知らない方がいい。後で何も知らなかった、ということにするためにもね」
 と、言った。「では、おやすみなさい」
 原は、静かに出て行った。
 
「不思議だな」
 と、村松は言った。
「何が」
 五月麻美が後ろの座席で、面倒くさそうに言った。
 村松はチラッとダッシュボードの時計を見た。——大丈夫。TV局に十五分前には着ける。
 赤信号で停っていると、横断歩道を渡って行く、セーラー服にコート姿の女学生たちの一団が、麻美に気付いた。
 みんな口々に何やら騒ぎながら、車の中を覗《のぞ》き込んでいる。
 信号が変わって、車が走り出すと、女学生たちが手を振った。麻美も手を振り返してやると、またキャーキャー騒いでいる。
「——私も、あんなころがあったのね」
 と、少ししてから、麻美は言った。「スターに憧れた時代。大人の汚ない世界も、何も知らない時代がね」
「今だって若いですよ」
 と、村松が言うと、麻美は笑って、
「今さらセーラー服の役はできないでしょ」
 と、ため息をついた。「一瞬の内に過ぎ去っちゃうわね、若さなんて。——ね、完ちゃん」
「はあ」
「さっき『不思議だ』って言ったのは、どういう意味?」
「ああ……。いや、大したことじゃないんです。川北のこと、どうして手を切らないでいるのかと思って」
「あら、やきもち?」
 と、麻美は楽しげに言った。
「違いますよ」
 村松は少し赤くなった。「ただ——もうちっとも未練なんかないみたいに見えるもんですから」
「お互いにね」
 と、麻美は肯いた。「私も、もう川北には飽きたし、川北はあの子に夢中」
「庄子ユリアですか。いい加減、事務所の方じゃ迷惑顔みたいですよ」
「川北はそう思ってない。そういう男よ」
「他にもいるらしいですしね、女が」
「知ってるわ。昔いた劇団の女ね。——ね、完ちゃん」
「はあ」
「今、私が川北と別れたら、世間にはどう見える? 今は悔しいけど川北の方が売れてるわ。私の方がずっと年上。私が川北に捨てられたと見られる。そんなのごめんよ」
 スターのプライドが、少し強い口調に出ていた。「特に、あんな女の子に取られた、なんて週刊誌に書かれたら、冗談じゃないわ」
「そうですね。しかし——このまま、放っとくんですか?」
 麻美はそれには答えず、
「そうだ。完ちゃん、クリスマス・イヴは空けてあるんでしょ?」
「はあ、一応……」
「いいのよ。もし彼女でもいるんだったら、そっちへ行っても」
「そんなの、いませんよ」
 と、村松は苦笑した。
「じゃ、ホテルSに付合ってね」
「取れたんですか」
 と、びっくりして訊《き》く。
「もちろんよ」
 無理を通すことに慣れた、スターの言い方だった……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%