日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

花嫁の卒業論文07

时间: 2018-06-28    进入日语论坛
核心提示:6 隠された事実「疲れた」 と、黒田忍はいつもの通りこぼしていた。「肩も腰も痛いよ。もう年齢《とし》ね」「女将《おかみ》
(单词翻译:双击或拖选)
 6 隠された事実
 
「疲れた……」
 と、黒田忍はいつもの通りこぼしていた。「肩も腰も痛いよ。もう年齢《とし》ね」
「女将《おかみ》さん、今、案内所から電話で」
 と、仲居の一人が顔を出す。
「ああ、団体さん、着いたって? ——困ったもんね。とんだニュースが流れて、キャンセル続出ってことになんなきゃいいけど」
 と、椅子《いす》にかけたまま、首を左右へかしげて肩の痛みを確かめる。
「そうじゃないんです。問い合せが殺到してて、電話がパンクしそうなんだそうで」
 黒田忍は目をパチクリさせて、
「問い合せ?」
「旅館の予約申し込みで、TV局とか、雑誌とか週刊誌とか。——うちで何人くらい引き受けられるかって訊《き》いて来てます」
 忍は目を輝かせて立ち上ると、電話へと走った。
「——もしもし! ——ああ、私よ。——ええ、そりゃ何百人でも、って言いたいところだけどね。——今、予約を見るから、待ってね」
 台帳をくって、「今夜なら、あと三十人は大丈夫。——ええ、二人で一部屋使っていただかないとね。もちろん、三人でも四人でも。——ええ、じゃ、連絡して!」
 まるで夢みたいだった。
「——そうよ! これがチャンスだわ。この温泉の名が日本中に知れ渡るのよ!」
 と、誰に話しかけるわけでもないが、大声で叫んでいるので、みんなびっくりしている。
「ちょっと! ——私、ひと風呂《ふろ》浴びてくるからね」
 と、声をかけ、「今、閉まってるわね」
「はあ。あと一時間で開けます」
「じゃ、ザブッと浴びてくる。台所に、今夜あと三十人分、材料仕入れとけって伝えて!」
 忍は小走りに廊下を大浴場へ急いだ。
 思いもよらない展開だ。てっきり人が寄りつかなくなると思ったのに……。
「変な世の中ね。——ま、ありがたいけど」
 と、ひとりごちて、〈女湯〉の戸をガラリと開ける。
 夕方まで、一旦《いつたん》閉めて掃除をする。それもすんで、大浴場はいやにシンと静かだった。
 忍は、熱いお湯に浸《つか》って、大きく息をついた。——稼ぎどきだ。
 こんな田舎の温泉では、しょせん頑張ってもたかが知れている。今はマスコミの時代、宣伝の時代である。
 この事件のニュースが全国に流れる。ニュースの時間だけでなく、きっとワイドショーとかのレポーターもやって来る。
 そのスタッフだけで結構な人数になるだろう。しかし、K温泉の名が全国に広まる効果たるや……。
 しかも、この宣伝はタダ[#「タダ」に傍点]と来ている。
 そうだ、少し若い人向けに、カラオケの機械も新しくしよう。ここで客を呼ばなきゃ、商売人じゃないわ!
 何だか、急に肩こりも腰痛もふっとんでしまったようで、忍は張り切っていた。
 が——せっかくの張り切りぶりも、空《むな》しかったのである。
 ゆっくりと戸が開いて、誰かが入って来た。
 ヒヤッとした空気が首筋に感じられて、忍は振り向こうとした。
 そのときには、もう振り上げられた手おけをよける間もなかった。——何度も何度も、水しぶきを上げて、手おけは忍の頭を打ち続けた。
 
「——大丈夫ですか?」
 と、江利は言った。
「もう何ともねえよ」
 と言いながら、山辺は足下がふらついて、
「危い!」
 と、江利に支えられて何とか倒れずにすんだ。
 実際、危かった。——何しろ、階段から滑り落ちて完全に気絶。
 意識は取り戻したものの、まだクラクラしていた。
 見栄を張って、
「散歩に出る」
 と、旅館の下駄《げた》をはいて出かけた山辺を、江利は心配して追いかけて来たのだった。
 しかし、山辺としては立場がない。
 人に頼まれたとはいえ、殺すはずの当の相手から介抱されるというのは、情ない話である。
「誰も頼んじゃいないだろ!」
 と、強がって、「一人で行きたいんだ。放っといてくれ!」
 と、江利の手を振り払って町の通りを歩いて行く。
 しかし、温泉町の常で、道はかなり高低があって、坂もあれば二、三段の石段もある。急いで歩こうとする山辺は、つい足下を確かめずにけつまずいて、
「ワッ!」
 と、転びそうになる。
 その度に、江利が駆けて来て、
「大丈夫ですか?」
「何でもない!」
 と、同じやりとりのくり返し。
 山辺は、苛々《いらいら》して、
「ついて来るなと言ってるだろ!」
 と、江利を怒鳴りつけた。
「でも……」
 江利もさすがにムッとして、足を止める。
 二人して往来でにらみ合っていると、
「ごめんなさいよ」
 と、荷物をしょったお婆《ばあ》さんが二人の間を割って、「ふう」と息をつくと、大分曲った腰を精一杯伸ばして、山辺と江利の顔を交互に眺め、
「——ははあ」
 と言った。
「何が『ははあ』だよ」
「よくいるんだ、あんたたちみてえのが」
「何が」
「ハニムーン[#「ハニムーン」に傍点]に来て、ケンカばっかりしとる若いもんが」
 カッカッと声をたてずに笑って、「大丈夫だよ」
「大丈夫って、何のこと?」
 と、江利が訊《き》く。
「見りゃ分るんだよ。年寄りの目にゃ狂いはねえ。おめえさんたちゃ、うまくいく」
「へ?」
「ちったあ、我慢する稽古《けいこ》をしな。今の若いのは我慢ってこと、知らねえ。——悪いこたあ言わねえから、仲直りして、今夜はせっせと可愛《かわい》がるんだな。明日は二人で手つないでこの道を歩いてるさ」
 と言って、そのお婆さん、またカッカッと笑うと、「——さて、行くかね。お邪魔さん」
 と、荷物を背に、よっこらしょと弾みをつけて、坂を上って行く。
 ——ポカンとしていた山辺と江利は、同時に互いを見て、
「何を勘違いしてやがんだ、あの婆さん!」
「ねえ。——ハニムーン[#「ハニムーン」に傍点]、だって」
 江利は、急に真赤になった。「私たちが新婚さんに見えるなんて、変よね」
「冗談じゃねえよ!」
 山辺も、どぎまぎして目をそらすと、「俺《おれ》は——女嫌いなんだ!」
「あら……。男が趣味なの?」
「違う! 女なんか——いくらだって寄って来るんだ。本当だぞ」
「そう」
「信じてねえな? 嘘《うそ》だと思うんなら、俺の手帳を見ろ。女の名前で一杯だ」
「ワン」
「何だと? ふざけやがって!」
「私じゃないわ」
「ワン」
「ドン・ファン。何してるの、こんな所で」
 と、江利が声をかけると、
「あら、江利さん」
 と、倉本そのみがやって来る。
「あ、どうも……」
「町役場に行くの。塚川さんと紀子さんが待ってるから。あなたもどう?」
「町役場って……何かあるんですか」
「岬信介の原稿とか日記があるかもしれないって。——こちらは?」
 と、そのみが山辺を見て言った。
「あの——ハニムーン[#「ハニムーン」に傍点]です」
「え?」
「旅館で、ちょっと階段を転がり落ちて」
「お前が急に戻って来るからだろ!」
 と、山辺は言い返した。
「まあ、いけないわ。頭が悪くなるかも」
 と、そのみは改めて山辺を見直し、「却《かえ》って良くなったかもね」
 山辺は、腹を立てるのも忘れて(?)江利と倉本そのみが、あの足の短い変な犬を連れて行ってしまうのを見送った。
「——何言ってやんでえ! 人を馬鹿《ばか》にしやがって!」
 怒ったのは、二人の姿がとっくに見えなくなってからで、正にそのみの言葉を裏付けることになったのだった。
 
「——たぶん、この辺の段ボールの中にあると思うんですけどね」
 と、若い職員が埃《ほこり》のつもった段ボールを抱えてやって来た。
「どうもすみません」
 と、亜由美は言った。「後は私たちでやりますから」
「ま、ごゆっくり」
 ——感じのいい若者である。
「亜由美さんの魅力ですね。凄《すご》いなあ」
 と、紀子はしきりに亜由美のことに感心している。
「ともかく、中を開けてみましょう」
 小さな会議室を貸してくれたので、二人はそこで箱を開くことにした。
「倉本さんが来るまで待ちますか」
「いえ、その必要ないわよ。開けてしまいましょう。その内に来るわ」
 亜由美は、埃を手で払ってフッと吹くと、箱のふたを開けた。
「——私、これからどうしよう」
 と、紀子が言った。
「え?」
「俊子さんっていう人が、大江さんの娘さんだったなんて……。私、大江さんに申しわけなくて」
「そう。——気持は分るけどね。でも、心中って、大人が自分で選んだ道よ。何もあなたのお父さんが俊子さんを殺したわけじゃない。あなたが自分を責めることないわ」
「ええ……」
「さ、ともかく中の物を出してみましょ」
 しかし、どうして岬信介の物が町役場にしまい込まれていたのだろう。
 箱の中には雑多な物が詰め込まれていた。
 写真立て、額縁、筆記用具……。
「これなんか、もし〈岬信介記念館〉でもできたら貴重よね」
 二人が中の物をテーブルに並べていると、ドアが開いて、スルリとドン・ファンが入って来る。
「倉本さん、今、出してるところです」
「やっぱりあったの? すてき! これで卒論が書けるわ」
 と、そのみは身近なところで喜んでいる。
「——岬信介の遺書が見付からないかと思ってるんですけどね」
 と、亜由美は言った。「倉本さん。——どうかしたんですか?」
「いえ……。あの人——矢田部江利さんだっけ。一緒にそこまで来たのに、どうしたのかしら?」
「役場の入口のパンフレットでも見ているんじゃないですか」
「そうね……。あの人も可哀《かわい》そうに」
 そのみの言葉に、亜由美はちょっと手を止めて、
「頭をお風呂《ふろ》でぶつけたからですか?」
「それもそうだけど……。私に助けられちゃ、立つ瀬がないでしょ。私のこと、殺したいくらい憎んでるはずなのに」
 亜由美と紀子が顔を見合せる。
「私の付合ってる沢木って人がいるんだけど、あの江利さんって、沢木の恋人だったの。私のせいで捨てられたのよ」
 と、そのみは言った。「きっと、私のこと殺すつもりで近付いて来たんだと思うの。それが足滑らして頭打って……。やり切れないでしょ」
 おっとりと言っているが、亜由美は呆気《あつけ》に取られて、
「それが分ってて、一緒に朝ご飯食べたりしたんですか?」
「そう、お礼言わなきゃ。——私の彼氏が、『ろくでなし』だってことを、教えてくれたものね」
「はあ……」
「母が心配して、沢木の素行を調べさせたの。そしたら、もう……。貧しくたって、ケチだっていいのよ。でも、私の方がお金持だっていうだけで、あの人を捨てるなんて。——許せないわ」
 淡々と言うだけに、却って怖い。
「ごめんなさい、邪魔して。さ、続けましょう」
 と、そのみが箱の方へ手をかけたとき、
「キャーッ!」
 と、悲鳴が聞こえた。
「——今の、江利さんの声だわ」
 と、そのみが言った。
「ワン!」
 ドン・ファンがひと声鳴いて、会議室から飛び出して行く。
 亜由美たちも、その後を追って駆け出した。
「——どうしたんですか!」
 亜由美が表に飛び出すと、あの段ボールを出してくれた若い職員が、
「あの——ここにいた女の人がトラックに——」
「トラック?」
「小型トラックです。男が二人、女の人をかつぎ込んで、連れてっちゃいました」
 遠くに、トラックが走り去るのが見えた。しかし、とても追いつけまい。
「どこのトラックとか——男たちの顔に見憶《みおぼ》えありません?」
「さあ……。はっきり見るだけの余裕もなかったんですけど」
 江利をさらって、どうしようというのだろう?
「何を騒いでんだ?」
 と、やって来たのは山辺だった。
「あ、階段から転がり落ちた人ね」
 と、そのみが言った。
「そんな名前じゃない! ちゃんと、山辺って名前があるんだ」
 と、むくれている。
「江利さんがさらわれたのよ」
「何だって!」
 山辺はわけの分らない様子で、「あの女が? あんなのさらう物好きがいるのか?」
 すると、そのみが、いきなり拳《こぶし》を固めて、山辺の顎《あご》を一撃した。——山辺は不意を食らって引っくり返り、目をパチクリさせているばかり。
「——どうしました?」
 と、声がした。
「あ、殿永さん! 今、女の子が一人さらわれて——」
 と、亜由美が言いかけて、「何があったんですか?」
 殿永の厳しい表情に気付いたのである。
「あの旅館の女将《おかみ》が殺されたんです」
 と、殿永は言った。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%