日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

シングル11

时间: 2018-06-28    进入日语论坛
核心提示:11 目 撃「このマンションでどうです」 と、安東はパソコンのディスプレイに、部屋の間取りの図面を呼び出した。「3LDK。
(单词翻译:双击或拖选)
 11 目 撃
 
「——このマンションでどうです」
 
 と、安東はパソコンのディスプレイに、部屋の間取りの図面を呼び出した。「3LDK。
 
——当分、あなた一人でいるには、充分でしょう」
 
「広すぎますよ」
 
 と、涼子は言った。「それに大学生の身分で、そんな高いマンション……。とてもお金だって払えません」
 
「もちろんタダですよ」
 
 と、安東は当り前という口調で、「これはお礼のつもりです。気にしないで下さい」
 
「そんなわけには……。あんな高い服までいただいてるのに」
 
 ——妙な状況だった。
 
 安東の巨大なリムジンの中。パソコンの画面を見ながら、「家捜し」をやっているのだから。
 
 そして車はいつしか——郊外の道を走っている。あんまり静かに走るので、涼子は、車が停まっているのかと錯覚するほどであった。
 
 どこへ行くつもりだろう?
 
 涼子の中に、不安が頭をもたげて来る。
 
「命を助けてもらったんですからね」
 
 と、安東は言った。「こんなことぐらいはさせていただかないと」
 
「でも……」
 
「心配は分りますよ。——こんな奴と係り合って、後で厄介なことになるんじゃないかと思ってるんでしょう」
 
「そういうわけじゃ……」
 
 と、涼子は口ごもった。
 
 いくらそう思っていても、面と向かって口に出せるか!
 
「あなたは正直な人だ」
 
 と、安東が笑った。「いや、歓迎されざる人種だってことは、こっちも百も承知ですよ」
 
 涼子は、安東の笑顔に、ハッとするほど無邪気なものを感じとって、驚いた。
 
 チラッと涼子が外へ目をやる。
 
「ちょっとした別荘がありましてね」
 
 と、安東が言った。「とりあえずの宿に、と思ったんです。ここでマンションを決めても、今夜から泊るってわけにはいかないでしょう」
 
「はあ。でも……」
 
「ご心配なく。ちゃんと送り届けてすぐに引き上げます」
 
 と、安東は言った。
 
 本心だろうか? しかし、こんな連中の言うことなんか、信じられるだろうか。
 
「——安東さん」
 
「何です?」
 
「どうして……命を狙《ねら》われるようなことに?」
 
 安東は、ちょっと肩をすくめて、
 
「力の世界ですよ。色々、表向きは変わっても、中身は同じ」
 
「縄張り争い、とかですか」
 
「というより、中での勢力争いですね。ご覧の通り、若くて幹部になった分だけ、ねたまれても、恨まれてもいるわけです」
 
 安東は、細くて長い指を、軽く組み合せて、「もともとは、チンピラだったんですよ。少々手先が器用だったのでね。重宝がられている内に、のし上がったというわけです」
 
 手先が器用?——でも、棚を吊《つ》ってやった、といった話ではなさそうである。
 
「あの——女の方、可《か》愛《わい》いですね」
 
 と、涼子は話をそらした。
 
「ミキですか。少し頭の中身は軽いが、気も楽でね」
 
 と、安東は笑った。「あなたの彼氏はなかなか魅力的だ」
 
 涼子は少し顔を赤らめ、
 
「夫です」
 
 と、訂正した。
 
「そうそう。失礼しました」
 
 と、安東は言った。「幸せ者だな、こんなすてきな奥さんがいるとは」
 
「あなたは……独身ですか」
 
「そう。一生そうでしょうね」
 
「どうしてですか」
 
「いつ消されるかも分らない身ですよ。女房子供は厄介だし、もしものときは可《か》哀《わい》そうだ。——俺も両親を知らずに育ったのでね」
 
 安東はそう言ってから、「おっと、こんなことを話したのは初めてだ」
 
 と、笑った。
 
 パソコンのディスプレイにパッと文字が出て、ピッと音がした。それを見た安東の顔が緊張した。
 
 その画面は、いやでも涼子の目に入る。
 
 ディスプレイには、〈和代を見付けました〉と文字が出ていた。
 
 
 
 全くの偶然だった。
 
「——ゴミ、下へ出しとかなきゃ」
 
 と、山崎聡子が言って、立ち上がる。
 
「でも——朝出さないと、うるさいんじゃないの?」
 
 と、辻山が言った。
 
「このアパートはね、下にゴミを置いとく場所があるの」
 
 と、聡子は言った。「もちろん、表に出すのは朝よ。でも、出がけにゴミを持って出るのは大変だから、下まで下ろしとくの」
 
「なるほど。いいなあ、そいつは」
 
 アパート住いの人間にとって、ゴミを前の晩に出しておけないというのは、悩みの種の一つである。一戸建てでも事情は同じだろうが、アパートは何世帯も入っているので、特にゴミの量も多い。
 
 たまの休みでも、ゴミを出す日だと、朝起きなくてはならない。——寝不足の身には辛《つら》いものである。
 
「一人じゃ大変でしょ」
 
 と、和代が言った。「私も運ぶわ」
 
「いや、僕が——」
 
「あなたは座ってて」
 
 と、和代が抑える。
 
「でも、外へ出ない方が……」
 
「外っていっても、アパートの裏手へ回るだけ。大丈夫よ」
 
 と、和代は笑って、「少し外の空気も吸いたいし」
 
「そうね。夜だし。大丈夫でしょ」
 
 と、聡子も肯《うなず》いた。「じゃ、その新聞もついでに……。そう、紙袋に入れて」
 
「チリ紙交換に出さないの?」
 
「たまってる方が煩しいわ。——じゃ、行きましょ」
 
「ええ」
 
 聡子と和代は、ゴミを手に部屋を出た。
 
 二階から階段を下りて、一《いつ》旦《たん》アパートの外へ出る。
 
「——こんなに広かったのね、外って」
 
 と、和代は笑って言った。「もちろん、ぜいたくは言わないけど」
 
「さ、裏へ」
 
 グルッとアパートのわきを回って、ゴミ置場に、そっとゴミを並べる。
 
「——ね、どう、あの人と、うまくやってけそう?」
 
 と、聡子は表の方へ戻りながら言った。
 
「辻山さん? いい人ね、本当に」
 
 と、和代は心から言った。
 
「出世とは縁のない人だけど、でも人間として信じられるの。毎日、仕事しながら見てるから、確かよ」
 
「分るわ……。私も、あんな人にもっと早く出会ってたらね」
 
 と、和代は、ちょっと足を止め、夜空を見上げた。「私……自分の、島崎への気持こそが愛だと思ってた。でも、そうじゃなかったのかもしれない。ただの意地だったんじゃないかって……。今は、そんな気がしてるの」
 
「和代……。やり直して。ね。どこか遠くでさ」
 
「辻山さんみたいな人、どこかよそにもいるかしら」
 
「辻山さんを連れてく?」
 
「だめ」
 
 和代が首を振って、きっぱりと、「いつ、どんなことがあるか分らないのよ。あんないい人、巻き添えにしたくない」
 
「でも——」
 
 と言いかけて、聡子は、「ともかく、戻りましょ。部屋に」
 
 と促す。
 
 二人がアパートの中へ入って行くのを、離れた所から見ていたのは、弟の所へ行って、帰り道、たまたま通りかかった、安東の子分の一人。
 
 本当にチンピラなので、もし和代の方で見たとしても、顔は分らなかったろう。しかし、チンピラの方では、しっかり和代の顔が頭に入っていたのだ。
 
「あいつだ……」
 
 何度も目をこすった。——チャンスだ!
 
 これで、兄貴分になれるかもしれねえぞ!
 
 チンピラは、あわてて近くの公衆電話を捜したが——捜すと、一向に見付からないもので、焦っているから余計である。
 
 やっと見付けたときはハアハア息を切らしていた。——古い電話だ。テレホンカードは使えず十円玉のみ。
 
 興奮していたせいで、手が震えて十円玉を何回も落してしまう。やっと組へ連絡できたのは、和代を見かけてから、十五分以上たってからだった。
 
 
 
 安東はディスプレイの文字をパッと消した。
 
「——安東さん」
 
 と、涼子は思わず言っていた。「和代さんって、島崎とかいう人を殺した——」
 
「あんたは見なかったことにしなさい」
 
 と、安東は鋭く言って、車の中の電話を取った。
 
 涼子は、忘れていなかった。あの、包帯を巻いた刑事が、
 
「和代は殺させない」
 
 と言っていたことを。
 
 つまり、安東たちが先に見付ければ、間違いなく和代という女は殺されるだろう、ということだ。
 
「——俺だ。和代を見たって?——ああ。——どこだ?」
 
 安東は厳しい表情で言った。「——うん、分った。いいか、俺がこれからそっちへ行く。それまで誰も手を出すな。いいか。よく言っとけ。分ったな。——すぐそっちへ向かうからな」
 
 安東は電話を切ると、涼子の方へ、
 
「申しわけありませんが、別荘へ行くのは後回しということに」
 
「ええ。でも——」
 
 安東は、運転している子分へ、
 
「おい、聞いてたな」
 
「へい」
 
「急いでそこへ行くんだ!」
 
「Uターンします」
 
 長いリムジンが、大きくカーブを切って、中央分離帯をまたいでガクンガクンと揺れる。
 
 強引に反対の車線へ入ったリムジンは一気にスピードを上げた。——凄《すご》い馬力なのだろう。
 
 乗っていても、猛烈なスピードを出していることが、涼子にも感じられる。
 
「安東さん」
 
 と、涼子は言っていた。「余計なことと叱《しか》られそうですけど……。その女の人を殺さないで」
 
 安東は、黙っていた。——何を考えているのか、涼子には想像もつかなかったが……。
 
 
 
 ミキは、退屈しのぎに、安東のパソコンの画面を眺めていて、和代を見付けたという、同じ文字を見た。
 
「へえ……。もうおしまいね」
 
 と、呟《つぶや》いていると、
 
「あの——親分は?」
 
 と、竜が顔を出した。
 
「出かけてるわよ」
 
「そうですか。すみません」
 
 と、竜は頭を下げ、行きかける。
 
「でも、戻る途中。あの女を見付けたんですって」
 
 竜が、ちょっと間を置いて、
 
「あの女?」
 
「ほら——小田切とかいう——」
 
 竜の顔がサッと紅潮する。
 
「本当ですか?」
 
「見て」
 
 と、ミキがパソコンの画面を指さした。
 
「どこにあの女……」
 
「さあ、そこまで知らないけど」
 
 と、ミキは肩をすくめた。
 
「失礼します」
 
 竜が、飛び出して行く。
 
「忙しい人」
 
 と、ミキが首をかしげる。
 
 電話が鳴った。
 
「——もしもし。——あ、私よ」
 
 ミキは嬉《うれ》しそうな声を出した。
 
「ミキ、そこに竜の奴、いるか?」
 
 と、安東が訊《き》いて来る。
 
「竜さん? いないわ」
 
「そうか。じゃ、いいんだ」
 
「今、出てったとこ。呼んでみる?」
 
「——今? もしかして……あの女のことを?」
 
「うん。ここのパソコンに出てたもん」
 
「そうか……」
 
「ねえ、どこへ行くところだったの? もしもし?」
 
 電話は切れてしまった。
 
「——何よ!」
 
 不機嫌に、ミキはふくれっつらをしたのだった……。
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%