日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

フルコース夫人の冒険07

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:7 母娘《おやこ》坂《ざか》 なつきが、町を歩いて来る。 何だかお伽《とぎ》の国みたいな、可愛《かわい》い家並み、芝生の
(单词翻译:双击或拖选)
 7 母娘《おやこ》坂《ざか》
 
 なつきが、町を歩いて来る。
 何だかお伽《とぎ》の国みたいな、可愛《かわい》い家並み、芝生の緑、つ《ヽ》た《ヽ》のからまる赤い柵……。
 その中で、なつきはまるで空中を飛んでいるかのように、颯《さつ》爽《そう》としていた。
 そう。——本当に、地面を踏んで歩いているのだとは信じられないくらい。
 いささか悔しい思いと共に、さやかは自分の母が、こんなにすてきな人だったのか、と改めて感心していた。同時に、私もお母さんに似ていて良かったわ、と考えてもいた……。
 なつきが、ふと足を止めると、降り注ぐ陽《ひ》射《ざ》しに、少しまぶしそうに目を細め、カメラの方を向いて、ニッコリ微《ほほ》笑《え》んだ。
 ——しばし、誰も動かなかった。
 やがて、当惑の気配が、辺りに漂う。みんなの視線が、カメラの横に立った一人の男に集中した。
 その男は、ポカンと口を開け、何だか見てはいけないものを見てしまったかのように、少々怯《おび》えている目つきで、なつきから目を離さずにいた。
「監督!」
 たまりかねて、藤原がつつくと、
「——ん。そうだ! カット!」
 ホッとして、みんなが息をつく。レントゲンを撮る時に、
「はい、息を止めて」
 と言われてそれきり放り出されていたようなものだったのである。
「——いかがでした?」
 と、なつきが監督の方へ歩いて来る。
「すばらしい! OKです。これ以上のOKがあり得ないくらいのOKですよ!」
 ひげづらの監督は、やおらなつきの手を取ると、その甲にチュッとキスしたのだった。
「まあ、恐《おそ》れ入ります」
 なつきは、少し赤くなって笑った。
「——お母さん」
 さやかが声をかける。
「あら、さやか! いつ来たの?」
「二十分ぐらい前」
「全然気が付かなかった。——くたびれたわ、本当に!」
 と、なつきは大げさに息をついた。
「お疲れさまでした」
 と、藤原がやって来て、「いや、すばらしい。このCFは今年最大の話題になりますよ!」
「まあ、お世辞がお上《じよう》手《ず》で」
 と、なつきは笑って、「あ、さやかは初めてね。藤原さん……」
「どうも」
 と、さやかは藤原に頭を下げて、「母は、スターになれそうですか?」
「さやか、何を言ってるの」
「さやかさん」
 と、藤原は真《ま》面《じ》目《め》な顔で言った。「あなたのお母さんは、生まれながらのスターですよ」
「——へえ」
 藤原と別れ、なつきとさやかは、二人して近くの駅へと歩き出していた。さやかは、母の方を冷やかすように見て、
「お母さん、生まれながらのスターですって」
「ああいう人は口がうまいのよ。それがお仕事ですもの」
「それだけじゃないと思うけどな」
 と、さやかは言った。「お母さん、これでまた映画に出てくれとか言われたら、どうする?」
「一日で終るCFとは違《ちが》うのよ。とてもじゃないけど……」
「そう。それがいいね」
 さやかは母の腕に、自分の腕を絡ませて、「お母さんが家にいつもいないんじゃ、寂しいもんね。今でもあんまりいないけど」
「それ、皮肉?」
 母と娘は、一緒に笑った。
 ——日曜日。すばらしく晴れ上がった、穏やかな日だった。
 さやかも、やっぱり気になって、撮影現場までやって来たのである。一日で終るとはいっても、そこはやはりプロの仕事で、たっぷり朝から午後遅くまでかかってしまった。
「——さやか」
 と、なつきはふと思い付いて、「お父さんは?」
「家にいるよ」
「お昼、何か食べたのかしら」
「知らないけど、子供じゃないんだから、自分で何とかしたでしょ。カップラーメンもあるし」
「そうね」
 と、なつきは肯《うなず》いた。
 その、母娘《おやこ》の後ろ姿を、並んで見送っていたのは、藤原と、このCFの監督、雨《あま》宮《みや》である。
「いいなあ、絵になってる」
 と、雨宮が、首を振りながら、「母と娘の語らい。——美しい光景だ」
 まさかカップラーメンの話をしているとは思わないのである。
「ね、監督、いいでしょう?」
 と、藤原など、若き日の思い出もこみ上げて来て、感傷で目をうるませている。
「いいなんてものじゃない。——君が見付けて来たんだって? どこで捜したんだ」
「それはまあ……。企業秘密ですよ」
「このCFは絶対に評判になるぞ。奇をてらったCFの多い中で、あくまでスタンダードにやる。素材の良さだけで充分いけるからな!」
 雨宮がこんなに興奮しているのは珍しい。大体がクールで、ビジネスライクな男として知られているのである。
「うちの社長も、この出来を見たら、絶対に本腰を入れて、売り出そうとしますよ」
 と、藤原は言った。「何とか口《く》説《ど》き落として、映画にと思ってるんですがね」
「そいつは君の腕次第だな。しかし——」
 と、雨宮は藤原の肩をギュッとつかんで、「もし映画となったら、俺《おれ》にやらせてくれよ! 頼むぜ」
「話しときますよ、社長に」
 と、藤原は逃げた。
 確かに、雨宮はCFの世界では「巨匠」である。しかし、十秒とか五秒とかが勝負のCFと、一時間半の映画では、才能の質が違って来る。
 藤原としては、じっくりと、中沢なつきの魅力を引き出してくれる監督を選びたかった。もちろん雨宮がだめだというわけではないのだけれど……。
 それに、社長が何と言うか。——いくら藤原や雨宮が惚《ほ》れ込んだって、要は金を出すところの問題になるのだから。
 ——複雑な気分だった。
 藤原としては、かつての「自分だけのアイドル」を、他人の目にさらすことに、抵抗もある。しかし、この仕事を進めない限り、なつきと会うこともできないのだから……。
 
「——いかがです?」
 藤原は、明るくなった試写室で、社長の顔色をうかがった。
「うむ……」
 社長の舟《ふな》橋《ばし》は、そう言ったきり、しばらく口をきかなかった。
 気に入らなかったのかな、と藤原は思った。
「あの、これはまだ編集前のフィルムですから。もっときちんと整理して——」
「もう一度見たい」
 と、舟橋は言った。
「はあ……」
 何度も撮り直したりして、そのNGの分も全部上映している。再び試写室が暗くなって、カタカタと機械音がした。
 NGのカットの中に、見物人が入り込んだ所があった。カメラがずっと横に振って行ったら、そこに立っていた野次馬が、画面に入ってしまったのである。
 そこに、さやかも入っていた。
「社長、あれが——」
 中沢なつきの娘ですよ、と言おうとしたら、
「止めろ!」
 と、舟橋が怒鳴った。「フィルムを止めろ!」
 画面が静止した。
「——社長、何か?」
 と、藤原が訊《き》いた。
「その女の子は何だ?」
 と、舟橋は腰を浮かしている。
「あの正面のですか? 中沢なつきの娘さんです。さやかといって、なつきさんの若いころとそっくりで——」
「いける!」
「は?」
「あの子はいける!」
「しかし——」
「母親の方も、もちろんいい。しかし何といっても娘の方が先が長い」
「そりゃそうですが——」
「親子共演ってのはどうだ? 実の母と娘が映画でも母と娘をやる。しかも二人とも初々しい新人!」
「なるほど」
「これで行こう!」
 舟橋は、出っ張り気味の腹をポンと叩《たた》いた。「来年の正月映画にどうだ。『母娘《おやこ》坂《ざか》』。いいタイトルだ!」
「どうして『坂』が出て来るんですか?」
「そんなことまで知るか。昔から『坂』がつくとしっとりしたドラマと決まっとる」
 無茶な発想である。
「おい、藤原」
「はあ」
「何としても二人を口《く》説《ど》き落とせ。娘の方からでも母親の方からでもいい! 分ったな? 失敗したらクビだ!」
 これ以上、はっきりした説明はあり得ないほど、舟橋の命令は明確そのものであった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%