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フルコース夫人の冒険20

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:20 名もない娘 車が走り出すと、さやかは振り向いて、「あ、手を振ってる!バイバイ!」「あの息子《むすこ》ですか」 と、藤
(单词翻译:双击或拖选)
 20 名もない娘
 
 車が走り出すと、さやかは振り向いて、
「あ、手を振ってる!——バイバイ!」
「あの息子《むすこ》ですか」
 と、藤原が言った。
「なかなか、面白い子よ」
 と、さやかは座席に落ちついて、「ねえ、お母さん」
「いや、なつきさんは不思議な力を持った人ですよ」
 と、藤原は言った。「あの未亡人、別人のように活《い》き活きしてた」
 ——なつきが、とうとう財前母子を庭まで引っ張り出し、記念撮影までしてしまったのである。
「今度、お花の会にご一緒する約束もしましたわ」
「いや、大したもんですよ」
 と、藤原は笑った。
「さやかは?」
「私がどうしたの?」
「あの息子さんと、何かお約束でもしなかったの?」
「いやだ、やめてよ」
 と、さやかは肩をそびやかし、「悪い人じゃないと思うけど、好みのタイプじゃないわ」
「あら、結構気が合ってたみたいだったのにね」
「私、ボランティアじゃないの」
 と、さやかは言って、車の外へ目をやった。
 もちろん、黙っていた。あの家の電話番号をメモして、持って来たということは……。
 
「——お疲れさん」
 藤原は、タクシーを先におりて、スタッフに声をかけ、手を振った。
「やれやれ……」
 欠伸《あくび》が出る。夜中の三時だ。
 なつきとさやかについて歩くのも、もちろん藤原の仕事だが、それだけでは終らない。
 なつきとさやかを、家まで送った後、山ほど仕事が残っているのだ。
 それを片付けてマンションへ帰ると、もうこんな時間。
 これで、朝の七時には起きなくては、明日の仕事に間に合わない。
 この年齢《とし》まで独りなのも、無理はない、というところである。
 藤原は、エレベーターに乗ると、また欠伸をした。——さて、今日はどうだろう?
 日を重ねるごとに、絶望的な気分になって来る。
 自分の部屋のドアまで来て、藤原は鍵《かぎ》を出したが、まず手でノブをつかみ、開くかどうかためしてみた。
「——だめか」
 と、ため息をつく。
 鍵をあけ、中へ入って、藤原は、居間へ入って行った。
 ソファに横になって、若い女が、眠り込んでいる。
 この間、藤原が車ではねた女である。
 病院へ運ぶ前に、意識が戻ったのはいいのだが、自分の名前も住所も、何も憶《おぼ》えていない。車にはねられたことも、忘れてしまっていたのだ。
 藤原は、これならうまくごまかせるかも、と、このマンションへ娘を連れて来たのである。
 何日かすれば、記憶も戻るだろうし、そうしたら、金でもやって、口止めすれば……。
 その考えは、悪くないと思えた。ところが——。
 肝心の記憶が、一向に戻らない。
 娘の方も、何だか、台所の仕事をしたり、掃除をしたり、このマンションに居ついてしまいそうな雰囲気になって来た。
 藤原としても、この数日、悩んでいたのである。
 出かけている間に、記憶が戻って、いなくなっているんじゃないか、と毎日期待して帰って来るのだが、今のところ、全くその様子もない。
 といって——今さら警察へ届けるわけにはいかない。今まで放っておいたことを説明できやしないのだから。
 藤原は、肩をすくめて、
「シャワーだけ浴びるか」
 と呟《つぶや》いた。
 バスルームへ入り、汗を流すと、大分疲れも消える。
 何といっても、なつきやさやかと毎日仕事をしているのだ。同じ仕事でも、疲れ方が違う。
 フウッ、と息をついて、バスタオルを腰に巻き、寝室へ入って行く。
 明りをつけて、藤原はギョッとした。
 ついさっき居間のソファで寝ていた娘が、ベッドに入って、目を開いている。
「びっくりさせないでくれよ」
 と、藤原は胸を押えた。「そこで寝たいのかい? じゃ、僕はソファで寝よう。大丈夫さ、慣れてる」
 娘は、ベッドにスッと起き上がった。そしてベッドを出て、藤原の方へ歩いて来る。
 藤原は呆《ぼう》然《ぜん》として、裸の娘を見つめていた。
 娘は黙って藤原の手を取ると、ベッドの方へ引っ張って行く。
 藤原は、何だかわけの分らないうちに、ベッドへ入っていた。そして娘の体が自分の上に……。
 その先まで、「わけが分らなかった」では通用しないとしても、藤原は、最後まで、自分が夢を見てるんじゃないか、という気持でいたのだった……。
 
 朝、藤原は、電話の音で目が覚めた。
「ワッ!」
 手をのばしたら、何か、やわらかいものに触れて、それがあの娘の肌だと知ると、完全に目が覚めてしまった。
 本当に……。何てことだ!
「なつきさん!」
 と、藤原は悲痛な声をあげた……。
 電話の方は、藤原の嘆きに同情する気配もなく、鳴り続けている。
「——はい」
「いつまで寝とるんだ!」
 社長の舟橋の声が飛び出して来た。
「す、すみません」
「早く出て来い! 急用だ」
「何か?」
「何しとったんだ、お前は」
「といいますと?」
「池原洋子と、中沢竜一郎の件だ」
「あ、あのですね——一応、プロダクションへ話をして——」
「手ぬるい!」
「はあ」
「情報が入ったぞ。二人の仲をかぎつけた奴《やつ》がいる」
「週刊誌ですか」
「そうだ。誰かがネタを売ったんだ」
「どうします?」
「それをお前が考えろ?」
 ——藤原は、電話を切ると、ベッドの方を見て、いとも無邪気な顔で寝ている、名前も知らない娘が目につくと、頭をかかえて、天を仰いだのだった……。
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