日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

フルコース夫人の冒険28

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:28 ロ ケ 微妙な天気だった。 晴れもしないが、雨も降らない、という。待っているさやかは苛《いら》々《いら》したが、他の
(单词翻译:双击或拖选)
 28 ロ ケ
 
 微妙な天気だった。
 晴れもしないが、雨も降らない、という……。待っているさやかは苛《いら》々《いら》したが、他のスタッフは慣れっこのようで、池原洋子ものんびりと本など読んでいる。
 なつきはロケバスの中で眠っていた。——さやかは、改めて母の「度胸」に感心した。
「私なんかより、お母さんの方が、よっぽど役者に向いてるのかもしれないわね」
 と、さやかは、ぶらぶらしながら言った。
 もちろん、言った相手は浩志である。——わざわざ鎌倉まで出て来ているのだ。ご苦労様である。
「でも、やっぱり君の方がすてきだよ」
「まあ、ありがと。気をつかっていただいて」
 と、さやかは言って笑った。
 神社の境内だった。——いつでも、撮影に入れるように、カメラマンや助監督が駆け回っている。
 その数、全部で三十人近いだろうか。
 さやかは、画面の外に、いかに多くの人が隠れているのか、初めて知った。
「——ゆうべね」
 と、さやかは言った。「ふっと考えたんだけど」
「何だい?」
「池原洋子が、あの部屋を借りたとするでしょ? そして、藤原さんの話だと、池原洋子がエレベーターに乗るのを見て、藤原さんは追いかけた、ってわけよね」
「うん」
「そして——あの部屋で死体を見付けた」
「そうなんだろ?」
「でもね。それなら、池原洋子が先に死体を見付けてると思わない?」
 浩志は、ちょっと目をパチクリさせて、
「そうか」
 と、肯《うなず》いた。
「ね? 例の部屋に、先に入っていたのなら、池原洋子が死体を見付けてるはずよ。でも彼女は、そこにいなかったのよ」
「どこにいたんだろう?」
「今まで、それを考えなかったの。でもね、考え出すと妙だな、と思えて」
「もし、死体を見付けたとしたら、スキャンダルになるのを恐《おそ》れて、逃げ出したかもしれないよ」
「うん。私もそう思う。でも、翌日の彼女の様子、全く、変ったところがなかったわ」
「それは——」
「女優だからね、確かに。そう装ってるのかもしれないわ。でも、間の時間とかに、少しは不安そうな様子を見せるんじゃないかしら? いくら何でも、現《ヽ》実《ヽ》の《ヽ》殺人に出くわすことなんて、めったにないでしょ」
「そう年中あったら、大変だ」
「ねえ。——だから、思ったの」
「どういうことだい?」
 さやかは、少し雲の切れかかった空を見上げて、言った。
「池原洋子は、あの部屋まで行かないで戻ったんじゃないか、って」
「気が変って?」
「それとも——」
 さやかは、少し声を低くして、「池原洋子が、あの女を殺したか」
「まさか!」
 と、浩志は目を丸くした。
「もちろん、動機とか、見当もつかないわ」
 と、さやかは肩をすくめた。「でも、可能性はあるじゃない」
「そうだな……」
「それなら、全く普通にしているのも、すべて演技ってことになるし。——ともかく、池原洋子がどこへ消えていたのか、それが一つのポイントじゃないのかな、って思ったんだ」   
「なるほど」
 浩志は、感心したように肯いて、「君は、探偵業もやるのか」
 と、言った。
「からかわないでよ」
 さやかは、少し赤くなった。「——ほら、陽《ひ》が出て来た」
 助監督が、二人の方へ駆けて来た。
「本番行きます!」
「はい!」
 さやかは、元気良く答えたのだった……。
 
 周囲には大勢の見物人が詰めかけていて、その視線が集中している所で、演技をする。——さやかも、さすがに少々あがって、テストで、セリフをトチッたりした。
 しかし、そのうち、周囲に誰がいようと、気にならなくなる。そんな気持になってしまうのが、ロケというものの面白いところなのかもしれなかった。
 ——そのさやかの演技を、なつきは傍《そば》で眺めていた。
「すばらしいな」
 と、藤原が、低い声で言う。
「あの子、度胸がいいわ。我が子ながら、感心しちゃう」
「なつきさんの子ですよ、やっぱり」
「まあ」
 監督の早坂が、
「よし、本番行こう」
 と、言った。
 助監督が、見物人の方へ、
「本番ですから、静かにして下さい!」
 と、怒鳴っている。
「おい、エキストラ出して」
「はーい」
 神社の境内をぶらつく男女、七、八人。
 ゆうべの、あの石塚も、大人《おとな》びた格好でその中に入っている。
「——一人、そっちから歩いて来て。——そう。おい、その三人はひとまとめ」
 助監督が、適当にエキストラを散らしている。
 カメラを覗《のぞ》いていた早坂は、
「——OK。じゃ行こう」
 と、肯いた。
 本番。——ピッと緊張が走る。
「陽《ひ》が射してる。今のうちに行こう」
 レフ板という、大きな反射板で、光をさやかに当てて、カメラが、ゆっくりとレールの上を動く……。
 誰が見ても、奇妙な魅力を持った光景である。
 すると——エキストラにしては何だかむさ苦しい感じの男が、トコトコと境内へ入って来て、
「ちょっと——ちょっと失礼します」
 と、声を上げた。
「カット!」
 早坂が頭に来た様子で「そいつは何だ! つまみ出せ!」
 と、怒鳴った。
「いや、失礼」
 と、その男は、ポケットから手帳を出して、「警察の者です」
 と、言った。
「——刑事さん?」
 なつきは目を丸くして、藤原を見た。
「来ましたね」
 と、藤原が、顔をこわばらせる。
「そうね。——でも、平気な顔をしているのよ」
 なつきの方は、至っておっとりしている。
「いや、失礼。撮影中とは知らなくて」
 と、その中年の刑事は、ノコノコ監督の方へとやって来て、言った。
「ともかく、これがすむまで、笑ってて下さい」
「はあ?」
 刑事がキョトンとしている。
「笑うってのは、見えないところへどかせるってことです」
 と、助監督の一人が説明した。
「ああ、なるほど」
 刑事は肯いて、隅の方へ行った。
 ——一体誰に会いに来たのか?
 なつきもさやかも、好奇心に満ちた目を、その刑事の方へと向けた。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%