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やさしい季節02

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:穏やかな午後「ちょっと。石巻さん! 石巻さん!」 肘でつつかれて、石巻浩志はハッと目を覚ました。「や、やあ。どうも」 と
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 穏やかな午後
 
 
「ちょっと。——石巻さん! 石巻さん!」
 肘でつつかれて、石巻浩志はハッと目を覚ました。
「や、やあ……。どうも」
 と、目をパチクリさせている。
「どうも、じゃないでしょ」
 と、隣の席の森山こずえが笑っている。「お客様ですって」
「客?——何の客?」
「いやねえ。大丈夫? 今、会社にいるのよ、分かってる?」
「うん……」
 そう言われたってね。何しろ、ゆうべほとんど寝ていないのだ。
 浩志は頭を振ってから、机の上のお茶をガブッと飲んで、目を白黒させた。
「——苦い!」
「眠そうだったから、うんと苦くしといたの」
 と、森山こずえは愉快そうに言った。「早く受付に行ってらっしゃい」
「ありがとう」
 立ち上がると、少しめまいがする。——寝不足で、昼食をとって、午後の仕事。
 総務にいて、出張の手配だの、伝票の整理だのをやっている身としては、眠気に負けるのも、無理からぬところである。
 安土ゆかりをマンションまで送って、自分のアパートへ戻ったのが六時半。一時間と眠っていない。
 たぶん、ゆかりはまだ眠っているのだろう。それとも、そろそろマネージャーに叩き起こされて、ブツブツ言いながら起き出しているか……。
 ゆかりは昔から寝起きが悪くて、学校にもよく遅刻した。低血圧の体質のせいもあるらしいが、やはり夜になると元気の出るたちで、ついつい夜ふかししてしまうせいだった。
 ——受付に行くと、浩志は、客らしい人間が見えないので、戸惑っていた。
「エレベーターホールで待ってるって」
 と、受付の子が、浩志に声をかけた。「可愛い女の子よ」
「女の子?」
「TVで見たことあるみたいな気がするの。石巻さん、あんな人に知り合いいるの?」
 答えずにエレベーターホールへ出て行くと、肩から大きなバッグをさげて、色おちしたジーンズ姿の小柄な娘が、少し顔を伏せがちにして立っている。
「どうしたんだ」
 と、浩志は歩いて行った。
「仕事中に、ごめんね」
 と、原口邦子は言った。「何か、受付の人がジロジロ見るもんだから……」
「そりゃ、君は役者なんだから、仕方ないじゃないか。——お茶でも飲もうよ」
 と、浩志は、その娘の肩を軽く叩いた。
「石巻さん」
 浩志が、原口邦子とエレベーターの来るのを待っていると、隣の席の森山こずえがやって来た。
「何だい?」
「コピー用紙のことで電話が……。後で電話するって言っとく?」
 と、こずえは、原口邦子に目をやりながら言った。
「うん。そう言ってくれ」
 と、浩志は言った。「ちょっと、コーヒールームにいる」
「了解」
 と、森山こずえは微笑んで、「ああ! 原口邦子さんだ。そうでしょ?」
「ええ……」
 邦子は、ちょっと照れたように肯いた。
 ちょうど下りのエレベーターが来て、浩志と邦子は素早く中へ入って、〈閉〉のボタンを二人で一緒に押して——笑った。
「——何だか逃げ出したくなるの、こっちのこと知ってる人に声かけられたりすると」
 エレベーターは二人だけだった。
「少しは慣れなくちゃ」
「そうね……。でも、誰も気が付いてくれないと、それはそれで寂しいの。勝手よね」
 全体に細身で小柄な原口邦子は、二十三歳という年齢より若く見えた。今でも、TVドラマなどで、セーラー服を着せられることが珍しくない。
 しかし、普段、こういうラフな格好でいると、およそ化粧っ気もなく、奇抜なアクセサリーもつけない邦子は、確かにさして目立たない、普通の女の子に過ぎない。
「忙しい?」
 と、邦子が訊いたのは、挨拶代わりみたいなものだった。
 返事の代わりに、浩志は大欠伸をしたのだった……。
 
「そんなことがあったの?」
 と、紅茶を飲みながら、邦子は笑った。「それじゃ、眠いわけだ」
「全くね……。ちっとも変わらないよ、ゆかりは」
「浩志がお人好しだから」
 と、邦子は言った。「ゆかりも、危ないことやってるわねえ。アイドルとしては大切な時期なのに」
「意見してやれよ」
「会う時間なんかとれないわよ。私はともかく、向こうがね」
「だけど、男と遊びに行く暇はあるんだからな」
「それとは別よ」
 邦子は、チラッと腕時計を見て、「のんびりしてられないんだ。——ね、私今度、三神憲二監督の映画に出るの」
 邦子は少し身をのり出して、そう言った。
「三神憲二の? 凄いじゃないか」
 浩志は、正直、びっくりした。
「ね。主役ってわけじゃないけど、準主役ぐらい。セリフの数は一番多いのよ」
 原口邦子の口調には、ふと自負がにじんだ。
「君ならやりこなせるさ。頑張れよ」
「うん」
 と、邦子は肯いて、「オーディション受けてね。目の前で、シナリオ読まされたの。声がよく出てる、珍しい、って誉めてくれたわ」
「良かったね」
「でも、もっとお腹から声を出せって。それで今、ボイストレーニングに通ってるの。そろそろ行かなきゃ。用事ってこともなかったんだけど、浩志に話しておきたくて」
 邦子は、いつも控え目にしか気持ちを表さない。しかし、今はさすがに頬が少し紅潮している。
「十二月にクランク・インなの。体、きたえとかないと。水泳に通ってるのよ。お酒もやめたし」
 そう言ってから、邦子は、ペロッと舌を出した。
「飲むようになったのかい?」
 と、浩志は言った。「いつごろから?」
「いつ、って……。もう二十三ですからね」
 と、邦子は笑って言った。「でも、てんで弱いの。すぐ真っ赤になってね。だから、『飲める』ってとこまでもいってないわ」
 早口で、まくし立てるようにしゃべる。邦子がこういうしゃべり方をするのは、自分に向かっていいわけするときに限られる。——長い間の付き合いで、浩志にはよく分かっていた。
「邦子……。やけ酒は体をこわすぜ。絶対にやめとけ」
 浩志は真剣に言った。邦子も、笑顔を作るのはやめて、
「分かってる。——大丈夫よ」
 と、肯いた。「飲んだっていっても……。ほんの何回か。数えるくらいよ」
「で、やめたのなら、それきりやめるんだ。その方がいい。そう思うだろ?」
 邦子は、空になったティーカップを、指でクルクルと回しながら、
「思うことと、実行することって違うわ。そうでしょう? これから、酔っ払いの役だってやらなきゃいけないかもしれないし……」
 そう言ってから、邦子は急に笑い出して、「ゆかりなら、いつも酔っ払ってるようなもんね」
 と、立ち上がると、
「じゃあ……」
「邦子。——他に何か用事があったんじゃなかったのか?」
 と、浩志は訊いた。
 邦子は、ちょっと目を伏せた。
「な。言いたいことがあったら、言えよ。僕になら、言えるだろ」
 浩志の言葉に、邦子は少し迷っている様子だったが、パッと腕時計に目をやると、
「本当に行かなきゃならないの。また——時間があるときにね」
 邦子は、財布をとり出した。
「よせよ。ここは僕の領域だ」
 と、浩志が邦子の手を押さえる。
 触れ合った手は、しばし離れなかった。
「じゃあ……。またね」
 邦子は、みごとに「よそ行き」の顔になると、独特の、頭をほとんど上下させない滑らかな歩き方で、コーヒールームから出て行った……。
 
 エレベーターで、会社の入っている五階まで戻ると、浩志は、受付のそばを通り抜けようとして、
「石巻さん」
 と、受付の女の子に声をかけられた。「今の子、原口邦子?」
「うん。——そうだよ」
 否定するわけにもいかない。
「へえ! この間、見たの、二時間ドラマで。どうして知ってるの?」
「同じ高校だったんだ」
 と、浩志は言った。「もちろん、向こうが後輩だけどね」
「へえ!」
 話の種ができた、という顔で、受付の子は肯いた。
 浩志は席に戻った。
 そうだった。コピー用紙のことで、電話するんだったな。
 しかし、すぐには電話へ手を伸ばす気になれなかった。——森山こずえは、席を立っている。彼女が戻ってからでいいだろう。
 浩志は、机の上のお茶が、いつの間にか新しく入れてあるのに気付いた。
 森山こずえだろう。細かいことに気の付く女性なのである。浩志より一つ年下だが、「お姉さん」という感じで付き合っていられる。
 熱いお茶を、そっと一口飲んだ。
 ——邦子は、半年ほど前、失恋した。
 片思いというわけではなかった。ただ、恋した相手が十歳も年上で、妻子があったのである。
 珍しい話でもないのかもしれない。しかし、邦子は走り出したら止まらない性格だ。男の方も、誠意がなかったわけではない。ただ、自分の家庭を捨てる気は、はなからなく、それならどうして付き合っていたのか、と浩志が問いつめても、肩をすくめるばかり……。
 そうなのだ。邦子に頼まれて、浩志はその男と話しに行ったのである。妹の克子には、余計なことはするな、と散々言われていたのだが。
 安土ゆかり。原口邦子。
 同じ高校で、同級生だった二人は、そのころからライバルだった。いや、本人同士がそれほどライバル意識を持っていたかどうか。
 二人をライバルと見ていたのは、むしろ周囲の方だったかもしれない。——何といっても、田んぼの中に建つ真新しい高等学校へ、たいていの子が自転車で通って来る、典型的な地方の小都市の風景。
 そんな学生たちにとっては、一つのクラスに、芸能界を目指す子が二人もいる、ということは、何よりも話の種として一番だったのである。
 石巻浩志は、二人より二年先輩で、写真部の部長をしていた。それがどういうきっかけで、ゆかりと邦子、二人の「お守り役」になってしまったのか……。
 ——浩志は、隣席の森山こずえが戻って来るのを見て、我に返った。
「飲んだ?」
 と、こずえがいたずらっぽく、浩志の湯呑み茶碗を見る。
「目が覚めたよ」
 と、浩志が微笑んだ。
「そのお茶がなくても、あんな可愛い子と会ったら、目が覚めるでしょ」
 こずえは、少し声を低くして、「原口邦子の彼氏なの?」
「違うよ。古い友だち」
「友だち、ね。——信じときましょ」
 森山こずえの言い方は気楽で、好奇心を無理に隠さない代わりに、人から聞いたことの内、何を他の子へしゃべっていいか、いけないか、きちんとわきまえているので、浩志としても安心できるのだった。
「本当だよ。同じ高校の先輩後輩だからな。東京へ出て来て、心細い邦子の話し相手をよくさせられたんだ」
「へえ。石巻さん、何でも話しやすいもんね」
「そうかな」
「あの子、好きよ。とってもうまいじゃない。どのドラマ見ても、たいてい主役より上手よ」
「努力家なんだ。昔からさ」
 そう。原口邦子は、目標に向かってコツコツと努力をつみ重ねるタイプ。表面上、たいていは冷静だが、その大人びた「自制」を身につけるためには、奥深く、激しく燃える情熱が存在しているのだということを、浩志は知っている。
 じっと抑えつければ、それだけ逆に奥の火は温度を高める。——それが邦子なのだ。
 ただ問題は、抑えつけられて、圧力があまりに高まると、それがいつか爆発する。うまく、いいタイミングで爆発すればいいのだが、あの妻子ある男への恋心のような形をとってしまうと、邦子は自分の吐き出した炎で、自ら、やけどを負ってしまうのである……。
「今度、三神憲二の映画に出るっていうんで教えに来たんだよ」
 浩志は、自分のことのように、自慢して見せた。
「ああ、週刊誌で読んだかもしれない。凄いわね。あの子、大スターになるかも」
 と、森山こずえは、肯いて言った。「いいことよ。ああいう本物の女優がちゃんといい役をもらわなきゃ。CFなんかで、ちょっと人気の出ただけのアイドルタレントをすぐ主役にしたりするからいけないのよ、日本って」
 浩志は、黙って苦いお茶を飲んだ。
 安土ゆかりは、その「アイドルタレント」の部類に入る。いくら、森山こずえの想像力が豊かでも、浩志が原口邦子だけでなく、ゆかりの「旧友」でもあるとは、考えもしないだろう。
 ともかく——浩志は、邦子がまだ失恋の痛手から立ち直っていないとしても、次の映画という目標がある限り、大丈夫だ、と思った。
 邦子は厳しいプロ意識の持ち主だし、難しい役をもらえば、没頭してしまう。しかも、日本映画界でも、今、脂ののり切った感のある三神憲二の新作なら、「相手にとって不足はない」というところだろう。
 浩志は、邦子のために、大いに喜んでいた。
 ただ——断っておくが、浩志が安土ゆかりや原口邦子の「恋人」というわけでは、全然ない。仲のいい友人同士であり、悩みを打ち明けられたり、それこそゆうべのゆかりのように、とんでもない用で呼びつけられたりもするのだが、それでも二人は浩志の「古い友だち」の域から出たことはなかった。
 妹の克子などは、それをからかって、
「人畜無害の兄貴」
 などと呼んだりする。
 そう。——確かに、浩志はその気になりさえすれば、キスの一つや二つ、どっちの「彼女」からも奪うことができるだろう。しかし、そんなことをしたら、この、ちょっと珍しい「三人の関係」は、たちまち崩れてしまう。
 浩志にはよく分かっていた。ゆかりと邦子が、何でも悩みを打ち明け、頼れる相手は、自分しかいない。ゆかりはアイドルとして、邦子よりずっとわがままのきく立場にいるだろうが、それでも、本当の気持ちを知っていてくれる人間は、まず周囲には存在しないのである。
 浩志は、克子にからかわれる通り、ゆかりと邦子の「便利屋」なのだ。しかも、決して週刊誌や芸能誌へ洩れることのない、「グチの聞き役」なのである。
 どうしてこんな風になったのか。——まあその話は後でもいい。
 ちょうど、浩志の机の電話が鳴ったところである。
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