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やさしい季節07

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:プレゼント 夜中の電話というやつに、浩志はすっかり慣れてしまっている。 普通、サラリーマンは夜中に電話をもらうことなど、
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 夜中の電話というやつに、浩志はすっかり慣れてしまっている。
 普通、サラリーマンは夜中に電話をもらうことなど、めったにないものだ。しかし、浩志の場合は別である。安土ゆかりのような友人があると、夜も昼もない。
「浩志?」
「ああ。——ゆかりか。どうしたんだ?」
 浩志の会社に、国枝の息子、貞夫に言いつかったヤクザたちがやって来てから、三日たつ。今、西脇が父親の国枝定治(という名前なのだそうだ)に会うべく、駆け回っているという話だった。
「ごめんね。もう寝てた?」
 夜中の三時だ。浩志は笑って、
「構わないさ。どうだい、そっちは」
「社長さん、まだあの大物に会えずにいるみたい。結構大変なのね、社長って」
「呑気なこと言うなよ。君なんだぞ、向こうの狙いは。何も言って来ない?」
「うん……。でもね……」
 と、ゆかりは困っている様子だ。
「どうかしたのか?」
「毎日、凄いお花が届くの。並の大きさじゃないのよ。何万円するのか、見当つかない」
「例の息子からか」
「送り主の名前は全然違うけど、それしか考えられないでしょ。カードも何もついてないのよ」
 やることが、どこかまともでない。それは力ずくでおどされるより、却ってゾッとさせるものだった。
「それでね」
 と、ゆかりは続けて、「どこにも公表してない、このマンションに送って来てるのよ。どこで調べたのか分かんないけど」
「ああいう手合いは、色々コネを持ってるからな」
「大宮さんが心配して、下のロビーに泊まり込んでる」
 マネージャーも楽じゃない。浩志は、あの太った男に同情した。
「でも——ごめんね、浩志。私のせいで」
 と、ゆかりは言った。
「何だ、ゆかりらしくないじゃないか」
 と、浩志は笑って言った。
「あ、ひどいこと言って! いつも、そんなに偉そうにしてる?」
「してるさ」
「そうか。——ま、そうかな、やっぱり」
 と、ゆかりも自分で納得している。「ね、邦子とは、会ってる?」
 浩志は、ちょっと戸惑った。
「この間、パーティーのときに会ったきりさ。どうして?」
「忙しい……かな」
「何か用なら、連絡しようか」
 ゆかりは、いつになく遠慮がちな様子だった。
「私のね、今度出るスペシャルドラマのことなんだけど」
「この間ロケした?」
「あれじゃないの。あれはもうすんだから」
 と、ゆかりは少し言葉に弾みをつけるように言った。「次のドラマ。今度は青春もので、一応主役なんだけど」
「やるじゃないか」
「その中に、ちょっと難しい役があってね。キャスティングでもめてるの。脇で、そう沢山出番があるわけじゃないけど、お芝居、うまい人じゃないと無理なの。もし——邦子がやってくれたら、と思って」
 ゆかりは、ちょっとためらいがちに言った。
「私、推薦してみようかと思ってるんだけど、邦子……気悪くするかな」
 ゆかりも、気をつかっている。何といっても、自分が主役。脇に親友を使うというのは、気がひけるのだろう。
 しかし、浩志は、ゆかりのそんな気のつかい方が嬉しい。昔ながらのゆかりが、ちゃんと残っているからだ。
「主役が君だからって、そんなことは気にしないと思うよ。むしろ、邦子も映画にかかってるからな。スケジュールの方が問題だろう。話してみたら?」
「私から言うと……何かいやなの。だって、邦子の方が全然うまいのにさ。——ね、浩志から訊いてみて。やる気があるか、だけでも。ね?」
「いいよ。じゃ、もっと細かいことを」
 浩志は、ゆかりの読み上げるデータをメモした。
「たぶん、邦子はNG少ないから、三日もあればすむと思うんだけど」
「分かった。じゃ、当人がやると言ったら、そっちへ連絡するよ」
「ありがとう! 浩志って大変だね、マネージャーまでやらされて」
「誰のせいだ?」
 と、浩志は笑った。「ともかく、気を付けて」
「うん。——ね、浩志」
「何だい?」
「この前のパーティー、あんなことはあったけどさ、楽しかったよ。浩志と腕組んで歩いたのなんて、初めてじゃない」
「そうだな」
 少し間があって、ゆかりが訊いて来た。
「浩志……恋人、いるの?」
「え?」
「好きな人。会社の女の人とかで」
「残念ながらデートする間もなくてね。君が色々用を言いつけてくれるもんだから」
「あら、それはごめんなさい」
 ゆかりは少しおどけて言ってから、真面目な口調になった。「私……浩志がいなきゃ、とても今までやって来れなかった。ありがたい、と思ってるのよ」
 ゆかりが、そんな言い方をするのは、珍しい。
 疲れているのかもしれないな、と浩志は思った。いくら若くて元気といっても、睡眠三、四時間で頑張る日が、ずっと続くことも珍しくない。
 時には、誰かに甘えてみたい、と思うだろう。
「信じてないの?」
 と、ゆかりが言った。
「そんなことないさ」
 浩志は受話器を持ち直して、「僕にとっちゃ、ゆかりはいつまでも高校生のままだ」
「じゃあ……今度会うときは、セーラー服、着てってあげようか。浩志、そういう趣味なの?」
「馬鹿言え」
 ゆかりが笑った。いつもの明るい笑い声である。
「——ね、浩志。ときどき考えるんだけどさ」
「何だい?」
「もし、私と邦子が、二人ともこんな風に芸能界に入んないでさ、高校出てから、あの町で就職して、働いてたとしたら……。浩志は、どうした?」
「どうした、って?」
「つまり……東京へ出て行かないで、ずっとあそこにいたかな、と思って」
「それはどうかな」
 寝たまま、受話器を手にして、浩志は暗い天井を見上げていた。「うちがあんなことにならなきゃ、いたかもしれないけどね」
「もし、いたとして、浩志……私か邦子か、どっちかと結婚してた?」
 浩志は、ハッと胸をつかれた。予想もしない質問だったのだ。
「——ゆかり」
「ごめん、変なこと言って」
 と、ゆかりが急いで言った。「気にしないで。別に本気で訊いたわけじゃないの」
「現実には、君は大スターだ。邦子だって、一人前の役者だ。そうだろ?」
「うん。ごめんね、こんな電話で起こしたりして」
「いいんだよ」
 浩志は、やさしい声で言った。「いつでも何でも聞いてあげる。それが僕の役目だからな」
「ありがとう、浩志」
 と、ゆかりは言った。「もう寝るわ。明日、結構早いの」
「そう。体をこわすなよ。それから、何かあったら、遠慮せずに言えよ」
「うん。——おやすみ、浩志」
「おやすみ」
 浩志は、向こうが切ったら切ろうと思って、じっと耳を澄ましていた。
 ゆかりの方で切るまでに、ずいぶん長く、沈黙の時間があった……。
 
 浩志がゆかりからの電話で起こされていたころ、妹の克子の方も、電話が鳴っているのを、夢うつつで聞いていた。
 しかし、例によって、克子の所の電話は毛布と座布団で「厚着」していたので、電話のベルは、ぐっすり眠り込んでいる克子を叩き起こすには至らなかった。
 やがて電話の方も諦めたのか、静かになったのだが……。
 それから一時間ほどして、克子のアパートの前にタクシーが停まった。——やがて、ガタン、ガタン、と階段が鳴って、靴音が克子の部屋の前までやって来る。
 ドンドン。——ドンドン。
 玄関のドアを、これほどの勢いで叩かれたら、いくら克子でも目が覚める。
「誰?」
 克子は腹立たしげに声を上げて、「そんなに叩かないで」
 起き上がって、明かりを点ける。何と、午前四時!
 一体誰だ! 酔っ払いが、間違ってドアを叩いたのなら、バケツの水でもぶっかけてやる。
 いささか過激なことを考えながら、克子は玄関の方へ出て行った。
「どなたですか?」
 一応、ていねいな口をきいたのは、習性みたいなものだ。
「早く開けろ」
 不機嫌な男の太い声が、ドア越しに聞こえると、克子の顔から、スッと血のけがひいた。
 まさか!
 チェーンを外し、鍵をあけて、ドアをそっと細く開く。
「やっと起きたのか」
 と、その男はドアをぐいと開き、克子を押しのけるようにして、中へ入って来た。
 重そうなコートをはおって、古ぼけたスーツケースをドサッと上がり口に置く。
「散々捜したぞ。タクシー代をべらぼうに取られた」
 と、靴を脱いで上がり込む。
 唖然としていた克子は、やっと我に返って言った。
「お父さん! どうしたっていうのよ、こんな時間に」
「腹が減ってるんだ。何かないのか」
 と、頭の薄くなったその男は、ドカッとあぐらをかいた。
「何か、って……」
 克子はドアの鍵をかけると、「いつ、東京に出て来たの?」
「今夜だ。——いや、ゆうべかな。もう朝だから。どこか一晩はホテルにと思ったんだが、どこがいいかも分からんしな。住所をタクシーの運転手に見せて、捜して来た」
 克子は、石巻将司——自分の父親の、老け込んだ姿を、幻かと疑いつつ、眺めていた。
 克子は独り住まいである。外で食べることが多くなるから、急に何か食べるものがないかと言われても、困ってしまう。
 結局、着替えをして、近所の二十四時間営業のコンビニエンスストアへ走ることになった。カツ丼の弁当を、電子レンジであたためてもらい、買って帰ると、父親はアッという間に平らげた。
「呆れた。欠食児童ね、まるで」
 克子はお茶をいれてやりながら、「どういうことなのよ」
 と、訊いた。
 しかし、石巻将司はそれには答えず、
「汗くさくていかん。風呂を入れてくれ」
 と言い出した。
「ええ?——午前五時よ。ご近所が迷惑するわ」
「何だ、朝の五時に風呂へ入っちゃいかんという法律でもあるのか」
「そうじゃないけど……」
「じゃ、湯を入れろ。気持ち悪くて、寝られん」
 石巻将司は部屋の中を見回して、「酒はないのか」
「飲まないの。だめよ。買って来てあげない」
「分かったよ。ともかく風呂だけは入りたい」
 克子は、ため息をついて、
「明日、下と両隣に謝っとかなくちゃ」
 と言うと、風呂にお湯を入れに立った。
 できるだけ音がしないように、浴槽のビニールのふたを、蛇口の下に斜めに置いて、お湯を少し細めに出した。
「——少し待って」
 と、克子は父の前に座ると、「話してよ。何があったの?」
「どうってことはない。家を出たくなっただけだ」
 と、石巻将司は言った。
「出たくなった、って……。どうしたの、一体? 法子さん、知ってるの、お父さんがここへ来てること」
「言う必要もない。何も小さなガキじゃないんだ」
「だって、奥さんでしょう。黙って出て来たのね」
「うるさいな」
 と、顔をしかめて、「布団を敷いてくれ。もう寝る」
「客用の布団は、冷たいわよ。長いこと、干してないから」
「構わん」
「お風呂へ入るんでしょう? じゃ、その間に敷いとくわ」
「入って来る」
 と、父が立ち上がるのを見て、
「まだ入ってないわよ、お湯が」
 と、克子は言った。
「入ってる内に、湯もたまるさ」
 と言って、石巻将司は、さっさと服を脱ぎ出した。
 克子も、諦めて口をつぐんでしまった。
 たぶん、今夜は何を訊いても、返事をしてくれないだろう。もともと、父は頑固で、わがままな性格である。
 父が風呂へ入り、派手に水音をたて始めると、克子は胸に手を当てた。——本当に、下の部屋の人から何と言われるか!
 それにしても、もう朝の五時を回っている。どうせ、自分は眠れない、と諦めた。
 しかし、なぜ父が家を出て来てしまったのだろう? 出て来る、といっても、家は父のものなのである。
 もし夫婦喧嘩をしたとしても、何も父が家を出て東京までやって来なくても良さそうなものだ。
「——とんでもないことになったわ」
 と、克子は呟いた。
 風呂場で、手桶を落っことす音がして、克子は寿命が一年は縮まる思いだった……。
 
「石巻さん」
 と、森山こずえが受話器を置いて、「お客様」
「誰だい?」
 と、浩志は仕事の手を休めずに言った。
「国枝さん、ですって」
 こずえは、色々と浩志から事情も聞いて知っている。
 浩志は、チラッとこずえを見て、肯くと、
「これ、悪いけど、精算しといてくれるかな」
「OK。生きて帰って来てね」
「よせやい」
 浩志は顔をしかめた。「受付?」
「一階のロビーにいるって」
 浩志がいくらゆかりのために力を尽くす気だといっても、やはり殴られりゃ痛いし、刺されりゃもっと痛いだろう。
 エレベーターへ向かう足どりは、重かった。
 一階に降りて、ロビーへ出てみると、父親の方、国枝定治が、二人の男を従えて立っていた。
「やあ、石巻さんだったね」
 と、愛想がいい。
「どうも」
 と、浩志は会釈をした。
「息子が、色々迷惑をかけたようで、すまないね。いや、あいつには、つい甘くして来たんだ。まあ、勘弁してやってくれ」
「はあ……」
「しかし、あいつは本気で、例の娘を好いとるんだよ」
「ゆかりのことですか」
「そう。父親として、息子には幸せになってほしいと思うのは当然だ。そうだろう?」
 浩志は何とも言わずに立っていた。
 国枝のような男は、言い返されたりするのに慣れていない。自分の言うことは絶対だ。
 だから、相手が返事をしなくても、一向に構やしないのである。
「貞夫は、小さいころから神経質な子でね、私としても気をつかって育てて来た。あの子は、内気なせいで、なかなか女性と付き合うってことができないんだよ」
 と、国枝は言った。
 単にわがままで、子供じみてるだけじゃないんですか、と浩志は、もちろん心の中だけで言った。
「まあ、君としては色々複雑な気持ちだろう。しかし、ここは一つ、私を助けると思って、息子のことには目をつぶってくれないかね」
 国枝の言い方は、「お願いする」という風に聞こえながら、拒否することを許さない威圧感に溢れていた。
「おっしゃることがよく分からないんですが」
 と、浩志は、慎重に言葉を選びながら、「息子さんが、ゆかりと付き合いたいと思われるなら、そう当人に申し込まれたらいかがですか。普通のやり方で」
 国枝は、ふっと笑みを浮かべた。それは、まるで毒蛇の笑みだった。
「私はね、何でも望むものは手に入れて来た。——息子にも、ほしいものを手に入れさせてやりたい」
「ゆかりは品物じゃなく、人間です」
 浩志の言葉を聞いて、国枝の後ろに立っていた二人の男が、スッと浩志のそばへ寄って来た。——浩志の心臓は、飛び出しそうなほど高鳴った。
「もちろん、私も安土ゆかりさんの気持ちは充分に尊重するつもりだよ」
 と、国枝は言った。
「そうしていただけると、嬉しいですね」
 こういう連中の言う「尊重」がどんなものか、大方の察しはつく。
「君としては、大切な恋人を失うことになるかもしれん。そこで、先日の失礼をお詫びする意味でね、君にプレゼントを持って来た」
「そんなお気づかいは——」
「いや、ぜひとも受け取ってほしい」
 国枝は、「来たまえ」
 と、浩志を促した。
 仕方なく、ビルの表に出る。
 国枝が乗って来たのだろう、目をみはるような大型の外車、そして、真新しいスポーツカーが一台、その後ろに停まっていた。
「あの真っ赤な車は君のものだ」
 国枝は、浩志の手をとると、その上に車のキーを置いた。「気持ちよく受け取ってくれて嬉しいよ」
 浩志は、国枝を乗せた車が走り去って行くと、汗が一度にふき出して来るのを感じた。
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