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やさしい季節10

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:小さな偶然「石巻さん、これ、お願い」 と、森山こずえが伝票をポンと置いて、自分の席につく。「分かった。どうだい、外は」「
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 小さな偶然
 
「石巻さん、これ、お願い」
 と、森山こずえが伝票をポンと置いて、自分の席につく。
「分かった。——どうだい、外は」
「ちょっとひんやりするけど、気持ちいいわよ。目も覚めるしね」
 と、森山こずえは言った。
「それは、僕が眠そうにしてる、って皮肉かい?」
 と、浩志は笑って言った。
「やっと秋らしい天気ね。でも、すぐ寒くなっちゃうんだろうな」
「早いよな、一年なんて」
 浩志は伝票の処理をしながら、肯いた。
 ——何があろうと、日々の仕事は個人の都合と関係なしにやって来る。
 父が突然やって来て、そしてまた出て行ってから、一週間が過ぎた。何の連絡もないし、もちろん浩志の方も、どこへ連絡していいのやら、見当もつかない。
 克子は、
「放っときゃいいのよ」
 と、気にとめる様子もなかった。
 多少、気にならないでもないが、今はどうすることもできない。
 ゆかりの方も、国枝貞夫からの花束攻勢は相変わらずらしく、閉口していたが、特に今のところ、いやがらせなどはない様子だ。プロダクションの西脇社長が、国枝定治と話をつけたのかどうか、浩志には知るすべもない。
 ゆかりが持って来たドラマの話は、順調に行って、今週中に邦子の出番の収録があるということだった。——残念ながら、一緒に出ることはないらしいが、それでも、二人のために、浩志は喜んでいた。
 むしろ、一番困っているのは、浩志自身かもしれない。例の、国枝からもらった、赤いスポーツカーのことである。
 どうしたらいいのか、さっぱり思い当たらない内に、時間ばかりが過ぎて行く。とりあえず、この近くの駐車場へ入れて、そのままにしてあるが、駐車場の料金も馬鹿にならないし、どうしたものか……。
 しかし——ともかく、嵐が吹き荒れたような、あの何日かの後、この一週間は、穏やかであった。
「石巻さん、今夜、何か予定ある?」
 と、森山こずえに訊かれて、浩志は、
「さあ……。別にないけどね。何だい?」
 と、仕事の手を休めて訊いた。
「デートしよう。ホテルに泊まって、明日の朝はそこから出勤。どう?」
 こずえが、いたずらっぽく笑って、「冗談よ!」
「本気にするとこだったぜ」
 浩志は大げさに胸に手を当てて見せた。
「あら、私の方は構わないのよ。でも、そっちには、強力なライバルがいるしね」
 こずえが、ちょっとウインクして見せる。
「本当は何だい?」
 と、浩志は言った。
「ディナー券っての、もらったの」
 と、森山こずえが言った。「今週一杯が期限でね。むだにするのも、もったいないでしょ。いい男が現れないかな、と思って、ぎりぎりまで待ってたんだけど、この辺で諦めて石巻さんでも誘うかって」
「ご挨拶だな」
 浩志は苦笑した。「つまり、夕食をごちそうしてもらえるってこと?」
「その通り」
「断る理由はないな」
 ——気楽に、こうしてポンポン言い合える相手というのは、いいものである。
 浩志も、森山こずえがいてくれて、ずいぶん助かっているところがあった。何といっても、一日の内、七、八時間も隣にいるわけだ。
 時々、考える。もし、本当に「恋人同士」の付き合いをするとしたら、こずえなんか、楽しいだろうな、と。
 しかし、今の浩志には、とてもそんな余裕がなかった。——こうしてオフィスで、楽しくやり合っている方が、気楽だ。
「じゃ、仕事すんだら、下で待ってて」
 と、こずえは言った。
「うん。——あ、僕が取る」
 電話が鳴っていた。「——はい。——やあ、ゆかり」
 森山こずえがチラッと浩志の顔を見る。浩志は気付かなかったが、その視線は、いつものこずえとは、微妙に違っていた。
「——今日、邦子の出番、終わったの」
 と、ゆかりは言った。「凄かった。見せてやりたかったわ」
「TVで見るよ」
「私も、今日しか覗けなかったんだけど、完璧ね、邦子。気迫が違う。他の人、かすんでたわ」
 ゆかりは素直に感心している。「少しは見習わなくちゃね。——一応報告しとこうと思って」
「そうか。でも、良かった」
「邦子、もう帰ったわ。来週、例の巨匠の、製作発表があるんですって」
「うまく行くといいな」
「大丈夫よ、邦子なら。浩志、元気?」
「うん。どうだい、例の……」
「あの変な息子? ラブレターは来ないけど、諦めたわけでもないみたい。社長さん、あの親分とまだ会えないんだって。でも、何だか、よその組との抗争があって、あっちも今は私のことどころじゃないみたいよ」
「なるほど。でも、用心しろよ」
「大宮さんが、目を光らしてるわ。——ね?」
 と、そばにいるらしい大宮の方へ、「居眠りしながら、見張ってるもんね」
 と、からかっている。
「居眠りなんか、してないでしょ」
 と、電話口のそばで大宮が抗議している。
 何となくユーモラスで、それでいて生真面目で、浩志も大宮のことが気に入っていた。
「それじゃ、浩志、またかけるね」
 と、ゆかりは言って、「そうそう。どうなった、三人で会おうって話?」
「君の方で時間のとれる日を出してくれ。それから邦子、僕の順で合わせていくさ。何せ、僕の方は暇だ」
 ゆかりはちょっと笑って、
「可哀そうな浩志ちゃん。相変わらずもてないわけだ」
「こら、何だよ、その言い方は」
「じゃ、今夜でも電話するね。来週のスケジュール、まだはっきりしてないところがあるんだ」
「分かった。せめて二時ごろまでにかけてくれよ」
 と、浩志は言った。「できればね」
「バイバイ」
 ゆかりは元気良く言って、電話を切った。
 
「乾杯」
 と、森山こずえが言って、二人のグラスがチンと鳴った。
「君は強いんだろ」
 と、浩志は言った。「僕はさっぱりだ。でも飲んでくれよ、僕に構わないで」
「うん」
 こずえは、シェリーのグラスを空にした。
「——しかし、何だか悪いね、君にごちそうしてもらって」
 ホテルの中のレストランだが、高級フランス料理というわけではなく、やや一般的なアラカルトメニューのある店。もちろん、浩志などには、こういう店の方が気楽でいい。
「別に私の払いじゃないから」
 と、こずえは言った。「出て来るものは決まってるみたいよ」
「何でも歓迎だよ」
 と、浩志は両手を広げて見せる。
「でも——感心しちゃう。石巻さんって、よっぽど頼りにされてるんだ、あの二人に」
 こずえは、オードヴルが出て来ると、言った。
「二人って、安土ゆかりと原口邦子のことかい」
 と、浩志もナプキンを膝の上に広げながら、「そうだなあ。何しろ古い付き合いだし」
「どうして、彼女たちに頼られるようになったの?」
 浩志は、オードヴルを食べながら、
「何だろうな、これ? よく分かんないけど、おいしいね。——僕は写真部にいたんだ、高校生のとき。で、文化祭の発表をするのに、中学校の運動会を撮りに行ったのさ」
 浩志は、思い出しながら言った。
 そうだ。——今でも、浩志はよく憶えている。
 中学校の運動会で、ファインダーを通して元気のいい少女たちを追っていた浩志の目に、しっかりと肩を組んで立つ、二人の少女が飛び込んで来た。
 カメラのレンズは、その二人から、離れることができなくなってしまったのだ。
 確かに、二人は大勢の女の子たちの間でも、際立って可愛かった。特にその内の一人は、可愛いというだけでなく、周囲を照らし出すかと思えるほどの華やかさを身につけていた。
 そして、もう一人の女の子は、やや大人びて、しっかりと自分の行先を見つめている人間だけが持つ落ちつきを感じさせた。
 競技などには関心が向かなくなった浩志は、ひたすらその二人をとり続けた……。
 やがて、文化祭に展示した写真の中で、二年生だった浩志の作品は銀賞をもらったのだが、浩志にとって、そんなことは大して嬉しくもなかった。
 当の二人が、文化祭へやって来て、自分たちをとったのは誰か、と訊いて来たのである。——当の浩志に向かって、訊いたのだ。
「君らに断らなくて、ごめんね」
 と、浩志は謝った。「君たちの名前も分からなかったもんだから」
 しかし、二人は少しも怒っていなかった。むしろ、またとってほしい、と言ったのである。
 それから、二人は何度も浩志のカメラにおさまり、浩志はそのお礼に、お菓子だのソバだのをおごる、という習慣ができた。
 そして、ゆかりも邦子も、新人募集のためのオーディションには、浩志のとったポートレートを使ったのだ……。
「——そんな出会いだったわけね」
 と、森山こずえは料理を食べながら、言った。「そのころから、二人のこと、色々やってあげてたの?」
「いや、そうじゃない。何しろ僕は高三のときに、こっちへ出て来ちゃったからね。一時は二人ともほとんど連絡がとれなかったんだ。でも、二人は高校生の内に、オーディションに受かって、卒業と同時に、こっちへ出て来た。——また、それからあれこれ、相談相手になってる、ってわけさ」
「でも——人気って点じゃ、大分差がついちゃったわね」
「仕方ないよ。邦子はもともと、そういう志向があんまりない。もちろん、ある程度人気もなくちゃ、仕事も来ないけど、真面目に努力してれば、必ず誰かが見ていてくれる、って信じてる」
「すてきね」
「うん。僕もそう思う」
 浩志は、まるで自分のことを誉められたように、嬉しそうだった。
「でも、この間、安土ゆかりの恋人役をやらされて、その後は取材とかされてないの?」
 と、こずえが訊いた。
「うん。大宮さんって、ゆかりのマネージャーだけど、彼が僕のでたらめの身許をでっち上げてくれてるからね。僕までは取材の手がのびて来ないよ。——おっと」
 料理のソースが、浩志の上着の袖口に飛んでしまった。
「あら。すぐ水で拭いた方がいいわ」
 と、こずえがハンカチを出す。
「いや、ちょっと洗面所で洗って来る。その方が早いよ」
 浩志は席を立って、「食べててくれ」
 と言うと、レストランを出た。
 ロビーの奥にトイレがある。浩志は洗面台で、袖についたソースを紙タオルを使って拭いた。
「やれやれ。ドジなんだからな」
 と、呟く。
 カメラなんかいじっていた割には、浩志は手先の器用な方ではない。妹の克子は、細かいことが小さいころから得意である。
「——これでいいか」
 しみは、ほとんど目立たなくなった。
 どうせ、クリーニングに出さなきゃ、完全には落ちないだろう。
 浩志は、ついでに髪にクシを入れて、それからロビーへ出た。
「ごめん、待たせて」
 と、すぐそばで声がした。
 思わず振り向いたのは、その声があまりに克子に似ていたからで——。本当に、そこには克子がいた!
 克子は、兄がすぐ後ろに立っていることなど、全く気付いていない。目の前の男に笑いかけると、
「今日はゆっくりできるの?」
 と、訊いていた。
「九時ぐらいまでだな」
 と、その男が腕時計を見て答える。
「じゃ、行こう」
 克子は、その男の腕をとって、足早に歩き出した。
 ——浩志は、ぼんやりと妹と恋人らしい男の後ろ姿を見送っていたが……。
「克子……」
 恋人がいるかもしれない、とは思っていた。しかし、今の男は……。
 浩志は、その男が左手のくすり指にリングをはめているのを、ちゃんと見ていた。年齢からいっても、そして雰囲気を見ても、妻子のある男だろうと見当はつく。
 克子が、家庭持ちの男と……。
 浩志には、ショックだった。それは、単純なショックではなく、複雑に入り組んだものだった。
 レストランに戻る浩志の足どりは、重くなっていた。
「どうかした?」
 と、レストランに戻った浩志を見て、森山こずえは訊いた。
「え?」
「何だか、むつかしい顔してる」
「いや、何でもないよ」
 浩志は、すぐにいつもの穏やかな笑顔に戻る。——感情を隠してしまうことには、慣れている。
 十八歳で上京して七年。色んなことがあったのだ……。
 克子が男とどこへ行ったか、様子を見て見当はついた。しかし、克子にそうするなとは言えない。もう子供ではないのだ。
 ただ、一度話をする必要はあるだろう。
 克子が適当に遊びで男と付き合える性格でないことが、浩志には、よく分かっている。
「——いや、おいしかった」
 と、ナプキンで浩志は口を拭いた。「これで二、三日は栄養とらなくても大丈夫」
「オーバーね」
 と、こずえは笑った。「デザートも出るはずよ」
 デザートとコーヒーを頼んで、二人は息をついた。
「——石巻さん」
 と、こずえが言った。
「うん?」
「いつも、電話してるところとか聞いてると、あの二人に、平等に気をつかってるわね」
「そうかい?」
「そうよ。無意識かもしれないけど。——でも、どっちかに恋しちゃうってこと、ないの?」
 軽い口調だが、こずえの目は笑っていない。
「僕たちの生活とは、まるで違うよ、あの二人は」
 と、浩志は慎重に言った。「いくら話し相手でも、全然違う世界の人間さ」
「そうかしら」
 浩志は、こずえの口調に少し非難めいたものを感じて、
「どういう意味だい?」
 と、訊いた。
「無理してると思うな、石巻さん」
「僕が?」
「そう。二人といつも等距離にいようとして——。でも、そんなの不可能だし、不自然だわ」
 こずえは静かに言った。「どっちか一人は、あなたのことが好きだと思う」
 浩志は微笑んで、言った。
「そうだとしても、僕には、それを受け止める余裕がないよ。その内、二人とも忙しくなって、大人になり、他に話をする相手ができる。——心を打ち明ける相手が。そうなれば、僕のことは忘れて行くさ。『昔の友だち』というだけでね」
 こずえは、じっと浩志の話を聞いていたが、
「それでいいの?」
 と、静かに、念を押すように言った。「それで、後悔しないの?」
「どうかな」
 浩志は肩をすくめて、「でも——あの二人には夢と目標がある。恋に熱中するのは、ずっと先の話さ」
 デザートが来て、浩志は食べ始めたが、ふと見ると、こずえは手をつけていない。
「食べないのかい」
 と、浩志は言った。
 こずえは、ゆっくりと首を振ると、
「希望を持たせないで」
 と、言った。
 浩志は当惑して、こずえを見つめた。
「私だって——女だから、男の人が好きよ。特に、石巻さんみたいな、やさしい人がね。ただやさしいだけじゃなくて、自分を殺してでも、他の人にやさしくする。石巻さん。あなたみたいな人、滅多にいない」
「森山君……」
「でも——分かる? 私がもしあなたを好きになっても、あなたには、あんなすてきな子が二人もいるのよ。私、とてもかなわない」
 こずえはそう言って、「——さて、食べるか」
 と、デザート用のスプーンを手に取った。
 浩志は、こずえの気持ちを初めて知った。今まで、気持ちのいい同僚としか見て来なかったのは、無意識の内に彼女を遠ざけようとする努力だったのかもしれない、と、浩志は思っていた……。
 
 アパートへ帰って、浩志は、ネクタイを外し、上着をハンガーにかけると、畳の上にゴロリと横になった。
 ——もう、ゆかりも邦子も、そして克子も、森山こずえも、「子供」の付き合いをしていられる年齢ではない。
 ゆかり、邦子、どっちも何度か恋はしている。しかし、それは花火みたいにパッと散っては消える類の恋で、いわゆる「大人の恋」ではなかった。
 そろそろ、二人はそういう年代を抜け出ようとしている。
 克子もまた……。
 電話が鳴り出した。浩志は起き上がって、欠伸しながら、受話器を取った。
「はい、石巻です」
「良かった! 帰ってたんですね!」
「大宮さんか。どうかしましたか」
 ゆかりのマネージャーの声は、上ずっていた。
「ゆかりさんが……どこかへ連れてかれてしまったんです!」
 浩志の顔からサッと血の気がひいた。
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