日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

やさしい季節11

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:浩志、乗り込む 浩志が、そのTV局の玄関でタクシーを降りたときには、大宮の電話から四十分ほどたっていた。「あ、石巻さん」
(单词翻译:双击或拖选)
 浩志、乗り込む
 
 浩志が、そのTV局の玄関でタクシーを降りたときには、大宮の電話から四十分ほどたっていた。
「——あ、石巻さん」
 ロビーへ入ると、大宮がすぐにやって来た。
「何か分かりましたか」
 と、浩志は訊いた。
「今、社長があちこち当たってます。——申し訳ありません、僕がついていながら……」
 大宮は、いっぺんに何キロもやせてしまったように見えた。
「どういう状況だったんです?」
「いや、ここでの仕事を終わって……。その玄関から出たんです。表にはハイヤーを待たせてありました。そのとき、気が付けば良かったんですけど、運転手が違ってたんです。でも、何時間もたってるので、他の車が来てることもありますし、大して気にしないで——。ゆかりさんを先に乗せて、僕は一旦ロビーへ戻りました。ちょっと、挨拶しなきゃいけない人がいたもんで。それで、もう一回出てみると——もう車はいなかったんです」
「ハイヤー会社へ確かめましたか」
「ええ。そしたら、待ってた車に、予定が変わったから、もう帰っていい、と連絡が入ったとかで……。結局、ゆかりさんを乗せて行ったのは、どこの車か、まるで分かりません」
 大宮は、生きた心地もない、という表情である。
 しかし、どう見ても、あの国枝貞夫のやったことには間違いないだろう。となると、ゆかりを見付けるのは難しい。
 西脇が足早にやって来た。
「あ、石巻さん」
 と、浩志に気付くと、「用心してたんですがね……」
「ゆかりの安全が第一です。国枝と連絡は?」
「今、やっととれましたが……」
「父親の方ですね? 何と言ってます?」
 西脇は、重苦しい表情で、
「息子がやったことだという証拠があるのか、と逆に凄まれましたよ。言いがかりをつける気なら、考えがある、と言われて……」
 と、ため息をついた。
「それで——どうするんですか」
「どうしようも……。連れ戻すにしても、どこにいるかも分かりません。それに国枝を敵に回したら、えらいことになる」
 浩志はじっと西脇を見つめて、
「ゆかりのことは、諦めるんですね」
 と、言った。
「いや……。しかし、助け出す方法が——」
 浩志も、西脇にこんなとき、大した力がないことは、分かっていた。ここへ来るタクシーの中で、必死に考えていたのである。
 もちろん、危険な賭けではあるのだが。
「西脇さん」
 と、浩志は言った。「あなたは、仕事の上で、色々なしがらみもあるでしょう。でも、僕にとっては、ゆかり個人が大切なんです」
「もちろん、分かっていますよ」
「国枝はどこにいるんです?」
「国枝定治ですか? オフィス——というか、渋谷にビルを持っています。会員制のクラブとかの入ったビルで、その一番上が国枝のオフィスです。もちろん、〈組〉の事務所というわけですが」
 と、西脇は言った。
「今、そこにいるんですね」
「ええ。しかし——石巻さん、まさか——」
「僕に考えがあります」
 と、浩志は言った。「大宮さん。TVや週刊誌、スポーツ紙、何でもいい、ともかく連絡できる限りの所へ、すぐ電話を入れて下さい」
「どうするんです?」
「ゆかりの『恋人』についての情報はでたらめだった、と言って下さい」
 大宮は目をパチクリさせて、浩志を見ていた。
 
 そのビルは、一見いかにもけばけばしく、安っぽく見えた。
 外見の派手さで人を圧倒しようとしている。——国枝のような人間にはお似合いだ、と浩志は思った。
 ビルの中へ足を踏み入れるのに、少しのためらいもなかったと言えば嘘になる。——無事には出て来られないかもしれない。
 いや、腕の一本ぐらいは折られる覚悟が必要だろう。しかし、ためらってはいられないのだ。
 こうしている間にも、ゆかりは、あの国枝の息子にどんなことをされているか分からない。
 浩志はエレベーターで、最上階へと上って行った。
 汗が背中を伝い落ちて行く。ヒーローなんて、柄じゃないのだ。ただ、ゆかりを救いたいという、それだけの思いが、浩志を支えている。
 扉がガラガラと開く。
 目の前に、厳重な格子の扉があって、男たちが四、五人、椅子にかけていた。その内の一人は、国枝が浩志の所へ車を持って来たときに見た顔である。
「何だ」
 と、一人がやって来る。
「国枝さんに会いたいんだ。緊急の用件だ」
 と、浩志は言った。
「お前か」
 と、浩志を見憶えている男が、呆れたように言った。「あのとき、話はつけたはずだぜ」
「国枝さんに会わせてくれ」
 浩志はいつの間にか、背後にも男が二人立っているのに気付いた。
「黙って回れ右して、帰りな」
 と、目の前の男が言った。「悪いことは言わねえよ。国枝さんは、しつこい奴が大嫌いなんだ」
「僕だってそうだ」
 浩志は、じっと相手の目を見つめていた。「しかし、友だちのためなら、どんなに嫌われても食いついて行く」
「無鉄砲な奴だな」
 いつ、後ろから殴られるか、腕をねじ上げられるか。——浩志は、ここまで来たら、どうせ後には引けないのだから、と開き直った気持ちになった。却って、気が楽になる。
「——よし。ここで待ってな。一応、話してみる」
 と、相手は言って、奥へ入って行く。
 浩志は、じっと立っていた。全身に緊張を漲らせている。周囲の男たちも、何となく気味悪そうに、浩志を見ていた。
 時間が、とんでもなく長く感じられた。
 あの男が戻って来ると、
「入りな」
 と促した。
 ——重いドアが開くと、国枝が、大きなソファに身を沈めて、足を組んでいた。このビルによく似た(?)趣味の悪い派手なガウンをはおっている。
「よく来たね」
 と、一応は笑顔を見せる。「まあ、かけたまえ」
「ゆかりはどこです」
 と、浩志は立ったまま言った。
「私は知らんね。何も、あの娘のお守りをしているわけじゃない」
「それなら、息子さんにうかがいます。会わせて下さい」
 国枝は、鋭い目つきになった。
「いいかね。君は、うちのせがれを誘拐犯扱いしているんだ。面白くないね」
「事実その通りなんですから、仕方ないでしょう」
「何だと?」
「申し上げておきますが」
 と、浩志は真っ直ぐに国枝をにらみつけて言った。「ゆかりの身に何かあれば、僕はあなたの息子さんを訴えます。たとえゆかりが泣き寝入りするつもりだとしても、僕はそうはしません。——どんなことをしても、あなたの息子さんを刑務所へ入れてみせます」
 国枝は面食らった様子で、浩志を見ていた。まさか、浩志がこんなことを言い出すとは、思っていなかったのだろう。
「君は、どうかしちまったんじゃないのか? ここがどこだか分かってるのかね」
「もちろんです」
「君の態度は、ここを生きて出られなくてもいい、と言ってるようなものだよ」
 浩志は、肩に男の手がかかるのを感じた。——負けられない。浩志は、じっと国枝から目をそらさなかった。
 国枝が、指一本動かせば、浩志は叩きのめされるだろう。
 浩志は覚悟した。しかし、暴力ざたになれば、警察がやって来る。それは向こうにとっても、困ることのはずだ。
「社長!」
 と、男が一人、飛び込んで来た。
「何だ?」
「ビルの外が——車で一杯です」
「何だと?」
 国枝は立ち上がった。奥の部屋へ入って行くと、たぶん窓から下を眺めたのだろう、またすぐに戻って来る。
「おい、これはどういうことだ」
「報道陣の車ですよ」
 と、浩志は言った。「僕とゆかりがここにいる、と連絡してあります。僕の本当の身許を公表すると言って、集めたんです」
「何て奴だ」
 と、国枝は呆れている。
「社長、TV局の車も来ました」
 と、また一人が駆け込んで来た。「野次馬も集まって来てます。どうしますか」
 国枝は、当惑した様子で浩志を見ていた。
「——ゆかりと僕が出て行くまで、みんな待っているでしょう。もし、僕が大けがでもして放り出されたら、現行犯ということになりますよ」
 国枝は何か言いかけて、また口を閉じた。
「今、ゆかりを返してくれれば、訴えないと約束します」
 浩志の言葉を聞いて、
「俺たちをおどす気か?」
 と、国枝は言った。
「ゆかりはどこです」
 燃えるような、怒りのこもった目で、浩志はじっと国枝を見つめた。——無謀は承知の上だ。
 国枝は、ゆっくりと息をついて言った。
「お前みたいな馬鹿は、初めて見た」
 そして、「一緒に来い」
 と促して、奥へと入って行く。
 浩志は、国枝について行って、このビルが裏側で別のビルとつながっていることを知った。
 薄暗い通路を抜けて、階段を下りると、国枝は、そこのドアを叩いた。
「——誰だ?」
 と、あの息子の声がした。
「開けろ。父さんだ」
 ドアが開くと、国枝貞夫が顔を出した。
「何だい? 今——」
 浩志に気付くと、貞夫の顔色が変わった。
 浩志は、貞夫の胸をドンと突いた。貞夫が尻もちをつく。
「ゆかり!」
 と、部屋の中へ入って大声で呼ぶと、奥の部屋から、
「ここよ! 浩志!」
 と、ゆかりの声がした。
 浩志は、奥の部屋へと駆け込んだ。
 大きなベッドがあって、ゆかりが毛布をしっかりと胸元にかかえ込むようにして、起き上がっている。
「ゆかり! 大丈夫か!」
 浩志が駆け寄ると、ゆかりは黙って浩志に抱きついて来た。もう、何があっても離さない、というように。
「父さん、こいつ——」
 国枝貞夫が、顔を真っ赤にして、浩志を追って入って来ると、「叩きのめしてやってくれよ! ぶち殺してよ!」
 と、甲高い声でわめいた。
「よせ」
 国枝は、息子の肩をつかんだ。「諦めろ。その女のことは、もう忘れろ」
 貞夫は、耳を疑うように、
「何だって? どうしたんだよ」
 と、父親を見た。
「腕一本、足一本ぐらいへし折ってやるのは簡単だ。しかし、そいつはそれを覚悟して来てる。痛めつけてもむだだ」
 国枝は、息子の肩をポンと叩くと、「お前には、もっといい女を見付けてやる。諦めるんだ」
 と、言った。
「いやだ! 僕はこの子が——」
 貞夫は、父親の冷ややかな目に出くわして、黙ってしまった。
「俺は諦めろ、と言ったぞ」
 たとえ息子でも、国枝は反抗することを許さないのである。貞夫の顔から血の気がひいた。
「分かったのか」
 と、国枝は念を押した。
「——分かったよ」
 貞夫が、弱々しい声で言った。
 国枝は、浩志たちの方へ歩み寄ると、
「早いとこ帰ってくれ。私の気が変わらん内にな」
 と言って、部屋を出て行く。
 貞夫は、体を震わせながら浩志をにらみつけていたが、
「憶えてろよ!——その内、きっと——」
「来るんだ」
 父親の声がして、貞夫は渋々ついて行った……。
 浩志は、ゆっくり息を吐き出した。
「さあ、早いとこ出よう。外へ出りゃ安全だ。——ゆかり」
「浩志……」
 ゆかりが、やっと浩志から離れた。毛布が落ちて、裸の胸があらわになると、ゆかりは赤くなって、あわてて毛布を引っ張り上げた。
「きっと、浩志が助けに来てくれると思ってた。私——まだ、何もされてなかったの。本当だよ。あんな奴のものになるくらいなら、舌かんで死んでやる」
 浩志は、その辺に散らばったゆかりの服を拾い集めると、
「さあ、早く着て。後ろ向いてるから」
「見てもいいよ」
 と、ゆかりが言って、やっと笑顔を見せた。
「からかうな」
 浩志は、苦笑してゆかりの方へ背中を向けたのだった……。
 
「石巻さん。あなたには何とお礼を申し上げたらいいか……」
 西脇が、助手席で振り向くと言った。
「僕は、友だちを助けただけですよ」
 浩志は、後部座席のシートに身を委ねて、もう立てないような気がしていた。
 三年も寿命が縮まった気分である。何とも、無茶をやったものだ。考えただけで冷や汗が出る。
 ゆかりは……。浩志の方へ体をもたせかけて、眠っていた。
 ——国枝の所を出てからが、また大変だった。
 待ち構えていた報道陣の前で、浩志は、再びゆかりの「恋人」役を演じなくてはならなかったのだが、それでも、国枝の所で腕でも折られることを考えれば、楽なものだ。できるだけサービスして、カメラに向かって、慣れない笑顔を作って見せたりもした。
「——西脇さん」
 と、浩志は言った。「すみませんが、今夜一晩、どこかのホテルを取ってくれませんか」
「いいですよ」
「シャワーを浴びたい。サウナに入るより汗をかいたと思いますよ」
 浩志の言葉に、西脇は笑った。
「——しかし、大宮さん」
 と、浩志は少ししてから、言った。「あの国枝の息子は、まだ諦めてない。父親の方だって、今夜はともかく、明日はどう言い出すか分かりませんよ」
「用心します。もう二度とこんなことのないようにしますよ」
 大宮は、車を運転しながら言った。
 ゆかりが、ちょっと身動きして、浩志に体をすり寄せるようにすると、深々と寝息をたてた。
「——石巻さん」
 と、西脇が言った。
「何ですか」
「今夜は……ゆかりと泊まったらどうですか」
 西脇は、前方へ向いたまま言った。「ゆかりも、そうしたがっていると思いますから」
 浩志は、ゆかりの寝顔を見下ろした。
 眠っていると、あの高校生のころのゆかりと、少しも変わらないように見える。
「いや、ゆかりはマンションへ帰してやって下さい。僕は一人で泊まります」
 と、浩志は言った。
 
 一人、ホテルの部屋へ入って、浩志はゆっくりと風呂に入った。
 ゆかりは、大宮がついて、マンションへと帰って行ったのだ。
 ——体はクタクタで、浴槽につかったまま眠ってしまいたいと思うほどなのに、頭は冴えていて、たぶん、しばらくは眠れないだろうと思った。
 何しろ、とんでもない夜だったのだ。
 思い出して、果たしてあれが本当にあったことなのかしら、と思う。自分が、あんなことをやってのけたとは、とても信じられない。
 いや、浩志は少しもヒーロー気分にひたっていたわけではなかった。無事だったとはいえ、ゆかりにとって、今夜の恐ろしい記憶は、当分消えることがないだろう。
 ゆかりが今の仕事を続けて行く限り、あの国枝という男とも、全く無関係でいることはできないのだ。
 ——浩志は、風呂を出て、ホテルの浴衣を着ると、ベッドに仰向けになった。
 もちろん、すぐには眠れまい。明日は、ここから出勤ということになるのだから、早く寝ないといけないのだが。
 電話が鳴って、浩志はびっくりした。
「——もしもし」
「もう寝てた?」
 その声に、浩志は面食らった。
「邦子。よく分かったな、ここが」
「ゆかりから聞いたのよ、もちろん」
 と、邦子は言った。「無茶なことして! 命を粗末にするもんじゃないわよ」
「ゆかりが電話したのか」
「うん。——浩志って勇敢だわ、って、感動してたわ」
「冗談じゃない。ガタガタ震えてたんだ」
「それが当たり前よ。でも……やっぱり偉い。普通の人のやれることじゃないわ」
「そうかな」
「私が同じ目にあったら、どうする?」
「邦子——」
「冗談よ。浩志って、本当にお人好し」
 と、邦子は笑った。「ともかく、ほめてやろうと思ってさ」
「嬉しいよ」
 と、浩志は言った。
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ……」
 ——邦子の声を聞くと、不思議に気持ちが落ちつく。その点は、ゆかりの場合と違っている。
 浩志は、受話器を戻して、じっと天井を見上げていた。
 ゆかりを抱いてやるべきだったのだろうか。——いや、僕は僕だ。あの二人との付き合い方は、変えてはいけない。
「長い夜だったな」
 と、浩志は呟いたのだった……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%