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やさしい季節17

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:年の終わりに どんなに忙しくて、目が回りそうで、こんなに沢山の仕事、終わるわけがない、と思っていても、一年の終わりは、ち
(单词翻译:双击或拖选)
 年の終わりに
 
 どんなに忙しくて、目が回りそうで、こんなに沢山の仕事、終わるわけがない、と思っていても、一年の終わりは、ちゃんとやって来る。
 真夏の暑さに参っているころは、
「寒さなんて、永久に来ないんじゃないか」
 とさえ思うが、それでもちゃんと木枯らしは吹くし、雪も降る。
 一年って、早いよね……。
 町を行く人の誰もが、そう言いたげな顔をしている、十二月。
 もう、一年の終わりは、足音が聞こえるところまで来ていた。
「——石巻さん」
 と、声をかけられて、浩志が顔を上げると、森山こずえが立っている。
「やあ。もう昼は食べたのか」
 と、浩志は言った。
「うん。——座っていい?」
 昼食の後、この喫茶店に入る者も、いつもより少ない。何といっても北風が強くて、寒いので、早々にオフィスへ戻ってしまうのである。
「寒くなったわね。——私、ホットココア」
「はい」
 ウエイトレスが笑顔で、「今日は凄く多いんですよ、ココア頼む人が」
 と、言った。
「じゃ、アイスコーヒーでも頼んだ方が目立つかしら」
 と、こずえは笑って手をこすり合わせた。
「ずいぶん雪の積もってる所もあるらしいじゃないか」
 と、浩志は眺めていた新聞をたたみながら、言った。
「もうじきクリスマスよ」
「クリスマスか。——あんまりピンと来ないね」
 と、浩志は苦笑した。「仕事が忙しいからなあ」
「どこかへ行かないの? ゆかりさんとでも」
「ゆかりはクリスマスなんてないさ。寝る時間もないくらい忙しいらしい」
「そう。大変ね」
「その代わり、正月はハワイだってさ」
 こずえが笑って、
「あっちに芸能人村ができそうね」
「向こうへ行っても、取材は来てるしね。アイドルの宿命だろうな」
 と浩志はコーヒーを飲んだ。
 コーヒーが冷めるのも、ずいぶん早い。
「もう一人の『彼女』は?」
 と、こずえが訊く。
「原口邦子? うん、先週、やっと例の巨匠の映画がクランク・インしたって、電話して来たよ。今ごろは、頭の中に、年末もクリスマスもないだろう」
 浩志は、邦子の活力に溢れた声で、耳が痛くなったくらいだ。
 ゆかり、邦子、それぞれに年末年始を忙しく迎える。
 結局、一番暇なのは俺だろうな、と浩志は思った。
「正月休みはどうするの?」
 と、こずえが言った。
「どうするかな……。寝て過ごすってのが、いつものパターン」
「非生産的ね」
 と、こずえは笑った。
「克子は、会社の子とスキーに行くとか言ってた。まあ、北海道とか、そんな遠くへ行く金はないだろうけどね」
「石巻さんも、少しそういうことやればいいのに」
 と、こずえは言った。
「今はねえ……。何しろ貯金もないし」
 と、浩志は至って現実的である。
「じゃ、温泉とか、どう?」
「温泉か。——いいね」
 と、浩志は肯いた。「どう、って……」
「二人で行かない? 山の奥の露天風呂に仲良くつかってさ」
 こずえの顔を、浩志はポカンと眺めていたが——。やがて、こずえがふき出した。
「石巻さんったら! そんな鳩が豆鉄砲くらったような顔して」
「君がびっくりさせるからだよ」
「これなの」
 こずえが、事務服のポケットからメモを出して、テーブルに広げる。——女子社員の名前が四つ、男の社員二人。
「何だい?」
「このメンバーで、温泉に行くの。一緒にどうかな、と思って」
「僕が?」
「正直に言うとね」
 と、こずえは少し身をのり出して、「車があと一台ほしいの。二台で六人じゃ、ちょっときついの。何しろ荷物が多いし、女性は」
「僕の車で? オンボロだぜ」
「いいのよ。そんなに山奥へ行くわけじゃない。これ、予定」
 と、もう一枚の紙をとり出す。
「十二月の二十九日から……。一日の夜に戻りか」
「三泊。一応のんびりはできるわ」
「ここなら、確か前に行ったことあるな」
「だったら、ぜひ! 女は女、男は男で泊まるから。——ね?」
 浩志はためらった。
 一緒に行くメンバーが、気の重くなるような連中なら考えてしまうが、割合に気をつかわなくてすむ連中である。
「どう?」
 と、こずえは言った。「その代わり、宿泊費はこっちで持つから」
「そんなわけにはいかないよ」
 と、浩志は苦笑した。
 どうやら、森山こずえは、浩志が一人で正月を過ごさなくてすむように気をつかって、温泉に誘ってくれている気配、なきにしもあらずだ。
 しかし浩志としては、宿泊費までこずえにおんぶするわけにはいかない。
「ちゃんと自分の分は払う。別に金がなくてどこも行かないってわけじゃないんだ。ただ、面倒なんだよ。旅館の手配とかさ」
「そんなこと——石巻さんが困ってるなんて思ってるわけじゃないのよ」
 と、こずえは急いで言って、「傷ついた?」
 浩志は笑って、
「僕はそれぐらいのことじゃ、傷つかないようにできてるんだ」
 と、言った。
 こずえはホッとしたように、
「じゃ、OKね? 良かった!」
 と、メモをたたんで、「もっと詳しく書いたの、コピーして後で渡すから」
「分かった。温泉で年越しか。何年ぶりかな、そんなの」
「たまにはいいでしょ」
「うん。——ありがとう、誘ってくれて」
「変よ、他人行儀に」
 と、こずえは少し照れている。
 ——浩志は、ガラス越しに、北風の吹きつける道を眺めた。
 次の一年。どうなることか。——ゆかりと邦子にとって。そして自分や克子にとっても。
 父が、ヤクザらしい男の所に世話になっているという話は、一応父の妻の法子へ伝えた。
「連絡とりたければ、ご自分で電話して下さい」
 と、浩志は言ってやった。
 暴力団、ヤクザ、といった言葉には、向こうも神経質なようで、一旦電話を切ってから、じきにまた法子がかけて来て、
「浩志さん、会ってみて下さらない?」
 と、言って来た。
「忙しくて、とても無理です」
 と、突っぱねてやると、法子はムッとしたようだったが、
「分かりました。こっちで当たってみますわ」
 と言って、切った。
 これで、父の件は一件落着——ということになるかどうか知らないが、ともかく浩志としては、また暴力団の所へ行って、けがでもさせられたらかなわない。もう放っておこうと思った。
 父の古い知り合いか何かなのかもしれないし。——克子は、全く父のことなど話にも出さない。
 克子の恋人——妻子ある男性らしいが——のことも気にはなったが、今の浩志にはどうしてやることもできない。
 たぶん、克子も今ごろ、クリスマスを彼と過ごせないことで、もの寂しい気分に浸っているのだろう……。
「何、考えてるの?」
 こずえに訊かれて、浩志は我に返った。
「いや——妹のことをね、ちょっと」
 もう一杯、コーヒーを頼む。
 こずえの前にココアが置かれ、両手で挟むようにして持つと、
「あったかい!」
 と、声を上げる。
「冬だね、そういうのを見てると」
「妹さん……いくつだっけ」
「二十一だよ」
「若いわね」
「若いけど、結構苦労して来てるんだ」
 と、浩志は言った。「いい相手を見付けてほしいね」
「父親の心境?」
「そう。——いくらかね」
 俺は父親で、兄なんだ。少なくとも気持ちの上ではそうだ。克子は、「父親なんかいらないよ」と言うだろうが。
「何か心配ごと?」
 こずえに訊かれて、浩志はドキッとした。
「何でもない」
 と、首を振って、「それより温泉へ行くとき、他にどこか回るのかい?」
 と、浩志は話を変えた。
 
 アーア……。
 ゆかりは大欠伸した。
 パジャマ姿ならともかく、正月の晴れ着を着ている。マネージャーの大宮が、
「そう大きな口あけて欠伸しないで下さいよ」
 と、あわてて言った。
「どのカメラも向いてないわよ、大丈夫」
 と、ゆかりはスタジオの中を見回した。「まだ仕事いくつ残ってる?」
「今夜は録画どりが三つです」
「TV局を二つ三つ、爆破して来てくれない?」
 と、ゆかりは真面目な顔で言った。
「頑張って下さい。ハワイじゃ、思いきり寝られますよ」
「そうね。部屋から出るの、やめよう。誰に会うか分からないものね」
 何しろ正月前後のハワイは、日本の芸能界がそっくり引っ越したような騒ぎになる。当然、ゆかりの知っている顔とも、年中出くわすわけで、新人のゆかりの方が、何となく気をつかうことになるのである。
「いい男、いないかな」
 と、ゆかりは、スタジオの壁によりかかった。
「ちょっと! 帯がだめになっちゃいますよ。形が……。大丈夫か」
 大宮は汗を拭いて、「目下、恋人は石巻さんってことになってるんですからね」
 と、言った。
「分かってるわよ」
 と、ゆかりは口を尖らして、「少なくとも、恋人があなたじゃないってことぐらいはね」
 大宮は苦笑いしている。
 ゆかりは、このマネージャーが気に入っている。もちろん、大宮の方だって、たまには手を焼くことはあるとしても、ゆかりの担当になって喜んでいるはずだ。
「ハワイかあ……。もうちょっとましな所ないの? ハワイじゃ、日本にいるのと大して変わんないじゃない」
「往復の時間とか、色々考えると、一番楽なんです。それに取材のことも考えに入れなくちゃいけませんからね」
 と、大宮は言った。「あ、もう仕度できたのかな?」
 大宮が、
「ちょっと見て来ます」
 と、TV局のスタジオの中を駆け出して行く。
 お正月用の番組の収録。——もう、ゆかりは何度、
「あけまして、おめでとうございます」
 と、やったことだろう?
「今年の抱負は?」
 と、司会者に訊かれたりして……。
 まだ十二月の上旬なのに。何だか、もう年が変わってしまったような錯覚を起こすほどだった。
「あと、十分くらい待ってくれって」
 と、大宮が戻って来る。
 別に走らなくてもいいようなものだが、急がないときでも走るのがくせになっているらしい。
「少し座ってますか。椅子、持って来ますか?——どうかしました?」
 大宮は、ゆかりが全然自分の言葉を聞いていないのに気付いて、心配そうに顔を覗き込んだ。
「大宮さん!」
 ゆかりが突然大声を出すので、大宮は仰天して飛び上がりそうになった。
「な、何ですか、びっくりするなあ、もう!」
「ハワイよ、ハワイ!」
「ハワイはハワイですよ」
「馬鹿ね。浩志のことを言ってるの」
「馬鹿ですみませんね」
 と、大宮がふくれると——もともとふくれているので、あんまり変わらない。
「ね! 私と浩志は恋人同士ってことになってるのよ」
「一応は、ですね」
「だから、却って不自然じゃないの、私が一人でハワイに行ったりしたら」
 大宮は目をパチクリさせていたが、
「つまり——石巻さんも、ハワイへ連れて行ったら、ってことですか?」
「そう!」
 ゆかりが力強く肯いた。
 大宮は、すぐには返事ができなかった。
 いや、もちろん、最終的な返事は社長の西脇が出すのだ。何しろ「費用」の問題が係わって来る。
「だけど——石巻さんはサラリーマンですよ」
「お言葉ですけどね」
 と、ゆかりは言い返した。「私の休みの方が、サラリーマンより、ずっと少ないの」
「まあ……。そりゃ分かってますが」
 大宮は頭をかいて、「しかし、石巻さんの方だって予定があるでしょうし」
「変えりゃいいの」
 ゆかりは、あっさりと言った。「ね、あなたは社長さんの許可を取って! 大至急! 社長さんがOKしてくれたら、私、絶対に浩志を説得してみせる」
 ゆかりは本気だ。大宮にも、それはよく分かったらしい。
「分かりました。じゃ、今日、戻ったら社長に訊いてみますよ」
「そんな呑気なこと言って! 今すぐ! でなきゃ、私、この振り袖、めちゃくちゃにしちゃうからね。大宮さん、ちゃんと着せてよ!」
 と、帯を解くふりをする。
「やめて下さい! 分かりましたよ。全く無茶なんだから」
「生まれつきなの」
「何が生まれつきだ?」
 と、声がして……。
 ゆかりは唖然とした。当の西脇がフラッとやって来たのだ。
「何だ、でかい声を出して。スタジオ中に響き渡ってるぞ」
「社長……。どうしてここへ?」
「用事で寄った。ついでに覗いてみる気になったんだ」
 と、西脇は言った。「今、俺に何か訊くとか言ってたな」
「ねえ!」
 ゆかりが西脇の腕にしがみついた。「お願い! お正月休みのハワイ、浩志も連れてっていいでしょ?」
 西脇はポカンとしていたが、
「ああ、石巻さんか。そうだな……。まあ、恋人だって公表してあるわけだし」
「そうよ! 一緒に行かなきゃ、却って不自然!」
「うむ……。ま、あの人にはずいぶん世話になったからな」
 西脇は腕組みをして、「おい、大宮。今からファーストクラスの席、取れるかどうか、やってみろ」
「やった!」
 と、ゆかりは飛び上がった。「社長さん、大好きよ!」
「飛びはねないで下さい。床が振動します」
 と、大宮が、あわてて言った。
「失礼ね。私は大宮さんじゃないわよ」
 ゆかりは、ペロッと舌を出してやった。
 
「可愛い彼女からお電話よ」
 と、森山こずえが、浩志へ受話器を渡す。
「ありがとう。——もしもし」
 と、言ったとたん、ゆかりの声が飛び出して来て、午後、少々眠気のさしていた浩志は、いっぺんで目が覚めた。
「浩志! ハワイに行こう!」
 キーンとしばし耳が鳴って、浩志は目をパチクリさせていたが、
「今……何て言ったんだ?」
「いやねえ。耳、遠くなったの?」
「君の声がでかすぎるんだ。何の話だい?」
「お正月さ、予定あるの?」
「正月?」
「私、ハワイに行くの」
「ああ、知ってるよ」
「でね、社長さんと相談したの。恋人同士と公表した以上、ハワイに同行しないのはおかしいって」
 浩志は、少し間を置いて、
「君の言うのは、つまり……」
「一緒にハワイへ行こ、ってこと」
 ゆかりは、すぐに付け加えた。「大丈夫よ。取って食わないから。コネクティングルーム、っていうのを予約したの。別室になってて、鍵もかかるわ」
「待ってくれよ。そんなこと突然言われても——」
「あら、年末年始はお休みでしょ」
「そりゃそうだけど……。大体パスポートだって持ってない」
「特急で取れるのよ、あんなもの。全部こっちでやるから心配しないで」
「そう言われても……」
「費用は事務所持ち。ね、行こうよ」
 浩志はこずえの方を見た。
 こずえも、浩志の言葉で、察しはついたらしい。微笑むと、浩志の方へメモを差し出した。
〈温泉行きのメンバー全員に、ちゃんとおみやげを買って来ること!〉
 浩志は、目でありがとう、と言った。
「——浩志?」
「うん。分かった」
 と、浩志は言った。
「分かった、って……。じゃ行くのね」
「そうしなきゃいけないんだろ?」
「いけない!」
 と、ゆかりは言って、嬉しそうに笑った。「じゃ、大宮さんから連絡させるね、今夜。——パスポートに必要なものとか、スケジュールとか」
「ああ、待ってるよ」
「きっと素敵だよ!」
 ゆかりの声が飛びはねるようだ。
 電話を切ると、浩志は、
「悪いね」
 と、こずえに言った。
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