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やさしい季節21

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:暖 炉「すみません」 と、黒木は言った。 克子は、少しぼんやりしていて、黒木の言葉がすぐには分からなかった。「え?」 と
(单词翻译:双击或拖选)
 暖 炉
 
「すみません」
 と、黒木は言った。
 克子は、少しぼんやりしていて、黒木の言葉がすぐには分からなかった。
「え?」
 と、顔を上げ、訊き返してから、「すみません、って言ったの?」
「そうです」
 と、黒木が肯く。
「どうして? あなたがパーティーに招《よ》んでくれたんじゃないの」
「何だか無理に来てもらったみたいで……」
「そんなことないわよ」
 と、克子は言った。「ホテルNに入れたし、それだけでも儲けもの」
 ——ホテルNの、ラウンジ。
 ロビーから仕切られたその一画は、本物の大きな暖炉があって、見たこともないような太いまきが燃えている。本当の炎だ。
「今どき珍しいわね、火をたいてるなんて」
 と、克子は言った。「あなた、よほどここのお得意さんなの?」
「え? どうしてですか」
「こんな、暖炉のすぐそばの席……。ちゃんととっといてくれたじゃないの」
「僕じゃなくて、親父が、です」
 黒木は少し照れたように言った。
 パーティーは、にぎやかなものだった。ちゃんと本格的なディスコがあって、音楽とレーザー光線がめまいを起こしそうな勢いで飛び交っている。
 恵子や伸子は、大喜びで、ホテルの泊まり客に混じって踊っていたが、克子はもともと、大騒ぎするのが得意でない。しばらく中にいたものの、頭痛がして来て、出てしまったのである。
「好きじゃないんですね、ああいうパーティーが」
 と、黒木がコーヒーを飲みながら、言った。
「そうね。どっちかっていうと、一人で部屋にいるのが好き。偏屈なの。見ても分かるでしょ」
「分かります」
「言ったわね」
 と、黒木をにらんで、ふき出す。
 面白い子だわ、と思った。いや、同じ年齢なのだから、「子」なんて呼ぶのは失礼なのかもしれないが、ともかくその童顔と、はにかみ屋らしい様子は、どう見ても「少年」のイメージなのである。
「お勤め、長いんですか」
 と、黒木が訊く。
「そうね。今の所は高校出てから。その前にも、あちこちで働いてたの」
「へえ。じゃ、高校へ通いながら?」
「兄と二人暮らしだったから。勤労学生ってやつね」
「偉いんですね」
 黒木の言い方は、至って素直だった。
「うーん、別に『偉い』とは思わないけどね」
 と、克子は少し首をかしげて、「食べてかなきゃいけないでしょ。だから、働いてた。それだけよ」
「可愛い」
「え?」
 克子は面食らった。
「そうやって首かしげると、克子さん、凄く可愛いですよ」
「——ありがとう」
 と、克子は笑って言った。「じゃ、ずっと首かしげて歩くかな」
 危ないな、と思った。
 恵子が言ったのは、満更外れてもいなかったのかもしれない。黒木は、克子に「一目惚れ」してしまったようだ。
 克子は決してうぬぼれているわけじゃないが、今、黒木が暖炉に燃える炎に照らされた克子の顔をじっと見ているその目には、確かに「憧れ」の色が見てとれた。
「どうもありがとう、招待いただいて」
 と、克子は、自分のコーヒーを飲み干すと、「さ、そろそろ帰らないと」
「もう? まだ早いですよ」
「でも、いつまでもいるわけにもね。——あの二人、どうしたかしら」
 と、克子がロビーの方へ目をやると、ちょうど恵子がラウンジを覗いて、
「あ、いたいた。ね、克子。ナイターやって来る」
「え? スキーやるの、これから?」
「そう。ちゃんとコーチがついてるから、大丈夫」
 黒木の友だちが、一緒に立っている。
「一緒にどう?」
「遠慮しとくわ」
 と、克子は言った。「でも——恵子、ウェアとか、どうするのよ」
「貸してくれるんですって、ホテルで。やっぱり違うわねえ、一流ホテルは。じゃ、行ってくる!」
 少々酔ってもいるらしい。恵子は手を振って、行ってしまいそうになる。
「ちょっと、恵子! 長谷川さんは?」
「スナックで飲んでる。眠っちゃいそうよ、あの人」
「そんな……。もう!」
 と、克子はため息をついた。「本当に図々しいんだから」
 黒木が笑って、
「じゃ、仕方ないですね。克子さんも残らないと」
「そのようね」
 と、克子は苦笑した。
「踊りませんか、スキーがだめなら」
「私、ああいうにぎやかなのには弱いの」
「もっと静かな場所もありますよ」
 黒木が立ち上がって、「さ、行きましょう」
 克子は仕方なく席を立った。
 黒木が克子を連れて行ったのは、地下にある静かなサロンだった。
「こんな場所もあるの」
 と、克子は、低い声で言った。
 広いスペースで、ソファがゆったりと置かれ、重役風の男性が何人か、グラスを手に寛いでいる。
「若いのはディスコ、大人はこっち、ってわけです」
「あなた、『若いの』の方じゃないの?」
「こういうときは大人になります」
「調子いいのね」
 克子は、ともかく、自分の住む世界とまるで別世界のようなこの場所を、しばらく体験してみようと思った。
 黒木が何のつもりで自分をこんな所へ連れて来たのか、よく分からなかったが、未知のものへの好奇心は、強烈に克子を捉えた。
「踊ってる人なんて、いないじゃないの」
「構わないんですよ」
 黒木が、バーのカウンターへ行って、何やら話して来ると、すぐに静かなダンスナンバーがサロンの中に流れ始めた。
 居合わせた客も、チラッと目を上げただけで、気にもしていないらしい。
「さあ、この辺で」
「私……よく知らないの」
 と、克子は正直に言った。
「僕も」
 と、黒木が言った。「でも、適当に動いてれば……。足を踏まないようにしますから」
「でも……」
 照れくさかったが、ともかく、黒木と身を寄せ合うようにして、踊った。——克子は、斉木に少し教えてもらったことがある。黒木の方も、克子と同じくらいの知識らしかった。
「黒木……何ていうの?」
 と、克子が囁くように訊いた。
「黒木翔です」
「しょう?」
「とぶっていう字。飛翔の『翔』一文字です」
「ああ。——すてきな名ね。翔君、か」
 少し照明が落ちたのは、サロンの係が気をきかせたのか。
 不思議な気分だった。同じ年齢で、大学生とはいえ、男とこうして抱き合うようにして踊っているのだ。それでも、一向に克子は緊張したり、身構えたりしなかった。
 いつも克子は、男に対して身構えて来た。壁をめぐらし、その外へ踏み出すまいとしていた。
 斉木だけがその壁の中へ入って来たが、それが克子の、男への距離を少しでも縮めたわけではなかったのだ。
 しかし、黒木とは——黒木翔とは、まるで何の緊張も感じないで、こうして一緒にいることができた。
 それは、克子にとって、初めての経験であった……。
「——照れくさいわ」
 と、克子は踊りの足を止めて、改めてサロンの中を見回した。「誰も踊ってないのに、私たちだけで……」
「じゃ、かけませんか」
 二人はサロンの奥まった席についた。
「ねえ」
 と、克子は言った。
 はっきりさせておかなくてはならない。克子としては、この黒木翔という若者が気に入っている。しかし、「本気」になられるのは迷惑なのだ。
「どうして、こんなに親切にしてくれるの?」
 と、克子が訊くと、黒木はあっさりと、
「克子さんが好きだからです」
 と、答えた。
「好きって……。今日会ったばかりよ。それにもう、私は社会へ出てる人間。あなた大学生じゃないの。いくらでも可愛い子がいるでしょ」
 黒木は、なぜか愉快そうに、
「克子さんって面白い人ですね」
「面白い? どこが?」
「同じ年齢ですよ、僕と。まるで僕が母親ぐらいの女《ひと》に恋したようなこと、言ってる」
 克子はぐっと詰まった。——確かに、黒木のことを、必要以上に子供扱いしているかもしれない。
「だからって、私は女子大生になれないわ」
 と、克子は何とか言い返した。「あさってには東京へ帰って、正月明けたら、満員電車での出勤が待ってるのよ」
 黒木が何も言わない内に、ウエイターがオーダーをとりに来た。
「じゃ……ジンジャーエール」
 と、克子は言った。
「かしこまりました。坊っちゃんは」
 と、ウエイターが黒木を見た。
「僕も同じでいいよ」
「はい」
 ウエイターが戻って行くのを見送って、
「あなた、どこの『坊っちゃん』なの?」
 と、克子が訊くと、黒木は少し困ったように目をそらしたが、
「どうせ分かると思うから……。僕の父は、このホテルのオーナーです」
 と、言った。
 
「知ってた?」
 ホテルNを出て、旅館へ戻るマイクロバスの中で、恵子がこらえ切れなくなったように言った。
「何よ」
「あの黒木って子。黒木竜弘の息子ですってね! びっくりしちゃった!」
「聞いたわ、当人から」
 と、克子は車の外へ目をやる。
 このマイクロバスも、黒木がホテルの人間に言って、出してくれたものだ。確かに、歩いて帰ったら、寒いに違いない。
 黒木竜弘か。
 もちろん、克子だって名前ぐらいは知っている。新聞の経済欄に目を通さないようなOLでも、週刊誌をしばしばにぎわしている名前には見覚えがある。
 私鉄をベースに、ホテル、デパート、リゾート、と開発を進めて、日本でも有数の実業家の一人だろう。
 その息子。——のんびりしているところは、父親に似なかったのかもしれない。
「——どうもありがとうございました」
 マイクロバスを降りて、克子は、送ってくれたホテルのベルボーイに礼を言った。
「あの子に頼めば、ホテルNに泊めてくれたかもね」
 と、恵子が冗談めかして言ったが、半ば本気で言っていることは、克子にも分かった。
 長谷川伸子は、アーアと大欠伸。酔うと眠ってしまうたちで、この時間までバーで眠っていたのである。だから、黒木のことも、ろくに頭に入っていなくて、
「もう寝よう……」
 と言うばかり。
「仏の顔も三度。しがないOLがお近付きになれる相手じゃないわよ」
 と、克子は、よろけそうな伸子をあわてて支えて、「しっかり歩いて!——恵子、そっちからも支えてよ」
「うん」
 恵子は、ナイターで滑って、すっかり目が覚めた様子。
 ともかく、部屋へ戻って伸子を布団に横にすると、布団もかけない内にグーグー眠ってしまう。
「呆れた。——恵子、どうする? 私、もう一回温泉に入ってから寝る」
「私、明日の朝にする。ナイターやると、やっぱり疲れる」
「当たり前よ」
 と、克子は苦笑した。「朝、ちゃんと起きられるの?」
「布団に訊いて」
 と、恵子は言うと、大げさに布団の上にドサッと倒れて見せた……。
 ——克子は、もう真夜中近くになっていたが、一人で温泉に入りに行った。
 午前一時までは入れるようになっている。しかし、入ってみると、他には誰もいなかった。
 広々とした大浴場に、湯気だけが立ちこめて、何だか一人占めにして申しわけないような気分。
 湯に浸かって、ゆったりと手足を伸ばすと、克子は、目をつぶった。
「——ぜいたくな気分」
 と、呟いて、フッと笑う。
 ささやかなもんだわ。温泉に一人で入ってるのが「ぜいたく」。あのホテルNのディスコで遊ぶより、こっちの方が、ずっとぜいたく。
 それにしても——と、湯に浸かりながら、克子は思った。
 あの黒木翔という子、本当に克子に恋してしまったのだろうか。
 確かに、世間知らずの坊っちゃんらしく、女を騙したり、ひっかけて遊んだりというタイプではないだろう。その点、黒木が真剣なことは、疑っていない。
 でも、もちろん、ほんの一時の気の迷いとでも言うもので、大学が始まって、華やかな女子学生たちに囲まれていれば、克子などたちまち光を失ってしまうだろう。
 いや、むしろ黒木にとっては、同じ年齢でも、ずっと落ちついた克子が新鮮に見えたのに違いない。
「珍しいもの好きってことね」
 と、克子はタオルでゆっくりと肌をさすりながら呟いた。
 これでもし、黒木が本気で克子に夢中になり、プロポーズでもして来たら?
 克子はしがないOLから、一挙に「大企業のあととり息子の妻」というわけだ。
 克子は、ちょっと笑った。——自分が毛皮のコートか何かはおって、ベンツから降り立つ姿なんか想像して、おかしくなったのである。
「似合わないわね、あんたには」
 濡れた鏡の中の自分に向かって、克子は言った。——鏡の中で、克子の顔は嘲笑っているように見えた。
 部屋へ戻ると、もう他の二人はぐっすりと眠っている。
 起こさないように、静かに肌の手入れをして、布団へ滑り込んだが、たとえ大声で歌っていたって、二人は目など覚まさなかったろう。
 
 翌日は、克子もぐっすりと眠った。
「——おはようございます」
 と、旅館の人が顔を覗かせて、克子は初めて飛び起きた。
「あ、すみません。——ゆうべちょっと遅かったもんですから。今、起こします」
 恵子も伸子も、まだグーグー眠っているのである。
「あ、お急ぎにならなくても」
 と、旅館の人が笑って、「それと——石巻さんは」
「私です」
 克子は、浴衣の乱れをせっせと直しながら、少々顔を赤らめて言った。
「お花が届いておりますけど」
「お花?」
 呆れるような大きな花束が、部屋の中へ運び込まれた。花の匂いが部屋に満ちる。
 カードが添えてあったので手に取ると、思った通り、黒木から。
〈今日、ホテルNへ、ランチにいらして下さい〉
 とあった。
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