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やさしい季節32

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:スキャンダル〈安土ゆかりに、暴力団のパトロン!?〉 ファックスされて来た紙面には、大々的にその見出しが踊っていた。 西脇が
(单词翻译:双击或拖选)
 スキャンダル
 
〈安土ゆかりに、暴力団のパトロン!?〉
 ファックスされて来た紙面には、大々的にその見出しが踊っていた。
 西脇がテーブルに置いたその紙面を、浩志と克子、そして邦子と、もちろんゆかりも、食い入るように見ていた。
 ——記事は徹底したでっち上げで、ゆかりのデビュー以来、ここまで人気を高めたのは、背景に国枝の力があったからだ、と書いていた。
 内容はすべて「一人の人物の談話」をもとに、それを、うのみにする形で書かれている。
 その「人物」の名前も、写真も、大きく掲載されていた。——浩志たちの父、石巻将司である。
〈Tスポーツ〉紙は、ゆかりの恋人として公表されている浩志の父親が、国枝の下で「客分」扱いされ、記者の質問に答えて、「息子とゆかりの知り合ったきっかけも、国枝さんが作った」と語ったように報じている。
 ゆかりと浩志が同郷で、同じ高校に在籍していたことぐらい、誰でも知っているのに、浩志の父は平気で、
「二人が知り合ったのは、国枝さんのお屋敷でのパーティーのときだった」
 などとしゃべっているのだ。
 そして、
「ゆかりは、国枝さんにゃ、足を向けて寝られないよ」
 とまで言っている。
 怒りを通り越し、哀しい思いさえ抱きながら、浩志はその記事を読んだ。克子も同じ気持ちだったろう。
 ——西脇の家の居間。
 深夜、二時を回っていた。しかし、その場の沈黙は、夜のせいではなかった。
「ゆかり。——すまん」
 と、浩志は頭を下げた。「親《おや》父《じ》がこんな馬《ば》鹿《か》なことをして……」
「浩志! やめてよ」
 ゆかりは怒った口調で、「お父さんと浩志は別でしょ。いつもそう言ってるじゃないの。浩志に謝られたりしたら、私の立場、どうなるの? 怒って! 一緒になって怒ってよ!」
 ゆかりの目に涙が光っている。
 浩志は胸が熱くなって、
「ありがとう」
 と言うと、ゆかりの肩を強く抱いた。
「私、平気よ。——ね、社長さん。記者会見しましょ。私、真っ向から否定してみせる」
「お前ならそうだろう」
 と、西脇は苦笑した。「しかしな、一旦広がったダメージは、そう簡単にとり戻せない。この記事が正しいか、お前が正しいか、受けとり手にとっては、判断の決め手がないんだ。それに……この記事を否定すると、石巻さんのお父さんを『嘘《うそ》つき』と呼ぶことになる」
「構やしません。その通りですからね」
 と、浩志は言った。
「でも、お兄さん」
 と、聞いていた克子が言った。「そうなれば、私たち兄妹と父との不仲も、知れわたるでしょう」
「いいじゃないか、分かったって」
「そうじゃないの。仲が悪いんだから、私たちが父のことを嘘つきだと言っても、それを他人が信じてくれるかどうか」
 克子の言葉に、浩志はハッとした。
「すまん。——そうだったな」
 と、ため息をつく。「どうしたらいいんだろう?」
 ——しばし、西脇を加えて、浩志、克子、ゆかり、邦子の五人は沈黙した。
「何とか、記事を止められないんですか」
 と、克子が言った。
「無理だ」
 と、西脇が首を振る。「こっちにも反証になるものはない。それに、時間的に、もう間に合わないんですよ」
 ゆかりが肩をすくめて、
「じゃ、やっぱり会見やって否定するしかないわ。そうでしょ?」
「うむ……。何かいい手があるといいけどな……」
 と、西脇が腕組みをしている。
「——待って下さい」
 と、克子が言った。
 穏やかだが、決然とした口調だった。
「電話、貸していただけますか。できれば、ここでない所で」
「克子——」
「お兄さん、黙ってて」
 克子は、西脇に案内されて、寝室の電話を使って、かけた。
 こんな夜中だが、起きているだろうか?
「——はい、もしもし」
 すぐに向こうが出て、克子はびっくりした。
「いつも、こんなに電話の近くで番してるの?」
「あ、克子さん」
 黒木翔が嬉しそうに、「この電話、僕の部屋のですから」
「まあ。甘やかされてるのね」
 と、克子は笑った。
「しつけに来てくれませんか」
「いじめるのは趣味じゃないの」
 と、克子は言って、「——翔君、お父様は今、ご在宅?」
「父ですか? ええ。明日の夜から、ニューヨークとか言ってましたが」
「会わせていただきたいの。すぐに」
「今ですか?」
 翔もびっくりした様子。
「明日じゃ遅いの。私のことじゃなくて、古い友だちのことで、お父様にお願いしたいことがあるの。お願い。何とか、起こして頼んでみて」
 翔も、克子が決して気紛れでそんなことを言い出す女性ではないと知っている。
「分かりました」
 電話を通して、翔の表情が目に見えるようだった。「少し待って下さい」
「ええ、ごめんなさい」
 克子は、じっと受話器を耳に当てたまま、待っていた。——何分待っただろうか。
 ほんの二、三分か。それとも十分か。克子にもよく分からなかった。
「——もしもし」
 やっと翔の声がして、克子は息をついた。緊張しているのが分かる。自分が、とんでもなく非常識なことをしているのは承知の上である。
「お待たせしちゃって」
 と、翔が言った。「父がお目にかかる、と言ってます」
 克子は耳を疑った。
「今夜でいいの?」
「ええ。場所、分かりますか」
「捜して行くから」
「無理ですよ。タクシーで。説明しますから、メモして下さい」
「ありがとう……」
 克子の、受話器を持つ手は震えていた。
 
 タクシーが、人っ子一人見えない、高級住宅地の中をゆっくり走って行くと、一軒の家——といっても、目をみはるような邸宅である——の門の前に立つ翔の姿が、ライトに浮かび上がった。
「そこで停めて下さい」
 と、克子はホッとして言った。
 ともかく、こういう住宅地には、目印というものがないのである。
「——すぐ分かりました?」
 と、門のわきの小さなドアを開けながら、翔が訊く。「あ、頭、ぶつけないように気を付けて」
「ごめんなさいね、本当に」
「大丈夫ですよ、親父は夜ふかしに強い人間ですから」
 と、翔は言ってくれたが——。
 午前三時過ぎ。下手をすれば朝になる。
 本当に、何て無作法なことをしているんだろう。克子は我ながら感心した。
 兄が一緒に来たがったが、克子は一人で行くと言い張った。これは自分だけでやらなくてはならないことだ。
「——どうぞ」
 翔が克子を通してくれたのは、意外に適度な広さの居間。いや、客間を、居間風にしつらえてあるのかもしれない。
 翔が父親を呼びに行って、克子は一人、固い表情でソファに身を委《ゆだ》ねていた。
「やあ」
 意外なほど早く、黒木竜弘はガウン姿で現れた。「先日はありがとう」
「いえ。——申しわけありません。とんでもない時間に」
 と、克子は立ち上がって頭を下げた。
 黒木竜弘は、当然眠っていたところを叩《たた》き起こされたのだろう。
 多少、眠そうな目はしていたが、不機嫌な気配はなかった。
「何か急なご用と——」
 と、言いかけて、「翔、お茶でもいれてさし上げなさい」
「はい」
 翔が、居間を出て行く。
「あの……」
 と、克子は言いかけて、迷い、「どこからお話ししたらいいか……。ともかく、あなたにお願いしたいことを、先に申し上げます」
 克子は座り直した。
「ご存知でしょうか、今人気のあるアイドル、安土ゆかりを」
「安土ゆかり……」
 と、黒木竜弘は少し考えていたが、「ああ、知っていますよ。確か一時、翔もファンだった。その——安土ゆかりのことが何か?」
「彼女を、黒木さんの企業のイメージガールに起用していただけませんか」
 克子の言葉は、さすがに黒木をびっくりさせたようだ。
「——事情をうかがいたいですな」
「はい。安土ゆかりさんは、私や兄と同郷の子なんです。特に兄とは親しくて、一応、『恋人』ということになっています」
 翔が、戻って来て、ちょうどその言葉を耳に入れたらしい。
「お茶、今——。安土ゆかりの恋人が、克子さんのお兄さん? 驚いたな」
「昔なじみなんです。安土ゆかり、原口邦子。二人は、兄を一番信頼しています」
 と、克子は続けた。「でも実際のところ、兄は、ゆかりさんの『恋人』ではありません。ゆかりさんが、国枝定治という暴力団の顔役の息子、国枝貞夫に言い寄られて、困ったあげく、兄を『恋人』ということにしたんです」
 克子は、ゆかりが誘拐されて、兄が命がけで、国枝貞夫の手から取り戻したいきさつを話した。
「また、えらくドラマチックな話だ」
 と、黒木は面白がって聞いている。
「——ところが、それではすまなかったんです。国枝の方では、あれこれいやがらせを始めました。一つは、ゆかりさんのマネージャーが、ハワイで袋叩きにされたこと。一時は命が危ないというくらいのひどいけがでした」
「ああいう手合いは、諦《あきら》めることを知らないものだ」
 と、黒木が肯《うなず》く。
「そして——実は明日、〈Tスポーツ〉の一面に、ある記事が出ます」
 克子は、西脇の所から持って来たファックスされた記事を、テーブルへ置こうとして、「翔君、悪いけど、ちょっと外してくれない?」
 と、振り向いて言った。
 翔は、少しむくれた様子で、
「僕がいちゃ、いけないんですか?」
 と、克子に言った。
「お願い。その方がお話ししやすいの」
 克子の言葉に、翔は、
「分かりました」
 と、渋々肯いた。
 ちょうど、お手伝いらしい、若い女の子が眠そうな顔でお茶を運んで来てくれる。おかげで少し間が空いた。
「お手数かけて」
 と、克子は、その女の子に言った。
「いいえ……」
 と言いながら、欠伸《あくび》をかみ殺しているのを、黒木竜弘は笑って眺め、
「ご苦労さん。もう寝ていいぞ」
 と言った。
「はい。じゃ、おやすみなさい」
 ピョコンと頭を下げて出て行く。
「ずいぶん若い方ですね」
 と、克子は言った。
「十九かな。私の故郷の出身の子でね。よく働きますよ」
 黒木は自分もお茶を少しすすって、「いつもお茶が苦すぎるのが、欠点ですがね」
 と、顔をしかめた。
 克子は、あの記事を黒木の前に置いた。
「お読みになって下さい」
「拝見しましょう」
 黒木は、ガウンのポケットからメガネを取り出し、かけかえると、記事にじっくりと目を通している様子だった。
 視線の動きから、二回読んでいることが分かる。——克子には、黒木がどう思いながら読んでいるのか、見当がつかなかった。
「ふむ……」
 黒木は、読みおえて、「確かに、これは安土ゆかりという子にとっては、厄介なことだ」
「お分かりと思いますが、そこで記者相手に話しているのは、私の父です」
「そのようですな」
 と、黒木が肯《うなず》く。
「話の内容はでたらめですが、ゆかりさんの方では、そう証明する方法がありません。兄は——もちろん私もですが、何とか、ゆかりさんを救いたいと思っているんです。このままでは、ゆかりさんのスターとしてのキャリアが終わることになりかねません」
 黒木は黙って克子の話を聞いていた。どう思われるかは別として、ともかく始めた以上、途中でやめるわけにはいかない。克子は話を続けた。
「もちろん、父がどうしてそんな嘘《うそ》を並べているのか、お分かりにならないと思います。——私と兄は、家を飛び出して、二人で東京へ出て来たのです。兄は十八。私は十四歳でした……」
 克子は今までしたことのないこと、自分の身の上を語るということを、今、初めて経験していた。
 父の再婚と、それに傷ついて故郷を捨てた日々。そして、つい最近になって、父が家も土地も取り上げられて、子供たちのもとへやって来たことなど、克子は何一つ隠さず、黒木竜弘に話した。
 とても長くかかったような気がしたが、実際はそれほどでもなかったのだろう。
「——なるほど」
 黒木は、克子が一旦話を切ると、肯いて、「あなたのお父さんが、その国枝という男の言いなりになっているわけは分かりました。それで……」
「考えたんです」
 と、克子は、両手を固く握り合わせた。「この記事が出るのは止められないとして、何とか、ゆかりさんをスキャンダルから救う方法がないかと。——父のやったことです。いくら関係ないとはいっても、兄も私も、責任を感じないわけにはいきません」
 黒木にも克子の考えが分かりかけて来ているようだ。少し表情に変化が見えた。
「もし、ゆかりさんが黒木さんの所のイメージガールになるという話が——話だけでも広まれば、それはゆかりさんが暴力団なんかと何の関係もない証拠だと世間は受け取るでしょう。もちろん、ゆかりさんは記者会見を開いて、この記事を否定しますが、父が自分の話を嘘だと認めるはずがありませんから、双方の言い分は平行線になります。その針を『白』の方へ振らせるために、お力を貸していただきたいんです」
 克子はそう言ってから、「とんでもなく、図々しいお願いだとは承知しています。こんなこと、お願いできる立場ではないことも……」
「しかし、翔の奴《やつ》はあなたにプロポーズしたそうじゃないですか」
 黒木が愉快そうに言った。「せっかちな奴だ、と叱《しか》っときましたがね」
 克子も、やっと微笑を浮かべた。
「翔君はとてもいい人です。気持ちはとても嬉しいんですけど、この——記事でお分かりの通り、父はこんな人間です。これ以上、私と翔君がお付き合いしていたら、父のことでどんなご迷惑をかけるか分かりません。それに——」
 言いかけて、思いがけず、言葉が出なくなった。
「それに……何です?」
 言わなければ。何もかも、はっきり言ってしまうのだ。それが、翔のためでもある。
「私は今……ある男性と付き合っています。妻子のある人です。でも——その奥さんにも知られていますから、もう長くは続かないでしょう。でも、ともかく私は翔君が憧《あこが》れてくれているような女じゃないのです」
 克子は、目を伏せて、「もう、翔君とは会わないとお約束します」
 と、言った。
 黒木が、克子の告白をどう聞いたか、それは克子自身にも見当がつかなかった。
「——よく分かりました」
 と、黒木はもう一度ゆかりについての記事を取り上げて、眺めながら、「考えてみましょう。今、ここでご返事するわけにはいかない。それは分かって下さい」
「もちろんです」
 と、克子は急いで言った。
 常識的に考えれば、黒木が話を聞いてくれただけでも、満足しなければならないだろう。
「翔には、どう話しますか」
 と、黒木が言った。
「さあ……。お父様から話していただくのが、私としては楽ですけど」
「それは困る。それでは私があなたに別れろと無理強《じ》いしたと思いますよ、あいつは」
 黒木は、どことなく愉《たの》しそうですらあった。
「分かりました。私が話します」
「そう願いたいですな。恨まれたくない」
 と言って、黒木はメガネを外した。「しかし、今の話で、やっと納得が行きましたよ。その若さで落ちついていると思ったが」
「老けてるだけです」
 と、克子は笑った。「でも——お礼を申し上げなくては。あんなパーティーにまで招《よ》んで下さって。いい思い出です」
 黒木は、チラッと克子の手に目をやって、
「指の傷はどうです?」
 と、訊《き》いた。
「ええ、もう何とも……。あの方——長峰さんとおっしゃいましたね。具合、いかがですか? 本当はすぐにお訊きしなきゃいけなかったのに」
「もう退院しましたよ」
「じゃあ、良くなられて?」
「前よりしっかりしたみたいだと家内が言っていました」
「良かったわ。少しでもお役に立てて、嬉しいです」
 黒木は、ちょっと唐突な感じで立ち上がると、
「もう休みますので。この件は、ご連絡しますよ」
 と、言った。
 克子も急いで立ち上がり、何度も礼を言った。
「翔が車を呼ぶでしょう」
「いえ、自分でタクシーを見付けますから」
「いや、この辺は夜中には通りません。夜中というより朝に近いか」
 黒木は時計に目をやった。
「ありがとうございました、色々と」
 克子は、もう一度頭を下げた。
 ——黒木が出て行くと、何か翔と話している声が聞こえて来た。
 やれるだけのことはやった。克子は、体から力がふっと抜けて行くようで、ソファにぐったりと座り込んでしまったのだった。
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