日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

本日もセンチメンタル15

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:15 守り神「本当に」 と、その女性は、涙《なみだ》ぐんでいた。「私が何をしたっていうの!」「あんたの気持はよく分《わか》
(单词翻译:双击或拖选)
 15 守り神
 
 
「本当に……」
 
 と、その女性は、涙《なみだ》ぐんでいた。「私が何をしたっていうの!」
 
「あんたの気持はよく分《わか》る」
 
 と、花《はな》八《や》木《ぎ》刑事が慰《なぐさ》めている。「まあ、人生には色々なことがあるものだ。これもいい経験だと思って——」
 
 これが、二《は》十《た》歳《ち》かそこらの女性に言って聞かせているのなら、まあ良かったのである。
 
 だが、相手は加《か》藤《とう》啓《けい》子《こ》。——同じ「啓子」でも、詩織の家から姿《すがた》を消した啓子とは少々年《ねん》齢《れい》差《さ》があって、やがて六十歳《さい》になろうという、家庭科の教師だったのである。
 
 つまり、慰めている花八木よりも年上なのだ。誰《だれ》だって、年下の人間から、
 
「これもいい経験だよ」
 
 なんて慰められたら、いい気持はしないだろう。
 
 この加藤先生も、やはり人間が出来ているとはいえ、プライド低からず、
 
「大きなお世話です!」
 
 と、花八木をにらみつけて、ピシャリとやった。「私は充《じゆう》分《ぶん》に『いい経験』をして来ましたよ!」
 
 ツン、として、行ってしまう。花八木は、ため息をつくと、
 
「全く、どうして人間というのは素直になれないものなのだろうか」
 
 と、独《ひと》り言《ごと》を言った。
 
 ギャハハ……。笑い声が、花八木の背《はい》後《ご》で上った。花八木がキッとなって振《ふ》り向くと、詩《し》織《おり》がピタッと口を閉《と》じて、あさっての方を向く。
 
「笑ったな!」
 
 と、花八木が詩織をにらんだ。
 
「いいえ。空《そら》耳《みみ》でしょ」
 
「まあいい……。三《み》船《ふね》が、君の言ったことがでたらめだったと知って、どうするか、楽しみだな」
 
 花八木は口《くち》笛《ぶえ》など吹《ふ》きながら、校庭を歩いて行く。
 
「—— 大人《おとな》げないわねえ、二人とも」
 
 と、見ていた添《そえ》子《こ》が呆《あき》れている。
 
 今日は一日、学校での授業が中止になったのである。
 
 何しろ、寮《りよう》が叩《たた》き壊《こわ》されちゃったのだから、大変な騒《さわ》ぎだ。
 
 寮《りよう》には、古くからこの学校にいる先生たちや、事務員、用務員、それに、遠方から入学している生徒も何人か入っていた。
 
「さぞびっくりしたろうね……」
 
 と、添子は言った。
 
「うん」
 
 と、詩織は肯《うなず》いた。
 
 二人は、校庭を出て、学校の裏《うら》手《て》に回って行った。——そこには、寮が、今はただの木材の切れはしとなって、山をなしていた。
 
 やっとブルドーザーやトラックがやって来て、片《かた》付《づ》けが始まっている。
 
 数人の証言を総合すると、誰《だれ》やら男たちが加藤啓子の部屋のドアを、斧《おの》でぶち破って、中へ入った。そしてすぐに、「啓子違《ちが》い」だと分ったのだろう(一目見りゃ、分《わか》って当然だが)、顔を 真《まつ》赤《か》にして飛び出して来ると、次々に寮の部屋のドアを叩《たた》いて回り、全員が仰《ぎよう》天《てん》して起き出して来ると、
 
「十分以内にここから出ろ!」
 
 と、命じたらしい。
 
 一一〇番しようにも、予《あらかじ》め電話線は切られており、みんな仕方なく、貴重品を持って逃《に》げ出した。中には、家具まで運び出した怪《かい》力《りき》の者もいたらしい。
 
 きっかり十分後、ガタガタと音がしたと思うと、いきなり、大きなクレーン車が現れ、その太いアームで、寮をぶっ壊《こわ》し始めたのである。——もともと、かなり老《ろう》朽《きゆう》化《か》していた木造の建物は、たちまち崩《ほう》壊《かい》した……。
 
「詩織……」
 
 と、添子が、詩織の肩《かた》に手をかけた。「元気出しなよ」
 
「うん……。でもね、やっぱり——」
 
「お腹《なか》空《す》いてるのは、分《わか》るけどさ」
 
 詩織は、添子をにらんで、
 
「誰《だれ》がお腹空いたなんて言った? 私はね、自分のせいで、寮が壊されたと思って、悩《なや》んでるのよ」
 
「でも、仕方ないじゃない。壊れちゃったものは元に戻《もど》らないんだし。それに、もう建て替《か》える時期だったもん」
 
「それもそうね」
 
 詩織は、コロッと明るくなって、「じゃ、私、いいことをしたのかもしれないわね! 感謝状くれるかしら?」
 
「どうかしらね、それは……」
 
 添子も、詩織の変りようには、なかなかついて行けなかった。
 
「——問題は、あの三船ってのが、どう出て来るかよ」
 
 と、詩織は、校舎の方へと戻《もど》って行きながら、「うちも危《あぶな》いわね。寮《りよう》をぶっ壊《こわ》しちゃうぐらいだから、うちなんか」
 
「アッという間ね」
 
「変なこと、請《う》け合わないでよ」
 
 と、詩織は顔をしかめた。
 
 
 
 しかし、ともかくその日、学校から戻《もど》ってみても、詩織の家は、無事だった。
 
 気が変ったのかしら? それとも、これから来るのか。
 
「——ただいま」
 
 と、家へ上った詩織は、結構上《じよう》機《き》嫌《げん》であった。
 
 別に、家が壊れていなかったから、というわけではない。花八木が、今日は昼ごろからいなくなってしまったのである。
 
「お帰りなさい」
 
 と、母の智《とも》子《こ》が台所に立って言った。
 
「今日は、あのできそこないの刑事がいなかったの。いい気分だったわ」
 
 と、詩織は言った。
 
「あら、そう」
 
「やっぱり、あの手の顔は、動物園にいるべきだわ。人間とは思えないもの」
 
「そう」
 
「でも、チンパンジーやオランウータンも、拒《きよ》否《ひ》するかもしれないわね。俺《おれ》たちを、こんな奴《やつ》と一《いつ》緒《しよ》にするな、って」
 
 と言って、詩織はハハハ、と笑った。
 
「そうか?」
 
「そうよ」
 
 他《ほか》の声だった。母の声にしては、いやに男っぽい声で——そう、あの「変な刑事」の声に似ていた……。
 
「あら」
 
 詩織は、目の前に、当の変な刑事が立っているのに気付いた。「何してるんですか、こんな所で?」
 
「調査のために、やって来ると、君の母親が、夕食でもどうぞ、と強くすすめてくれたのだ。断るのも却《かえ》って失礼に当る、と思ってな」
 
 花八木はニヤリと笑って、「人間とは思えないかもしれんが、一応、人間と同じエサを食べるのだよ」
 
「そうですか……。良かったですね」
 
 花八木が居間へ戻《もど》って行くと、詩織は頭に来て、
 
「ママ! いるならいるって言ってくれりゃいいでしょ!」
 
「だって、お前が一人で、勝手にしゃべってるから……。いいじゃないの。人間、正直が一番だわ」
 
 呑《のん》気《き》な母親なのだ。
 
 ——かくて夕食の席は、成《なる》屋《や》一家の三人と、それに犬、花八木の五人になった。
 
「この犬にも名前が必要ね」
 
 と、詩織は、言った。「お前、何て呼《よ》ばれてたの?」
 
「ワン」
 
「ワンか。でも、『ワン』じゃ、お前を呼んでるとき、他《ほか》の人が変に思うでしょうね」
 
「じゃ、『犬』にしたら?」
 
 と、母親。
 
「『ワン』がだめなら、『カン』とか『コン』とか……」
 
 と、父親。
 
「『花』はどうだ」
 
 と、花八木も加わる。
 
「もう! 真《ま》面《じ》目《め》にやってよ!」
 
 と、詩織は頭へ来た。「大体、あんた刑事でしょ? 公務員でしょ?—— 人の家で勝手にご飯食べるなんて!」
 
「勝手ではない。私はこの家の守り神なのだ」
 
 何だか薄《うす》汚《よご》れた守り神だ。
 
「どの辺が?」
 
「つまり、私がここにいれば、三船も手を出さない。さもなくば、この家はとっくにスクラップと化していただろう」
 
「あんたのほうがよほどスクラップ」
 
 と、詩織が口の中で呟《つぶや》く。「——でも、あの桜《さくら》木《ぎ》っておじさんは、どうしてるの?」
 
「今、調査中だ」
 
 と、花八木は胸《むね》を張った。「ここにいれば報告が——」
 
 ガタガタと家が揺《ゆ》れた。
 
「地《じ》震《しん》よ!」
 
 と、詩織は叫《さけ》んだ。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%