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本日もセンチメンタル29

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:29 悲《ひ》惨《さん》な食《しよく》卓《たく》「食いものをよこせ!」「貧しい者にパンを!」 別にデモのスローガンではない
(单词翻译:双击或拖选)
 29 悲《ひ》惨《さん》な食《しよく》卓《たく》
 
 
「食いものをよこせ!」
 
「貧しい者にパンを!」
 
 ——別にデモのスローガンではない。
 
 花《はな》八《や》木《ぎ》と隆《たか》志《し》の二人、腹《はら》が減《へ》って、放《ほう》っておかれているので、さっきからわめいているのである。
 
 隆志が、「貧しい者——」なんて言い出したのは、ちょうど世界史で、フランス革命をやっていたせいかもしれない。まあ、こんな所で真《ま》面《じ》目《め》さを強調しても、点が上るわけじゃないのだが。
 
「何か食べるもの……」
 
「よこせ……」
 
 二人の声は、急速に衰《おとろ》えを見せて行った。ただでさえ空《くう》腹《ふく》なのに、大声を出し続けたので、あんまり腹が空《す》いて、目が回って来たのである。
 
 ダイエットには、大声を出すのがいい、と隆志は悟《さと》った。
 
「——連中は、俺《おれ》たちを飢《う》え死にさせる気かもしれん」
 
 と、花八木が言った。
 
「まさか」
 
 と言いながら、隆志の顔から血の気《け》がひいた。
 
「じゃ——もしそうだったら?」
 
「やむを得ん」
 
 と、花八木は、じっと目を閉《と》じ、「ここは一つ、覚《かく》悟《ご》を決めるしかない」
 
「覚悟を……」
 
「そうだ。お前の墓《はか》には、十年に一回ぐらい、花を供《そな》えてやる」
 
「誰《だれ》が?」
 
「私が、だ」
 
「でも、何で僕だけ死ぬの?」
 
「ここは、二人とも死ぬか、一人だけでも助かるか、選ばねばならん。辛《つら》い選《せん》択《たく》だが、ここはお前が死ぬんだ」
 
「僕が死んで、何であんたが助かるの?」
 
 隆志はゾッとした。——こいつ、僕を食料にして生きのびる気だ!
 
「畜《ちく》生《しよう》、誰が! こっちが殺してやる!」
 
「やるか!」
 
 二人は、激《はげ》しくわたり合った。といっても、両手両足、縛《しば》られているから、縛られたままの両足で、互《たが》いにけとばし合ったのである。
 
「こいつ!」
 
「エイッ!」
 
「観念しろ!」
 
「やなこった!」
 
 ——あまり男らしいとは言いかねる格《かく》闘《とう》をしていると、
 
「おい、何してるんだ」
 
 いつの間にか、ドアが開《あ》いて、三《み》船《ふね》の手下の一人が、呆《あき》れ顔で突《つ》っ立っていた。
 
「飯《めし》か?」
 
 と、花八木が訊《き》く。
 
「何か食いたいか。よし。じゃ、一人ずつだ」
 
 三船の手下は、花八木の方を先に引っ張って立たせると、足の縄《なわ》を解いて、「来い」
 
 と、ドアの外へ押《お》し出した。
 
「ねえ! 僕は?」
 
 隆志が悲《ひ》痛《つう》な叫《さけ》びを上げた。
 
「待ってろ。次だ」
 
「そうだ。待ってろ」
 
 と、花八木がニヤつきながら言った。
 
 隆志は頭に来た。しかし、今は怒《おこ》ったところで仕方ない。
 
 どうせ花八木のことだ、何を食わしてくれるのか知らないが、アッという間に平らげてしまうだろう。それならきっと、すぐに戻《もど》って来て、こっちの番になる。
 
 隆志は、一秒が一時間にも思える気持で(少しオーバーかな)、花八木の戻るのを、待ち続けた……。
 
 
 
「もう食べるのにも飽《あ》きたなあ」
 
 と、詩《し》織《おり》は言った。
 
 隆志が聞いていなくて良かった。もし、空《くう》腹《ふく》で死にそうな隆志がこれを聞いたら、二人の仲《なか》は終っていただろう。いや、悲《ひ》惨《さん》な殺人という結末になったかもしれない……。
 
 だが、ここは絶海の孤《こ》島《とう》。いくら詩織が大声で叫んでも、隆志の耳に入る心配は、全くない。
 
 詩織は、屋《や》敷《しき》から外へ出て、この小さな島を歩いてみた。
 
 もちろん、どこにも空港もなく、タクシー乗場もなかった。
 
「泳いで行くにゃ遠すぎるしねえ……」
 
 詩織は、首を振《ふ》った。
 
「——さて、帰るか。しょうがない」
 
 一人しかいないのでは、一人でしゃべっている他《ほか》はない。
 
 屋敷の方へ歩きかけた詩織は、コトン、という音で、足を止めた。
 
 何かしら?——あの岩の向うだわ。
 
 歩いて行ってみて、目を丸くした。
 
 ボートだ! モーターのついた、小さなボートが、岩の陰《かげ》につないであった。
 
「やった!」
 
 これで帰れる!
 
 詩織は、ヤッホー、と声を上げて、早《さつ》速《そく》ボートへ乗り込んだが……。
 
「これ、どうやったら、動くの?」
 
 と、呟《つぶや》いた。「これで動くんでしょ」
 
 モーターにさわって、詩織はびっくりした。暖《あたたか》いのだ。
 
 つまり、これに乗って、誰かがここへ来たということか……。
 
 敵か、それとも味方か。
 
 詩織は油断なく、ボートをおりると、手近なところで、手ごろな石を拾い上げた。
 
「来るなら来い……」
 
 何が来るか知らないけど。まあ、間《ま》違《ちが》ってもパンダやコアラは来ないだろう。
 
 屋《や》敷《しき》の方へと、ゆっくり左右を見回しながら戻《もど》って行く。
 
 しかし、あのボートでここへ来て、どこへ隠《かく》れているのだろう?
 
 もしかして——屋敷の中?
 
 詩織は足を速めて、屋敷へと戻って行った……。
 
 
 
 案に相《そう》違《い》して、花八木はなかなか戻って来なかった。
 
 隆志は、もう目もかすみ、意識も薄《うす》れて来るようで……。
 
「詩織……。君を食べたい……。君は可《か》愛《わい》いよ。——まるで大《おお》盛《も》りのラーメンみたいだ」
 
 などと呟《つぶや》いていた。
 
 すると——。
 
 バアン、と凄《すご》い音がして、隆志は飛び上りそうになった。といっても手足が縛《しば》られていては飛び上れないけど。
 
 銃《じゆう》声《せい》だ! 何があったのだろう? そこへ、また——バアン。
 
 都合、三回の銃声が聞こえて、静かになった。隆志は、じっと息を殺していた。
 
 もちろん、誰《だれ》かが助けに来てくれたのかもしれないが、逆に殺しに来たのかもしれない。
 
 何しろ、この場合、「敵の敵は味方」っていうほど単純じゃないのだから。
 
 と、足音がドアの前に来て、止った。
 
 ドアが開くと、そこには……。
 
「まだ生きてたのか」
 
 と、花八木が立っていた。
 
「何だ! 縄《なわ》は解けたの? じゃ、早く、僕のも」
 
「うむ」
 
 花八木は、珍《めずら》しく素直に隆志の縄を解いてやった。
 
「ねえ、何か食べた?」
 
「うむ。——カップラーメンがテーブルの上にある」
 
「カップラーメン!」
 
 一万円払《はら》ってもいい、と思った。もちろん払いっこないが、気持の上では、ということである。
 
 銃《じゆう》声《せい》の方も気にはなったが、今はともかく食べものだ。
 
 廊《ろう》下《か》をよろけつつ進んで行くと、突《つ》き当りのドアが開《あ》いていて、正面に、テーブルと、それにのったカップラーメンが目に入った。
 
「あれが……?」
 
「三分はたっている」
 
 と、花八木が肯《うなず》く。
 
 ワーッ。隆志は真《まつ》直《す》ぐに駆《か》けて行って、カップラーメンに飛びついた。
 
 アッという間に——という表現が、リアルに思えるほどのスピードで、隆志はカップラーメンを一つ、空《から》にした。
 
 もちろん、満《まん》腹《ぷく》じゃないが、差し当り、死ぬほどの空腹からは逃《のが》れられたのだ。
 
「——よく食べられるな」
 
「そりゃお腹《なか》空《す》いてたからね」
 
「いや、こんな状《じよう》態《たい》の中でだ」
 
 と、花八木が言った。
 
 隆志は、周囲を見回した。
 
 —— 大して広い部屋ではない。 そこで、三船の手下らしいのが三人。
 
 みんな、撃《う》たれたと見えて、血に染《そま》って倒《たお》れていたのだ。
 
 隆志は、目を回して、その場に失神した……。
 
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