日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

長い夜07

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:7 夜の行進 いくら用心しているとはいっても、仁美は十五歳だ。 一《いつ》旦《たん》眠ってしまえば、そう簡単に起きなくて
(单词翻译:双击或拖选)
 7 夜の行進
 
 いくら用心しているとはいっても、仁美は十五歳だ。
 一《いつ》旦《たん》眠ってしまえば、そう簡単に起きなくても仕方あるまい。
 肩を二、三回揺すられて、やっと目を開くと、
「なあに、お母さん……」
 と、舌っ足らずの声を出し、パチパチと瞬《まばた》きして——。「武彦!」
「しっ」
 と、武彦が押える。
「——何時よ?」
 仁美の目はベッドのわきの目覚し時計に向く。「三時? 夜中の三時でしょ」
「そうだ」
 と、武彦が低い声で言った。
「何なの? まさか——」
 と、仁美は武彦をにらんで、「一緒に来ていいとは言ったけど、だめよ、まだそんなことしちゃ」
「——お前、何考えてんだ?」
 と、武彦は心外、という様子で、「いくら俺《おれ》でも、こんな時にそんな真《ま》似《ね》するわけないだろ。大体、お前の親父さんもお袋さんも、すぐそばにいるのに」
「じゃ、いなきゃ、やるわけ?」
「馬鹿。起きてみろよ」
「何なのよ」
「誰かが歩いてる」
 仁美はベッドに起き上がった。
「どこを?」
「表さ。外の通りだ」
 仁美はパジャマの上に、カーディガンをはおった。
 廊下へ出る。——古い家だが、割合に広い。
「ちょっと」
 仁美は足を止めて、父と母が寝ている部屋の様子をうかがった。ちょっと肩をすくめると、
「グーグー寝てる」
 と、言った。「呑《のん》気《き》だなあ」
「人のこと言えるか。——こっちに来てみろよ」
 武彦は、玄関を上がってすぐわきにある小部屋へと仁美を連れて行った。武彦は、ここで寝ているのである。
「何も聞こえないじゃない」
「しっ。——少し待ってろ」
 表の通りに面した窓がある。もちろん、部屋の明りは消し、カーテンも引いてあった。
 誰か忍び込むといけないというので、武彦が針金で即席の鉄条網みたいな物を作って、窓の所へ張ってある。
「ほら」
 と、武彦は言った。
 何の音か、初めは仁美にも分らなかった。風の音のようにも聞こえたが、やがてそれは小刻みな、時計の音のように変って、近付くにつれ、人の足音だと分るようになった。
「一人じゃないね」
 と、仁美が言った。
「ああ。いいか、カーテンの隅の方を少し上げて、覗《のぞ》いてみろ」
「うん」
「少しだぞ、向こうもこの家のことは気にしてるはずだ。気付かれないようにしろ」
「分った」
 ——何だろう? 夜中の三時に、何人もの人間が、なぜ町の中を歩いているのか。
 仁美は、頭を低くして、カーテンの隅の方へと膝《ひざ》で進んで行った。
「針金に引っかかるなよ。けがするぞ」
「分ってるわよ」
 仁美は、カーテン全体が動かないように用心しながら、隅の方を静かに持ち上げた。
 目が慣れないので、少しの間は、何も見えなかった。しかし、月が出ていて、その明りが、青白く道を照らしているのに気付くと、目に入る物がはっきりと見分けられる。
 足音は、ほとんどこの家の前まで進んで来ていた。
 狭い視野の中に、そ《ヽ》れ《ヽ》が入って来た。
 五、六人……いや、十人以上いる。
 男たちが、二列になって進んで来る。顔までは見えないが、町の男たちだろう。服装も別々だった。
 異様なのは——一人一人が、みんな手に手に武器を持っていることだった。二、三人は、銃を手にしている。残りは、太い棒や、鉛管か鉄パイプらしい物。一人は、どうやら日本刀を手にしている様子だ。
 その奇妙な武装した一団は、しかも、なぜか軍隊のように、しっかりと固まって歩いているのだった。
 何だろう、この光景は?
 仁美は何となく、背筋の寒くなるような思いを味わった。——これが自衛隊とか警官隊のような、制服姿の一団なら、行進していても少しもおかしくはない。
 しかし、私服の人々が、しかも武器を持って整然と歩いて行く様《さま》は、どこか不つりあいで、歪《ゆが》んでいた。不自然そのものだった。
 狭い視野の中をその行列が通り過ぎるのに、何十秒もかかってはいないだろうが、しかし、仁美には、ずいぶん長い時間のように感じられた……。
「——行ったわ」
 仁美は、体中で息をついた。知らない内に、息を殺していたのだ。
「どう思う?」
 と、武彦は言った。
「よく分らないけど……。一番最後にくっついてたの、昼間この家にいた、金井って人じゃない?」
「ああ、そうだ」
「何だか……気味が悪いわ。どうしてなのかよく分らないけど」
「みんな凄《すご》い目つきして歩いてただろう」
 そう言われて、仁美も気が付いた。
 確かにそうだ。この家の前を通り過ぎる時も、みんな油断なく左右を見ていた。
「どういうことだと思う?」
 と、仁美は言った。
「分らねえよ、俺《おれ》だって」
 と、武彦は肩をすくめた。「ただ、どうもまともな奴らじゃねえな、ってことは分る」
「そうね。——自警団みたいなものかしら?」
「かもしれないな」
 と、武彦は肯いて、「それにしちゃ、あんな風に固まって行進したりして……。妙だよな」
「うん」
 ——二人は、しばらく黙っていた。
「あれ、ずっと夜の間、やってるのかしら?」
「どうかな。さっき気が付いてからは、二回、この前を通ったぜ」
「そう……」
「ま、いいさ。ともかく寝ろよ。別にここを襲って来る様子もないしな」
「起こして、あんな物見せといて、寝ろって言われたってね」
「あれ。そんなにデリケートだったっけ、お前って」
 仁美は、ちょっと笑った。その笑いで、大分気が軽くなる。
「——じゃ、寝るわ。悪い夢でうなされたら、見に来てね」
「俺を起こすんだったら、よっぽど大声で叫ばないとだめだぜ」
 と、武彦は笑って言った。「おやすみ」
「おやすみ。——明日はどうするの?」
「町の雰囲気次第だろ」
「そうね」
「ともかく、町を隅から隅まで一回りしてみないとな」
「私も行く」
「好きにしな」
 ——仁美は手を振って見せ、廊下へ出ると、自分の部屋の方へ歩いて行った。
 途中、父と母の寝室のドアをそっと開けてみる。——寝息をたてて、二人ともぐっすり眠っていた。
 やや部屋が狭いせいもあって、父と母は布団で寝ている。もちろん二組敷いてあって……。でもよく見ると、母が父の布団に入って、身を寄せるようにして眠っている。
 仲のいいこと……。仁美はそっとドアを閉めた。
 自分のベッドへ入って、目を閉じる。
 ふと、昼間の電話を思い出した。小さい男の子の声の……。
「夜は外へ出ちゃいけない」
 と、その男の子は言った。
 あの奇妙な行進があるからだろうか? それとも、他の理由からか。
 そうだ。明日は、あの電話をかけて来た男の子を捜そう。
 きっと、見付けられる。こんな小さな町である。男の子といっても、数は多くないだろうし。
 あの話し方、それに、声がとても近かったことからみて、この町に住んでいる子だというのは、ほぼ確実だし……。
 よし、と。——これで明日やることができた。
 人間、やるべきことが決まると落ちつくものだ。
 仁美も落ちついて——そしてすぐに深い眠りに落ちて行った。
 
 奇妙に寝苦しかった。
 畜生……。広沢は、何度も寝返りを打ったが、その内、根負けしたように目を開けた。
 夜があった。深い闇《やみ》が。
 ここは?——どこだったろう?
 ベッドの上。そうか。
 あの女だ……。自転車に乗っていた女。
 名前も聞いてなかったな、と広沢は思った。
 しかしまあ……。別に知らなくたっていい。どうせ明日になりゃ、出て行くのだ。
 女は、ベッドにいなかった。どこへ行ったんだろう?
 ベッドの、女が寝ていた辺りに手を当ててみたが、女のぬくもりは全く残っていなかった。
 子供のそばにでも行って、寝てるのかな。
 広沢は、ベッドに起き上がって、欠伸《あくび》をした。
 いつもなら、女を抱いた後はぐっすり眠ってしまうのだが……。今夜の女は、とんだ拾いものだった。女の方もかなりしつこかったが、広沢も大いに楽しんだ。
 それでいて目が覚めたのは、やはりいくらか、奇妙な感じを持っていたからだろうか。
 広沢は、シャツを着て、寝室を出た。
 廊下は、ほの白く、明りに照らされている。それが月明りだと気付くのに、少しかかった。
 高い所に窓があって、そこから月の光が射している。外は、結構明るいかもしれない。
 広沢は便所に行って、戻りかけたが、ふと喉《のど》が乾いて、台所の方へ歩いて行った。
 もちろん、どっちの方だったか、うろ憶えだ。
「おっと」
 ドアを開けると、布団が敷いてあった。
 やっぱり、女は子供に添い寝しているらしい。布団が盛り上がっていた。
 広沢はドアを閉め、今度は台所へうまく行きついた。
 明りを点《つ》けようとして、スイッチを捜す。カチッ。——カチッ、と二、三度やり直したが、明りは点かない。
「何だ。停電か」
 と、呟《つぶや》く。
 肩をすくめて、それでも大分目が慣れたせいもあるのか、ぼんやりと台所の中の様子は見える。
 コップを見付けて、水を飲んだ。——ぬるくて、旨《うま》くもないが、仕方ない。
 冷蔵庫、とも思ったが、電気が切れているのでは仕方ない、と気付いた。
 寝るか。
 広沢は、頭を振って、廊下を戻って行った。さっき開けたドアの前で足を止める。
 もう一度、ドアを開けてみた。
 布団が盛り上がって、あの女と子供が……。たぶん……。
 何が気になったのか、やっと思い当った。
 部屋の中が、全く静かなのだ。二人が寝ているのに、寝息が耳に届いて来ない。
 もちろん、布団をほとんど頭までかぶっているからかもしれないが……。
 広沢は、そっと部屋の中へ入った。畳が、キュッと鳴る。
 かがみ込んで、広沢は布団の端をそっとつかむと、ゆっくりとめくった。
「何だ、これは?」
 思わず、声が出ていた。
 人ではない。布団を丸めた物が、人のように寝かしてあって、少し頭の先が出て見えたのは、ヘアピースだった。
 どういうことだ?
 これは明らかに、寝ているように見せかけるためにやってある。
 誰に「見せかける」んだ?——俺《おれ》に、か。
 他には考えられない。
 広沢は、寝室へ戻ると、脱ぎ捨ててある自分の服を集めた。上衣の財布を確かめてみたが、別に中身もちゃんとある。
 広沢は、ともかくまず服を着た。
 あの女! 何を考えているんだ?
 苛《いら》立《だ》っていた。何が起ろうとしているか分らないので、余計に苛立っているのだ。
 ポケットにペンシルライトが入っていた。
 いささか頼りない光源だが、仕方あるまい。これで、家の中を調べよう。
 広沢は、慎重に、家の中を調べて回った。
 もちろん、人はいない。そして気付いたことは、最近、人が住んでいなかったらしい、ということだ。
 台所や寝室以外の部屋はほとんど見ていなかったので、気付かなかったのである。
 すると、あの女は、空家へ広沢を連れて来たのか?
 しかし、子供は家で待っていたし……。
 時計を見る。——三時半を少し回っていた。
 よし。外へ出よう。
 しばらくすると夜も明けて来る。どうせ目が覚めてしまったのだし。
 広沢は玄関へ行った。自分の靴だけが、きちんと揃《そろ》えて置いてある。
 広沢は、ちょっと表の様子をうかがってから、戸を開けようとした。
 動かない。——変だな、と思った。
 鍵《かぎ》はかかっていないのに。
 力をこめても、戸はミシミシときしむばかりで、一向に開かないのだ。
 すりガラスをはめた格子戸で、そう頑丈とも思えなかったが、広沢が必死で力をこめても、だめだ。
「——畜生!」
 どうなってるんだ!
 広沢は、靴を持って上がると、手近な部屋の窓から出ようとした。
 そして、ペンシルライトで、窓を照らしてみて、愕《がく》然《ぜん》とした。
 板《ヽ》を外から打ちつけて、完全にふさいである。
 次から次へと、全部の部屋を調べてみた。
 どの窓も、だ。
 この家へ来た時は、外見などろくに見もしなかったが……。
 ただ、廊下に月の光を誘い入れた高い窓だけが、板でふさがれていなかったが、その窓は細長くて、とても人間が出られる幅はないのだ。
 全身に汗をかいていた。
 ——広沢は、自分がとんでもない所へやって来たらしい、とやっと気付いたのだった……。
 
 小西晃介は、ベッドで目を開いた。
 電話が鳴っている。——ほとんど無意識の内に手が動いて、受話器を取っていた。
「小西だ」
 向うの話に耳を傾ける内、小西の顔は、厳しく引き締《しま》って、眠気はたちまち消し飛んでしまった。
「——分った。ともかく、何とかして落ちつかせておいてくれ」
 と、小西は言った。「——ああ、すぐそっちへ行く。一時間かな。——よろしく頼むよ」
 電話を切ると、小西はベッドから出た。
 仕度をするのも、若者並みの手早さである。
 小西は、都心の一等地のマンションに住んでいる。何といっても、通勤も楽であった。
 部屋を出て、人気のない廊下をエレベーターへと急ぐ。
 午前三時半だ。——いくら夜ふかしの多いマンション族も、この時間は眠っているだろう。
 駐車場へ下りて行くと、小西は、自分の車へと急ぐ。
 そして——足を止めた。
 車と車の間に、誰かが身をかがめていたのだ。
「誰だ」
 と、小西は言った。「出て来い」
 少し間があって、
「分ったよ」
 と、返事がある。
 姿を見せたのは、革ジャンパー姿の、二十歳ぐらいの若者だった。
「何をしていたんだ?」
 と、小西は言った。
「見りゃ分るだろ」
 と、若者は肩をすくめる。
「質問しているんだ。答えろ」
 小西の口調と、よく通る声には迫力があった。
「ケチな泥棒さ」
 と、若者は言った。「高そうな車ばっかりだしな。うまく車ごと盗めりゃ、儲《もう》けもんだし、だめでも、中に何か金目の物があるかもしれねえだろ」
「ケチな泥棒か」
 と、小西は言った。「ケチだと自分でも思うのか」
 小西の言葉に、若者は戸惑った様子で、
「決まってるじゃねえか。少なくとも、大泥棒じゃねえしな」
「なら、なぜやるんだ」
「お説教はやめてくれ」
 と、口を尖《とが》らす。「あんたに関係ねえだろう。警察を呼びたきゃ、呼べよ」
 小西は、ちょっとの間、若者を見ていた。
 細身だが、いかにもバネのいい体だった。
「——車の運転はできるのか」
 と、小西は訊《き》いた。
「当り前だい。ただし、免許は取り上げられてて、持ってねえけどな」
「腕に自信は?」
「俺は元レーサーだったんだぜ。事故を起してやめたけどな」
「信じておこう」
 と、小西は言った。「仕事がある。やるか」
「何だって?」
「私の車を運転して、できるだけ早く、目的地へ着くことだ。私の車はそのベンツだ。——どうする?」
 若者は、呆《あつ》気《け》に取られて小西を見ていた。
「決めるのは早くしてくれ。急いでる」
「分った。やるよ」
 と、若者は言った。「面白そうだしな」
「よし、乗れ」
 小西は、キーを出して車のドアを開けると、自分は助手席に乗った。
 若者は、運転席について、シートを調節した。口笛を吹いて、
「凄《すご》いシートだな。尻《しり》がくっついちまいそうだ」
 と、言った。
「行先はここだ」
 小西はメモを渡した。簡単な略図である。
「分るか?」
「暴走族だったころ、よく走ったぜ」
 と、若者は言って、エンジンをかけた。
 車体が震える。
「——どれぐらいかかる?」
「そりゃまあ——一時間だな」
「半分で行けるか」
 若者は小西を見た。
「信号を守ってちゃ、無理だぜ」
「なら、守らなくていい。ただし、事故は起すな」
「分った」
 若者は、ニヤリと笑った。「面白いな、あんたって人は」
「行こう」
 いきなり車がバックして、
「ワッ!」
 と、若者が声を上げた。「畜生、バックに入れたのか」
「大丈夫か?」
 と、小西が顔をしかめた。
「見てろ」
 ベンツが、猛然と飛び出した。
 地下の駐車場から、一気に坂を上って、通りへとジャンプしながら躍り出ると、タイヤをきしませながら、スピードはたちまち百キロを超えていた。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%