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怪盗の有給休暇04

时间: 2018-07-30    进入日语论坛
核心提示:3 三人の女子大生「おはよう」 久野原は、英字新聞を手に取って、レストランのボーイに会釈した。「オハヨウゴザイマス」 と
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 3 三人の女子大生
 
 
「おはよう」
 
 久野原は、英字新聞を手に取って、レストランのボーイに会釈した。
 
「オハヨウゴザイマス」
 
 と、きれいな発音で返されて微《ほほ》笑《え》む。
 
 田中和子が、五分前には来て、席を窓際に確保している。
 
「——おはよう。眠れたか?」
 
 特に意味はない。毎朝の挨《あい》拶《さつ》である。
 
「少し寝不足です」
 
 と、和子は答えてから、「おはようございます」
 
 と言った。
 
「コーヒーを」
 
 と、オーダーして、
 
「もっと取れば? 美《み》鈴《すず》」
 
 という声で振り向いた。
 
 あの三人組が、ビュッフェスタイルの朝食を皿にとりながら、ゆで卵の注文をしていた。
 
「ここに泊ってたのか」
 
 と、久野原が言うと、
 
「隣の部屋でした」
 
 と、和子が面白くなさそうに、「夜中までしゃべってましたわ」
 
 ——女子大生の身で、このチューリヒ一番の〈ホテルB〉。
 
 もちろん、スイスには、星の数ほどのホテルがあるといっても、ここはチューリヒで一番格の高いホテルなのである。
 
 大学生だけの三人組には少しぜいたくかもしれない。
 
 久野原が、まずモーニングコーヒーで目を覚ましておいて、ビュッフェの朝食を取りに立った。
 
「——あ、昨日はどうも」
 
 向うが気付いてくれる。
 
 気付いたのは、あの女の子だった。
 
「やあ、同じホテルとはね」
 
 と、久野原は微笑んだ。「若い人はいい。食欲も旺《おう》盛《せい》だね」
 
「恥ずかしい」
 
 と、肩をすくめて、「——私、島《しま》崎《ざき》美鈴といいます」
 
「久野原だ。せっかくの縁だ。同じテーブルにさせてもらってもいいかね」
 
「ええ、もちろん!」
 
 ——というわけで、久野原は、面白くなさそうな和子ともども、女子大生たちのテーブルに加わることになった。
 
「すると、まだこのチューリヒに?」
 
 と、久野原は言った。
 
「本当は今日出るはずだったんです」
 
 と、島崎美鈴が言った。「このチューリヒで待ち合せていた相手が、一日着くのが遅れて。一泊のばしました」
 
「でも、いい街だよね」
 
 と、他の女子大生の一人が言った。
 
 もちろん、他の二人のことも、久野原は紹介してもらっていた。
 
 一人は木《き》村《むら》涼《りよう》子《こ》。三人の中では一番にぎやかそうで、高校生といっても通りそうな童顔をしている。丸いメガネをかけているのも、その印象を強めているかもしれない。
 
「スイスって、どうしてディズニーランドがないの?」
 
 などと言っている。
 
「どこも閉るのが早いのね」
 
 と、〈夜ふかし型〉らしいのが関《せき》口《ぐち》ゆかり。
 
「六本木とか麻布みたいに、午前三時、四時に食事できるような所ってないのかしら」
 
 大分夜遊びに慣れているらしく、三人の中では一番大人びて、体つきも「女」を感じさせる。華やかな感じの美人だ。
 
「ゆかりったら、何しにスイスに来たか分らないでしょ」
 
 と、美鈴が笑って言った。「コンビニがないって文句言っても無理よ」
 
「君たちは同じ大学?」
 
 と、久野原は訊《き》いた。
 
「はい、F女子大です」
 
 と、美鈴が言った。
 
 女子校としては古く、名門の一つである。
 
「今……何年生?」
 
「三年です、私とゆかりは」
 
 と、木村涼子が言った。「私、そう見えないでしょうけど」
 
「中三だね」
 
 と、関口ゆかりが冷やかす。
 
「せめて高三って言ってよ!」
 
「私だけ二年生」
 
 と、美鈴が半熟のゆで卵を割りながら言った。「落第生なんです」
 
「美鈴は一年間こっちに来てて、遅れたんです。だから英語ペラペラ」
 
 と、ゆかりがトーストにジャムを豪快に塗りつけながら、「いいよね。私も留学したいって言ったんだけど、お母さんから、『あんたは、ちょっと目を離すと、すぐ遊んでばっかりいるんだから、そんな遠くへやったら何するか分んない』って言われちゃった」
 
「当ってるよ」
 
 と、涼子が肯《うなず》く。
 
「まあね。さすが、だてに母親やってない」
 
 自分で言ってれば世話はない。
 
 三人の二十一歳は、久野原など、見ているだけで満腹になりそうな食欲を発揮した。
 
「グーテンダーク」
 
 レストランの支配人が、ドイツ語で挨拶している相手を、久野原はチラッと見た。
 
 恰《かつ》幅《ぷく》のいい、大柄なドイツ人だ。いや、スイス人かもしれないが、ゲルマン系であることは確かだ。
 
「旦《だん》那《な》様……」
 
 和子が、小声で言った。
 
「うん、分ってる」
 
 久野原も小声で答えて、すぐに三人の女の子たちの話に加わった。
 
「——すると、今日はどうするんだね?」
 
 と、朝食も終えて、コーヒーを飲みながら久野原が訊く。
 
「買物!」
 
 木村涼子と関口ゆかりの二人が異口同音に答えて、一緒に笑い出した。
 
「二人とも、まだ旅は始まったばっかりよ」
 
 と、美鈴が苦笑いしている。
 
「いいの! 買物しすぎて病気になった人間はいない」
 
 と、涼子が言って、ゆかりと顔を見合せ、
 
「ね!」
 
 どうやら三人組の中では、島崎美鈴が一人、少しクールに振舞う役割らしい。
 
「——久野原さん、一緒に行きません?」
 
 と、ゆかりが言い出した。
 
「若い女性の買物に付合うには、年《と》齢《し》をとり過ぎたよ」
 
「ご迷惑よ」
 
 と、美鈴が口を挟む。
 
「いや、迷惑というわけじゃないが」
 
「それじゃ決り! 三十分したら、ロビーで集合ね!」
 
 と、ゆかりが「判決」を下した。
 
 三人組が先にレストランを出て行くと、
 
「あの子たちに本当について行かれるんですか?」
 
 と、和子が言った。
 
「僕も行きたい所がある。あんまり引張り回されるようなら、途中で別れて帰ればいい。 ——どうする?」
 
 和子は、気がすすまない様子だったが、
 
「旦那様を、飢えた狼たちの中へ放り出しておくわけに参りません」
 
「それは逆じゃないのか?」
 
 と、久野原は笑って言った。
 
「旦那様、あの外国人……」
 
「ああ。宝石商だな。——あまり良くない噂《うわさ》も耳に入ってくる」
 
 このチューリヒに何の用事で?
 
「こんな所まで来て、物騒なことに係り合わないで下さいね」
 
 と、和子が早速気を回す。
 
「こっちからは何もしないさ。しかし、もし事件が向うからやって来たら……」
 
「それは、旦那様が招き寄せているんですよ、本当は」
 
 久野原は聞こえなかったふりをして、コーヒーを飲み干すと、
 
「さて、女の子を待たせるようなことになってはまずい。行こうか」
 
 と、立ち上りかけた。
 
 そこへ、フロントの係がレストランへ入って来て、中を見渡し、久野原たちのテーブルへとやって来た。
 
「エクスキューズミー」
 
 と、英語で話しかけた。「ミスター・ヤギ?」
 
 久野原は微《ほほ》笑《え》んで、
 
「ノー」
 
 とだけ言った。
 
 相手は詫《わ》びて立ち去ったが——。
 
「聞こえたろ?」
 
 と、久野原は、和子に言った。
 
「ええ、でも……」
 
「分っただろう? 八木と言った。このホテルに、八木春之介が泊っているとしたら……」
 
「偶然じゃないと?」
 
「さっきの宝石商と、ダイヤ〈月のしずく〉を盗まれた大金持が同じホテル。しかも、盗んだ疑いを持たれて自殺した若者の恋人らしい娘が、女子大生三人で同じホテル……。面白いじゃないか」
 
「関係ない『ヤギさん』かもしれませんよ」
 
 と、和子も負けていない。
 
 二人はレストランを出て、各自の部屋へ戻るまで、同じテーマで語り合っていた……。
 
 
 
「——ヤア。ダンケシェーン」
 
 電話を切って、美《み》津《つ》子《こ》は、「ロビーに来客だそうです」
 
 と言った。
 
「そうか」
 
 八木春之介はガウンを着て、大きなベッドから出ると、「待ってるんだな?」
 
「だと思いますけど……。やっぱり、さっき電話が鳴ったとき、出ておけば……」
 
「構わん」
 
 八木は遮って、「こっちから飛びつくように出ていけば、足下を見られる。帰れば帰ったで放っとけ。向うは金が欲しいんだ。必ずまた来る」
 
「でも、一応ロビーへ下りてみた方が……」
 
「お前が見て来い。もしまだ待っていたら、待たせておけ」
 
 美津子が何も言わない内に、八木はバスルームへ入って行った。
 
 美津子は、どうしたものか少し迷った。いずれにしても、ガウンの下は裸のままで、この格好でロビーへ下りて行くわけにいかないのだ。
 
 急いで服を着る。バスルームからはシャワーの音が聞こえて来た。
 
 美津子も、本当はシャワーを浴びてから服を着たかった。でも、そんなことに気をつかってくれる八木ではない。
 
 仕方ない。後で浴びることにしよう。
 
 ルームキーを手に、部屋を出ると、ロビーへと急いだ。
 
 富《とみ》田《た》美津子。——八木の「秘書」である。
 
 名目だけの秘書ではない。子供のころから、親の仕事の都合でヨーロッパ暮らしが長く、英語、ドイツ語は大体話せるし、フランス語も易しい話ならできる。
 
 それでも、美津子が、今年七十になる八木春之介の「彼女」であることは隠しようもない。
 
 二十二歳の秘書。七十歳の八木。——八木家の当主として、いくつもの企業のオーナーでもある八木春之介は、並の七十歳ではない。
 
 こんな旅先で、朝、目を覚ましてすぐに美津子に挑みかかってくる。——それを拒むことは、美津子には許されていない。
 
 ——ホテルのロビー、といっても、日本の何十階もある大きなホテルではないので、ロビーも一目で見渡せる広さ。
 
 美津子はロビーを見渡したが、それらしい「来客」の姿はなかった。帰ってしまったのだろうか。
 
 美津子はフロントへ行って、来客のことを訊《き》いてみた。
 
 その辺りにいるはず——とフロントの係もはっきりしない。
 
 振り向くと、初老の婦人が何人か入って来て、ラウンジでおしゃべりを始めている。
 
 美津子は諦《あきら》めて部屋へ戻ろうとエレベーターの方へ行きかけた。
 
 廊下の奥から、背広姿の若者が出て来た。化粧室へ行っていたのか、ハンカチをポケットへ突っ込むところだった。
 
 ——気が付くと、美津子はその若者と、ほとんど鼻を突き合せるような近さで立っていたのである。
 
「——姉さん?」
 
 と、その若者が言った。
 
「和《かず》彦《ひこ》……。あんた、どうして……」
 
 美津子は呆《ぼう》然《ぜん》として、弟を眺めていた。
 
「一緒に来てるのか、あいつと」
 
「八木さんのこと?」
 
「旅行にまでついて来るのか」
 
「私は言葉ができるのよ」
 
「それだけじゃないだろ」
 
 富田和彦は、なじるように言った。
 
 美津子の顔から血の気がひく。
 
「どういうつもり? 私が八木の所にいなきゃならないのは、あんたが作った借金を、八木に肩がわりしてもらったからじゃないの」
 
「やめてくれ! 誰も頼んじゃいないだろ」
 
 と言い返す。
 
 つい声が大きくなって、静かなロビーに響いた。
 
「和彦、今どこにいるの?」
 
 と、小声で訊く。「教えて」
 
 和彦は、ちょっとためらっていたが、
 
「一時間したら、フラウ教会にいる」
 
 と言って、半ば駆けるように行ってしまった。
 
 美津子は、しばらくその場に立ちすくんでいたが、やがて肩を落すと、エレベーターのボタンを押した。
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