日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

怪盗の有給休暇05

时间: 2018-07-30    进入日语论坛
核心提示:4 川岸の散歩「この川」 と、島崎美鈴が言いかける。「リマト川だよ」 と、久野原が言った。「ああ、そうでしたね」 と、美
(单词翻译:双击或拖选)
 4 川岸の散歩
 
 
 
「この川……」
 
 と、島崎美鈴が言いかける。
 
「リマト川だよ」
 
 と、久野原が言った。
 
「ああ、そうでしたね」
 
 と、美鈴は笑って、「私、いつも『リトマス試験紙』を連想してしまうの。それで、つい、〈リトマス川〉って言ってしまいそうになるの」
 
 歩くにはいい気候だった。
 
 少し雲が出ていたが、その方がヨーロッパらしいとも言える。
 
 ホテルから、リマト川沿いの道を、久野原たちは歩いていた。
 
「せっかくだ。フラウ教会を覗《のぞ》いて、それから、バーンホフ通りへ出よう」
 
 と、久野原が言った。
 
「買物は?」
 
 と、木村涼子が訊《き》く。
 
「バーンホフ通りが一番の目抜き通りだ。フラウ教会はステンドグラスがシャガールのものなんだ」
 
「ガイドブックで読んだ!」
 
 と、関口ゆかりが得意げに言った。「でも、シャガールって知らないんだよね」
 
「猫に小判だ」
 
 と、美鈴が笑った。
 
 先を涼子とゆかりが行き、久野原は美鈴と並んでそれに続いていた。一番後ろに、無言で田中和子がついている。
 
「——静かで、少し寂しくて、ヨーロッパの秋って好きだわ」
 
 と、美鈴が言った。
 
 そんな美鈴には、他の二人と違った落ちつきがある。
 
「チューリヒの後はどこへ?」
 
 と、久野原は訊いてみた。
 
「分らないんです」
 
「分らないって?」
 
「明日、ここで会う人次第なんです。でも、こっちは任せっ放しなんですもの、文句も言えない」
 
 美鈴は、爽《さわ》やかに笑った。
 
「——その、待ってる人って、誰なんだい?」
 
「私も個人的にはよく知らないんです」
 
 美鈴の言葉は妙なものだった。
 
「ほう」
 
「妙だと思われるでしょうね」
 
 と、美鈴は言われる前に、「叔《お》母《ば》なんです、来るのは。こっちにずっと住んでらして、私もあまり会ったことがないんです」
 
「なるほど。じゃ、仕事の関係でこちらに?」
 
「ええ。美術品の商いをしているようですわ」
 
「上品なお仕事だ」
 
「でも、久野原さんも——」
 
「多少、縁はあるがな」
 
 と、久野原は言った。「——ああ、それがフラウ教会だ」
 
 ——そう大きな教会ではないが、中はすっきりして清潔な感じだった。
 
 シャガールの描いたステンドグラスは、かなり濃い色づかいが、禁欲的な教会の中にあって、印象が強い。
 
「観光客が一杯来てる」
 
 と、涼子が文句を言って、
 
「私たちだってそうでしょ」
 
 と、ゆかりに笑われている。
 
 シャガールのステンドグラスの前で、みんな記念撮影をしている。——ま、他にすることもない、と言えばその通り。
 
「——涼子、写真、撮る?」
 
「私、いいわ」
 
 と、涼子は、首を振って、「一人で教会の中を歩いてみる」
 
「涼子にしちゃ珍しいこと言うじゃない」
 
 ゆかりにからかわれて、
 
「私だって、たまにゃもの思いに耽《ふけ》るわよ」
 
 と、涼子は言い返した。
 
「さあ、僕がシャッターを切ってあげよう」
 
 と、久野原が言った。「こういう所へ来たら、観光客に徹することだ。気取っても仕方ないよ」
 
「そうですね」
 
 美鈴が明るく言って、「ね、涼子も一緒に撮ろうよ!」
 
 と、行きかけた涼子を手招きした。
 
「何よ……。ま、いいけど」
 
 涼子がブツブツ言いながら戻ってくる。
 
「さあ、ステンドグラスを背にして」
 
 久野原はファインダーを覗《のぞ》いてから、「——君も入れば?」
 
 と、和子の方を見た。
 
「そういう、思い出したような言い方をしないで下さい」
 
 と、和子は真顔で、「私が切りましょうか。女の子に囲まれてやにさがってるところを」
 
「僕はいいよ」
 
 久野原はシャッターを切った。「——ストロボが発光しなかったな。暗く映るだろう。もう一枚、今度はストロボを使うから」
 
「ストロボなくても、充分明るい」
 
 と、ゆかりが笑って言った。
 
「——はい、撮るよ」
 
 間を置かず、久野原はシャッターを切った。
 
 ストロボが光った、その瞬間、教会の中に何か破裂するような音が響いたのは全く同時だった。
 
 銃声だ。
 
 久野原はすぐに分った。こんな教会の中で?
 
「キャーッ!」
 
 悲鳴が上った。日本人の観光客だ。
 
「人が死んでる!」
 
 という声。
 
「カメラを」
 
 久野原は、カメラを和子へ渡すと、声のした方へと駆けて行った。
 
「大丈夫です!」
 
 倒れていた「死人」が、起き上った。若い女だ。
 
「——生きてます! 大丈夫です!」
 
 と、その女は叫ぶように言って、歩き出そうとして呻《うめ》いた。
 
「待ちなさい」
 
 久野原は、女の腕を取って、「けがしてるじゃないか。——出血を止めないと」
 
「大したことじゃありません! 放っといて!」
 
 女の声には、怯《おび》えているような気配があった。
 
「撃たれたんだろう? 手当しないと、弾丸が中に残っていれば死ぬぞ」
 
 久野原は、女の耳もとで、強い口調で言った。
 
 女は久野原を見て、
 
「——分りました」
 
 と、息をついた。「警察沙《ざ》汰《た》にしたくないんです」
 
「それなら、なおさらこんな様子でホテルへ戻るつもりか?」
 
 久野原は、女の、左肩を押えている手をそっと離させた。
 
「——ひどくはないが、手当は必要だ。和子君」
 
 和子が、「やれやれ」という様子でやって来る。
 
「この人を病院へ連れて行く。君、女の子たちを買物へ」
 
「私がこの人について行きます」
 
 と、和子は言った。「服を脱がしたりするのに、私の方がいいですし、着替えも買わないとホテルへ戻れません」
 
「なるほど」
 
「旦《だん》那《な》様が、女性の服、一揃《そろ》い買ったらどう思われるか——」
 
「分った。任せるよ」
 
 こういうときには、和子の方が度胸がよく、冷静である。久野原は女に、
 
「この人がついていれば大丈夫。君、言葉は?」
 
「はい、できます」
 
「良かったわ。じゃ——出血をこれで押えて」
 
 と、和子がハンカチを取り出す。
 
「すみません……私、ホテルは同じ所です」
 
「知ってたのか」
 
「朝食のとき、お見かけしました」
 
 傷が痛むだろうに、その気配を見せない女に、久野原は感心した。
 
 和子が付き添って、教会の人に近くの病院を訊《き》いている。——和子も、そう難しい話でなければ使えるのだ。
 
 しかし、あの気丈さは、普通ではない。
 
「——いいんですか?」
 
 と、美鈴がやって来て言った。
 
「ああ。田中君がついて行った。——君らももし警察でも来たら、色々訊かれるよ」
 
「外へ出ています」
 
「うん。僕は、ちょっと手についた血を洗い落としてくる」
 
 トイレは地下にあった。
 
 久野原は、洗面所で手を洗った。——確かに、誰かに撃たれたに違いないが、女はあくまでそれに触れなかった。
 
 よほど警察に知られたくないわけがあるのだろう。あのホテルにいるとすれば、また話す機会もあるかもしれない。
 
 ハンカチで手を拭《ふ》いて、トイレを出ようとしたとき、
 
「ハクション!」
 
 と、派手なクシャミが聞こえて、久野原はびっくりして振り向いた。
 
 誰かトイレに隠れていた!
 
 そのことに今まで気付かなかった自分を呪《のろ》った。若いころなら、まずトイレに入って、中に人の気配がないかどうか確かめただろうに。
 
 しかし、クシャミをするまで、全く音をたてなかったのは、身を潜めていたからだろう。
 
 クシャミで気付かれたと分ったのか、トイレの仕切りから、扉が開いて、男が出て来た。
 
 若い男だった。
 
「——日本人か」
 
 と、向うが言った。
 
「そうだ」
 
 と、久野原は肯《うなず》いて、「どうして隠れてるんだ?」
 
「ふざけるな!」
 
 若い男は上着の下から拳《けん》銃《じゆう》を抜いて、久野原へ突きつけた。
 
「穏やかでないね」
 
「今、上で騒いでたろう。俺《おれ》が殺したんだ!」
 
「殺した? ネズミでも?」
 
「貴様——」
 
「肩を撃たれた若い女性なら、自分の足で病院へと歩いて行ったがね」
 
 男はポカンとして、
 
「肩を……。本当か?」
 
「でなきゃ、今ごろサイレンが聞こえてる。違うか?」
 
「そうか……」
 
 と、男は拳銃をダラリと下げ、「良かった!」
 
 と言ったのである。
 
 久野原は、ふと思い付き、
 
「君、もしかしてあの女性と姉弟じゃないのか?」
 
 と言って、
 
「どうして知ってる!」
 
 と、また銃口を向けられたのだった。
 
「そうやたらと銃を振り回すものじゃない。君とあの女性と、一見してよく分るくらい似てる」
 
「姉貴と?——そうかな」
 
 と、若い男は調子が狂ったのか銃をしまった。「小さいころは、みんなからよくそう言われたけど」
 
「そんな物、持って歩いて、こっちの警察に捕まったら、そう簡単に出て来られないぞ。悪いことは言わない、川の中へでも捨てることだ」
 
「お前……。いやに落ちついてるな」
 
 と、若い男は感心したように、「ただもんじゃねえな」
 
「君に言われても嬉《うれ》しくないがね。——なぜ自分の姉さんを撃ったりするんだ」
 
「色々さ」
 
 と、呟《つぶや》くように言って、「気に入らない金持野郎の女になってるんだ。だからもう姉弟じゃねえって言ってやった」
 
「それで撃ったのか?」
 
「お前にゃ関係ねえよ」
 
 と言い捨てて、「あばよ」
 
 と、小走りに出て行く。
 
「——『気に入らない金持』か」
 
 と、久野原は呟いた。
 
 あの姉のことを、充分に愛しているのだろう。それは苦々しい口調でも分る。
 
 ふと、久野原は思い当った。
 
 あの「姉」の方は久野原たちと同じホテルだと言った。
 
「気に入らない金持」というのは、八木春之介のことではないのか。
 
 だとすると今の若者は——。
 
 久野原は急いで教会の外へ出てみたが、さすがにもうあの若者の姿は見えない。
 
「久野原さん」
 
 と、島崎美鈴がやって来た。「今、男の人が駆け出して行ったけど、あれ……」
 
「いや、何でもないんだ」
 
 と、首を振って、「さあ、お待ちかねのショッピングだ。お付合いするよ」
 
「お疲れにならないようにして下さいね」
 
 美鈴は気をつかってくれる。
 
 確かに、「買物」に賭《か》ける女性たちのエネルギーは、格別のものがある。
 
 久野原は一つ深呼吸をして、
 
「じゃ、行こうか」
 
 と言った。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%