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虹に向かって走れ12

时间: 2018-07-31    进入日语论坛
核心提示:12 甘い夢 枕《まくら》もとで、電話が鳴っていた。 その男は、目をこすりながら、ベッドに起き上った。「何だよ、畜《ちく》
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 12 甘い夢
 
 枕《まくら》もとで、電話が鳴っていた。
 その男は、目をこすりながら、ベッドに起き上った。
「何だよ、畜《ちく》生《しよう》……」
 時計を見ると、まだ夕食の時間には大分あった。——もっとゆっくり眠っていられたのに!
「はい。——誰《だれ》?」
 と、男は、声だけでも充分に不《ふ》機《き》嫌《げん》さの伝わる調子で言った。
 頭をかいていた手が止って、男はパチッと目をあけた。
「あ! どうも……。——いえ、眠ってたもんで。——え?」
 男の顔が、少し歪《ゆが》んだ。触《さわ》られたくない傷をつつかれた、という様子だ。
「いや、そりゃ……。まずいですよ。——なぜって……。あの子はうすうす気が付いてるかもしれません。——ええ、まあ、し《ヽ》ら《ヽ》を切り通しゃ、済むことですけど……」
 向うの話に、男は、息を呑《の》んだようだ。
「——そんなやばいこと!——一体、誰を?——でも、もしばれたら……」
 男の顔に、迷いの色が現われた。損得勘《かん》定《じよう》のソロバンが頭の中で音をたてている。
「——そううまく行きますか?」
 と、男は言ったが、諦《あきら》めの口調になっていた。
 しばらく、相手の話に耳を傾けていたが、ため息をついて、肩をすくめると、
「分りました。——何て娘《こ》です?」
 メモ用紙に手をのばす。「——芳《よし》村《むら》——志《し》乃《の》ですね。——ええ、分りました。何とかしますよ。でも——」
 男は、少し声を低くして、
「くれぐれも、無茶はやめて下さいね。去年みたいなこと……。後で、また苦労しますからね。——ええ、分りました」
 受話器を置くと、男はすっかり眠気もさめた様子。メモを手にして、
「芳村志乃か」
 と、呟《つぶや》くと、首を振って、「可哀《かわい》そうに」
 と、もう一度ため息をついた。
 
「志乃。——ねえ、志乃」
 伸《のぶ》子《こ》がくり返して呼ぶと、やっと志乃は我に返った。
「ん? どうしたの?」
「何よ、人が話しかけてんのに、聞いてないんだもの」
「ごめん。ちょっと考えごとしてて」
 志乃は、食事を続けた。
 夕食のテーブル。——もちろん、志乃と伸子の母親たちも一緒だが、母親は母親同士、娘は娘同士でしゃべっている。
 母親は専《もつぱ》らテニスの話、娘は例のロケ隊の話では、かみ合うわけがない。
 しかし、その娘同士の話でも、志乃の方は、心ここにあらず、という様子だったのである。
「フン、どうせ私にゃ分らない、高尚なことを考えてたんでしょ」
 と、また伸子がすねる。
「何ですか、伸子、その言い方」
 と、母親も、注意する時だけは娘の方を向く。
「いいんです」
 と、志乃が言った。「私が、ちょっとぼんやりしてたから」
 もちろん、志乃がぼんやりしていたのには理由がある。伸子には、想像もつかなかっただろうが。
「ね、志乃」
 と、伸子が、身を乗り出して、「私、突き止めちゃった」
「何を?」
「永《なが》谷《たに》聡《さと》子《こ》の泊ってるルームナンバー」
「そう」
「今夜、サインもらいに行こうかなあ。——志乃、行かないでしょ?」
「そうね。行ってもいいわ」
「無理しなくてもいいわよ。興味ないんでしょ」
「そんなことないよ」
 と、志乃は、ナイフとフォークを置いて、「めったなことじゃ、会えないもんね」
「そうよ。じゃ行く?」
「うん。でも、今夜、撮影とか言ってたじゃない」
「このホテルの裏でやるんだって、ロケ」
「へえ。よく調べたね」
 と、半ば呆《あき》れて、「遅くまでやるんじゃないの?」
「いいじゃない。明日昼まで寝てりゃ」
 こういうことに関しての、伸子の熱心さには、とてもかなわない。
「OK。付合うわ」
 と、志乃は笑って、言った。
 もちろん、母親たちはいい顔をしないだろう。でも、テニスの話で夢中だ。志乃たちが何を話していたって、耳になんて入りゃしないのである。
「ほら!」
 と、伸子が言った。「出て来た!」
 志乃が振り向くと、ちょうど、永谷聡子や君《きみ》永《なが》はじめが、食事を終って、奥の部屋から食堂の中を抜けて出て行くところだった。
 志乃の目は、永谷聡子を追っていた。
 周りをスタッフらしい人たちに囲まれていても、永谷聡子は目立っている。ハッと人の目をひくものが、そこにはあるのだ。
 アイドル。——スターの輝《かがや》き。
 私《ヽ》も《ヽ》、と志乃は思った。私《ヽ》も《ヽ》あ《ヽ》あ《ヽ》し《ヽ》て《ヽ》、輝《ヽ》く《ヽ》よ《ヽ》う《ヽ》に《ヽ》な《ヽ》る《ヽ》か《ヽ》も《ヽ》し《ヽ》れ《ヽ》な《ヽ》い《ヽ》。
 君はスターになれるよ。
 本当かしら? ただのお世《せ》辞《じ》かもしれない。
 でも、まるで見も知らない人が、どうしてお世辞なんて言う必要があるだろう?
 東京へ出て、タレントになってみないかい? 歌や映画、TV。——一《いつ》旦《たん》人気が出れば、何でもやれるよ。
 あ《ヽ》の《ヽ》人《ヽ》はそう言った。
 でも——そんなこと、可能かしら?
 志乃は、その時、
「私、そんな気持、ありませんから」
 とは、答えなかったのだ。
 代りに、口から出ていたのは、
「母がうるさいから……」
 という言葉だった。
「説得してあげるよ。その点は任せてくれ」
 と、自信たっぷりに、そ《ヽ》の《ヽ》人《ヽ》は言った。
「学校も私立だし、うるさいんです」
 そう言いながら、志乃は、それが言いわけにならないことを、知っていた。東京へ行けば、当然学校だって変らなくてはならないのだから。
「そのまま平凡に卒業して結婚なんて、つまらないじゃないか。君には、もっと充実した青春を送る資格がある」
 青春……。そう、一度ぐらい、人生の中に何か変ったことが、冒険があってもいいんじゃないかしら?
「——ね、志乃、見に行かない? 撮影の準備してるよ、きっと」
 と、伸子が言った。
「え? ああ、そうね」
 志乃は肯《うなず》いて、「でも、外は結構涼しいわよ。虫にさされるのもいやだし……」
「そんなこと言って! 行きたくないんでしょ」
「そうじゃないの。着替えようよ。寒くないように。ね?」
 実際、夜になると、昼間の猛暑が嘘《うそ》のように涼しくなる。何度もここへ来て、よく分っているのだ。
「いいわ。じゃ、行こう」
「うん」
 志乃は、席を立つと、「お母さん、部屋に戻って着替えるから、キーちょうだい」
「はい。——だけど、あの人なんか、いくらテニスやっても、ちっともやせないじゃないの!」
 母親は、ろくに志乃の言葉など、聞いていない。
 ——志乃たちは、それぞれ部屋へ戻った。
「あら」
 志乃は、明りをつけて、ドアの下にさし込まれていた白い紙を拾い上げた。
 メモだった。——それを見て、志乃の胸が高鳴った。
 やっぱり! 冗《じよう》談《だん》でも何でもなかったんだわ!
 志乃は、鏡の中を覗《のぞ》き込んだ。——頬《ほお》を紅潮させた一人の少女。
 可愛《かわい》いわよ、あんた。きっとスターになれる。
 そう。永谷聡子みたいに、付き人がついて歩き、「次はインタビュー……。それからTVの録画、グラビアの撮影……」
 忙しいわねえ。少しは休みたい!
 しょうがありませんよ。人気があるんだから。人気がね! ファンが求めてるんだから!
 そう。——ファンの夢を裏切っちゃいけないわ。どんなに疲れていても、ファンには笑顔で手を振ってあげなくちゃ。
 鏡の中の自分に、志乃は、ニッコリと笑いかけた。——このえ《ヽ》く《ヽ》ぼ《ヽ》が、とっても魅《み》力《りよく》的《てき》なのよね。
 ドアを叩《たた》く音がして、
「志乃! 行こうよ!」
 と、伸子の声がした。
「待って!」
 志乃はあわてて、そのメモを握《にぎ》りつぶし、くずかごへ放り込んだ。それから、ちょっとためらって、またそのメモを拾い上げ、
「すぐだから、待って!」
 と、ドアの方へ声をかけておいて、メモを今度はきちんと折りたたむと、鏡の裏側へと押し込んだ。
 着替えるのには五分とかからない。
「——お待たせ」
 と、ドアを開けると、もう伸子は、ふくれっつらだ。
「早く行こうよ!」
「うん」
 二人は、廊《ろう》下《か》を足早に歩いて行った。
 夜、七時半になるところだった……。
 
 ドアをノックする音で、啓《けい》子《こ》は目を開けていた。——すぐに聡子の方を見る。
 聡子は眠っていた。時計を見ると、朝の七時過ぎだ。
 誰《だれ》かしら?
 腹立たしげに、息をついて、啓子はベッドを出た。——ツインルームに、エキストラベッドを入れて、聡子と恵《けい》一《いち》、それに啓子の三人で眠っているのだ。
 トントン、とドアをノックする音が、また聞こえた。
 これでもし、ファンか何かが、
「サイン下さい」
 とでも、顔を出そうものなら、啓子にジロッとにらみつけられるに違いない。
 何しろ、聡子の眠ったのが、午前五時。やっと二時間前のことだ。
 夜間の撮影が、のびにのびたのである。
 聡子と君《きみ》永《なが》はじめのラブシーンで、長くなることは、誰しも予想していた。しかし、いくら何でも四時半過ぎまでかかるとは……。
 君永はじめが、ガチガチに緊張していたのが原因で、峰《みね》川《かわ》はカンシャクを起すし、見に来ていた松《まつ》原《ばら》は渋い顔で口もきかないし、正に、夜中なのに、汗だくの撮影になってしまった。
 もっとも、君永にしても同情の余地はある。松原がにらんでいる前で、しかもラブシーンなどめったにやらない。やっても手軽なTVドラマの中のラブシーンで、適当に格《かつ》好《こう》をつけておけば済《す》むくらいのものばかりだったのだ。
 それが今度ばかりは通用しない。
 峰川は、これが「生《しよう》涯《がい》最後のチャンス」と思っているから、絶対にいい加減なところではOKを出さないのである。
「命がけでやれ!」
 と、怒《ど》鳴《な》られても、アクションシーンが「命がけ」ならともかく、ラブシーンを「命がけ」というニュアンスは、ただ、人がいいだけが取《と》り柄《え》のアイドルスターには、とても理解できないに違いなかった。
 聡子も、疲れを見せずによく頑《がん》張《ば》って、やっと「OK!」が出たのが四時半だった。
 もう少しすると、空が白んで来る。そのぎりぎりのところだったのである。
 啓子は、ひたすら聡子の体が心配で、君永に腹を立てていたが、当の聡子が、
「そんなこと言っても、無理よ」
 と、啓子をたしなめる始末だった……。
 ともかく、「命がけのラブシーン」がやっと済んで、このロケも一つの山《ヽ》を越した感じだった。
 今日は一日「撮《さつ》休《きゆう》」——つまりお休みで、聡子を、好きなだけ眠らせてやろう、と啓子は思っていたのだ。そこへ——ドアのノック。
 啓子が、渋い顔になったのも、当然と言えるだろう。
 啓子が、ガウンをはおってドアの方へと急ぐと、少し強くノックの音がくり返された。
「はい、どなた?」
 と、啓子はドアに顔を寄せて、言った。
「すみません」
 と、女性の声がした。「あの——永谷聡子さんのお部屋、こちらでしょうか」
 少し年《ねん》輩《ぱい》の女性らしい。
 チェーンをかけたまま、啓子は少しドアを開けた。
「今、眠ってるんです。何かご用でしたら——」
「すみません」
 四十代らしいその女性は、啓子同様、ガウン姿だった。「こんな時間に、ご迷惑だと思ったんですけど……」
 どうやら、サインをくれ、という類《たぐい》の話ではないらしい。啓子は、チェーンを外すと、自分が廊下へ出た。
「あの——娘がいなくなってしまって」
 と、その女性は言った。「あ、私、芳村久《ひさ》子《こ》といいます。娘は志乃といって、十六なんですけど——」
 どうやら、本当に心配そうだ。
 一緒に、親《おや》娘《こ》らしい二人連れが立っていた。
「私、志乃と約束してたんです」
 と、吉《よし》原《はら》伸子というその娘が言った。「ずっとロケを見て、その後で、聡子ちゃんのサインをもらおうって」
「でも、この部屋を——」
「ホテルの人から聞いて、知ってました」
「そう」
 と、啓子は肯《うなず》いた。「でも、ここにはみえてませんよ」
「困ったわ……。どこへ行っちゃったのかしら」
 と、その母親は途《と》方《ほう》にくれている様子だった。
「ずっと、見ていたの? 終りまで?」
 と、啓子は、その娘に訊《き》いた。
「ええ……」
 伸子というその娘は、目をそらしていた。
 何か隠している、と啓子は直感した。
「それから?——二人で来るつもりじゃなかったの?」
「ええ……。でも、もう遅かったし、明日にしようか、って…‥」
「それだけ?」
 と、啓子は言った。「本当に?」
 伸子が、唇《くちびる》をかみしめた。——涙がこぼれる。
「何か知ってるのね」
 と、啓子は優《やさ》しく言った。「話してちょうだい」
「志乃が……行かなきゃいけないって言って」
「どこへ?」
「誰かの……部《へ》屋《や》です」
 志乃の母親が、目をみはった。
「まさか——男の人の部屋に?」
「いえ、そういうんじゃなくて」
 と、伸子は首を振った。「志乃、『内《ない》緒《しよ》だからね』って、打ちあけてくれたんです」
「何を?」
「声をかけられたって。スターにならないかって」
 啓子は、息を呑《の》んだ。
「それは——誰が? 誰がそう言ったの?」
 伸子はまた首を振った。
「聞かなかったんです。ただ——ロケに来た人の誰かだってことは分ってたけど」
「じゃ、その人の部屋に?」
「呼ばれてる、って。——夜の撮影が終ったら来てくれって言われてるんだって。止《と》めれば良かった!」
 啓子は、ゆっくりと息を吐《は》き出した。
 誰がそんなことを言ったにせよ、朝の五時ごろのはずである。そんな女の子が部屋へ来たら、明日、改めて、と帰すのが当然だ。それが帰っていないということは……。
 いやな予感がした。
 聡子の親友だった東《あずま》ルミ子も、部屋へ入れられて、乱暴されたのではないか。
 今、七時過ぎだ。もし、志乃という子が、その「甘い言葉」を囁《ささや》いた男の所へノコノコ出かけて行ったとしたら、もう手遅れだろう。しかし——。
「お待ちになっていて下さい」
 啓子は、そう言って部屋の中へ入ると、電話の方へ駆け寄った。
「——もしもし、交換台? ロケ隊の関係者の部屋へ全部電話をかけて、ロビーに大至急集まるように言って下さい。——そう。一つ残らず。急いでね」
 受話器を置くと、聡子が起き上っていた。
「どうしたの?」
「あなたの親友の二の舞かもしれない」
 と、啓子は言った。「ともかく、ロビーへ全員集めたわ」
「誰が?」
「うちの誰かが、泊り合せた女の子に、『スターにしてやる』ってもちかけたのよ」
 聡子は、それで事情を察したらしい。すぐベッドを出て、パジャマ姿の上に、カーディガンをはおった。
「じゃ、ロビーに行きましょう。誰が遅く来るか、見た方がいいわ」
「そうね。恵一君は寝かしとくから」
 二人は廊下へ出た。
 
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