日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

虹に向かって走れ17

时间: 2018-07-31    进入日语论坛
核心提示:17 危険な日 暗《くら》闇《やみ》の中を、何かが突っ込んで来る。 炎だ。火の塊《かたまり》だった。いや、そうではない。火
(单词翻译:双击或拖选)
 17 危険な日
 
 暗《くら》闇《やみ》の中を、何かが突っ込んで来る。
 炎だ。火の塊《かたまり》だった。——いや、そうではない。火に包まれた車だ。
 まるで紙か木ででも出来ているようにその車は、すっかり炎に包まれていた。まるで炎に飾られているかのようだ。
 その車が、啓《けい》子《こ》に向って、突進して来る。
 啓子は、ただ立ちすくんで呆《ぼう》然《ぜん》とそれが真直《まつす》ぐ自分の方へ向って来るのを見ていた。
 そして——そう、誰《だれ》かが中に乗っている。
 手を振っている。何か叫んでいる。
 聡《さと》子《こ》……。聡子ちゃんだ。
 聡子ちゃん!
「啓子さん!」
 聡子が叫んでいた。「助けて! 焼け死んじゃう! 助けて!」
「聡子ちゃん!」
 啓子は駆け出した。だが、なぜか車は一向に近付いて来ないのだ。
 そして、聡子の姿は、炎の中に呑《の》み込まれて行く……。
「聡子ちゃん!」
 啓子は叫んだ。「——聡子ちゃん!」
 ——啓子は、ハッと起き上った。
 激しく身震いする。全身に、汗がふき出していた。
 夢だ。——もう何日も、この夢をみていた。
 啓子は、大きく息を吐《は》いた。
 部屋の中は、小さな明りが灯《とも》って、ぼんやりと明るい。もう何時だろう?
 いやに、部屋を広く感じる。
 そう。——ここはマンションなのだ。
 ずっと九州のホテルにいたので、この部屋を広く感じるのだった。
 啓子は、ベッドに座って、両手で顔を覆《おお》うと、しばらく呼吸を整えた。
 立ち上って、隣の部屋のドアを開ける。——ベッドで、恵《けい》一《いち》が眠っていた。
 啓子は、洗面所へ行って、顔を洗った。
 まだ、夏は続いて、寝苦しい暑さだったが、それだけではない。長い長い夏になりそうだ……。
 鏡の中の顔をじっと見つめると、啓子は、呟《つぶや》いた。
「役立たず」
 
 はい、離れて下さい!——離れて!
 助監督たちは、炎天下、くたびれ切った様子で、見物人を整理していた。
 まず、それが誤算だったのだ。凄《すご》い数の見物人が集まって来て、地元の警察官は、みんなそっちに取られてしまった。
 なだらかな山の斜面に、車が用意され、ヘリコプターが上空を旋回している。
「——準備OKです!」
 二時間以上も待って、やっと本番になった。アクションシーンである。
「聡子ちゃん」
 啓子は、心配になって声をかけた。
「はい」
 聡子は、いつも通り、落ちついた顔で、木かげに腰をおろしていた。
「大丈夫? 危いわよ」
 と、啓子はかがみ込んで、「代ったら?」
「私、こう見えても身が軽いんです。高い所も平気だし」
「だけど……。もし、ヘリコプターの方が手順でも間違えたら……」
「まさか。超ベテランですってよ」
「そりゃそうかもしれないけど」
「気分がいいじゃない。やってみたかったんだ、アクションシーン」
 啓子は苦笑した。
「言い出したらきかないんだから。この頑固者!」
「お互いさま」
 と、聡子は言い返した。
「じゃ、充分に気を付けて」
「はあい、お母様」
「人をからかって!」
 冗談を言ったりするのは、逆に、緊張しているせいかもしれない。危険な撮影に、緊張するのは当り前だし、悪いことではないのだ。
 むしろ危いのは、気のゆるみである。
「——聡子君」
 と、監督の峰《みね》川《かわ》がやって来る。
「はい」
 聡子は立ち上った。メイクの係が飛んで来て、汗を取った。
「いいかね? 段取りは頭に入ってるね」
「大丈夫です」
「リモコンは、充分にテストしてあるはずだが、もし、少しでもおかしいと思ったら、ドアを開けて飛び出せ。いいね?」
「はい」
 聡子は肯《うなず》いた。「じゃ、車の方に——」
「ああ。頼むよ」
 聡子は、三、四人の助手たちと一緒に、なだらかな斜面を下りて行った。
「——やれやれ、だ」
 と、峰川は首を振って、「これで大体、主なシーンは終りだよ」
「そうですね」
 啓子は、微《ほほ》笑《え》もうとしたが、何となく顔がこわばっていた。「監督。——大丈夫でしょうね」
「うん。何度もテストしたよ。もちろん、百パーセントとは言わない。しかし……」
 峰川は、カメラマンの宮《みや》内《うち》に呼ばれて、手を振った。「じゃ、ケイちゃん、見ててくれよ」
「はい」
 啓子は、木かげに立って、腕組みをしていた。
「どうした?」
 剣《けん》崎《ざき》がやって来る。
「別に」
「何だかおっかない顔してるじゃないか」
「どうせ」
 と、啓子は言ってやった。「——聡子ちゃんのことが心配なのよ」
「大丈夫さ。あの子ならやるよ」
「分ってる。でも、車のブレーキが外れたりしたことを考えると……」
「しかし、当人がやると言ってるんだ。仕方ないじゃないか」
「そうね。ただ、気になってるの」
「何が?」
「あの刑事さんよ。姿が見えないでしょ?」
「ああ、なるほど」
 と、剣崎は肯いた。「そういえば……。どこへ行ったのかな」
「こんな肝心の時に。——何だかいやな気分だわ」
「考え過ぎだよ。禿《は》げるぜ」
 啓子は、肘《ひじ》で剣崎のわき腹をつついてやった。
「いてっ!——凄《すご》い迫力だな」
「あなたが代りにやれば?」
「一体、何をやるんだって?」
「あの車よ。今、聡子ちゃんが乗って……。あれが走り出すと、ヘリコプターが追いかけて来て、縄ばしごが下りて来るの」
「車の上に?」
「そう。車の上が開いて、聡子ちゃんが屋根へ這《は》い上り、縄ばしごをつかむ。車の中に火が点《つ》いて、車は燃え上りながら走り続ける」
「それで?」
「ヘリコプターが聡子ちゃんを吊《つ》り上げ、車はそのまま火の玉になって、向うの崖《がけ》から転落する、って段取りなの」
「凄いな」
「許可を取るのが大変だったのよ」
「そりゃそうだろう。僕にゃとても無理だな!」
 と、剣崎は首を振った。「車は? 誰が運転するんだ?」
「リモコン。真直ぐ走るだけだから。でも、危険な仕事よ」
「カメラは三台?」
「そう。一台は、崖の向うから落ちる車を狙《ねら》ってるわ」
 スタッフの動きが、あわただしい。助手たちが車から離れた。
「——はい、用意!」
 と、峰川が怒鳴った。「スタート!」
「凄い気合」
 と、剣崎が呟《つぶや》いた。
 車が走り出した。初めはゆっくりだが、徐々にスピードが上る。
 崖に向って、下り斜面だから、余計にスピードも出るのだ。
 ヘリコプターが高度を下げ、爆音が鼓膜を打った。車の上に並ぶと、縄ばしごがスルスルと下りて、車の屋根へのびる。
「——屋根、開いてるのか」
 と、剣崎が言った。
「そのはずよ」
 車が、突っ走る。——やや間があった。
「聡子ちゃん……出て来ない!」
 と、啓子が一歩前へ出た。
「車が——」
 炎が上った。車が、アッという間に火に包まれる。
「大変だ!」
 啓子は駆け出した。剣崎も後を追う。
「おい! 車を追え!」
 峰川も駆けながら怒鳴っていた。スタッフは唖《あ》然《ぜん》として、動けない様子だ。
 いや、動いたところで、とても間に合わなかった。
 啓子は、転がりそうな勢いで斜面を駆けて行った。しかし、車は猛然と崖に向って突っ走り、そして——フッとその向うに消えてしまった。
 啓子は足を止めた。
 ドーン、と太鼓を打つような音がした。
 黒い煙が、立ち昇って来る。
「——何てことだ」
 剣崎が呆然として、「こんな馬《ば》鹿《か》な!」
 
 ドアをノックする音がした。
 啓子は、空耳かと思った。こんな夜中に?
 またノックする音。誰か来たのだ。
 ドアの所まで行って、啓子は、
「どなた?」
 と、声をかけた。
「峰川だよ」
「まあ。——ちょっと待って下さい」
 啓子は、急いで上にシャツを着た。
 ドアを開けると、峰川が、ぼんやりした顔で、立っている。アルコールの匂《にお》いがぷんと漂《ただよ》った。
「監督。——飲んでるんですね」
「うん。ちょっと……休ませてくれるか」
「どうぞ」
 啓子は、峰川を中へ入れ、恵一の寝ている部屋のドアを、きっちりと閉めた。
「——どうだ、あの弟の方は?」
「ええ。元気です。まだ、聡子ちゃんと確認されたわけじゃないから、って……」
「そうか」
「水、飲みますか?」
「レモンでも絞ってくれるか。うんとすっぱくして飲みたい」
「分りました」
 氷を入れた冷たい水にレモンをたっぷりと絞って入れた。
「——お仕事だったんですか」
「うん……。編集だよ」
「何とかなりそうですか」
「そうだな」
 峰川は、肩をすくめた。「何とかなるだろう。取り残したシーンは、シナリオの手直しで、何とか他にやりようもある。完成させられるだろう」
「そうですか」
「会社のお偉方は、一日でも早く、とせっついて来る。——死んじまえば、どんなスーパーアイドルも、忘れられるからな、だとさ。全く!」
 峰川は、腹立たしげに言った。「こっちはやり切れんよ。フィルムの中で、あの子が活《い》き活《い》きと動いてるのを見てると、こいつをどうして切れるんだ、と思っちまう」
「そうですね。——でも、立派に完成して下さい。聡子ちゃんのためにも」
「うん……」
 峰川は、ぐったりしてはいるものの、酔っているようには見えなかった。
「本当に、聡子ちゃん、死んだのかしら」
 と、啓子は言った。
「どうしてだ?」
「焼死体が見付かったって、警察は発表しましたけど、その後、さっぱり何も言わないし」
「身《み》許《もと》の確認か。しかし、あの場合には……」
「ええ、分ってるんですけどね。何だか、聡子ちゃんがフラッと帰って来そうな気がして——」
 啓子は、涙がこみ上げて来て、あわてて手で拭《ぬぐ》った。
「腹が立つのは、あの刑事だ」
「畠《はた》中《なか》さんですか」
「どこへ行ったのか、さっぱり姿を見せんで! 肝心の時に、いなくなって。——全く、役人ってのはあんなもんか」
 その点は、啓子も気にしていた。畠中が、事件の後、啓子たちに何の連絡も取って来ないのが不思議だ。
 畠中を、ああして身近に見ていた啓子としては、ただ責任逃れで姿を見せずにいるとは思えなかった。
「——松《まつ》原《ばら》さんは、何かおっしゃってましたか?」
「いや。公式には、プロダクションの側からコメントが出ただけだ。——もし、追加の撮影が必要ってことになれば、あと二、三日は付合うだろう」
「うちの社長は、聡子ちゃんのテレホンカードを作ったり、キャラクター商品を出す、とか言ってます」
「怒ってるだろうな」
「ええ、金の卵を踏み潰《つぶ》された、って」
 啓子は肯いた。「でも、私にとっては——妹みたいな子だったわ」
 二人は、黙り込んだ。
 それぞれに、聡子の思い出にふけって、何時間も、座り込んだままだった……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%