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花嫁の時間割01

时间: 2018-07-31    进入日语论坛
核心提示:1 プロポーズ シュッ、とコロンの一吹き。 これで完《かん》璧《ぺき》だ! 真田明宏は、姿見に映る己《おの》がスタイルに
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 1 プロポーズ
 
 シュッ、とコロンの一吹き。
 これで完《かん》璧《ぺき》だ! 真田明宏は、姿見に映る己《おの》がスタイルに満足して肯《うなず》いた。
 白いスーツ、そのえりにさした一輪のバラ。もちろん、色は鮮やかな真《しん》紅《く》でなくてはならない。
 ヘアスタイルもカチッと決って、一筋の乱れもない。今日は風も強くないし、大丈夫、このまま行けるだろう。そうそう、ポケットチーフがもう少し形よく、それでいて、さりげない感じで覗《のぞ》けて見えなくては。
 真田明宏は、念を入れて、もう一度、鏡の中の自分の姿を、文字通り頭の天《てつ》辺《ぺん》からつま先まで、見直した。──大丈夫。一分の隙《すき》もない、というのは、このことだろう。
「行くか」
 彼女はいつも時間に遅れるのだが、こっちはきちんと時間通りに行って、待っていよう。それが男というものである。
 軽く口笛を吹きながら、真田明宏は自分のマンションの部屋を出て、ドアの鍵《かぎ》をかけると、エレベーターで地下の駐車場へ下りて行った。そこにはもちろん真赤なポルシェが、主人を待っている。
 エンジンのチューニングも完璧。
 これでドライブして、海を見下ろすレストランで食事。ムードの盛り上がったところで、さりげなく取り出すエンゲージリング……。
 演出は決っている。これで彼女は百パーセントOKだろう。
 もし彼女が拒まなければ、そのままどこかの高級ホテルのスイートルームへ?──いやいや、焦っちゃいけない。
 あの子は、その辺の遊び慣れた女の子とは違うのだ。プロポーズにも、即座にOKはしないかもしれない。しかし、せっつくことはやめよう。たとえ心で決めていても、すぐにウンと返事をするのは恥ずかしい。そういう子なのだ……。
 ポルシェに乗り込み、真田明宏はウットリとした表情で呟《つぶや》いた。
「ゆかり……。僕の頭の中は君で一杯だ!」
 そしてエンジンをかけたが……。
「いけね! ガソリン入れとくの忘れた!」
 真田明宏は青くなった。
 
「おい八代」
 と、課長の品川が呼ぶと、
「はい!」
 まるでコマ落しの映画でも見ているような素早さで、八代紘一は品川の机の前に立っていた。度の強いメガネの奥から、一杯に見開いた目が品川を見つめている。
「何かご用でしょうか?」
 八代が訊《き》くと、普通の口調でも、何だか「詰め寄っている」という感じで、品川はいささか身をひいた。
「この伝票は……何だ?」
 と、品川は机の上にのせてあった伝票を、八代の方へ向けた。
「私の〈外出届〉ですが」
「そりゃ分っとる」
 と、品川は肯いて、 「しかし、時間は六時からじゃないか。終業後なんだから、何も届を出す必要はないぞ」
「分っております」
 と、ほぼ直立不動の姿勢の八代は言った。
「ですが、いつも残業しておりますので、今日帰らせていただくにつき、課長のご了解をいただきたいと存じまして」
「そうか……。ま、構わん。お前はよく働くからな。この──外出届の〈理由〉の欄にある〈プロポーズ〉ってのは、何のことだ?」
「結婚の申し込みの意味です」
 品川だって、それくらいのことは知っている。しかし、そんなプライベートなことを、いちいち伝票に書くのは、八代ぐらいのものだろう。
「すると──結婚するのか」
「万一、プロポーズを受けていただけた場合ですが。その場合は、やはり仕事の上にも多少影響が出ると思いますので、一応、こうしてお知らせしておいた方が、と思いまして……」
「なるほど」
 品川は、半ば呆《あき》れ、半ば好奇心にかられていた。この八代と付合っていた女がいるのか! 見てみたいもんだ。
「ま、頑張れよ」
 と、品川は言って、 〈外出届〉の用紙を八代へ返した。 「これは必要ない。うまく話がまとまったら、俺にも彼女を紹介してくれ」
「はい。ありがとうございます」
 八代は、まるでコンパスでもたたんでるような、上体を真《まつ》直《す》ぐにしたおじぎをすると、自分の席へと戻って行った。
 当然、二人の話は課内に聞こえている。
 あちこちで、ヒソヒソと囁《ささや》き交わす声が、品川の耳にも入って来る。
「八代さんに彼女がいたの?」
「信じらんない!」
「一度見てみたいもんだな」
「どうせ振られるよ……」
 ──品川は、いつもと変りなく仕事に没頭している八代の後ろ姿を眺めながら、八代が女の子の前にひざまずいて、花束を捧《ささ》げていたり、抱きしめてキスしたりしているところを想像しようとしたが、どうしても絵にならない。
 八代は生《き》真《ま》面《じ》目《め》なビジネスマンタイプの男で、みんな、彼が会社で働いている姿しか知らない。
 帰りの酒の付合いとか、社員旅行とかには全く顔を出さないが、それでも文句を言いにくい雰囲気が、この八代にはあるのである。
「あいつはきっとサイボーグなんだ」
 などと、同僚が噂《うわさ》するのが、何となく本当らしく聞こえるくらいだった。
 しかし、八代もやっぱり人間だったのだ。でなきゃ、結婚しようなんて考えないだろうし。
 それとも、八代がプロポーズする相手も、サイボーグなんだろうか?
 ──五時のチャイムが鳴った。
 八代の机の上は、信じられないほどのスピードで片付けられ、周囲へ、
「お先に失礼します」
 と、一言投げかけると、八代の姿はアッという間に消えていたのである……。
 
「宇野君」
 と、笠木恭子は隣の席へ声をかけた。 「もう行った方がいいんじゃないの?」
「うん……」
 宇野良男は、時計の方へ目をやって、 「まだ三十分あるから……」
「あの時計は十五分遅れてるの。知ってるでしょ」
 と、笠木恭子はため息をついて、 「ね、思い切って行ってらっしゃい!」
「でもね──仕事のきりがつかないし」
 と、宇野良男は、口の中でモゴモゴと言った。
 たぶん、この宇野の呟きを聞きとれるのは、もう五年以上も隣の席で仕事をしている、笠木恭子だけだろう。
「きりがつかないって……。私が代りにやっといてあげるわよ。ね。だから早く行ってらっしゃい。プロポーズするのに、相手を待たせるなんて、最悪よ」
 宇野は、少し上目づかいに壁の時計を見上げると、
「どうせ……同じことさ。断られるに決ってる。それなら、ちゃんと仕事をして──」
「やってみなきゃ分らないでしょ」
 と、笠木恭子は辛抱強く言った。 「ともかく、プロポーズするにしてもしないにしても、約束の時間に遅れて行くのは良くない。そうでしょ?」
 恭子の言葉に、宇野は仕事の手を止めると、
「──分ったよ」
 と、言った。 「行って来る。もし断られたら──」
「初めっから、そんなこと考えてちゃだめよ!」
 と、恭子は叱《しか》りつけるように言った。
 ま、実際、笠木恭子は宇野より三つ年上の三十二歳で、夫も子供もいる身だった。
 この市役所の出張所は、恭子と宇野との二人だけがいる。小さな部屋で、また、二人でも時には時間を持て余すほど暇だったので、家庭のある身には都合が良かったのである。
 宇野は、まるで裁判所から呼び出されてでもいるかのように、ノロノロと帰り仕度をした。
 恭子は、内心ため息をついた。──これじゃ、十中八九、断られるだろう。
 悪い人じゃないのだ。仕事はよくやるし、細かいことにもよく気が付く。しかし、どうひいき目に見ても二枚目とは言いかねるし、二十九歳にしては、少し頭も薄くなっているし……。
 宇野のいいところは、恭子のように、何年も机を並べていて、初めて分って来る、という類のものだった。──ほんの半年か一年、それもごくたまに付合うだけの若い娘に、宇野の良さを理解することは難しいに違いない……。
 それでも、宇野に「彼女」ができたと知ったときには、恭子は──正直なところ──びっくりしたものだ。しかし、宇野がそれで明るくなるかと思えば、逆に、ますます引っ込み思案、かつ沈みがちになってしまった。
 恋をしたらしたで、今度は自分がいつ振られるかと不安になってしまうらしい。
「じゃあ……早退します」
 と、宇野はわざわざ恭子の方へ頭を下げている。
「はいはい。気楽にね。そんな顔しないで、少しは楽しそうになさいよ」
「分ってるんだけどね」
 と、宇野は、頭をかいた。 「どうせ断られる。そのときは、電話するから」
「吉報を待ってるわ」
 精一杯、笑顔で送り出してはやったものの、まあ、九十九パーセント、断られるのは間違いあるまい。誰だって、
「僕みたいなつまんない男と結婚なんてしてくれないでしょ?」
 と言われて、それを心からのプロポーズとは受け取るまい。
 宇野は、きっとそんな調子でプロポーズするに違いないのである。
 ──ともかく、私がここでやきもきしてたってしょうがないんだわ。笠木恭子は、気をとり直して、仕事に戻ったのだった。
 ──午後の五時。
 窓口を閉めて、入口の鍵をかけていると、電話が鳴り出す。
「──はい、×町出張所です。──もしもし?」
 しばし、相手は何も言わなかった。そして……。
「笠木さん……。僕だよ」
「あら、宇野君?」
 声の調子で、見当はつく。宇野はしばし黙っていたが、やがてすすり泣くような声が聞こえて来た。
「宇野君……。元気を出して。ね? また機会があるわよ。──え? 何て言ったの?」
「そうじゃ……ないんだ。彼女……ゆかりさんが、承知してくれたんだ……」
「承知したって……。じゃ、プロポーズをOKしてくれたの? 凄いじゃない! おめでとう!」
「ありがとう……。早く笠木さんに知らせたくて……」
「私なんかどうでもいいわよ! 彼女を大事にするの。分った? まさか──それきり放って来たんじゃないでしょうね」
「いや……向うで待ってる」
「じゃあ、早く行ってあげなさい。話は明日でもゆっくり聞くから。いいわね?」
「うん……。笠木さん」
「え?」
「これ──夢じゃないのかな」
 恭子は、胸が熱くなった。我がことのように嬉しい。
「大丈夫よ。自信を持って。ね。彼女もちゃんとあなたのいいところを認めてくれたんだから。さ、早く行ってあげなさい」
「うん……。笠木さん。ありがとう!」
 宇野の声が、初めて弾《はず》んだ。
 電話が切れると、恭子は、つい口笛など吹きながら、出張所のロッカーの鍵をかけて回った。
 ゆかりさん、っていったっけ。
 どんな子なんだろう? 宇野の話では、まだずいぶん若い子だとか……。確か、二十一歳とか二歳とかだった。
 宇野は二十九。相手は大学生だから、すぐ結婚というわけにはいかないだろう。付合っていく内に、きっと宇野も自信をつけて来るに違いない。
「良かったわ、本当に」
 と、恭子は呟いた。
 まるで自分の息子のことでも心配しているような、本当にそんな気がしていたのである。
「さあ」
 と、恭子は呟いた。 「今夜のおかずは何にしようかしら」
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