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花嫁の時間割04

时间: 2018-07-31    进入日语论坛
核心提示:4 間違ったチケット「ねえ宇野さん」 と、ゆかりが言った。 「どこか気分でも悪いの?」 ゆかりの方が気をつかうというのは
(单词翻译:双击或拖选)
 4 間違ったチケット
 
「ねえ宇野さん」
 と、ゆかりが言った。 「どこか気分でも悪いの?」
 ゆかりの方が気をつかうというのは、よほどのことである、といわなくてはならない。
 宇野良男は、ずっと黙りこくって、うつむいていたのである。
 ずっと──といっても、半端ではない。
 今日はゆかりと二人で映画を見に行くことになっていて、役所の出張所が閉まると同時に、飛び立つようにして出て来た。
 もちろん、唯一人の同僚、笠木恭子に励まされて。
 時間通りに待ち合せ、二人して映画館までやって来たのはいいが……。チケットを出したら、もう一回後、最終回の指定席券だったのだ。
 そこで、先に夕食をとろうというので、近くのレストランに入ったのだが、宇野は入ってから、一言も口をきかない。
 おかげで、ウェイトレスはさっきから四回もオーダーをとりに来ては、空しく戻って行ったのだった……。
「ねえ、宇野さん──」
「ゆかりさん」
 思い詰めた様子で、宇野が顔を上げると、言った。 「長い間、付合って下さって、ありがとうございました」
「長いってほどでも……。それに、どうしてお礼を言うの?」
「これでお別れしようと思っているからです」
 と、宇野が青ざめた顔で言った。
「そう……。でも、どうして?」
「いや──分ってます。あなたはやさしい方だから、隠してらっしゃるけど、僕がどんなにだめな人間か、よくお分りになったでしょう」
「よく……分らないけど。何かあったんですか?」
「見ていたでしょう。僕の買ったチケットが、今の回のじゃなかった! でも、確かに僕は五時二十分の回のチケットを買ったつもりだったんです。それなのに、実際は七時半の回のだった。──僕は映画のチケット一枚、まともに買えない、つまらない男なんです。どうか、僕のことは忘れて、別の立派な男性を見付けて下さい」
 ──宇野は心底、真面目に言っているのだった。
 で、その言葉を、数メートル離れた席で聞いている、妙な格好の女の子が二人いた。茶色と紫に染めた髪、革のつなぎに、ブーツ。馬鹿でかいサングラスをかけた、一見パンク風ファッションで、あんまり似合わない(?)ハンバーグなど食べている二人は、亜由美と聡子だった……。
「アホかね、ありゃ」
 と、聡子が言った。
「シッ。大きな声出さないで」
 と、亜由美がたしなめる。 「それにしても、あんなことで、よくあそこまで落ち込めるよね」
 ゆかりは、少し身をのり出して、
「宇野さん、気にしないで。たかが映画のチケットじゃないの。後で食事するつもりだったのを、先にしただけ。そんなに自分を責めちゃいけないわ」
「しかし……僕は自分が情ない……」
 宇野は手の甲で涙を(!)拭うのだった。
 聡子が呆《あき》れて、
「トーフの角に頭ぶつけて死んじゃえ」
 と呟《つぶや》いた。
「世の中にゃ、あんな男もいるのね」
 と、亜由美は首を振って、 「うちの親父の方が、ずっとましだ」
 亜由美の父、塚川貞夫はインテリで、技術者だが、涙《るい》腺《せん》のボルトをしめ忘れたのか、TVの少女アニメを見て泣くのが趣味、という、変り者。
 まあ、よくいえば純情なのかもしれない。しかし、宇野の方は、少々度を越している。
「宇野さん」
 と、ゆかりが慰めて、 「大丈夫。私、こんなことで、あなたとの結婚、断ったりしないから」
 宇野は、まじまじとゆかりを見つめて、
「本当ですか……。本当ですか、ゆかりさん!」
「しつこいね」
 と、聡子が呟く。
「本当よ。だから安心して食事しましょ」
「ありがとう! 僕は……僕は幸せ者です! 世の中で、僕ほど幸せな人間はいない……」
 と、また泣き出す。
「死ね」
 と、聡子がまた呟いた。 「──ね、亜由美」
「うん?」
「こんな奴について歩くの? 私、発狂しちゃうよ」
「落ちついて」
 と、亜由美の方は笑いをかみ殺している。 「聡子と結婚するわけじゃないんだしさ」
「当り前でしょ。十億円つまれたって、あんなのごめん」
「大きく出たわね」
 ──亜由美と聡子は、殿永刑事の依頼で、ゆかりの他の二人の結婚相手について、調べている──のではなかった。もちろん(!)殿永の言葉を無視して調べてやろう、ということになったのである。
 二十分後、やっとゆかりと宇野良男は料理を頼んだ。──それだけ時間をとったので、食べ終えたころには次の回にちょうどいい時間になっている。
「さて、出かけるみたいよ」
 と、亜由美が言った。
 亜由美たちは、早々に食事を終えていたので、ここまでコーヒーを三杯も飲んでしまった。
 レストランを出て、映画館はすぐ目の前。
 ちょうど、前の回が終って、客がゾロゾロと路上に出て来ている。
「中まで入る?」
「当然でしょ」
「見たくないけどな、こんな映画」
「我慢しなさいよ」
 文部省選定。動物もの、というやつである。客の入りがそういいとも思えない。
 亜由美たちがチケットを買って中へ入ると、ゆかりと宇野は、指定席へ案内されているところで……。
「ハハ、格好悪い」
 と、聡子が笑った。
 一般席もずいぶん空いていて、指定席に座っているのは、わずかに三、四人……。
 ところが──肝心の、宇野の買った席に、誰かが座っている。
 案内の女の子が、
「お客様。失礼ですが──」
 と、声をかけたが、どうやら眠っている様子。
「お客様」
 と、係の女の子がその男の肩を叩《たた》くと……。
 男はゆっくりと前かがみになって、動かなくなる。
「あの……」
 と言ったきり、女の子は声が出せなくなった。
 亜由美は、足早に駆けて行った。
「あの……この人……」
 と、係の女の子がヘナヘナと座り込んでしまう。
「何してるんだ?」
 と、宇野が不思議そうに、 「寝てるのかな──」
 亜由美は、座席の間を抜けて、その席へと近寄った。
「聡子!」
 と、大声で呼ぶ。 「救急車! それから警察へ連絡してもらって!」
「どうしたの?」
「この人──刺されてる」
 あちこちの客が一斉に立ち上がった。
「まあ」
 と、ゆかりが言った。 「亜由美じゃない。ずいぶん変った格好してるのね」
 亜由美は、サングラスを外して、
「宇野さんでしたっけ?」
 と、言った。 「あなたの買った席は?」
「僕のは……これですが」
 わけの分らない様子の宇野の手からチケットを受け取る。
 同じ番号。ただ、上映時間が一回違っているだけだ。
「もしかすると、あなたが刺されていたかもしれないんですよ」
 と、亜由美は言った。
 
「僕のせいで……こんなことに……」
 宇野は、また落ち込んでいた。
「死ね」
 と、聡子が呟く。
 映画館のロビーのソファ。
 亜由美が立っていると、殿永が急ぎ足でやって来た。
「塚川さん……。またですか」
「私が犯人じゃありませんもの」
「いばらないで下さい」
 と、顔をしかめる。 「連絡を聞いて、仰天して飛んで来たんです」
「刺された人は?」
「今、問い合せました」
 と、殿永は肯《うなず》いた。「幸い、傷は急所をそれていて、命に別状ないそうです」
「良かった!」
「病院で訊《き》いたところ、時間潰《つぶ》しに入って、指定席が空いているので、映画が始まってから、暗い中でそっと移った、と言っています。普通のサラリーマンですよ」
 亜由美は、落ち込んでいる宇野に代って、状況を説明した。
「──すると、買い間違えたので、命拾い、というわけですな」
 と、殿永は首を振った。 「傷の具合から見て、犯人は後ろの席に座って、席と席の隙《すき》間《ま》から、斜めにナイフで刺したと思われます。暗い中で後ろからだ。この人と間違えたのかもしれませんな」
「僕のせいで……」
 と、宇野がすすり泣きを始めた。
「宇野さん。──元気出して」
 ゆかりが励ましても、あまり元気が出るとは思えない。
「ともかく今日のところは、パトカーで送ります」
 と、殿永がゆかりに言った。 「こちらの方は──」
「私はハイヤーを呼びますから」
 と、ゆかりが言った。 「この人を送ってあげて下さい」
「そうね」
 聡子が肯いて、 「トーフの角にぶつかって死ぬかもしれないもんね」
「分りました。そうしましょう」
 殿永も、宇野の落ち込んだ様子を見て、納得したらしかった。
「あの……」
 と、女性の声がした。 「何かあったんでしょうか」
 地味なスーツ姿の女性が、おずおずとやって来る。
「笠木さん」
 と、宇野がびっくりした様子で、目をみはる。
「宇野さん。何かあったの?」
 と、その女性は心配そうに訊いた。
「とんでもないことになったんです……。僕のせいで……」
 宇野がまた泣き出し、聡子は、見てらんない、という様子で外へ出て行ってしまった。
 残ったゆかりと亜由美、笠木という女性は、当惑して、泣いている宇野を見下ろしているばかりだったのである……。
 
「そうでしたか」
 笠木恭子というその女性は、亜由美の話に、肯いた。 「よく分りました。──宇野さんも、いい人なんですけどね。ただ、気が弱くて、いつも謝ることに慣れてしまっているんです」
 ロビーの隅で、亜由美は、いかにも仕事をしている女性らしい、しっかりした感じの笠木恭子に事の次第を話していたのだ。
 宇野は?──相変らず涙ぐんでいて、向うのソファで、ゆかりに慰められている。
「でも──」
 と、笠木恭子は眉《まゆ》をくもらせて、「あの娘さんが三人と結婚の約束をしているってこと、初めて聞きました。どうなるんでしょう」
「さあ」
 亜由美とて、どうにもならない。 「あれも悪い子じゃないんですけどね」
 立場が逆になってしまった。
「悪気がないのは分ります」
 と、笠木恭子は言った。 「世間知らずって感じですものね、見るからに」
「困ったもんです。──まさか三人でジャンケンしろとも言えないでしょ」
「そうですねえ……」
「宇野さんには──」
「黙ってて下さい」
 と、笠木恭子があわてて言った。 「今、そんなことを聞いたらどうなるか分りませんもの。もし──どうしても話さなくちゃいけない時が来たら、私から話します。それが一番いいと思いますから」
「助かります」
 他人《ひと》事《ごと》ながら、亜由美は礼を言った。
「──私も、子供のころは気が弱くて泣き虫だったんです」
 と、笠木恭子は、宇野の方へ目をやって、言った。 「でも、両親を一度に事故で亡くして──。それでいやでもしっかりせざるを得なくなったんです。弟もいましたし……。宇野さんを見ていると、昔の自分を見ているようで」
 笠木恭子は、ちょっと微《ほほ》笑《え》んで、
「失礼しました」
 と、頬《ほお》を赤らめた。
「──もう遅いですね」
 と、亜由美は言った。 「宇野さんをよろしく。私、ゆかりを連れて帰ります」
 我ながらお節介とは思うが……。
 ま、これが性格というものだ。聡子が、さぞ苛々《いらいら》して待っているだろう、と思いつつ、亜由美はゆかりたちの方へと歩いて行った。
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