日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

花嫁の時間割10

时间: 2018-07-31    进入日语论坛
核心提示:10 裏返った男 何だか、古ぼけて侘《わび》しい感じのホテルだった。 レンタカーでここまで来て、ゆかりは、笠木恭子に促され
(单词翻译:双击或拖选)
 10 裏返った男
 
 何だか、古ぼけて侘《わび》しい感じのホテルだった。
 レンタカーでここまで来て、ゆかりは、笠木恭子に促されるままに、そのホテルの中へ入った。
 その一室。ドアを恭子が叩《たた》くと、
「誰だ?」
 と、中から声がした。
「私よ」
 ドアがすぐに開く。
「──やあ、来たね」
「宇野さん……」
 ゆかりは、部屋の中へ入った。昼間だというのに、カーテンを引いてあって、薄暗く、少し埃《ほこり》っぽい匂いがした。
「何してるの、宇野さん? みんな心配してるのよ、あなたがいなくて」
 と、ゆかりは言った。
「心配? そんな必要はないさ。僕は生れ変ったんだ。何もかもうまく行く」
 宇野の話し方は、別人のようだった。
「宇野さん、私……。あなたとの婚約もキャンセルするつもり。ごめんなさいね。でも、結婚って、もっと大変なことだったのよね。私がいい加減で──」
「その必要はない」
 と、宇野は遮った。 「君は僕と結婚すればいいんだ。あの真田みたいな、生っちょろい奴とじゃなくてね」
 ゆかりはすっかり面食らっていた。宇野は続けて、
「真田との式はこの女がキャンセルして来たよ。だから君は予定通り、僕と結婚すればいいんだ」
 と、自信たっぷりの口調で言った。
「この女、って……。宇野さん、この人はあなたの先輩でしょう。そんな口のきき方しちゃいけないわ」
「先輩だって女は女さ。今は僕のものだ」
 ゆかりは恭子を見た。──恭子は青ざめて、うつむいている。
「じゃあ……宇野さん……。でも、この人には、ご家族があるんでしょう」
「もう僕とは切れないのさ。何しろ僕のために、人殺しまでしてくれたんだ」
「何ですって?」
 恭子が顔を上げると、
「やめて、宇野君。いけないわ。こんなこと──」
「何言ってるんだ。あんたは僕の言う通りにしてりゃいい」
 宇野は、ゆかりの方へと近付いて行った。ゆかりは、後ずさったが、狭い部屋だ。すぐに部屋の角へ追いつめられてしまう。
「宇野さん……。何するの?」
「決ってるじゃないか。君を僕のものにする」
「そんな──」
「おとなしく、言われた通りにするんだ。いいかい、君は僕のことを、前のようないくじなしだと思ってるんだろう? そうじゃない! 僕は、あいつをやっつけてやったんだ」
「あいつ?」
「君に乱暴しようとした品川さ。手ぎわよく、スパッとナイフで首筋を切り裂いてやった。見せてやりたかったよ。君の前に奴の首をさげて帰りたかった」
 得意げに話す宇野は、まるでホームランを打ったと言って喜ぶ子供のようだった。
「何てことしたの!」
「男はね、強い者が勝つのさ。君にも、そのことを教えてあげる。男の強さをね。さあ、ベッドへおいで」
 宇野が差し出した手を、ゆかりはじっと見て、首を振った。
「いやよ。──宇野さん。以前のあなたは、やさしかったわ。すぐ落ち込んで、頼りない気もしたけど、でも人間らしかったわ。今のあなたは狂ってる」
 宇野の顔がサッとこわばった。
 バシッと音がして、宇野に平手で頬《ほお》を打たれたゆかりが、アッと声を上げて、倒れた。
「宇野君、だめよ!」
 と、恭子が叫んだ。
「引っ込んでろ!」
 と、宇野が怒鳴る。 「これが男なんだってことを、教えてやるんだ」
 宇野は、ゆかりを引張って立たせると、ベッドの方へ投げ出した。
「やめて……。宇野さん──」
「おとなしくしてろよ。今に、僕から離れられなくなるんだ」
 宇野は、ゆかりの上にのしかかって行った。
「いやよ!──やめて!」
 と、ゆかりが叫ぶ。
「黙れ!」
 宇野がゆかりの首に手をかけた。 「死にたいのか? 俺が妻にしてやると言ってるんだ。ありがたいと思え」
 恭子が泣き出した。そして──走って行くと、スチールの灰皿をつかみ、宇野の頭へと力一杯振り下ろした。
 ドアが激しく叩かれたのはそのときだった。
「開けろ!」
 殿永の声がした。そして、ドアが壊れそうな勢いで開いた。
 ──宇野は床に倒れていた。
 ベッドに起き上がったゆかりは、呆《ぼう》然《ぜん》として、宇野を見下ろしており、笠木恭子が、重い灰皿を手に、立ったまま泣いていた。
「──ゆかり! 大丈夫?」
 亜由美が駆け寄る。
「亜由美……。その人が──」
「分ってる。もう大丈夫よ」
 亜由美は、ゆかりを助け起こすと、抱きかかえるようにして、部屋から連れ出した。
 殿永は、笠木恭子の肩に手をかけて、
「さあ、ゆっくりお話しましょうか」
 と、静かに言った。
 コトン、と音をたてて、恭子の手から灰皿が落ちた……。
 
「じゃあ……」
 と、母の清美が言った。 「その人は、夫も子もいる身で、年下の男に惚れちゃったの?」
「手っとり早く言えばね」
 と、亜由美が肯く。
「そう……」
 清美は、考え深げに肯くと、 「分るわ、その気持」
 と、言った。
「──お母さん、お茶でもいれてよ」
「はいはい」
 清美が居間を出て行った。
「全く、面白い方だ」
 と、殿永刑事が言った。 「心が和《なご》みますよ、あなたのお母さんを見ていると」
「こっちは、疲れます」
 と、亜由美は言った。 「で……結局、八代を殺したのは──」
「笠木恭子だったんです」
 と、殿永は言った。
 聡子とゆかりも、ソファに座って、神妙に話を聞いている。
「恭子は、宇野のことが心配だったんですな。まるで自分の弟のような気がした、と言っています」
「何となく分りますね」
「その宇野が、ゆかりさんにプロポーズして、何と、OKしてもらった。恭子は、我がことのように喜んだのです。ところが……」
「ゆかりは他に二人の男とも婚約していた、と」
「恭子は、ゆかりさんがどんな娘さんか気になって調べたんですね。ところが、結婚相手が三人もいると知って、困った。──何とかして、宇野を、好きな人と一緒にさせてやりたい、と思った。それが、すべての始まりだったわけです」
 と、殿永は言った。
「じゃ、真田が結婚詐欺師だと投書したのも?」
「もちろん、彼女です。しかし、それぐらいでやめておけば、どうってことはなかったんですがね」
「ポルシェに細工もしたんですか」
 と、聡子が訊いた。
「当人は否定しています。──ま、ゆかりさんまで死んでしまっては、元も子もない。あれは、たぶん真田の整備が悪かったんでしょう」
「やりかねない」
 と、亜由美が肯く。
「でも、宇野さんの代わりに映画館で刺された人が──」
 と、ゆかりが言った。
「あれからです。恭子の方も、まともでなくなったのは」
 と、殿永が首を振った。 「たぶん、恭子の中で、宇野を幸せにしたいという思いが、異常なまでにふくらんで来たんでしょう」
 ──清美が紅茶をいれて来た。
「これがね、あの出張所のくずかごに入ってたの」
 と、亜由美が、小さな紙片を、テーブルに置く。
 聡子が取り上げて、
「映画の指定席券じゃない」
「そう。宇野が買った、五時二十分の回の券」
「じゃあ……」
「恭子は、自分で七時半の回のチケットを買っておいて、すりかえたのよ。チケットは、宇野の上衣に入っていて、ロッカーにかけてあったわけだから、すりかえるのは簡単だったのよ」
「ワン!」
 と、ドン・ファンが鳴いた。
「分ったわよ」
 と、亜由美がにらんで、 「これ、ドン・ファンの足にくっついてきたの」
「もっと早く捨てときゃ良かったのにね」
「捨てたんですよ」
 と、殿永が言った。 「ところが、たまたまその一枚は、こぼれたお茶か何かで濡れてしまって、くずかごの底にはりついていた」
「よくあるわね」
 と、聡子が言った。 「濡れ落葉、か」
「これで分ったわけ」
 と、亜由美が言った。 「恭子は、わざと宇野が狙われているように見せかけて、彼に疑いがかからないようにしたのよ。運悪く、その席に座った人を、軽く傷つけるつもりで刺して逃げた。──でも、思いの他、ひどい傷になってしまった」
「もう、戻るに戻れなくなったんですね」
 と、殿永が続ける。 「──や、こりゃ旨《うま》い紅茶だ。──その後、恭子は、八代を殺した。八代のことも調べ上げていて、あの日、ゆかりさんをホテルへ連れ込むつもりだと知ったからです」
「あの八代さんが?」
 と、ゆかりが目を丸くした。
「ホテルに予約の電話を入れているのを、聞いてしまったんですよ、会社のビルの下でね」
「それで殺したのか」
 聡子は、ため息をついて、 「自分のためでもないのに」
「そう。恭子も、命がけになっていた。宇野が相変らず落ち込んだままなので、恭子は何とかして、自信をつけさせたいと思い、思い切って自分から彼をホテルへ連れて行き、抱かれたのです」
「──凄《すご》いことするのね」
 と、聡子は唖《あ》然《ぜん》としている。
「ところが……思いもかけなかったことが起きた。──宇野が、それを境に、ガラッと変ってしまったのです」
「男は力だ、と思ったのね。力ずくでものにすりゃ、女はついて来る、と」
 亜由美は首を振って、 「要するに、屈折していたものが、全部一度に裏返ったのよ」
「今度は、宇野が、恭子を支配し始めたのです。恭子が八代を殺したのも知っている。宇野としては、女一人、自分の思いのままになる面白さに、酔っていたんでしょう」
「虚《むな》しいことです」
 と、清美が言った……。
「恭子も悩んでいました。よかれと思ってやったことが、宇野の狂気を誘い出してしまった。──品川を殺す、と言い出し、恭子は止めようとしたのですが、宇野は実行してしまった」
「それで宇野は、ますます自信をつけてしまったのね」
 と、亜由美が言った。 「真田の方は、一旦、宇野の言葉にのって、品川を殺すなんて言ってみたものの、後になって、とてもやる気にならなくなった。そして実際に品川が殺されると、怖くなって、姿を隠してしまったのよ。次は自分が殺されるかもしれない、と思ったのね」
「じゃ、わざと車を落として?」
「そう。──宇野が捕まって、やっと出て来たわよ。どこかの女のマンションに隠れてたんですって」
「情ない男」
 と、聡子が顔をしかめる。 「ねえ、ドン・ファン」
「ワン」
「ともかく、このチケットを、塚川さんが発見して下さったので、我々も笠木恭子の方へ目をつけたわけです。で、尾行してみると、案の定、ゆかりさんをさらって、宇野の所へ案内してくれた」
「怖かったわ」
 と、ゆかりは言った。 「でも──怖いより、気の毒だった。女は力で従えればいい、なんて信じてる宇野さんが、哀れだった」
「殺されるとこよ、下手すりゃ」
「分ってるけど……」
「しかし、一番哀れなのは、笠木恭子ですな。宇野におどされて、言うなりになっていたが、やはり、黙って見てはいられなかった」
「宇野の傷は?」
「大したことはありません。石頭だったようでしてね」
「あの女《ひと》、私を助けてくれたのよね」
 と、ゆかりは言った。 「いくらか、罪が軽くなるでしょうか」
「たぶんね」
 と、殿永が肯いた。 「彼女のご主人にも会いました。事情をよく説明しておきましたよ。彼女の出所を待つ、と言っていました」
「──少し、救われたわね」
 と、亜由美が紅茶を飲んで、息をつく。 「でも、ゆかり、今度婚約するときは、ちゃんと事前に私に相談しなさい」
「そうするわ」
「いけませんよ」
 と、清美が口を出した。 「いい人だったら、亜由美が横どりするかもしれません」
「お母さん!」
 亜由美がにらむと、ドン・ファンが、
「ワン!」
 と、笑ったのだった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%