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透き通った花嫁03

时间: 2018-07-31    进入日语论坛
核心提示:2 幻の花嫁「妙な話ね」 亜由美は肯《うなず》いた。「──ね、幸枝。下に行って、ゆっくり話さない?」 幸枝は首を振った。
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 2 幻の花嫁
 
「妙な話ね」
 亜由美は肯《うなず》いた。「──ね、幸枝。下に行って、ゆっくり話さない?」
 幸枝は首を振った。
「気にしないで。私、高い所って好きなの」
「あ、そう」
 亜由美は、鐘楼から遥か下を見下ろした。
 下の見物人はさっきの倍近くにふくれ上がっている。
 下ではさぞかし、気をもんでいることだろう。上で、亜由美が必死の説得を試みていると思っているに違いない。
「でもさ、幸枝、そんなことでどうしてあんたが死ぬわけ? 要はそいつが嘘ついてるかどうかってことじゃないの?」
「私にとっては、大切なことなの」
 と、幸枝が淡々と言った。 「私ももう二十歳になったから、親の許しがなくても結婚できるわ」
「そりゃそうね」
「でも、馬鹿じゃないつもりよ。そりゃ、世間知らずかもしれないけど、人柄の良し悪しぐらい、見分けがつくつもり」
「ふんふん」
「だからあの人ともベッドを共にしたんだし……」
「ふーん」
 と肯いて、 「──ちょっと、幸枝! 今、何て言った?」
「ベッドを共に、って言ったの。亜由美、意味分らないの?」
「分るから、念を押したんでしょ!」
 ムカッとして、亜由美は言った。しかし、幸枝が……。人は見かけによらないもんだ!
「父は反対してるの。エリートとの縁談がいくらもあるのに、って。でも、いくらお金があっても、好きになれない人と結婚するのなんていやだわ。亜由美だって、そう思うでしょ」
「うん……」
 ま、やたら元気はいいが、 「殺人事件」ならともかく、 「恋愛事件」にかけては、てんで出遅れている亜由美としては、あんまり分ったようなことは言えないのである。
「で──幸枝、その彼と、どうなったわけ?」
 と、亜由美は訊《き》いた。
「彼は結婚しようって言ってくれたわ。でもね──」
 幸枝はため息をついた。
 
「はい、お茶」
 と、目の前に、事務所用の湯呑み茶碗が置かれる。
「や、ありがとう」
 雨宮は、重い紙袋を足下に置いて、額の汗を拭った。──まだ春先で暑いという陽気じゃないのだが、今日の会議のための資料が、大変な重さになってしまった。
 ゆうべ、この事務所でやるつもりが間に合なくて、アパートへ持って帰ったのである。
「夜中までかかっちゃったよ、これを作ってたら」
 と、紙袋を見下ろして、 「それで会議のときは、一分と説明しないで、 『はい次』だからね」
「仕方ないわよ」
 と、笑ったのは、お茶をいれてくれた、楠木リカ。
 ここの雑用係、という点では、雨宮とそう大して違わない立場である。二十五歳で、雨宮より三つ下だが、この事務所には結構古いのだ。
 小柄で、コマネズミのようによく動き回っている。細かいことにあれこれ気をくばり、よく気の付くことでは事務所内の貴重な存在である。
 美人とは言えないが、丸顔で素顔。誰からも好かれるのだ。
「でも、雨宮さん、このところ、ずいぶん爽やかな顔してるわよ」
 と、楠木リカが雨宮を眺めながら言った。
「そうかい? 相変らず寝不足だけどね」
 と、雨宮は言った。
「うん、まあ眠そうではあるけどね。でも──何て言ったらいいのかなあ。同じ眠そうでも、くたびれ切った『眠そう』と、元気そうな『眠そう』があるの。雨宮さん、最近は元気そう」
「よく分らないけどね……」
 と、雨宮はお茶を飲んだ。
「恋人、できたんじゃない?」
 雨宮は、ちょっと詰ったが、
「そんな優雅な話がありゃいいけどね」
 と、言ってやった。
「──あ、おはようございます」
 楠木リカは、事務所のボスが出勤して来るのを見て、言った。そして、
「雨宮さん、資料、会議室へ持ってっとく?」
「あ、悪いね。僕が──」
「いいの。どうせお茶いれに行くから」
「重いよ」
「力はあるのよ、こう見えても」
 確かに、楠木リカは、雨宮でも少々身構えないと持てないような、その紙袋を、大して苦労もせずに運んで行った。
 ホッと息をつく。
 正直なところ、 「恋人ができたのか」と訊かれてドキッとしたのである。
 いや、恋人はいる。──あの女子大生、牧口幸枝である。
 雨宮から見れば、 「どうしてこんなすてきな娘が俺なんかに?」と、正直なところ戸惑ってしまうような子だが、ともかく向うが夢中だ。
 この間はついに、二人してホテルに入ってしまったし……。幸枝はすがりつくように雨宮に身を委《ゆだ》ねて、彼としても、この子を一生放すまい、という気持になった。
 あの子のことなら、まあ年齢が若いことを除けば、この事務所の中で、隠さなければいけない理由はない。そうではないのだ。
 問題は──あの「幻の女房」なのである。
 帰ってみると、布団を干して押入れにしまってあった、あの夜から、もう一週間たっていた。
 雨宮は、結局玄関の鍵を変えたわけでもなく、必死に「侵入者」を捜し回ったわけでもない。──毎日、帰ると、掃除も洗濯もすんでおり、布団もたたんである。朝起きると朝食の仕度ができていて、スーツにもアイロンがかけてあったりする。
 雨宮は、いつか犯人を見てやろうと、毎晩思いつつ、結局、この状態を受け容《い》れてしまった。それにくたびれて帰り、フワッとした布団に入ると、侵入者を見届けてやろうという企《たくら》みは、強烈な眠気の誘惑に、いつも負けてしまうのである。
 ──毎朝、雨宮は、誰とも知れぬ「新妻」が用意してくれた朝食をしっかりとって、きれいに磨いた靴をはき、アパートを出て来る。
 このままじゃいけないな。そう思いつつ、この生活の快適さに、慣れて来てしまっているのである。
 しかしなあ……。幸枝のこともあるし、いつまでもこうしちゃいられない……。
「さっ、仕事だ」
 雨宮がファイルを机の上で開いて、ページをくっていると──。誰かが机の前に立った。
 顔を上げると、楠木リカが、いやに怖そうな顔をして、立っている。
「どうかしたかい?」
 と、雨宮が微《ほほ》笑《え》んでも、相手はニコリともせず、
「資料の袋にこんなもの入れて! 怒られますよ、せっかく作ってくれた彼女に!」
 雨宮の前に、楠木リカが置いたのは──ピンクのハンカチにくるんだ弁当箱だった!
「私に見せつけたかったんですか?」
「いや……そんなことじゃないんだ」
「恋人がいるならいると、はっきりおっしゃいよ! こっちはちっとも構いませんからね」
「あの──楠木君!」
 弁当箱を置いて、楠木リカはさっさと行ってしまった。
 何だ、これは? いや、答えるまでもない。──あの「幻の女房」の作った、弁当なのだ。
 こんなことまでやったのは初めてだ。
 雨宮は、ちょっと恐ろしくなった。──誰だか知らないが、この女は一体どこまでやるつもりなんだろう?
 雨宮は、事務所の人間がみんな自分の方を見ているのに気付いて、あわててその弁当箱を引出しにしまった。──分っていた。昼休みになったら、きっとこの弁当を食べることになるだろう、と……。
 
「今夜は──そんなに遅くなれないの」
 うつむき加減の幸枝の顔が、そう言ってカーッと赤くなった。
 雨宮の方は胸が熱くなる。
「うん……。いいんだよ。僕らは先が長いんだから」
「そうね」
 幸枝はホッとした様子で、肯いた。
 二人で食事をして、外へ出たのは、九時近くだった。──雨宮は、なかなか早く帰れない。幸枝とのデートも、せいぜい二週間に一度。
 貴重な時間である。少しでも長く、一緒にいたいという気持はあったが、幸枝を困らせたくはなかった。
「じゃあ……もう帰るかい?」
 と、雨宮は夜道を歩きながら、訊いた。
「そうね。──あと少しなら」
 幸枝は、雨宮の方へ身を寄せて来る。雨宮は幸枝の肩に手を回した。
「──ねえ」
 と、幸枝がふと思い付いたように、 「あなたのアパート、近いんでしょ?」
「うん? まあ……。そうだね。バスで十分くらい」
「行ってみたいわ、私」
 と、幸枝は言い出した。
「え? でも──ボロだよ」
「いいじゃないの。いつもあなたがどんな所で寝てるのか、見たい。構わないでしょ?」
 いやとは言えなかった。それに、例の「幻の女房」のおかげで、いつもアパートの部屋はきれいに片付いている。
 二人は、バスに乗って、アパートへ向った。バスも、もう空《す》いて来ている。
「あら、雨宮さん」
 と、声をかけられて振り向くと、少し離れた席に、池畑厚子が座っていた。
 池畑厚子は、雨宮の下の部屋へ越して来た女性である。十二、三歳の、ちょっと神経質そうな娘と二人暮し。
「夫を亡くして」
 という説明だったが、その手の情報に詳しい山本有里の話では、会社の倒産で、亭主は蒸発してしまったのだそうである。
 この池畑厚子は「元社長夫人」というわけだが、確かに、身につけるものなど、趣味の良さが出ている。今は自分が勤めに出て、娘は中学生、というわけだ。
「あ、どうも」
 雨宮は会釈して……。その場の成り行き上、幸枝を紹介しないわけにはいかなくなった。
「──まあ、学生さん? お若いわね」
 と、池畑厚子が言った。 「雨宮さんがとても楽しそうなのは、そのせいだったんですね」
「いや、勘弁して下さい」
 と、雨宮は頭をかいた。
 池畑厚子は楽しげに笑って、
「うちへもご一緒に遊びにいらして下さいね」
 と、幸枝へ声をかけた。 「みどりが喜びますわ、きっと」
「お嬢さんですか」
「ええ。一人っ子なもので、人見知りで。中学生にもなって、困ってるんですけどね」
 と、池畑厚子は言った。
 冗談めかしてはいるが、娘のことが心配には違いないだろう。
 やがて、バスを三人で降りると、アパートはすぐ目の前。
「──お母さん」
 と、声がして、ヒョロッとした女の子が暗がりからやって来た。
「みどり。何してるの?」
「ゴミ捨ててたの。バスが見えたから……」
「ほら、上の雨宮さんよ」
「今晩は」
 と、少女は会釈した。
「やあ、どうも」
「それと──牧口さん、でしたわね」
「牧口幸枝です。今晩は」
 幸枝が声をかけると、少女ははにかみながらピョコンと頭を下げた。
「じゃ、おやすみなさい」
 池畑厚子が、みどりと一緒に部屋へ入って行く。
 二階へ上がりながら、
「良い人みたいね」
 と、幸枝は言った。
「うん。気持のいい人だよ。色々苦労してるんだろうけどね。──ここだ」
 雨宮は、鍵をあけた。 「さ、入って。今明りを点《つ》けるから」
 スイッチを押すと、六畳間が一目で見わたせた。──雨宮は立ちすくんだ。
 ちゃぶ台に、夕食の仕度ができていたのである。お茶は熱く湯気を立てていた。
「雨宮さん……」
 幸枝の顔から、血の気がひいた。
「待ってくれ! 説明するよ。これは──」
「そういう人がいたのね。ごめんなさい、私……」
「違う! そうじゃないんだ!」
 雨宮は、幸枝の腕をつかんで、 「お願いだから、聞いてくれ!」
 と、くり返した……。
 
「──で、そういう話をしたわけか」
 亜由美は肯いた。 「確かに、妙な話よね」
「あの人を信じたいとは思うわ」
 と、幸枝は言った。 「でも、信じられる? そんなこと、あると思えないわ」
「うん……。でもね、幸枝、いずれにしてもさ、あんたが死ぬほどのこととも思えないけど」
 風が出ていた。この高さでは、相当な強さになる。亜由美は髪がめちゃめちゃになっていた。
「ね、下りて、ゆっくり考えようよ。私、ちゃんと謎を解決してあげるから。いいでしょ?」
「ありがとう」
 幸枝は微笑んだ。 「でも、もういいの」
「もういい、って?」
「あの人に裏切られて、生きていたくないの。──ね、亜由美。私が死んだら、ノート使っていいからね」
 突然、幸枝が手すりから身をのり出した。下の人たちがどよめく。亜由美はとっさのことで、動けなかった。
「さよなら、亜由美」
「馬鹿!」
 亜由美は、飛びかかった。
 一瞬、もしかしたら幸枝と一緒に死ぬかもしれない、という思いが、頭をかすめた……。
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