日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

花嫁は歌わない01

时间: 2018-07-31    进入日语论坛
核心提示:プロローグ「私、結婚《けつこん》するの」 と言われて、塚川亜由美《つかがわあゆみ》は、「へ?」 と、いささかはしたない声
(单词翻译:双击或拖选)
 プロローグ
 
「私、結婚《けつこん》するの」
 と言われて、塚川亜由美《つかがわあゆみ》は、
「へ?」
 と、いささかはしたない声を上げてしまった。
 もちろん亜由美だって、今年|二十歳《はたち》のレディである。いつも、そんな声を出しているわけではなく、普通[#「普通」に傍点]にびっくりしたときには、
「まあ!」とか、せいぜい、
「へえ!」
 といった声を上げているのである。
 しかし——この場合は、並《なみ》の驚《おどろ》きではなかったのだ。「うな重」でいえば、「並」でなく、「特上」級の驚きなのだった。
「あの——久恵《ひさえ》、今、何て言ったの?」
 別に耳が遠くなったわけではないのだが、亜由美は、ついこう訊《き》き返さずにはいられなかった。
「結婚……するのよ」
 佐伯《さえき》久恵は、それこそ消え入りそうな声でくり返し、真赤になってうつむいてしまう。
「結婚って——久恵、あなたが?」
 亜由美は、そう言ってから、傍《かたわら》を向いて、「ね、ドン・ファン、ちょっと私の頬《ほ》っぺたなめてくれる?」
 ——ここは、塚川家の、亜由美の部屋。カーペットに座り込《こ》んで、話をしていた亜由美と久恵だが、その亜由美のわきに、ボディガードよろしく寝そべっているのは、つややかな茶色の肌《はだ》のドン・ファン——といっても、別に陽焼《ひや》けしているのじゃなく、もともと茶色いのだ——という名のダックスフントだった。
 この犬、前に、亜由美がある殺人事件に首を突《つ》っ込んだとき、記念に(?)もらい受けたのである。
 亜由美が、頭を下げて、頬を差し出すと、心得たもので、ドン・ファンは、頭を上げてペロリとなめた。
「冷たい!」
 と、亜由美はあわてて起き上り、「夢《ゆめ》じゃないんだ!」
 ちょうどそこへドアが開いて、
「——何が、夢じゃないって?」
 と、入って来たのは、亜由美の母親、塚川|清美《きよみ》である。
「あら、お母さんいたの?」
 と、亜由美は言った。
「出かけるなんて言わないでしょ」
 と、清美は、盆《ぼん》にのせて来た紅茶のカップを、「ここへお紅茶、置くわよ」
「うん」
 亜由美が、母親に、「いたの?」と訊《き》いたのも無理からぬところで、大体清美はやたらによく出かけるので、いない方が普通の状態なのである。
「ごぶさたしてます」
 と、佐伯久恵は、清美に挨拶《あいさつ》した。
「相変らずおきれいね。久恵さんは」
 と、清美は微笑《ほほえ》んで、「それに、とてもおしとやかで、女らしくて……。少しは亜由美にも見習ってほしいわ」
「私のこと、すぐ引き合いに出さないでくれる?」
 と、亜由美は母親をにらんだ。
「仕方ないでしょ。うちの子はあなたしかいないんだから」
 清美は涼《すず》しい顔でそう言ってから、「——お父さんが外で子供でも生ませてなきゃね」
 と、ショッキングなことを付け加えた。
「お父さんが?」
 と、亜由美が目を丸くする。
「冗談《じようだん》よ。お父さんの恋人はハイジやキャンディですものね」
 久恵が、目をパチクリさせた。
「何のこと?」
「いえ、いいの」
 亜由美はあわてて言った。——亜由美の父親は、技術|畑《ばたけ》のサラリーマンだが、趣味《しゆみ》はTVのアニメ。それも少女向けのセンチメンタルなアニメを、感動の涙《なみだ》と共に、ビデオでくり返し見るという、ちょっと[#「ちょっと」に傍点]変った好みの持主なのである。
「それよりね、お母さん、久恵、結婚するんですって」
「あら! それはまあ、おめでとうございます!」
 清美は手を打って、声を上げた。
「いいえ、そんな——」
 久恵は、また赤くなって、うつむいてしまった。
「本当にねえ、亜由美だって、もう二十歳なんだから、婚約者の一人や二人、いたっていいと思うんですけど。よく言ってやって下さいな」
「二人いちゃ困るでしょ。——お母さん、あっち行っててよ」
「はいはい。それじゃ、久恵さん、また後ほど」
 清美が出て行くと、亜由美はホッと息をついた。
「うるさいわけじゃないんだけど、そばにいると疲《つか》れるのよね」
 と、亜由美は言って、「でも——久恵、一体相手は誰《だれ》なの?」
「信じてないみたいな言い方ね」
 久恵は、笑顔で言った。
「そうじゃないけど、あんまり急で……」
 いや、正直なところ、亜由美には信じられなかったのだ。
 久恵が、嘘《うそ》をついたりする子でないことは、親友たる亜由美がよく知っているのだが、それでも、素直に、「あ、そう」と肯《うなず》くわけにはいかないのだった。
 佐伯久恵も、同じ二十歳である。同じ私立大の文学部に通う仲《なか》だが、付合いは至って古い。小学校のとき、仲が良かったのだ。でも、中学で別々になり、その後はしばらく会うこともなかった。
 大学へ入って、再会したわけだが、亜由美は久恵が、小学生のころと、あまりに「変っていない」のにびっくりしたものである。
 もちろん、それなりに成長し、女らしくもなっていたが、受ける印象が、まるで変っていないのだった。
 二十歳で学生結婚。——そんなことも、昨今ではそう珍《めずら》しくない。現に、今、同じゼミにいる子でも、一人、結婚しているのがいた。
 しかし——他の娘《むすめ》ならいざ知らず、久恵が結婚とは……。
 やっぱり「信じられない!」と言うしかなかった。
「信じてくれなくても仕方ないわ。私だって、まだ信じられないくらいなんだもの」
 と、久恵は言って、「紅茶、いただくわね」
「あ、そうね」
 紅茶のことなんか忘れていた!
「——相手、私の知ってる人?」
 と、亜由美は訊《き》いた。
「知らない人よ。大学の人じゃないの」
「ふーん。でも——お見合?」
「まさか。だったら、卒業まで待ってもらうわよ」
 と、久恵は笑った。
「恋愛……。へえ!」
 負けた、と亜由美は思った。
 久恵は美人である。小学生のころから、ちょっと目立つ、色白な美人顔だった。
 あまり健康的とは言えず、実際、よく病気で学校を休んだ。今も、その点では、やはりきゃしゃ[#「きゃしゃ」に傍点]な印象を与《あた》える。
 昔から少々はねっ返りの気味のあった亜由美は、久恵の「保護者」を自認していたものだ。その久恵が恋愛結婚。——亜由美がめげるのも当然ではあった。
「じゃ、学生結婚するわけ?」
「そういうことになるわ」
 と、久恵は肯《うなず》いた。「たぶん——近々ね」
「やってくれるわねえ! 私に一言の相談もなく!」
「ごめんなさい。怒《おこ》らないで」
 と、本気で心配している。
 亜由美は、フフ、と笑って、
「私を見そこなってくれちゃ困るわよ。そんなことで怒ると思ってるの?」
「良かった!——もう友だちだと思わないなんて言われたら、どうしようかと思ってたのよ」
「そんな!——どんな人なの? 名前は?」
 と、亜由美は身を乗り出した。
「今度、ちゃんと紹介するわ。あなたに真先に」
「そう来なくっちゃ」
「彼が——」
「え? 何なの?」
「彼が……ちゃんと離婚したら[#「離婚したら」に傍点]ね」
 と、久恵は言って、曖昧《あいまい》に微笑《ほほえ》んで見せた。
 ——このとき、強引に、相手の男についてもっと詳《くわ》しく突《つ》っ込《こ》んで訊《き》いておかなかったことを、後々まで亜由美は悔《くや》むことになった。
 その十日後に、佐伯久恵は自殺したのである……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%