日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

花嫁は歌わない04

时间: 2018-07-31    进入日语论坛
核心提示:3 疲れた若妻 その老人は、亜由美の方へ向って歩いて来た。 亜由美は、家の近くのベンチに腰《こし》をおろして、芝生《しば
(单词翻译:双击或拖选)
 3 疲れた若妻
 
 その老人は、亜由美の方へ向って歩いて来た。
 亜由美は、家の近くのベンチに腰《こし》をおろして、芝生《しばふ》で寝そべったり転がったりしているドン・ファンを、眺《なが》めるともなく眺めていた。
「亜由美君」
 声をかけられて、初めて亜由美はその老人の顔を見上げた。このところ、ぼんやりと物思いに沈《しず》むことの多い亜由美だが、それにしても、見上げる顔には見憶《みおぼ》えがない。
「はい……」
 誰《だれ》だったろう?——老人といっても、よく見るとそう老《ふ》けてもいない。ただ、生気に欠けた様子と、白味がかった髪《かみ》のせいで、ひどく老けて見えるのだ。
「お宅へうかがったら、たぶんここだとお母さんに言われてね。——久恵の葬式《そうしき》のときには、色々とありがとう」
 亜由美は、思わず声を上げるところだった。
 ——久恵のお父さん!
 でも——でも、この変りようは……。
 まだ、やっとひと月しかたたないのに、髪はすっかり白くなって……。葬式のときには、まだ白髪《しらが》の一本も気付かなかったのだが。
「あ——いえ、とんでもない」
 亜由美は、やっとの思いで口を開いた。
「ずいぶん老け込《こ》んだろう?」
 と、佐伯は、ちょっと寂《さび》しげに微笑《びしよう》した。「座ってもいいかね」
「どうぞ」
 亜由美は、少しずれて、場所を空けた。
「君のお母さんが私を見て何と言ったと思う?」
「母が、ですか?」
 あまり考えたくない、と思った。
「そんなに老け込んじゃったら、久恵さんが幽霊《ゆうれい》になって帰って来ても、お父さんと分りませんよ、とね」
 亜由美は、佐伯から目をそらした。
「すみません。うちの母、無神経なんで」
「いや、そうじゃないよ」
 と、佐伯は首を振《ふ》った。「お母さん流の励《はげ》まし方なんだ。——しっかりしなきゃいけない、と思ったよ」
 亜由美は、足下《あしもと》に寄ってきたドン・ファンの頭を撫《な》でてやった。クゥーン、と甘《あま》ったれた声を出して、亜由美の足を突《つ》っつく。
「——久恵が死んで一か月になるのに、まだ何一つ分っていない」
 と、佐伯は言った。「まあ……久恵は自殺したわけだから、警察としても捜査《そうさ》するには及《およ》ばないわけなんだろうが。しかし、私は久恵が殺されたのも同然だと思っている」
「私もそう思います」
 と、亜由美は言った。「久恵と結婚《けつこん》の約束をしておきながら、捨てた男がいるんです」
「その相手を、何としても知りたい。——亜由美君。君に頼《たの》めないだろうか」
「私……ですか」
「警察は、例の、ホテルで殺された女と、久恵の死に何か関連があると思っているようだ」
「あの事件は、何か手がかりでも出たんでしょうか」
「だめらしいよ。夫のアリバイは完璧《かんぺき》で、殺された女性にも、恋人《こいびと》がいたかどうかつかめない」
「何やってんのかしら、全く!」
 亜由美は、ため息をついた。
「それだけじゃない」
 と、佐伯は首を振《ふ》って、「警察は、久恵があの女性を、三角関係のもつれで殺したのかもしれないと考えているらしい」
 亜由美は目を見張った。
「まさか! だって——あの殺人事件の方が後でしょう?」
「いや、死亡推定時刻というのは、相当に幅《はば》があるらしい。無理にこじつければ、不可能ではないらしいんだ」
「馬鹿《ばか》げてるわ!——あ、ごめんなさい。でも、それじゃあんまり久恵さんが可哀《かわい》そう」
「全くだ。——警察は久恵のことを知らないから無理もないが、あの子は人を殺すくらいなら、自分が死ぬ。たとえどんなに追い詰《つ》められたにせよ、人を手にかける子じゃない」
「もちろんですわ。——狡《ずる》いわ、本当に。久恵には反論できないんだから」
「このままでは、あの子も浮かばれない。——君は確か、警察の人を知っていたね」
「ええ……。いくらか」
「何か訊《き》き出してみてくれないだろうか。もちろん、君を危い目に遭《あ》わせたりしては、それこそ久恵が化けて出る」
 亜由美は、膝《ひざ》に上って来たドン・ファンを抱《だ》いて撫《な》でてやりながら、
「分りました」
 と、しっかりした声で答えた。
「何か分ったら、教えてくれたまえ。——もし、相手の男が誰《だれ》だったか分ったら……」
 亜由美は佐伯を見た。
「——まず私に教えてくれないか」
 亜由美は、少しためらってから、
「ええ。約束します」
 と言った。
 
「無茶ですよ」
 殿永は、呆《あき》れたように言った。「全く、独創的なことを考える人だ」
「無茶ですか」
 と、亜由美は言った。
「当り前です。あなたは刑事《けいじ》でも何でもない」
「じゃ、久恵の相手の男を教えて下さい」
「それはまだ分りません」
「永田照美を殺した犯人は?」
「それも今のところまだ……」
「じゃ、団地の恐喝犯《きようかつはん》は?」
「それもまだ……」
 殿永は、椅子《いす》にもたれて、「——私の胃を痛くさせるために来たんですか?」
 と言った。
「他に手があります? もし、久恵の自殺、永田照美殺し、恐喝事件の三つがつながってるとしたら、鍵《かぎ》は、あの団地にあります」
「それは分りますよ」
「刑事《けいじ》さんが、いくら団地の中で聞き込みに歩いたって、話してくれるのは、表面的な情報だけですよ」
 殿永は苦い顔で、
「痛いところを突《つ》きますね」
「男ではだめです。女で、しかも、その場の生活[#「生活」に傍点]に溶《と》け込《こ》んだ人間でないと、隠《かく》れた噂《うわさ》は耳に入りません」
 亜由美は、きっぱりと言い切った。
「あなたの言葉は説得力がありますね」
 殿永は、ため息をついた。「しかし、これは危険な仕事ですよ」
「分ってます。一人でやるわけじゃありませんわ」
「それはそうだな」
「当然でしょ? あんな団地に一人で住みつくなんて、おかしなものだし、それに単身での入居は認められないはずです」
「すると……」
「当然、夫婦[#「夫婦」に傍点]で入ることになりますわ」
「誰《だれ》か、お相手[#「お相手」に傍点]がいるんですか?」
「失礼ね。私がそんなにもてないと思ってらしたの?」
「いや、そういうわけじゃありませんがね」
「もちろん、指を一つ鳴らすか、口笛《くちぶえ》でもピーッと吹けば、男の五人や六人、飛んで来ますわ」
 と、亜由美は少々オーバーに言って、「でも、これはあくまで『捜査《そうさ》』なんですから、恋人《こいびと》を選ぶつもりはありません」
「すると……」
「いい人がいますわ」
 亜由美は微笑《ほほえ》んだ。「ここへ呼んで下さいません?」
 
「ぼ、僕《ぼく》がこの人と夫婦に?」
 と、茂木刑事は目を丸くした。「いくら業務命令といっても、それは——」
「形だけだ、当然だろう」
 と、殿永は言った。
「しかし——そんなことをして、本当に恐喝犯《きようかつはん》が出て来るとは限りません」
「そりゃ分ってるわよ」
 と、亜由美は言った。「あなたが早く犯人を見付けないからいけないんじゃないの」
 茂木はぐっと詰《つま》った。
「と、言われても……。僕にだって、選ぶ権利はあります!」
「何よ、それはどういう意味?」
 亜由美が椅子《いす》から腰《こし》を浮かすと、茂木はあわてて逃げ腰になった。
「いつまでも、ってわけじゃない」
 殿永が苦笑して、「しばらく様子を見るんだ。うまく恐喝犯が出て来れば、しめたもんだ」
「大きな団地ですよ。そんなことやっても、あんまり意味が——」
「私の計画にケチつける気?」
 と、亜由美がひとにらみすると、茂木は口をつぐんでしまった。
「——もちろん、入居するのは、矢原晃子のいた棟《とう》の近くだ。今調べさせたが、二戸ほど空きがある」
「勝手に入っちゃ、職権|濫用《らんよう》になりませんか?」
「捜査の一つだ。ずっと住むわけじゃない」
「はあ」
「それに、この時期は、転勤とかも少ないから、引越して来れば目立つだろう。犯人の方も、矢原晃子がしゃべってしまって、団地内では仕事がやりにくくなっているに違《ちが》いない」
「そうなれば、事情の分らない新顔に目をつけることだって、充分《じゆうぶん》に考えられるわけですものね」
「それはあり得ますね」
 殿永は肯《うなず》いた。「しかし、用心して下さい。もし、永田照美殺しが、この恐喝《きようかつ》に関連しているとしたら、あなたの身に危険が及《およ》ぶことも充分に考えられる」
「大丈夫《だいじようぶ》ですわ。ちゃんと番犬を連れて行きますもの」
 亜由美の言葉に、茂木が顔をこわばらせた。
「僕のことを番犬だと言うんですか! それならあなたはお座敷犬《ざしきけん》だ!」
「何を怒《おこ》ってるの? 私、飼《か》ってるダックスフントのことを言ってるのよ」
「そ、そうですか……」
 茂木が真赤になった。
「——この男で大丈夫ですか?」
 殿永が不安げに言った。
「ええ、この人だって一応[#「一応」に傍点]刑事なんでしょ?」
「いいか、充分に注意しろよ」
 と、殿永は茂木に向って、怖《こわ》い顔で言った。
「はあ」
「この女性にけがでもさしたら、君も私もクビは間違《まちが》いない」
「クビ——ですか?」
 茂木が青くなる。「僕はまだ結婚《けつこん》もしていないんですが」
「それからもう一つ」
 と、殿永は付け加えた。「夫婦といったって、それはあくまでそう見せかけるためだぞ」
「はあ……」
「もし、この人に手を出したりしたら、射殺するから、そう思え」
 茂木が今度は白くなった。——亜由美は吹き出しそうになるのを、何とかこらえていた。
 
「へえ!」
 亜由美は声を上げた。「結構素敵な所じゃないの!」
 もちろん、亜由美は団地などに住んだことはない。——きっと、やたら狭苦《せまくる》しくて、息の詰《つま》りそうな所だろうと思っていたのだ。
 しかし、小型トラックの助手席に座って、左右に広がる風景を眺めていると、何だかどこかの遊園地にでも来たような気がして来る。
 ともかく、やたらにカラフルなのである。
 建物の色も様々で、中心は、モザイク風に壁面にクマやタヌキの絵が描《えが》いてあったりする。ちょっとした遊び場はいくらもあって、小さな子供たちが駆《か》け回り、母親たちはベンチに腰《こし》をおろして、おしゃべりに余念がない。
「なかなかモダンね」
「割合に新しい団地ですからね」
 と、ハンドルを握《にぎ》る茂木が言った。
「茂木さん。口のきき方に気を付けて」
 と、亜由美がにらんで、「夫がそんな丁寧《ていねい》な口をきく?」
「すみません」
「ほら!——ま、いいわ。向うに着いたらね」
 トラックは、一通りの家財道具をのせて、団地の奥《おく》へと入って行く。
「——みんな振《ふ》り返って見てるわ」
「珍《めずら》しいんでしょう。三月ごろだといくらもあるんだろうけど」
「どう? 私、生活に疲《つか》れた若妻に見える?」
「ぴったりですよ」
「あ、そう」
 複雑な気分である。
 もちろん、このことは、母の清美には言ってあるのだが、何しろ変った母親である。亜由美と一緒《いつしよ》になって、喜んで、あれこれと手伝ってくれた。
 髪《かみ》はろくに手入れしていないバサバサのまま、少し目の下にくま[#「くま」に傍点]を入れて、
「もう少しやせるといいのにね。二、三日絶食したら?」
 とまで、忠告してくれたのである。
 おかげで、出発に際しては、唯一《ゆいいつ》、事情を説明した友人の聡子からは、
「どう見たって二十五、六!」
 という、あまり嬉《うれ》しくない太鼓判《たいこばん》を押《お》されて来たのだった。
「あなたの顔を知ってる人、いないでしょうね。刑事《けいじ》だなんて分ったら、オジャンよ」
「大丈夫。僕は直接の担当じゃなくて、途中から話を聞かされただけですからね」
 茂木の方も、今日は引越《ひつこ》しだというので、ジーパンスタイル。こうして見ると、なかなか若々しい。却《かえ》って、亜由美の方が老けて見えるくらいだ。
「——その犬のことで、もめなきゃいいけどな」
 茂木は、亜由美の膝《ひざ》でドテッと寝《ね》そべっているドン・ファンを見て言った。
「犬猫《いぬねこ》を飼《か》うのは禁じられてるんでしょ? 分ってるわ。でも、それで却って目立てば好都合よ」
「そんなもんですか」
 茂木の方は、まだ気乗りがしない、という様子なのである。「——あれ? 変だな」
「どうしたの?」
「行き過ぎたらしい。確かにこの辺だと思ったんだけど……」
「いやねえ、頼《たよ》りない」
 と、亜由美は言ったが、「ちょっと、トラック停《と》めて!」
「え?」
「いいから!」
 トラックが、道の端《はし》に寄って停る。亜由美は、ドン・ファンを膝からおろすと、トラックから外に出た。
 買物帰りらしい主婦が三人、連れ立ってやって来る。
「すみません」
 と、亜由美は声をかけた。「ちょっと——引越して来て、場所が分らなくなっちゃったんですけど」
「あら、どこなの?」
 と、一人太ったおばさん風の主婦が真先に返事をした。
「ここなんですけど……」
 亜由美がメモを出して見せると、三人で一斉《いつせい》に覗《のぞ》き込《こ》んで、
「ああ、ここなら、少し手前の角を入るのよ」
「そっちをぐるっと回った方が近くない?」
「いえ、やっぱり戻《もど》った方がいいわよ」
「それより一旦《いつたん》広い道へ出た方が——」
 三人でしばしやり合ってから、結局、やはりUターンして戻った方がいい、という結論に達した。
「ありがとうございました」
 亜由美が礼を言って、トラックの方へ戻って行くと、背後で、
「いくつぐらいだと思う?」
「結構若いんじゃない?」
「もう二十五にはなってるわよ」
 などとやっている。
 亜由美は、ちょっと舌を出した……。
 少し戻って、すぐに目的の棟《とう》の前に着いた。
「——ここだわ」
 亜由美は、外へ出て、建物を見上げた。八階建で、亜由美たちの部屋は四階である。
「さて、荷物を下ろしますか」
 と、茂木が言って、亜由美ににらまれ、「下ろそうか。ねえ?」
「そうね、あなた[#「あなた」に傍点]」
 少々取ってつけたように、亜由美は言った。「部屋の鍵《かぎ》をあけて来るわ」
 エレベーターで四階へ上る。——四〇二号室は、エレベーターからすぐ近くだった。
 玄関の鍵を開けていると、誰《だれ》かの足音がした。
 見れば、五つか六つの女の子の手を引いた男性——たぶん父親だろう。
「お引越《ひつこ》しだよ」
 と、女の子が言った。
「そうだね」
 亜由美は、女の子の笑顔に、微笑《ほほえ》みを返した。
「よろしくね」
「——今日、越されて来たんですか?」
 と、男が言った。
「ええ、今、下に着いたところで」
「それは大変だ。お手伝いしましょうか」
「いえ、そんな——」
「男の方は?」
「主人が一人で……」
「じゃ、やはり大仕事ですよ。今日は暇《ひま》なんです。ご近所ですから、お手伝いさせて下さい」
「それじゃ……。お言葉に甘《あま》えて」
 と、亜由美は言った。「私、神田と申します」
 聡子の姓を借りて来たのである。
「よろしく。この二つ先の四〇四にいる、永田といいます」
「は——」
 永田! では、これが、殺された永田照美の夫なのだ。
 こりゃ、出だしは好調だわ。亜由美は、できるだけ疲《つか》れた若妻の表情を崩《くず》さないよう用心しつつ、
「よろしくお願いします」
 と、笑顔で挨拶《あいさつ》したのだった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%