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禁じられた過去08

时间: 2018-08-19    进入日语论坛
核心提示:7 声をかけた女「バイバイ!」 山上エリは、手を振って、友だちと別れた。 エリは、都内の私立中学へ通っていた。 女の子一
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7 声をかけた女
 
「バイバイ!」
 
 山上エリは、手を振って、友だちと別れた。
 
 ——エリは、都内の私立中学へ通っていた。
 
 女の子一人なので、というわけでもあるまいが、学校は共学。
 
「女子校では男を見る目が育たない」
 
 と、山上が主張した(?)のである。
 
 それに、確かにエリの方も、男女いた方が、にぎやかで好きだ。
 
 小学生くらいだと、男の子と女の子はケンカばっかりしているが、中学二年生の十四歳、今のエリくらいの年齢になると、男子と女子の間は微妙に変って来るのだ。
 
 エリは、ブレザーの制服に鞄《かばん》をさげて、歩いていた。——同じ方向へ帰る子が少ないので、つまらない。
 
 いないことはないのだが、クラブが違っていたりすると、帰りの時間もまちまちなのである。
 
 エリは、活発な少女だった。
 
 いつも母親の秀子から、
 
「あんたはどっちに似たのかしらね」
 
 と言われている。
 
「私は私よ」
 
 最近はそう言い返すことも憶《おぼ》えたエリであった。
 
 パパは忙しくて、あまり家にまともには帰って来ないが、休みはまとめてドカッととって、付合ってくれるし、ママはおとなしい性格なので、エリのことは何でもやってくれる。
 
 エリとしては、パパが結構有名で、TVに出たりもするし、特に両親に不満はなかった……。
 
 これで学校にテストってものがなけりゃ、申し分のない人生なんだけどね。
 
「ちょっと」
 
 と、女の人の声がした。
 
 エリは二、三歩行ってから立ち止った。自分以外に、周囲には呼びかけられる相手はいなかったのである。
 
「はい」
 
 振り返ったエリは、女の人が一人、歩み寄って来るのを見た。——何となく、奇妙な感じの人だ。
 
 季節外れに長いコート。スッポリと足首あたりまで隠れている。
 
 そして手袋。帽子。——この帽子が、また大きくて、顔をスッポリと隠している。そうなるように、少し前へ傾けてかぶっているのだろう。
 
 でも、何のために?
 
 エリも、見知らぬ人に用心するだけの心構えは充分に持っている。
 
「何ですか」
 
 少し怖い顔で、エリは言った。
 
「山上エリさんね」
 
 と、その女は言った。
 
 一瞬、エリはどう答えようかと思った。返事をしなくても良かったのだが、そこは子供で、嘘《うそ》をつくのは、ついためらってしまう。
 
「——そうです」
 
 と、少し間を置いて、言う。
 
「心配しないで。怪しい者じゃないわ」
 
 と、女は少し笑みを含んだ声で言った。
 
「あの……」
 
「お母さんのこと、好き?」
 
 唐突な問いに、エリは戸惑った。
 
「——ええ」
 
「そうでしょうね。でも——」
 
 と、女は言いかけて、「やさしくしてくれる?」
 
「あの……どなたですか」
 
 と、エリは言った。「学校で禁じられてるんですけど。知らない人と口をきくのは」
 
「知らない人、ね……」
 
 と、その女は呟《つぶや》くように言って、「ごめんなさい、邪魔したわね」
 
 と、肯《うなず》いて見せ、
 
「もう行ってちょうだい」
 
 エリは、ちょっと会釈して、歩き出す。
 
 そして——数歩行くと、女が、
 
「エリ!」
 
 と、呼びかけたのである。
 
 びっくりして振り向く。女は、パッと背を向けると、タタッと駆けて行ってしまった……。
 
 エリ? ——エリだって?
 
 あんな呼び方……。どうして「見も知らない人」がするんだろう?
 
 エリは、たちまちその女の人が見えなくなってしまっても、しばらくの間、ぼんやりとその場に立ったままだった。
 
 
 
「——大変だったのね」
 
 と、秀子が言った。
 
「全くさ」
 
 と、山上はため息をつく。「いくら古い友だちと言ってもな」
 
「でも、おかげで早く帰って来られたわけね?」
 
 と、秀子は笑った。
 
「ああ」
 
 山上はソファに背広のままぐったりと座ると、「もうすっかりくたびれて……。津田の奴《やつ》を送ってくだけでひと苦労さ」
 
「でも、困ったわ」
 
 と、秀子は少し困惑した様子。「何も用意してない。だって、あなた、今日は外で食べて来ると思ってたから」
 
「今日も、でしょ」
 
 と、居間をエリが覗《のぞ》く。
 
「何だ、帰ってたのか」
 
「当り前よ。パパみたいに夜遊びしないんだもん」
 
「何だ、その言い方は」
 
 山上は文句を言いつつ、笑っている。「どうだ。何か食べに行くか、三人で」
 
「うん!」
 
 と、エリが返事をした。
 
「でも……どこへ?」
 
 と、秀子はちょっと落ちつかない様子。
 
「どこか——。そうだな、よく接待で行くイタリアンなんかどうだ?」
 
「いいね」
 
 と、エリが山上の肩へ手をかける。「行こう! じゃ、着がえてくる!」
 
「ちょっと、エリ!」
 
 と、秀子が呼んだときには、もう二階へ駆け上っている。
 
「いいじゃないか、たまには」
 
「でも……。何を着てけばいい?」
 
 秀子は、あまり外へ出たがらないので、つい手間どってしまう。
 
「何でもいいさ。裸でなきゃ」
 
「いやね」
 
 と、秀子は赤くなって、夫をにらんだ。
 
 それからの三十分間、秀子の服を選ぶエリの声が、甲高く家の中に響いていたのである……。
 
 
 
「——すてきなお店」
 
 と、秀子は、ホッとしたように言った。「もっと騒がしいのかと思ったわ」
 
「ママって変ってるね」
 
「どうして?」
 
「普通、こういう所の方が『堅苦しい』っていうんだよ」
 
 どっちが親か分らないようである。
 
 実際、イタリアンレストランにしては、静かで、インテリアも落ちついている。
 
 客は結構入っているのだが、静かで、大声でしゃべるということはないようだった。
 
「新しい店なんだ。——さて、何にするかな」
 
 と、山上はメニューを広げる。
 
「お腹空いた」
 
 と、エリが言った。
 
「いくらでも食べろ」
 
 と、山上は言った。「スパゲッティを沢山食べると、安く上る」
 
「ケチ」
 
 と、エリは言ってやった。
 
 オーダーをすませ、前菜が出て来ると、三人は食べ始めた。一口で食べられる、あったかいカナッペのようなもの。
 
「おいしい」
 
 と、エリは言った。
 
「そうだろ? 日本人向けの味にしてあるからな」
 
 山上も、外食の機会が多いし、いい店をずいぶん回っている。もちろん毎日フランス料理、イタリア料理では参ってしまうが。
 
「——ロマンチックだね」
 
 と、エリは言った。「私、邪魔?」
 
「馬鹿なこと言わないで」
 
 と、秀子は苦笑した。
 
「今日ね——」
 
「え? 何?」
 
 エリは少し間を置いて、
 
「何でもない」
 
 と、言った。
 
「変な子ね」
 
 ——エリ、とあの女の人は呼んだ。
 
 あの呼び方は、「我が子」を呼ぶときのものだ。
 
 エリにも、それくらいのことは分る。
 
 あの女の人が言おうとしたのは……。
 
「——まあ、忠男さんじゃない!」
 
 元気な声がした。
 
 山上はびっくりして、
 
「君……」
 
 倉林美沙が、やって来た。
 
「驚いた! ご家族で?」
 
「うん……」
 
「すてきね。——あ、ごめんなさい、お邪魔して」
 
 と、美沙は屈託がない。
 
「昔の——学生のころの友人で、倉林美沙さん。——家内の秀子と、娘のエリだ」
 
「こんばんは」
 
 と、美沙はエリに微《ほほ》笑《え》みかけた。
 
「君——一人?」
 
「ううん。一郎は母の所。連れが……。あ、こっち」
 
 と、美沙が手招きして、やって来たのは——。
 
 これが三神か、と山上は思った。
 
「三神さん。目下の恋人。いつまで続くかしらね」
 
 と、美沙は笑って、「じゃあ、山上さん。例の件、よろしく」
 
「今、調査中」
 
 と、山上は答えた。
 
 三神はスラリと長身で、スポーツマンタイプである。しかし、顔立ちは若い。少し「坊っちゃん」という印象。
 
「——どなた?」
 
 と、秀子がすっかり呆《あつ》気《け》にとられた様子で言った。
 
「パパの昔の恋人?」
 
 と、エリが訊《き》いた。
 
「友だちだ。——仕事をちょっと頼まれててね」
 
「独身なの?」
 
「未亡人。子どもが十二歳かな」
 
「そう。でも、あの三神さんとかいう人……若いわね」
 
「三十」
 
「——やる!」
 
 と、エリが言った。
 
「お前は黙ってろ」
 
 と、山上が言った。
 
 食事が進む。——もちろん、テーブルは楽しく、にぎやかで、山上もワインで少し酔った。
 
 しかし……時として、あの美沙の独特の、よく通る甲高い声を聞くと、ハッとするのだった。つい、そっちへ耳を向けている自分に気付く。
 
 山上は化粧室へ立った。
 
 少しほてった顔を洗って、スッキリさせると、化粧室を出た。
 
「あら」
 
 隣の女子化粧室から、美沙が出て来た。
 
「大分ご機嫌だね」
 
「そうよ。人生、楽しまなくちゃ」
 
「君らしいよ」
 
 と、山上は言って、「しかし、若いね。結婚するつもり?」
 
「そんなこと……。分らないわ」
 
 と、美沙は肩をすくめ、「こっちには一郎がいる。いやがってるわ、三神と付合ってるのを」
 
 母親らしいことを言い出すのがおかしい。
 
「君は好きにやる主義だろ、何ごとも」
 
「でもね……。子供の気持は——」
 
 と言いかけて、「ね、例のこと、急いでね」
 
「うん。明日でも、あの女に会いに行く」
 
「嬉《うれ》しい! さすがに山上さん——いえ、忠男さん」
 
 そう言うなり、美沙は山上の頬《ほお》にチュッとキスをした。
 
「おい! よせよ」
 
 あわててハンカチで口紅を拭《ふ》く。
 
「フフ……。大丈夫よ」
 
「大丈夫じゃないよ」
 
 と、山上はゴシゴシこすって、「まだついてる?」
 
「もう何も」
 
 と、美沙は言って、「——ね、山上さん」
 
「うん?」
 
「今度——二人で夜、会わない?」
 
「夜?」
 
「そう。紹介したい人がいるの」
 
「誰《だれ》だい?」
 
「それは会ってのお楽しみ。じゃあね」
 
 と行きかけ、「奥さん、可《か》愛《わい》いわ」
 
 と言って、ウインクして見せる。
 
 山上は、ふと我にもあらず、胸がときめくのを覚えたのだった……。
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