日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

禁じられた過去11

时间: 2018-08-19    进入日语论坛
核心提示:10 年月の重み「何だって?」 安西刑事の言い方があまりに鋭いので、女はちょっとびくついてしまった。 やれやれ。 そばで見
(单词翻译:双击或拖选)
 10 年月の重み
 
 
「何だって?」
 
 安西刑事の言い方があまりに鋭いので、女はちょっとびくついてしまった。
 
 やれやれ……。
 
 そばで見ていた村内刑事は、「口を出さない」という約束をしたので黙っていたが、あれじゃ、恐れをなして、係《かかわ》り合いたくないという気持になっちまうぜ、と思っていた。
 
「あの……ただチラッと聞いただけ」
 
 バーのホステスをしているというその女は、殺された水野智江子と同級生だったというから、二十九歳なのだろうが、肌はカサカサで、どう見ても三十代の後半に見えた。
 
 もっとも、出勤前の素顔である。これで化粧をすれば、夜のカウンターの前では、「美女」になるのかもしれない。
 
「確かに言ったんだね、『不動産屋』と」
 
 と、安西が問いかける。
 
「ええ……。言ったと思うけど……」
 
 と、口ごもると、
 
「言ったのか、言わないのか、どっちなんだ!」
 
 と、安西がピシリと叩《たた》きつけるように言った。
 
「言ったわ」
 
 女は、少しやけ気味で言った。
 
 ——もうだめだ。たとえ、他に何か知っていることがあったとしても、この女は絶対に口にしないだろう。
 
 安西はちょっと舌打ちした。
 
「畜生……。他に何か、男のことで?」
 
「知らない。それだけよ」
 
 案の定、これ以上何か言って、引張られでもしたらかなわない、という表情だ。
 
「隠すなよ。隠してると、ろくなことはないぜ」
 
「隠してどうなるのよ」
 
 と、女は言い返した。
 
「まあいい」
 
 安西がパタッと手帳を閉じる。「——用があったら、また来る」
 
「ご自由に」
 
 と、肩をすくめた。
 
「村内さん。——何か訊《き》くことは?」
 
 安西が、村内の方へ初めて顔を向ける。
 
「そう……。どの辺のバーだね」
 
「三丁目です」
 
「今、景気悪いんだろ」
 
 と、村内はおっとりと言った。
 
「ええ。——ひどいもんです」
 
 と、女は、少し気安い口調になる。「ママが凄《すご》くうるさいの」
 
「仕方ないさ。ママの方も必死だよ」
 
 と、村内は微《ほほ》笑《え》んで言った。
 
「ええ、そうね」
 
 女はホッとしたように、村内を見ている。この人は分ってくれてる。その気持が、和んだ表情に出ていた。
 
「一度行ってみよう。何て店?」
 
「あ——これ、マッチです」
 
 と、女が、タバコに火を点《つ》けた残りのマッチを差し出す。
 
「ありがとう。——君、何といった、名前は?」
 
「令子。君原令子。お店じゃ令子です」
 
「令子か。——迷惑するかね、こんなのが行ったら」
 
「いいえ、ちっとも。待ってますわ」
 
 と、明るい声になる。
 
「じゃ、あんまり絞り取らないでくれよ」
 
 と、村内は言って、マッチをポケットへ入れた。
 
 ——アパートを出ると、
 
「村内さん」
 
 と、車に乗り込みながら、安西は言った。
 
「うん?」
 
 助手席に腰をおろす。「君も行くかい、あの子の店に」
 
「とんでもない」
 
 と、にべもなく、「知ってたんじゃありませんか」
 
「何を」
 
「不動産屋のことです。あいつ——栗山っていったな。しょっぴいて、痛い目にあわせてやる!」
 
 安西は車をスタートさせた。
 
「——どうして、俺《おれ》が知ってたと?」
 
「顔の表情一つ変えなかったからですよ」
 
 村内はちょっと笑った。
 
「いちいちびっくりしてられるかい? この年《と》齢《し》になると、何があってもびっくりしなくなるものさ。たとえ、あの水野智江子の恋人が君だったと言われても、『そうかい』ですんでしまうよ」
 
 安西はチラッと村内を見て、それきり黙って車を走らせている。
 
 ——村内も、かつては若かった。
 
 安西の、功をあせる気持が分らないではない。若いころは、多かれ少なかれ、みんなそうだ。
 
 ただ、安西は人一倍、野心家なのだ。
 
 村内は、安西が大きな犯《ホ》人《シ》を挙げるのを、結局、邪魔したことになった。もう大分前のことだ。
 
 ——薄暗くなりかけた道を、車は走って行く。
 
 村内は、そっと右の膝《ひざ》に手をやった。今は薬で抑えているが、以前はひどく痛んだものだ。
 
 若い人間には分らない。「老いる」ということの痛さが。
 
 心の中での話ではない。体を酷使した結果としての、当然の「痛み」。
 
 凶悪犯を張り込んでいた二人の前に、その犯人が姿を見せた。二人は追った。
 
 そして、その犯人が振り向いて発砲した。——弾丸は、二人のどちらにも当らなかったのだが、その瞬間に、村内は右膝を鋭い痛みに襲われ、思わず声を上げて倒れてしまったのだ。
 
 安西はてっきり村内が撃たれたと思った。そして、迷いはしたが、村内の方へ駆け戻ったのだ。
 
 何でもないから、行け!
 
 村内はそう叫んだ。安西はあわてて犯人を追って行ったが……。その何秒かの間に、すでに犯人は姿を消していた。
 
 そして——さらに悪いことに——その犯人はその日の午後、パチンコ店の中で人を殺し、警官に射殺された。もし、あのとき安西が戻っていなかったら、その凶行は防げたかもしれない。
 
 村内と安西は上司から叱《しつ》責《せき》された。もちろん村内は安西をかばったが、マスコミの攻撃の矢面に立っていた上司は不機嫌だった。
 
 安西は、それ以来、村内を恨んでいる。
 
「たかが膝の痛みくらいで」
 
 と言うわけだ。
 
 たかが……そう。誰《だれ》も分らないのだ。自分もいつか年齢をとる、という当り前のことが。
 
 安西は赤信号で車を停《と》めると、
 
「村内さん」
 
 と言った。「僕に任せて下さい。いいですね」
 
「分ってるよ」
 
 村内は逆らわなかった。
 
 いつの日か、安西がこう言われる。
 
「安西さん、僕に任せて下さい」
 
 と——。
 
 信号が変り、車が勢い良く飛び出した。安西のはやる気持、そのもののように。
 
 
 
「——もう帰る?」
 
 と、美沙が言った。
 
「君はいいのか」
 
「一郎は母の所よ」
 
 美沙は、カクテルのグラスをテーブルに置いた。「こんな所、今でもあるのね」
 
「普通のナイトクラブじゃないか」
 
「ナイトクラブ、か……。懐かしくない、その言葉?」
 
 と言って、美沙はちょっと笑った。
 
 フランス料理を食べ、ワインを飲んだので、二人とも少し酔っている。
 
 美沙は目の辺りをほんのりと赤くして、目が潤んで見えた。——危い危い。こんなときが一番危いのだ。
 
「例の彼氏は?」
 
 と、山上は言った。
 
「三神さん? そう毎晩会っちゃいられないわよ」
 
 美沙は、フーッと息をついた。「こんなに酔ったの、久しぶり」
 
「もうやめとけよ」
 
「送ってくれるんでしょ?」
 
「ああ、もちろん」
 
 山上はウーロン茶を飲んでいた。もうアルコールはやめどきだ。
 
「先生だものね。——下《へ》手《た》に女には手が出せない、か」
 
「よせよ。——今の家庭を大切にしてるだけさ」
 
「奥さん、おとなしそうな人ね」
 
「うん。あまり外へ出ない」
 
「でも、ああいう人が怖いのよ。一度燃え上ると……。あなたはまさか、と思ってるでしょうけどね」
 
「正にね」
 
「私、テニスをやってたの。もうとっくにやめたけど。——私が誘って、同じテニススクールへ通ってた奥さんがいたのよ。ともかくおとなしくて、ご主人も、『少し何かやれよ』っていつも言ってたの。学生のころ、少しテニスをしてた、っていうんで、本人、渋々入ったんだけど……。半年して、そこのコーチと駆け落ち」
 
 美沙は、ちょっと笑った。「みんな唖《あ》然《ぜん》としたわよ。三人も子供がいたのにね。——結局、一か月して戻って来て、離婚。それからどうしたのか、誰も知らない」
 
「——凄い話だ」
 
「あら、こんなこと、今はざらにあるのよ。男どもが知らないだけ」
 
「そうかね」
 
「そうよ……。でも、今も忘れられない。一か月たって戻って来た、彼女の顔」
 
「どうして?」
 
「別人のようだったわ。疲れてもいたし、悩んだせいか、目の下にくまもあった。でも、輝いてたわ。引き締って、強くて……。以前の彼女には決して見られない顔だった……」
 
 美沙は、いつしか独り言のように、語っている。
 
「——しかし、今の君は独りだ。誰と恋をしてもいいわけじゃないか」
 
「一回り年下でもね」
 
 と、美沙は笑った。「よくやるよ、って思ってる?」
 
「まあね」
 
「悩むことはあるわ。十年たって、私は五十二歳。彼は四十……。二十年たつと——」
 
「そんな計算は君らしくない」
 
「そう。——そうよね」
 
 美沙は突然不安げな様子で、山上の方へ身をもたせかけて来た。
 
「倉林君——」
 
「黙って。——あなたを浮気に誘おうと思っちゃいないわ。心配しないで。ただ……」
 
「何だい?」
 
「いいの。このまま——しばらくこうしていたい……」
 
 美沙は、眠ってしまいそうに見えた。
 
 山上は、こうしてかつての「恋人」を身近に感じながら、同時にひどく遠くに見ていた。
 
 歳月は人を変えて行く。——この年月の間に、何があったか、互いに知りはしない。知り尽くせるものでもない。
 
 山上は、指先で、そっと美沙の額にかかった髪を上げてやった。
 
 
 
「——お帰りなさい」
 
 秀子が、居間から出て来た。
 
「何だ、起きてたのか」
 
 と、山上は言った。「先に寝てても良かったんだぞ」
 
「そう遅い時間じゃないわ」
 
 と、秀子はちょっと笑った。「うちへ電話した?」
 
「いいや、どうして?」
 
「お友だちと長電話してたから」
 
「エリがか」
 
「私が」
 
 秀子は、そう言って、照れたように笑った。「カルチャーセンターで知り合った人なの」
 
「男じゃあるまいな」
 
 と、山上はおどけて言った。
 
「女の人よ、馬鹿ね」
 
 秀子は、ちょっと山上の上着に顔を近付けた。
 
「何だ?」
 
「匂《にお》い。——香水でしょ」
 
「ああ。ちょっとクラブに寄って来たからな。付合いだ」
 
「怪しいもんだわ」
 
 秀子が、いつになくはしゃいだ感じでいるので、山上は少々面食らっていた。
 
「ねえ、あなた」
 
「うん?」
 
「お風《ふ》呂《ろ》、一緒に入りましょうか」
 
 山上がびっくりしていると、秀子は頬《ほお》を染めて、
 
「昔は入ってたわ」
 
 と言った。
 
「そうだな。確かに」
 
 と、山上は肯《うなず》いた。「——入るか」
 
「ええ」
 
 嬉《うれ》しそうに、秀子が腕を絡めてくる。——山上が初めて見る妻の「新しい笑顔」だった。
 
「あ、パパ、帰ったの」
 
 と、エリが下りて来る。
 
「まだ起きてたの? もう寝なさい」
 
「まだ早いよ」
 
「それじゃ、邪魔するなよ。父さんと母さんは十何年ぶりかで、一緒に風呂へ入るんだ」
 
「——あ、そ」
 
 エリは、ポカンとして、そう言ったのだった……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%